幾何学覚え書き

 ついにやってきた、夏休み数学大作戦!

 とりあえず一番テキストのページ数が少ない幾何学から攻略!しかし、図形の分野だけに、今回ばかりはテキストを読むだけじゃどうにもならず、ノートと鉛筆片手に絵を描かなきゃいけないのが、ちょっと大変。
 実は、わたくし、社会、理科と単位をとってきたけれど、本を読むだけでほとんど済ませちゃったので、ノートの使用は事実上今回が初めて。経済や物理の計算とかはチラシの裏にちゃちゃっと書いたけれど。なんというかノートを使うと一気に勉強っぽくなるな。
 それと、もう一つ大変なのが、数式や記号のほとんどがパソコンで変換できん。これは日本史や中国史の用語以上に変換できん。とうとう私のオフィスワード2003も進化の時が来たようだ。

 とりあえず、代数学のテキストとして送られてきたのが、日本で初めてフィールズ賞を受賞した小平邦彦さんの『幾何への誘い』(岩波現代文庫)。
 昔ながらの図形の学問としての幾何学教育が、記号論や集合論というよくわからん抽象的な概念の導入によって難解になり、学校現場に恐怖と混乱とカオスをもたらした!みたいなこと言っててなかなか面白くて、また数式の証明もすっごい丁寧。
 とはいえ、第一章の円論のもろもろの証明はけっこうなサーガで、とりわけフォイエルバッハの定理がやばい。MOTHER2的に言うならばPPを9ページも消費している。
 でも8割がたは中学校までに習う初等ユークリッド幾何学で、第3章でちょっとだけ高校レベルの複素数が出てくる程度。

 しかし天才数学者って、常人には理解不能な思考回路してるイメージがあるけど、小平先生のように本当に頭いい人はオイラみたいなバカでもわかるように、バカに合わせて解法を一般公開してくれるよね。
 ページの都合とかもあるんだろうけれど、その点、高校数学の某参考書や問題集は伝えるということを放棄しているとしか言い様がないよ。「よって」じゃねーよっていう。その過程をごまかすんじゃないよっていう。
 藤原正彦さん的に挑戦的なことを言わせてもらえば、テキスト作ってる奴もちゃんと理解してないんじゃないか?なぜ全国のバカのニーズに応えない・・・いや、みんな賢くなっちゃうと受験ビジネス自体が成り立たないっていう陰謀か。おのれポケモンGO。
 でもあれだよね、受験と全く関係ないと数学もただのゲームで、けっこう楽しいよな。だからポケモンGOも学校の宿題的にノルマ出されたら絶対に苦痛だと思うんだよ。
 世の中面白いよな、逆に言えば、マインド一つで受験勉強もゲーム感覚でやれるってことだよね。“思い込み”を自分で操作、制御できるやつが最強なのかもしれぬ。

ユークリッドの公準
古代ギリシャの数学者ユークリッドが、その著書『原論』において「自明だよベイビー」と定めた、直線に関する以下の5つの公理のこと。
ちなみに、「三角形などの図形はその形をキープしたまま位置を動かせます」みたいな、その理由を述べる必要もない陳述(要請)を数学では公理とか公準という。証明するまでもなく正しいっていう。

第1公準
任意の点から任意の点へ直線が引ける。

第2公準
有限な直線(線分)はいくらでも延長できる。

第3公準
任意の点と、その距離(半径)を使って円が描ける。

第4公準
すべての直角の大きさは一緒。

第5公準
一本の直線が並んだ二本の直線をまとめて横切るとき(カタカナの「キ」をイメージしてください)、並んだ二直線の内側にできる二つの角度の合計が180°を下回る場合、その二直線は遅かれ早かれ、どこかでぶつかってしまう(=平行ではない)。

