炭素14法について

 そもそも恐竜などの化石の年代をどのようにして計算しているのか、というのはなかなか謎です。高校でも教える「炭素14法」は年代測定法としてはベタなのですが、これは恐竜ほど古い岩石を測定するには役不足です。
 では地質年代はどのように調べているのか?今回は群馬県立自然史博物館の学芸員さんにかつて直接尋ねてご回答いただいた情報をもとに、年代測定法についてまとめます。

 まず、昨日学校で買った最後の本、久保謙一著『日常で役に立つ物理学』(誠文堂新光社、2005年)にも2ページほど載っている、「炭素14法」から考えていきます。

 「炭素14法」のポイント
①炭素には放射性同位体がある。

②炭素のほとんどは安定した炭素12である。

③だが炭素全体の1兆分の1の割合で不安定な炭素14が存在する。

④炭素14は5730年たつと、その「原子の総数の約半分」は、ベータ線を出して安定した窒素に変わる。これを「半減期」と言う。

⑤生き物が生きている時は食事や呼吸、光合成などによって、炭素12も炭素14も一定の割合で取り込まれるが、生物が死ぬと炭素のやり取りはなくなる。

⑥生物の死骸の中の炭素14は、徐々に窒素に変わっていく。

⑦つまり考古物の「炭素14が炭素12に占める割合」を調べれば、その生物(=書物)がいつ生命活動を終えたかの大体の指標となる。

 ここまでは、いいと思います。よって炭素14は半減期が約6000年とけっこう早いので、10万年程度でほとんどの炭素14は窒素に変わってしまい、それ以前のものは時代がよく分かりません。
 炭素14法ではジュラ紀にいた恐竜の化石はこれでは分からないのです。ではどうすればいいか?これは炭素よりも半減期の長い元素を調べればよいと言います。

 と、そこに行く前に炭素14法のアキレス腱を一つ。この方法にはある前提があって、それは「過去の地球の炭素14が炭素12に占める割合も、現在と同じである」というものです。これが崩れると計算の初期値が意味をなさなくなり、いくら途中の計算が正しくても、答えは使えません。

 福井県で見つかった10万年前の湖底を地質調査した、名古屋大学の北川浩之さんは、今から3万1000年前の大気は、炭素14の相対的な割合が現在よりも1.6倍も多かったことを発表しました。この発見は、万年スケールで炭素14法を使用すると、測定結果に5000年の誤差を生じさせてしまう可能性を示唆し、名古屋大学は「早く!お手軽に!」をモットーに、さらに精度の高い年代測定法(CHIME測定法)を研究しています。
 また炭素14法の精度を上げて、過去の大気や岩石における炭素の流動を調べるグループ(タンデトロン測定グループ)も名古屋大学には存在し、炭素14法の誤差の問題に対する異なるアプローチを同じ大学で研究しているのは、とても興味深いけど・・・仲いいのかな。
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