国語学概論覚え書き①

 お盆ホリデー中にどんどん行きます。こういう純粋な言語学的な分野って苦手意識あるんだけど、この単位に関してはちょっと面白いな。テキストの作者がオタクかしらないけど、AKBとか、ももクロとか、はじめの一歩とか、会長はメイド様!とかサブカルネタが多いしね。知らんわ、そんな少女漫画w

参考文献:伊坂淳一著『ここからはじまる日本語学』

語義
類義語に限らず、語の意味である語義を単独で捉えるのは簡単な作業ではない。
そこで語義をとらえるための手段として,類義語相互を比較するという方法がよくとられる。しかし国語辞書の説明から違いを明確にすることはできない。
2語以上を比較する目的は、両語の使い分けの条件を発見することにある。そこで、それらの語を共通の文脈の中に置いた場合に、正しい文として許容できるか、できないかを、母語話者の内省によって判断するのである。

ニギルとツカムの違い
どちらも「物を手に持つ」という意味の言葉で、辞書で調べると、「握る」とは「物をつかむこと」で、「掴む」とは「物を握ること」というトートロジーになってしまっている。
そこで前述の手法を用いて微妙なニュアンスの違いを明確化してみる。

対象物の違い
○棒を握る ○棒を掴む
×クワガタを握る ○クワガタを掴む


棒は「握る」でも「掴む」でもどちらも違和感がないが、これがクワガタになると「握る」ではクワガタが死んじゃう感じがする。
「握る」と「掴む」では掴む方が力が強い印象がある。握り寿司はあるが掴み寿司はないし、溺れる者は藁をも掴み、藁をも握らない。

また、対象が動いていると、握るよりも掴むを使う印象がある。
「腕を掴んで取り押さえる」のように、「掴む」には、動いている対象物を静止させるニュアンスがあるのかもしれない。

○ペンを握る ×ペンを掴む
×布団を握って持ち上げる ○布団を掴んで持ち上げる


対象物が小さい場合は握る、手に収まらないほど大きい場合は掴むを使う傾向がある。

助詞の違い
○箸を握る ×箸を掴む
×箸で握る ○箸で掴む


箸を手段とする場合は「掴む」、目的とする場合は対象物が小さいので「握る」となるらしい。

慣用句
○手に汗握る ×手に汗掴む
×チャンスを握る ○チャンスを掴む


手に汗~に関しては心理状態を表す言葉だが、対象物の大きさも関係してそうである(汗は手に収まらないほど大きくはない)。
また、箸の例でわかるように、「掴む」は手段の意味合いが強いので、手に汗~は、心理状態であって、汗を手に入れるための言葉ではないので「掴む」は不適当なのだろう。
その一方、チャンスは手に入れたいわけで「掴む」のである。

マワルとメグルの違い
どちらも「円環・円周運動をする」という言葉である。

助詞の違い
○全国をまわる ○全国をめぐる
○車輪がまわる ×車輪がめぐる


対象物の周囲を動く場合は「まわる」も「めぐる」もどちらでも使えるが、対象物自身が物理的に回転する場合は「まわる」に限定される。
また、対象物の周囲を動く場合も、「商店街の店を食べ歩きで回る」と「戦国時代が好きなので休日は城巡りをします」のように、前者よりも後者のほうが計画的に目的地を回っていくイメージがある。

対象物の違い
○季節がまわる ○季節がめぐる
○時がまわる ○時がめぐる


対象物自身が回転する場合も、主語が季節や時間になるとその限りではないようだ。季節や時間は物体ではないので物理的に回転しないからである。
しかし、時間に関しては「まわる」と「めぐる」は言葉の意味が若干違う。前者は時計の針が回るから転じて「時間が過ぎる」というニュアンスがあり、後者は季節同様「時間が一周して戻ってくる」というニュアンスがあるのである。
また、「めぐる」は漢字で「巡る」と書き、この漢字には「回数」という意味があるので、「まわる」に加えて「何度も繰り返す」というニュアンスもある。
「堂々巡り」とは言うが、「堂々まわり」とは言わないのもそのためである。

タスとクワエルの違い
どちらも「付け加える」という意味である。

対象物の違い
○文章を書き足す ○文章を書き加える
○文章を継ぎ足す ×文章を継ぎ加える


上は「足す」でも「加える」でもどちらも違和感はないが、下の「継ぎ加える」はあまり使わない。「加える」が単純に量を増やすという印象に対して、「足す」はもともとあったものに違和感なく組み合わせる印象がある。

○味が薄いので醤油を足す ○味が薄いので醤油を加える

この例を見ると、「足す」には不足分を補充するといったイメージ、「加える」にはもとある量をさらに増やす拡充のイメージがありそうだ。

×新メンバーを足す ○新メンバーを加える

対象が人になると、やはり不足分を補充したという印象がある「足す」はちょっと失礼なので使わないのかもしれない。

○用を足す ×用を加える

用を足すとは用事をすますことだが、その用事をしなくてはいけない不足的な状態を補うという意味で、「足す」が用いられる。
そのニュアンスがない「加える」では、用事の数がさらに増加する印象になってしまう。

助詞の違い
◎リンゴとハチミツを足す ○リンゴとハチミツを加える

助詞の「と」をつかうと、組み合わされるものの関係性が対等になるらしい。
「リンゴとハチミツを加える」では、別のもの、例えばカレーに「リンゴとハチミツ」を加えるという意味に限定されるが、「リンゴとハチミツを足す」では、別のものに「リンゴとハチミツ」を足す以外に、単純に「リンゴ+ハチミツ」の合体という意味にも取れる。
この場合において、「足す」の方が「加える」に対して広い意味を持っていることがわかる。
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