・・・第5公準だけがなぜか妙に具体的で文章も長い。

というわけで、もしやコイツは公理じゃないんじゃないか疑惑が噴出し、多くの数学者が第5公準の証明を試みたこともあったが、自分の歯が噛めないように、きずつきたおれた。
このビターな経験から、ある直線Aと平行で、さらに、その直線A上にはないひとつの点Pを通る直線Bは1本だけしかない、という平行線公理が生まれた。
しかし、この定理は意外な分野でくつがえってしまった。それが社会科の地理である。
中学一年生の地図の授業で、地球儀にビニールテープを貼って二つの地域の最短距離を調べる課題があるのだが、地球のような球体でユークリッド的な「直線は2つの点の最短距離となる」を用いてしまうと、球体の表面にひかれるすべての直線は地球の直径と等しくなり、したがって球体の表面では平行線が一本も存在しなくなってしまう(北極や南極で絶対ぶつかる)。
こんな感じで、ユークリッド幾何学の前提を覆す、非ユークリッド幾何学や位相幾何学が誕生したらしい。有名なのだと、『はじめての構造主義』でも取り上げられた、凸面鏡に三角形を写すと内角の和が180°を超えちゃうよねっていうのがある。

複素数と平面幾何
二乗すると-1になる数を虚数というんだけど、その虚数と実数のコラボを複素数という。
16世紀にはすでにイタリアの数学者カルダノなどが使用しており、18世紀になると大いに応用されるようになった。
虚数は英語ではイマジネーション・ナンバー(頭文字をとってi)って言って、そもそも実在しない頭の中だけにある数だとされてきた(って数という概念自体がイマジネーションじゃないのって私は思うんだけど…)。
しかし19世紀にガウスが複素数って幾何学で使うと超便利だということを発見すると、虚数は実数同様、実在すると認められるようになった(ガウス平面)。

複素平面
ガウス平面は数学の教科書では複素平面と書かれていることが多い。
これはxとyの二つの軸で座標を表すデカルト座標に、複素数の考え方を導入したもので、具体的に言うと、おなじみのy軸が実数じゃなくて虚数になり、虚軸に差し変わっている。x軸はそのままで、こちらは虚軸に対して実軸と呼ばれる。

z=x+iy(x、yは実数。i=√-1)

となる形の数を複素数とするとき、z=x+iyは、点zとして、複素平面上に原点Oから右にx、上にiy進んだ位置にポイントされる(複素座標)。
ちなみにxが0で、虚軸上にポイントされる場合は、その数を純虚数という。

単位円
複素数が幾何学でどうして便利なのかというと、複素平面に描かれた単位円上にある点に、虚数iをかけると綺麗に反時計回りに90°回転してくれるからだ。
わかりやすく、単位円で角度0°(時計でいう3時)の位置にある点(1,0)を動かしてみる。
(1,0)×i=(0,i)となり、角度90°(時計の12時)に移動。
さらに
(0,i)×i=(-1,0)で角度180°(時計の9時)に移動。
さらにさらに
(-1,0)×i=(0,-i)で角度270°(時計の6時)に移動。
そして
(0,-i)×i=(1,0)で元の位置に一周する。

複素数の計算
二つの複素数z=x+iyとw=u+ivの足し算&引き算は、分配法則の形に因数分解して、以下のようになる。

z+w=x+u+i(y+v)
z-w=x-u+i(y-v)

z=x+iyとw=u+ivの掛け算は

zw=(x+iy)(u+iv)

となり、右辺を展開して

zw=xu+ixv+iyu+i2yv

iは二乗すると-1になるので

zw=xu-yv+i(xv+yu)

複素数の絶対値
点zの原点Oからの距離をzの絶対値|z|という。
三平方の定理を使って、その距離を求めると

|z|=√x2+y2

共役複素数
第1象限にポイントされている複素数z=x+iyを、x軸に対称に第4象限に移動させた複素座標のことで、z*=x-iyと表す(一般的にはzの上に横棒を乗せるんだけど技術的に無理)。

zとz*は、x軸を境に鏡合わせの位置にいるだけなので、z*をさらにz**にすると元の位置のzに戻ってくる。

複素数zと共役複素数z*をかけると

zz*=(x+iy)(x-iy)

