ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 新聞記事は歴史書の最初の草稿だ。いい表現よね。

 ナドレックさん激オシ映画。傑作・・・!これは今見るべき映画!
 とにかく、メリル・ストリープの社主が凄いカッコいい!政府(主にニクソン)の圧力と同時に、当時の重苦しい男性社会と戦う映画になってるんだな。パターナリズムの怖さというか。
 偉そうにする男どもにいじめられ続けてきた女性が最後にクリティカルアタックする爽快さ、というか。もちろん実話なんだけど、ちゃんとエンターテイメントになってるのが、毎度すごいよね。
 この映画ってすごい突貫工事で作ったらしいんだけど、日米問わず本当にタイムリーだし(多くは言うまい)、かといって一過性なものじゃなくて普遍的なメッセージだし。すごい。
 新聞の輪転機にも萌える映画!必見だ・・・!

 この映画見てつくづく思ったのは、ニクソン閣下に限らず自分個人に対する批判や疑問を、国家への侮辱だと卑劣にスライドさせるヤツは権力者に限らずわりといる(特に男にいる)ってことね。同一化というか。
 私の経験上でも、だいたいろくでもない奴って身の丈以上のでかいことをうそぶくんだよ。
①この町が世界を変えるとか言う町会議員(世界がその町を相手にするとは思えない)。
②生徒のためとか言う教師(そういう教師はだいたい生徒に嫌われている)。
③外来種を駆逐して生態系を保全しろとか言う生き物マニア(人間が嫌いなだけ)。
 だから、あれだ。こういうことは自分で自分に言い聞かせればいいわけで、相手に強いることじゃないじゃん。強いている時点で、だいたい胡散臭いね。

 この問題ってさ、アメリカ史だとけっこう有名な話でさ。英米文学の記事と、かぶるんだけど、東大の佐々木毅先生の『民主主義という不思議な仕組み』(132ページから)にすごいわかりやすくまとめてあったから、ちょっと長いけど引用したい。

 アメリカのマサチューセッツ州で、ヘンリー・デイヴィット・ソローというひとりの文筆家が、奴隷制反対などを楯にして、人頭税の納税拒否をいわば主義として宣言して投獄されました。(略)
 この市民の服従拒否(civil disobedience)という発想は、やがて政治と向かい合う一つの態度として注目を集めるようになります。(略)
 まず、彼は無政府主義者ではなく、政府は人間社会に必要な便宜を提供する機械、メカニズムであると考えています。そして、政府がこの便宜提供の役割に自分を限定し、個人を最高の価値のあるものとして、敬意をもって取り扱うようになることを自らの理想としています。問題は、政府の動向を支配する多数者が正、不正の判断にまで踏み込み、個人の良心に反することを法律という形にし、それに対する服従を市民の義務として求める場合です。(略)
 ここに、良心と政治の確執と緊張は避けられないことになります。(略)
 「自由の避難所」を謳い文句にした国家が、実際には国民の六分の一が奴隷であり、全土が軍隊の下に屈従させられている状況では、「誠実な人間が反逆し、革命を起こすべきとき」であると、ソローは断言します。一七七五年の独立の時には誰しもが革命のときであると語りましたが、ソローの時代にはほとんどの者が「今は、そういう事態ではない」と言っていました。しかし、ソローによれば今こそそういう事態、まさに緊急の事態なのです。


 つまり、これこそが、後にガンジーやキング牧師に影響を与えた思想なんだけど、この映画でも「報道の自由を守るには報道するしかない」ってスピ社会派映画の常連のトム・ハンクスが言ってて、これは、大統領や官僚は国民にとって油断ならない敵でしかない!!とか、そういうことを言いたいんじゃなくて、やっぱりシステムとして一線引かないとおっかないぞっていう話よ。
 多分さ、銭形のとっつぁんはルパンのこと好きだと思うんだよ。でも、泥棒となあなあになっちゃ公僕としてダメじゃん。

 だから、この映画を見て(・・・いるのだろうか?)、マスコミは国民のために頑張ってくれる安倍さんや政権の足を引っ張っているとか、ただのマスコミの自己満足なだけとか、そういう感想を持つ人もいるんだけどさ、それとこれとは話が違うんだよ。
 マスコミの書く事がくだらねえとか、低俗とか、ゴミとかそういう感想を持ったり、発信したりするのはいいんだよ(私もしばしば思うし)。しかし、私たちが意識的にならなければならないのは、だからといって報道の自由を権力者が一方的に制限しちゃうことが許されるならば、マスゴミ!とかSNSでツイートしている人たちの発言権すら奪われかねないという、もっとメタ的な問題がそこにはあるということなんだよ。

 つまり、ナショナリズムでも父権主義でも、逆に博愛主義とかグローバリズムとかでもいいけど、不特定多数が該当しうる大きな思想を論じるときは、そういった視点を持たないと、足をすくわれるというか。
 マスコミがダメだ!じゃなくて、実は○○新聞の何月何日のこの記者が書いた社説がムカついただけなんじゃないかっていう。
 よく、個別的なケースなのに、大人はみんな嘘つきだ!とか、言う人いるじゃん。でも本当は、その嫌な奴がたまたま大人だっただけで、一般化するんじゃねーよ小娘がって、私はソフトバンクのCMの女子高生に言いたい。
 ナイーブな奴が増えたのか、逆にナイーブな奴にも発言権が与えられたのかは、分からないけどね。

 ニクソンはクソだ。新聞社を潰したがってる。
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