『進化の存在証明』

 これ原題の『THE GREATEST SHOW ON EARTH(すごすぎる地球のショー)』より邦題『進化の存在証明』のほうが確かに内容にあってますね。
 とりあえず昨日短い第1章を読みました。

 いや~ぶちギレとるじゃないですか、ドーキンスさん。

 確かにスティーブン・J・グールドと双璧をなすアメリカでもっとも人気知名度のある生物学者ですが、文面の印象は大きく違いますね。
 ここまで喧嘩腰の文章も『ゴーマニズム宣言』以来ですよ。副題もつけちゃってこの本のタイトルは『進化の存在証明―怒りのドーキンス―』で決まりですね!

 これを読むに進化論を取り巻く状況は日本とアメリカでは大きく違う事が解ります。それは主に教育現場においてなのですが、日本もアメリカも進化論をそこまで深く教えないのは同じだと思います。
 私は、中学校の教育実習で理科の授業を観察したのですが、あの教え方じゃあ教師の方だって進化を正確に理解しているかどうか怪しいし、子どもにしたって『ポケットモンスター』などの悪影響で進化を誤解しているような気もします(今はそうでもない?)。
 まあ、その点で言えば日本もアメリカも同じなのですが、大きく違う点が進化論を否定する抵抗勢力が存在すると言うこと。
 それが創造論者、いわゆるインテリジェントデザイン論なのですが、私が思うにアメリカだって信仰の自由があるのだから、キリスト教信者の人が創造論を信じるのは別にいいと思うんですよ。しかし「そんな甘い考えは悪しき価値相対主義だ!」とドーキンスは声高にそのような意見もボロッカスに批判します。

 これを読んで、私は進化論を信じてはいるものの「すごいな~宗教に徹底的にケンカ売るなんて、いくらなんでも飛ばし過ぎだろドーキンス・・・!」と思ったのですが、この過激なドーキンスの主張の理由は、おそらく進化論支持者が大人しいと、創造論主義者がアメリカから進化論の正当性を駆逐するほど、創造論の拡大運動を進めているからなんじゃないか?と思うわけです。
 つまりこれは科学の一大危機、進化論VS創造論の戦争であって、その戦いにおいてアメリカは日本より科学雑誌が多いんじゃないかな(啓蒙しなきゃ敵にやられちゃうから)と改めて竹内薫先生の話を思い出しました。

 世論調査は、あらゆる生物が6000年前のたった一週間に出現したと信じる創造論者が多いことを示している。

 この本はそんな一文から始まります。

 「進化はあくまでも“論”、仮説であって真実ではない。大体実際に実験や観察ができないじゃないか」という批判に対して、ドーキンスは人間の先入観によって客観的な観察だってやすやすと崩壊することを、ダニエル・サイモンズ教授の心理実験によって説明します。
 この実験は、まあ、よくあるっちゃよくある奴で、一言で言えば少し前に流行った「アハ体験」です。その映像をずっと見せているのに、その映像にあるものに気付けない…
 サイモンズ教授の実験では、あるバスケットボールのビデオを被験者に見せるのですが、「映像中に何回パスが回ったか調べてください」と課題があらかじめ与えられます。
 そして被験者は一生懸命パスを追うのですが、ビデオが終わったら「では、このビデオにゴリラが映っていたのに気づいた人はいますか?」という質問をすると、バスケットプレーヤーの輪の真ん中に堂々といて、胸を挑発的に叩いていたゴリラに気付いた人はほとんどいなかったのだと言います。
 この話は勿論「進化論は実験はできない(長い時間がかかる)から真実だと言うのは言いすぎ」という反論に対する対応策に違いありません。

 つまり、時に、間接的な証拠に導き出される科学的推論は、直接的な観察にも勝る!と言う事であり、確かに進化による変化のほとんどは、ゆっくりすぎて一個人の目撃観察によっては確認できませんが、大陸移動説と同じく、それが起きた結果から導き出される「推測」(もしくは一つの仮説)が、後に「事実」に昇格することだって充分あり得ると言う事です。

 ドーキンスは「これから進化が疑いようのない事実であることを実証していくぜ、この野郎(かなり誇張してます)」と、自信満々のご様子。続きも楽しみです。
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