西部邁さんについて

 思想家の西部邁さんが今月21日に自殺されたらしい。あの人の本は何冊か持っていて、どれも面白かっただけに非常にショックで残念だけど、なんというか最後まであの人らしかったなとも思う。
 西部さんの本で勉強になったのは、経済学を学び、それに辟易とした経験からか、人間の合理性とか思弁的なものってけっこう的はずれなことが多くて、ぶっちゃけあてにならない、だから過去の歴史に学び、その国が蓄積してきた伝統とか慣習と、現在突き当たっている問題とをコミットさせて、慎重に検討を重ねていく、それが保守的な態度なんだっていう。
 この人の本を初めて読んだのは、中学生か高校生の頃で、その時は浅田彰の本よくわからねー(今もよくわからんけど※読めるようにそもそも書いてない)みたいな感じで、もちろんエドマンド・バークや、ハーバート・サイモンとかも知らなかったんだけど、ああ、なるほどなって、保守派っていうのは過激な右翼の人とかとは違うんだって納得した記憶があります。
 
 で、この人の経歴ってかなり波乱万丈で、若い頃は左翼運動に傾倒してて、そのスネの傷をなんか生涯引きずっていたような気がする。
 そこが、西部さんの素直さというか誠実さというか、魅力の一つだと私は思ってた。ネットとかだとすごいファナティックにAの思想をうそぶいてたやつが、来年になると何があったのか、コロッとBの思想をやっぱりファナティックにうそぶいてたりするけど、その、転向するのは別に悪かないんだけど、どういういきさつでそうなったのかだったり、なんか気まずいな、後ろめたいなっていう部分がないと絶対ダメだっていうのはある。ダメだというか、普通の人ならそれは当然あるわけで、そこを居直られちゃうと、ああすげえなっていうか。実は表面的に熱狂してただけじゃんっていうか。にわかじゃんっていうか。
 そういう後ろめたさだったり、ここまでオレは言っちゃうけど、実はそれって天に唾する感じになっちゃってないかなあとか、そういうメタな、内省的な部分があるかどうかって、私は人を判断する大きな基準になってるんだよね。そう言う人っていうのは、たいてい排他的じゃないから。言い返せないような立場の人の事情も察することができるから。
 で、西部さんはその魅力がとうとうアダとなったかはわからないけど、自決にまで至ってしまったという。
 誰しもそれくらいの失敗はあるんだけど、やっぱり純粋だったんだなあって。

 日本の頭脳の損失。ご冥福をお祈りします。
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