久々にちょっとお勉強の記事。東洋史ということで、中国史、インド史、イスラム史の中からローテーションで公務員試験に出題される範囲。
インド史の特徴
①超階級社会
生まれた階級は絶対で覆らない(カースト制度)。
多様な民族や文化に一体感を持たせるための工夫でもある。
②多宗教社会
特にヒンドゥー教VSイスラム勢力。
③近代はイギリスの植民地
カレーは英語でインドにそんな名前の料理はない。
インド史の大まかな流れ
1.マウリヤ朝(紀元前317年~紀元前180年)
2.クシャーナ朝(1~3世紀)
3.グプタ朝(320年頃~550年頃)
4.小国分立期(7世紀前半)
5.デリー=スルタン朝(1206~1526年)
6.ムガル帝国(1526~1858年)
7.イギリスによる支配(19~20世紀)
8.独立(1947年~)
1.古代インド
インドのエリアの大きさはヨーロッパとほぼ一緒。
北はヒマラヤ山脈、南は海という地理的に孤立したエリアだが、先史時代から小規模な民族移動が繰り返された結果、さまざまな民族が定住するようになった。
インダス文明(紀元前2300~紀元前1700年)
インダス川流域にあった青銅器時代の都市文明。
巨大な都市遺跡は、中流のハラッパーと下流のモヘンジョ=ダロ。
碁盤目状に舗装された道路や、沐浴用の大浴場、下水道など同時代で最も進んだ合理的な都市計画に基づいて建設されていた。
インダス文明の滅亡
ドラヴィダ族の文字だとされるインダス文字は現在も解読できていない
ので、ここまで進んだ都市文明がなぜ滅びてしまったかは不明である。
アーリア人移住説は、滅亡時期とアーリア人の移住時期にかなりタイムラグがあるので現在は有力ではない。
バラモン教
司祭者(バラモン)を頂点とする古代インドの宗教。
雷神インドラや火神アグニなどの讃歌を集めたヴェーダを経典とし階級制度であるヴァルナ制度はカースト制度の原型になった。
ガウタマ=シッダールタ(仏陀)
紀元前566年~紀元前486年。
シャカ族(クシャトリヤ階級)の王子様で29歳で出家。
人生は苦でありそれを克服する道を求め悟りを開き、仏教を開く。
極端な苦行と快楽を否定し煩悩を捨てることで解脱(霊魂の解放)が達成できるとした。
三蔵
仏陀の死後100年後、仏教の宗派が分裂した際、自派の正当性を主張するために編集された経典。
これをインドに取りに行く話が『西遊記』である。
マウリヤ朝(紀元前317年~紀元前180年)
ガンジス川とインダス川の両大河にまたがる史上初の統一帝国。
古代ギリシャ勢力を一掃したチャンドラグプタが興す。
アショーカ王
マウリヤ朝第三代の王。
彼の時代でマウリヤ朝は全盛期。
インド半島東岸を征服した際、その惨状を見て、仏教に帰依し武力を放棄。
万人が守るべき理法(ダルマ)による統治を理想とし、道路や病院といった社会インフラを整備した。
アショーカ王が亡くなるとマウリヤ朝は衰退した。
2.ヒンドゥー教形成期
ヒンドゥー教とは、インド古来の民俗的な宗教を総括して西欧人が名づけたもので、明確な体系をもつ一宗教というより制度、風習などに対していう。
バラモン教およびその複雑な民間信仰を摂取して発展したため、明確な教祖や教義はない。
クシャーナ朝(1~3世紀)
イラン(ペルシャ)系のクシャーナ族が中央アジア~ガンジス川中流域を征服して興す。
2世紀のカニシカ王の時代が最盛期で支配エリアは後漢に接していた。
カニシカ王
カニシカ王はもともとゾロアスター教だったが、大乗仏教を篤く信仰した。
クシャーナ朝の貨幣には、仏像やギリシャ・ローマの神、ゾロアスター教、ヒンドゥー教の神が刻印されており、カニシカ王が他宗教に寛大な王だったことがわかる。
ガンダーラ美術
ガンダーラ地方で栄えたギリシャ風の仏教美術。
グプタ朝(320年頃~550年頃)
チャンドラグプタ1世(チャンドラグプタとは別人!)が北インドで興した。
チャンドラグプタ2世の時代が最盛期。
ヒンドゥー教の形成
『マヌ法典』
ヴァルナ制度の下で生活する人々の義務を定めた。
マヌは人類の始祖である聖人。
三位一体
以下の三大神は一体をなす。
①ブラフマー(存在)
宇宙、世界に実存、実在の場を与える。
②ヴィシュヌ(安定)
宇宙、世界の維持、慈悲、平安を司る。
③シヴァ(創造と破壊)
宇宙、世界を創造し、その寿命が尽きた時に破壊、破滅を司る。
芸術やダンスの神でもある。
ナーランダー僧院
仏教は隆盛を失いつつあったが研究は続けられており、その中心になった僧院。あの三蔵法師も留学!グプタ朝はインド古典文化の黄金時代だった。
アジャンター石窟寺院
純インド的な仏教美術が完成。
小国分立期(7世紀前半)
ヴァルダナ朝がインドを統一するが、王ハルシャの死後、王朝は崩壊して小国が分立した。
ハルシャ=ヴァルダナ
独裁的だったが善政を行った。唐の名君、太宗と使節を送りあう間柄でもあった。
3.イスラム王朝期
10世紀末アフガニスタンにイスラム教徒(ムスリム)のガズナ朝(トルコ系)ゴール朝(イラン系)が興り、インド侵攻を繰り返した。
最初は略奪だったが、やがてインドを永続的に支配するように・・・
デリー=スルタン朝(1206~1526年)
