進化には方向性はあるが定向進化はない

 そもそも「進化」という考え方を始めて唱えたのは『動物哲学』の著者ラマルクだと言われていますが、彼は進化のメカニズムを「キリンの首は、高い所の餌を食べるために何世代にもわたって努力した結果伸びたのだ」と、かなり大雑把に考えてしまいました。

 一世代内の後天的な努力が、その子孫に受け継がれる事を「獲得形質の遺伝」といいます。これは結論から言って間違いで、たとえば「オレは鳥のように大空に羽ばたきてえんだ」という人が常に腕をバタバタ振ってたら、その腕が翼に変わっていくことや、因数分解の解き方を覚えた人の子どもが、生まれた時から因数分解の解き方を知っているような事が無いように、否定されています。
 この獲得形質の遺伝は、その後ワイズマンによって反証されましたが、ラマルクを責めるのもちょっと可哀そうです。何しろ当時はメンデルの遺伝の法則が存在していなかったからです。
 実はダーウィンも、メンデルの遺伝の法則はギリギリ知らずに、自然選択説を考えたのですが、あの合理的な説を遺伝子の概念無しで考えるとは、やはりあの人はただ者じゃありません(メンデルがダーウィンに自身の遺伝の法則を手紙で郵送したのだけど、ダーウィンは多忙で読めなかったという話もあります)。よってラマルクが劣っていたのでは決してありません。ダーウィンがすごすぎたのです。

 ラマルク説のパワーアップ版に、アイマーや化石戦争のエドワード・コープが唱えた「定向進化説」というものがあります。
 定向進化説とは主に古生物学者の支持を取り付けた説で、よく例に持ち出されるのがウマの脚です。化石で見つかる原始的なウマは、体が小さく脚は短く、足の指は五本あります。しかしウマの仲間は、進化していくにつれ体を大きくし、脚を細く長くし、足の指を減らしていき、とうとう一本にしてしまいます。
 これは化石という証拠による純然たる事実です。そして、この“傾向”は「ウマが進化によって徐々に平原を速く走れるように進化した」ようにみえます。私も事実そうだったと思います。

 「つまり進化には定まった方向性がある。」これが定向進化説の考え方です。

 私は、現在の足の速いウマ(サラブレッドは人為的に作ったので除外します)の系譜を逆走すれば「平原を早く走るように」進化したことは確認できると思います。
 しかし定向進化説は「進化には定まった方向性がある」という結論がおかしいのです。この結論は「あとちょっとでいい線いってたのに惜しい」って感じの結論だと思います。
 「進化には方向性がある」ならいいと思います。定向進化説は、この進化の方向性を「定めてしまった」ので「これじゃラマルク説と一緒」と否定されたのです。

 この違いは微妙なように思えますが、実際には大きな違いです。定向進化説の大きなミスは、ラマルク説と同じく「進化のメカニズムの説明に、群集団や環境、捕食者などの外的環境の影響、つまり相互作用を排除してしまった」ところです。

 実際、足の速いウマが、集団内の足の遅い他のウマに比べて、捕食者に捕まる「確率」は低かったと思います。すると“結果として”多様な個体のいるウマの群れに占める、足の速いウマの遺伝子の割合は増えていきます。
 つまり外的環境との相互作用によって「進化の方向性」は形成されるのであって、ウマ自身に「脚がはやくなる傾向」が存在するわけではないのです。

 これは、クジャクの羽のように、あえて敵に目立つデザインを進化させてしまう「性淘汰説」にも適用できます。この場合、クジャクのオスの羽根のデザインは、異性にもてる「メリット」と、敵に見つかって食われる「デメリット」が秤にかけられ、「トレードオフ」の論理で決められるのです。
 ※正確には、オスのクジャクが主体的に決定しているのではなく、外的環境によって決定“されます”。つまり派手すぎて敵に食われる確率が高くなっても、食われる前に異性にめちゃくちゃモテて、子どもを作って子孫を残せる確率が高いのならば、生物的には「メリットがデメリットを上回った」と言えるのです。
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