英語科教育法覚え書き②

 明日の試験やべえ。もはや戦後ではない!

参考文献:岡秀夫編著『グローバル時代の英語教育―新しい英語科教育法―』

ESLとEFLの違い
ESLはEnglish as a Second Languageの略称で英語を母語(第一言語)ではなく、第二言語として習得することである。世界に10億人いるといわれる。
これに対してEFLはEnglish as a Foreign Languageの略称で外国語である英語を国際コミュニケーションにおけるツールとして習得することである。世界に7億人いるといわれる。
ESLが、話者が所属する社会で英語が実際に使われ、豊富なインプット・アウトプットの機会があるのに対し、EFLでは、日常生活で英語を使用する場面は少なく、学校の一教科にとどまるという相違点がある。そのためEFLで扱う英語は、実用的な形というよりは世界的に標準化された形の目標言語であることが多い。

語彙を増やすための活動
語彙に関する知識は単語力といわれ、語学力最大の源とされる。文法をいくら学んでも、英単語の知識を一定量持っていなければメッセージを伝えることはできない。
一般に、使用頻度の高い2000語程度を知っていると、普通の英文や対話で接する英語の85%以上が理解できるといわれている。
とはいえ、語彙指導の重要性が見直されたのはつい最近のことであり、現在でも語彙指導は英語学習の中心にはならず、英日対照の語彙リスト(フラッシュカードなど)を使った反復学習、記憶学習にとどまっている。この背景には、個々の語に関する知識を深める前に、まずは知っている語彙の量を単純に増やすことが優先されるという現状がある。
しかし、語彙を理解し実戦的に活用するためには、語形(発音やスペル、接辞の区別など)、意味、使用方法など、知っている語の数(語彙サイズ)だけでなく、その知識の深さも要求されることはいうまでもない。
したがって、ある語をイメージ(画像)や和訳、他の語に関連づけたり、意味地図を作ったり、実際に会話で用いたり、英英辞書の要領で定義付けしたり、語形成の情報や文脈から語の意味を推測したりするなど、様々な活動やアプローチが必要になる。
教師に求められるのは、生徒の実情に合わせて単語の覚え方の工夫(新語の効果的な導入方法や、語彙の再利用などを含めた言語活動など)を考え、それを学生に教える事なのである。

フラッシュカード
フラッシュカードは英単語を覚えるために用いる、表に英単語、裏にその日本語訳が書かれた、縦15センチ、横40センチほどの厚紙である。
フラッシュカードは新出単語の導入時だけでなく、復習や整理でも使え、また、日本語を見せて英語を答えさせたり、提示時間を変更することもできる。この提示時間を短くすればするほど、生徒が求められる反応速度は上がる。単語を見て意味へのアクセスが素早くできることは、リーディング力の基礎とされているので、授業で効果的に活用したい。
だがフラッシュカードは、比較的単純な情報を、信号刺激的にたくさん記憶する教具であり、一度やっただけではその情報は短期的にしか記できず、すぐに忘れてしまう。
そのため、授業時間以外でも、生徒それぞれに個人用の小さなフラッシュカード(単語カード)を用意させ、それを使って継続的に単語を反復学習させることが望ましい。

スキミングとスキャニングの違い
skimmingは「すくい読み」という意味で、英文(初めて読む物であることが多い)全体の大まかな内容を短時間で読みとる活動である。その文章の主題や、5W1Hといった情報、物語であれば登場人物やストーリーに注意して読みとる。
これに対して、scanningは「探し読み」という意味で、特定の短いテキストを何度も繰り返し読み取り、必要な情報を探し出す活動である。
英語で質問を与え、それに答えるために読ませたり、内容に関する文の真偽テスト(True/False)や、表を完成させるために行う場合もある。

GTM(グラマー・トランスレーション・メソッド)
15世紀頃までヨーロッパの知識階級の間では古典ラテン語が共通語(リンガ・フランカ)として用いられていた。16世紀に入っても学校では知的鍛錬の目的でラテン語が教育され、そこでは内容を解読することが目標とされ、文法法則の理解と忠実に母国語に翻訳する技術が磨かれた。
日本においても江戸時代まで漢学や蘭学の学習が解読中心でこの教授法に似る。また明治期の欧化政策においても取り入れられた。

特徴
英文テキストを日本語に訳することが活動の中心になるため、授業は主に日本語でおこなわれる。
教師は和訳しながら英文を読み進め、その過程で文法や語句の解説をし、忠実な和訳を求める。
生徒は教師の解説をノートに取る。一通り読み終えると、文法規則の定着を図るため、和訳、もしくは英訳の演習がおこなわれる。

長所
複雑な文法構造の理解や、翻訳が難しい意味内容の解説など、高度な教材を扱うことができる。またふたつの言語を比較対照できるので、言語に対する分析力を高めることができる。教師中心の指導法なので大人数のクラスでも実施しやすい。

問題点
音声指導、あるいは英語を使った言語活動が軽視されがちである。
文法、書き換え、語句の丸暗記の是非が学習評価になるので、英語そのものを使う能力が育たず、自分が言いたいことや書きたいことを英語で表現できない。
文法訳読法一辺倒であるため、リスニングやスピーチングの育成が不十分となり、実際に外国語を使ってコミュニケーションをとる能力を要求する場面では、批判を受けることが多い。
文法の理解と和訳、語句の定着が同時並行で進められるため認知的に負荷が重い。よって基礎学力と動機付けが高い学習者と、そうでない学習者の間で学力差が広がる。