ゴール朝の将軍アイバクが興したインド史上初のイスラム王朝。
最初の奴隷王朝を含む5王朝はスルタン(権力者)の称号を与えられたため
首都のデリーと合わせてデリー=スルタン朝という。
ムスリム商人をはじめ経済活動が活発化し大量の貨幣が発行された。
ヒンドゥー教とイスラム教
ヒンドゥー教
多神教。偶像崇拝。牛を神聖視。
遺体は火葬して灰を川に流す
(輪廻転生)。
イスラム教
一神教。偶像禁止。豚を不浄視。
遺体は土葬する(復活)。
ムガル帝国(1526~1858年)
16世紀半ば、バーブルが北インドで興したイスラム王朝。
バーブルはモンゴル系でチンギス=ハンの血をひいていた。
アクバル
ムガル帝国の第三代皇帝。
ヒンドゥー教徒の王女を妻に迎え、ヒンドゥー教徒を高官や将軍にして、イスラムとヒンドゥーの融和を図り中央集権体制を整えた。
シャー=ジャハーン
第5代皇帝。彼の時代がムガル帝国最盛期(17~18世紀)となる。
インド=イスラーム文化を発展。代表例はタージ=マハル。
シーク教
ナーナクによって開かれる。
ヒンドゥー教をイスラム的(一神教・偶像禁止)に否定しているのが特徴。
ムガル帝国に迫害されたが現在もインド人口の2%(2200万人)がシーク教徒。
アウラングゼーブ
第6代皇帝。
アクバルが廃止したイスラム教徒以外に対する人頭税を復活させる。
これによりヒンドゥー教徒が反乱。彼が死ぬとムガル帝国は崩壊した。
4.英国植民地期
インドは産業革命を経たイギリスの原料生産地および商品市場として支配されるようになる。
イギリス東インド会社
オランダのアジア貿易成功を受けて1600年に設立。
先行したオランダ東インド会社に比べてきわめて弱体で、アンボイナ虐殺事件(アンボイナ島にあるイギリス東インド会社商館をオランダが襲撃し、商館員を全員殺害した事件)によって、オランダにインドネシアから追い出され、やむなくインドを拠点とした。
プラッシーの戦い(1757年)
ムガル帝国の衰退に乗じてインドを手に入れようとしたイギリスとフランスの戦い。
勝利したイギリス東インド会社軍は、貿易商社から植民地統治機構に変化していく。
第二次英仏百年戦争?
18世紀のイギリスとフランスはとにかく仲が悪く、ヨーロッパでは7年戦争、アメリカではフレンチ=インディアン戦争、南インドではカルナティック戦争を同時に行っていました。
セポイの反乱(インド大反乱)(1857年)
セポイとは東インド会社のインド人傭兵。
会社のためにせっせとインドを侵略したが、白人将校との待遇の差に
不満を抱き、ムガル帝国再興のクーデターを起こす。
2年後に鎮圧され、3世紀続いたムガル帝国は完全に滅亡した。
インド帝国樹立
セポイの反乱を受けて東インド会社は解散。
インドはイギリス政府の直接の支配下になった。
1877年にはヴィクトリア女王がインド皇帝を兼任することを宣言し、インドは完全に植民地になった。
5.民族独立期
19世紀後半になると都市部のインド人は、英語で近代的な教育を受け、弁護士やジャーナリスト教師などの知識人も増加。
当初は親英的でしたが、やがて民族独立を求めるようになる。
インド統治法(1919年)
イスラム教に有利な選挙制度が盛り込まれた法律。
イギリスはインド人同士を宗教対立させて、民族運動の波を逸らせようとたくらんだ。
また、地方政治に関しては、インド人の自治をある程度認めたが(中央政府はダメ)、そもそもイギリスは1917年にインドの自治を全面的に認めると約束していたので、全インド人は絶望した。
ローラット法(1919年)
インド統治法と同時に制定。
逮捕状なしに逮捕し、裁判なしに投獄できる権限をインド総督に与えた恐ろしい法律。
当然インド人議員は全員反対に回ったが、イギリス政府によって強引に可決させられてしまう。
ガンジー
もともとは弁護士。ローラット法可決に強い憤りを感じ、非暴力不服従の反英独立運動を開始する。
糸紡ぎ車
ガンジーの運動のシンボル。
英国製品を買わず、国産製品を使用することで、独立を勝ち取ろうとした。
パキスタンと分離独立
第二次世界大戦が終わり、戦争で疲弊しインドに借金を負ったイギリスは1947年にインドの独立を認める。
ヒンドゥー教徒を主体としたインドとイスラム教を主体としたパキスタンが分裂して独立しました。
ガンジーの死
分離独立後インドにいるイスラム教徒を擁護し、ヒンドゥー教とイスラム教
が手を取り合う国家を目指したガンジーは、ヒンドゥー教の過激派に暗殺されてしまう。
カシミール地方
ムスリム住民が多いエリア。
印パ中にまたがっているので、現在も対立が続いている。
ネルー
インドの初代首相。インド憲法を発布。
ヒンドゥー教を国教とせず、カースト制による差別も禁止した。
民主主義を堅持し、彼が亡くなるまで政権交代は起こらなかったが、現在も差別は残っており(低カーストに生まれた人が自殺するなど)、地位向上政策が行われている。
日本の子どもたちのために上野動物園にアジアゾウをプレゼントした人物でもある。
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