となり、乗法公式(x+7)(x-7)=X2-49のように展開できるので

zz*=x2-i2y2

i2=-1なので、符号が変わって

zz*=x2+y2

|z|=√x2+y2だったので

|z|2=|z*|2=zz*=z*z=x2+y2

ちなみに
x≠0のとき、zz*=|z|2>0なので

zz*=|z|2の両辺を|z|2で割って

zz*/|z|2=1

これをさらに両辺をzで割って

z*/|z|2=1/z

よって1/zの絶対値はz*/|z|2の絶対値だから
z*はzに、|z|2はzz*に変わり

(1/z)*=1/z*

積の絶対値は
|zw|2=zz*ww*=|z|2|w|2

なので
|zw|=|z||w|

また、z=x+iyのxを実数部(Rez)、yを虚数部(Imz)とすると

Rez=1/2(z+z*)

Imz=i/2(z*-z)※

※こうなる理由
Imz=yと定義しているので、z*の虚軸成分-iy、zの虚軸成分iyから

(z*-z)=-iy-(iy)=-2iy

-2iyをyにするには、iをかけて2で割ればいいので

y=i/2(z*-z)
Imz=i/2(z*-z)

ベクトル表示
zのベクトルをzと表すとき
zwを足すとz+wとなって合力になる。

ここまではわかりやすいけど、面白いのは、合力をzとすると、その分力はwz-wとなり、合力は平行四辺形の対角線なので、分力のz-wは平行四辺形のひと組の対辺となり、したがって点wを始点、点zを終点とする有向線分が定めるベクトルになる。
簡単に言うと、z-wは点wと点zの距離を表す。

線分
複素平面上で点wと点zを結ぶ線分wz上に点ζ(ゼータ)があるとする。
この距離を仮にtとした時、ζからwまでの距離ζ-wは、線分wz全体の距離z-wのt分なので

ζ-w=t(z-w)

ζ=w+t(z-w)・・・①

さらに線分wzの長さを1として、sを線分wzから線分tを引いた残りだとすると

s=1-t・・・②

まず①を展開して
ζ=w+t(z-w)
ζ=w+tz-tw

共通因数wでくくって

ζ=(1-t)w+tz・・・①’

①’に②を代入して

ζ=sw+tz

よって線分wz上の任意の点は

sw+tz(s+t=1 s≧0、t≧0)

と表せ、またこの点が線分wzをt:sに分けることがわかる。
また、線分wzの中点は、s=tで、s+t=1なので、sもtも1/2となるため

1/2(w+z)

である。

平行と垂直
複素数z=x+iyとw=u+ivに対して、zとwの共役複素数の積は

zw*=(x+iy)(u-iv)

展開して
zw*=xu+yv+i(-xv+yu)

この式の右辺のxu+yvを実数部、(-xv+yu)を虚数部と考えると

xu+yv=Rezw*=1/2(zw*+z*w)・・・①
xv-yu=-Imzw*=i/2(zw*-z*w)・・・②

参考:Rew*=1/2(w*+w**)=1/2(w*+w)

ベクトルz=(x,y)とw=(u,v)が平行であるための条件は、二つのベクトルの傾き(変化の割合)が等しくなければならないので

y/x=v/u
xv=yu
xv-yu=0

よってwとzが平行である条件は、②の式を0にすればいいので

zw*-z*w=0

ベクトルz=(x,y)とw=(u,v)が垂直であるための条件は、z=(x,y)とz’=(-y,x)の位置関係が垂直であるから

v/u=x/-y
xu=-yv
xu+yv=0

よってwとzが垂直である条件は①の式を0にすればいいので

zw*+z*w=0
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