実際の授業においてどのように展開すべきか
授業の指導手順の中で、読みながら文法指導をおこなうのではなく、あらかじめ意味を理解した上で文法指導をおこなうことで、認知的な負荷を軽減させる。
また読解指導では、和訳によって内容理解をするのではなく、英文の理解の補助として母国語を使うと考えた方が建設的である。
全訳を前もって生徒に渡し、内容理解を手早く確認した上で、残りの時間を言語活動や文法指導にあてることも一案である。また、書き言葉だけではなく、口頭作業を絡めると活動が生き生きとする。

CLT(コミュニケ-ティブ・ラングエージ・ティーチング)
EU設立による外国語教育の統一化と、「すべてのヨーロッパ人をバイリンガルに」というスローガンのもと、主要な言語を実際的なレベルにまで教える必要性が生まれたことで登場した学習法。

特徴
コミュニケーション能力を身に付けることを目的におこなわれる授業の総称。
文法項目の習熟よりも、目標言語の積極的活用に重きを置く。また、言葉の正確さよりも流ちょうさが重視される。
指導手順は①教材提示②内容理解③限定的基礎学習④発展練習⑤教材の枠を超えた応用練習、という流れをとる。
その為の手法として、ロールプレイや、プラスワン・ダイアローグ(モデル対話文にない一文を加えさせる)、インフォメーション・ギャップ(話者双方の知っている情報に差異をつけてやりとりさせる)、問題解決型練習などが挙げられる。

長所
流ちょうな発話能力が伸ばせる可能性がある。

問題点
語彙や文法の正確さに弱点があり、バランスの取れた運用能力が育てにくい。
コミュニケーションの内容面の評価が一貫しない。

実際の授業においてどのように展開すべきか
教室内で展開する上で、概念・機能シラバスが有効である。これは、機能によって使われる状況と共に提示されるので、練習したことが実際の状況に転移しやすい。

直接教授法(ダイレクト・メソッド)
動作や実物、イラストなどを駆使しながら英語のみで生徒とコミュニケーションをおこない、英語で考えることができるようになることを目指す。
教師が目標言語において優れた運用能力を持っている必要があり、教科書の内容よりも教師のスキルに負う部分が大きい。
短所としては、日本語を使用しないので、生徒がせっかく持っている日本語力と認知力を利用しないことになる。その結果、生徒の理解の範囲が極めて限定的になりがちで、非効率な授業展開になる可能性がある。
これは、夏目漱石の『語学養成法』(1911年)においても「学問普及という点から考えると、やはり生まれてから使い慣れている日本語を用いるのに越したことはない。たとえ翻訳でも西洋語そのままよりは良いに決まっている」と同様の指摘がされている。

音声変化とプロソディー
音声変化は英語らしい自然な滑らかさを出すため、単音の正確な発音に加え、文全体がひとつの流れのなって伝わるための調子の変化である。
ゲッタウェイ(get away)など複数の語が結びつく連結(リンキング)、ある音が隣接する別の音の影響を受けて性質が変わる同化(アシミレーション)、同じ音や類似の音が続いた場合の脱落(エリション)、内容的にそれほど重要じゃない機能語が弱く発音される弱化(ウィークニング)などがある。
プロソディーは超文節音素と呼ばれ、母音や子音を超えたところで作用し、文全体の滑らかさに影響を与えるだけでなく、意味内容にも影響を与え、それによって文のニュアンスや話しての感情が表出される。
一つの語を構成するいくつかの音節の中で、ほかよりも強く発音される音節である強勢(ストレス)、強音節が時間的に規則的な間隔をおいて繰り返されるリズム(これは俳句のように音節の数がリズムを作る日本語のリズムとは大きく違う)、音の高低で話し手の気持ちを表現するイントネーションなどがある。

テストの問題形式
以下のように、用途ごとに区別される。

①到達度テスト
定期テストのように、日常学習してきたこと(既習事項)の到達度を測定するもの。
範囲は限定的で、教材は既知のものである。

②熟達度テスト
入学試験のように全般的な熟達度を測定するもの。目的は実力の判定で、範囲は広く、教材は初見である。

③プレースメント・テスト
学期始めのクラス分けを行うためにおこなうテスト。習熟度別クラス編成などで用いられるため、学習コースの対象分野に特化している。

④診断テスト
学習者の弱点を明らかにするためのテスト。どの分野が苦手なのかをはっきりさせるために、語彙、文法、読解など、分野ごとに問題群が分かれている。

学習ストラテジー
従来、外国語学習の研究は教授法を中心に行われてきたが、1970年代に入ると学習者の視点に立った研究へと移行し、優れた学習者はどのようなストラテジーを立てているのかに焦点が当てられるようになった(学習成功者分析)。
これを理論化したものが学習ストラテジーである。オックスフォードは、言語学習のストラテジーを直接的なものと間接的なものに分け、さらにそれを下位区分しシステム化した。
直接的方略には、知的連鎖を作ったり、イメージや音を結びつけたり、繰り返し練習する記憶ストラテジー、インプットやアウトプットをしたり、分析したり推論したりする認知ストラテジー、話すことと書くことの限界を克服する補償ストラテジーがある。
間接的方略には、自分の学習の位置づけや計画、評価をするメタ認知ストラテジー、不安を軽くしたり勇気づけるといった自分のメンタルをコントロールする情意ストラテジー、質問をしたり、他の人と協力する社会的ストラテジーがある。
これらのストラテジーは相互依存関係にあり、学習者の総合的な自律学習を促すものである。最近では、学習者が自らポートフォリオ(学習記録帳)を作成することが推奨されている。
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