この世界の片隅に

 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆☆」

 警報もう飽きた。

 観る予定どころか、その存在すら知らなかったけど、最近(ネットだけで)やたらめったら超大絶賛されているから、高崎まで行って鑑賞したアニメ映画。ちなみに『アイアン・スカイ』みたいにクラウドファンディングで製作されたらしい。で、おれ見た。別にフツーだった。君ら大げさ。
 つーか、みんなが大絶賛するような作品って大きく2パターンあって、①そもそも作品のジャンルがニッチで好きな人しか見ないから見た人みんな絶賛ってパターン。オタクアニメの映画版に多い。と、②完成度はそつないくらいのレベルなんだけど、クチコミやらなんやらで、普段映画は見ないがそのために絶賛のハードルが低い人がたくさん見てくれて、結果的に大絶賛。の2パターンがあると思うんだけど、これはわりと①かな、と。

 今年ヒットした映画って『シン・ゴジラ』も『君の名は。』も、そしてこの映画もだけど、内容はないんだよね。情景のディティールが丁寧なだけで。 
 だからオタク映画のコンテキストが勝利した年なんだよな。どういうことかっていうと、オタクって例えば、登場人物の名前がみんな金属になっているぞ!とか(セーラームーンみたいだな)、爆弾のシーンはゴッホの絵画の『星月夜』を引用している!みたいなメタファーっていうか、そういうデータさえあれば満足なところがあってさ。勝手に深読みするからな。
 それはそれでいいんだろうけど、自分はオタクじゃないしね。データだけじゃ物足りないんだよね。作った人は何を言いたいんだろうっていうのがないとさ。
 この手の映画の絶賛がさすがにここまで続くと、なんというかていねいっていうジャンルを新設してもいいよな。

 ただ、この映画は扱っている時代が時代なだけに、ディティールだけっていうのがわりとうまくいったっていうかさ。史観とかイデオロギー的なの一切排除して、一貫して生活だけを描いているっていう。
 自分のおじいちゃんやおばあちゃんもこの世代だったけど、確かに戦争って言っても、日常がじゃあアクション映画みたくなるかっていうと違うわけで。
 結局は生活をしなきゃいけないわけで。それで、大変な思いをした人(おばあちゃん)もいれば、わりと生活に変化がなかったっていう人(おじいちゃん)もいたわけで。
 で、その当たり前の事実をアニメで丁寧に描いたわけだよね。だから、まあ、そりゃそうだよな。こんな感じだったんだろうな、と。暮らさないとなって。

 泣いたらもったいない。塩分が。

 なんかこの映画観て泣かない奴は非国民だとか言われそうだけどさ。別に泣かないよね。だって描いているのは生活だけだもん。そしてそれは戦時中でも平和な世の中でも大変なわけでさ。
 よく、宇宙飛行士がスペースシャトルで宇宙に行って、地球があまりにちっぽけなことを知っていろいろ悟っちゃってさ。「地球人よ仲良くしようよ」みたいな博愛主義者になって帰ってくるけど、「そんなこと言われてもさ」っていうのあるじゃん。全人類をスペースコロニーにでも移住させなきゃ共感できねえよっていう。
 なんかこの映画ってそんな違和感あるよね。「号泣した!」とか「戦争はよくない!」とか「当たり前の日常こそかけがえのないことが・・・」とか。でも繰り返すけど描いているのはあくまでも生活だからね。「フツーだった」って感想が一番ニュートラルだと思うよ。

 もっと言えばさ、戦中、戦後、高度成長、バブル、平成不況、グローバル化・・・どんな状況になっても、普通のままでいるっていうのは変わらないってことじゃないんだよね。矛盾しているのかもしれないけど、ここにとどまるためには走り続けねばならぬという。赤の女王やシュンペーターが言ってたやつで。
 めまぐるしく変わる時代の中で普通のままでいるっていう時点で、もう普通じゃないんだよ。
 自分もよく「お前は変わらないな」って言われること多いんだけど。でもそれは、大きな変化を防ぐために、細かな部分はかなり投げ売りっていうかプライド捨てちゃったところがあって。それにふと気づくと、ちょっと切ない気分にはなる。そこまでして守ってきたものは何なんだろうっていう。
 そんな自分とは比べ物にならないコペルニクス的転回&喪失を70年くらい前に田原総一朗さんなんかはしてきたと思うよ。あとゆうこりん。
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