『ラストパーティ』脚本④

転送エリアに続く廊下を歩く、ヨシヒコと湯浅。
湯浅「そもそもだが・・・どういった技術で人間を異世界に送っているのかね・・・」
ヨシヒコ「・・・量子テレポーテーションという言葉を聞いたことは?」
湯浅「ああ・・・全く新しい情報通信技術の一種だろう?
量子もつれを利用して、一切のタイムラグなしで情報を遠方に転送できる・・・」
ヨシヒコ「我々もある種の情報ですからね・・・マシンスペックさえあればなんでも転送できる・・・
実際、2003年にアメリカ軍はドローン兵器をイラクに転送していたそうです・・・
しかし、物体の転送は世界経済に与えるデメリットがメリットよりも大きいということで国際的に禁止された・・・」
湯浅「では、どうやって特許を・・・」
ヨシヒコ「実は禁止されたのは、この世界での量子転送なんです・・・」
湯浅「・・・?」
ヨシヒコ「10年前、ぼくは、量子テレポーテーションが、「コマキ・アミューズメントパス」というIDカードの暗号化技術に応用できると考えていた・・・
本社は、このアミュパスを使って、プレイヤーのプレイ履歴や課金額のデータを集め、分析し、さらに依存性の高いゲームを開発したかったわけですが、そこで絶対に防ぎたかったのが情報流出と、不正アクセスです。
この仕事は正直なにも楽しくなかったですけど・・・興味深い現象が起きた・・・
量子テレポーテーションの際に用いる周波数によって、アミュパスのデータが勝手に変わってしまったんです。」
湯浅「外部からのハッキングかね?」
ヨシヒコ「それは原理上ありえません。
しかし、現実問題としてデータが外部から干渉されたように書き換わってしまう・・・
わたしたちの開発チームは落胆しましたよ・・・
そして、とある実験を思いつきました・・・いつもデータが変わってしまう周波数を控えて、今度はメッセージを送ったんです。すると、地球上のどの言語とも異なる暗号文が送られてきた・・・」
湯浅「なるほど・・・異世界との量子転送は・・・」
ヨシヒコ「禁じられていない・・・すぐさま本社は特許を取ったってわけですね・・・
さあ、つきました・・・」
「マジックキングダム」と書かれたゲートの中に入ると、さらにトンネルの石段が続いている。



マジックキングダムの最終転送ルームに小田が入ってくる。
ヨシヒコ「君も同行してくれるのか?」
小田「私は臆病だから正直嫌なんですが・・・
泉さんが退職してから、最もマジックキングダムに入ったのはガイドのわたしなので・・・」
ヨシヒコ「現地の現在の様子は?」
小田「半年前のコマキ社によるキャッスルヴァニア侵攻を、ブリジッド王ライオンハーティドは、ガリア大陸の暗黒皇帝ハデス・モルドレッドによる奇襲攻撃だと決めつけ宣戦布告。
現在、レスター海峡を挟んで全面戦争が起きています。
皇帝ハデスは、この宣戦布告はブリジッド王が大陸領土を手中に収めたいがための、大義のないでっちあげだとして、先月大規模な報復攻撃に打って出ました。
特に、ブリジッド王国内の神都ハルティロードの大神官、イノストランケヴィア3世を捕囚し、大陸側のパーガトリーに教皇庁を強制移転したことは、信仰心の厚いブリジッド民の恐怖と怒りを買い、事態をさらに悪化させる結果になりました。」
首を振るヨシヒコ「開戦理由がうちの会社とはね・・・」
現地の地図を指さして小田。
小田「先月2日、姫川部長はキャッスルヴァニア地方のここ・・・ストレイシープ村のコンセッションで販売するポップコーンのフレーバーの最終確認のため現地入りしました。
キャッスルヴァニア地方をドリームワールドのメインエントランスに選んだ理由は、治安がそこそこ安定しており、野生モンスターの生息数も少なかったためですが、この時すでに皇帝ハデスはブリジッド領内に侵略的外来モンスターを3000頭もはなしており・・・
この平和な村はまっさきに魔物の餌食になりました。」
ヨシヒコ「保安部員は同行してなかったのか?」
小田「まさか戦争がはじまると思っていなかったので、軽武装で・・・
その混乱に乗じて姫川部長はさらわれてしまいました。」
ヨシヒコ「では、どの勢力が桃乃を誘拐したかはわからないのか・・・」
袖をめくって腕のブレスレットを見せる小田「手掛かりは、この入場パスです。
ここにバイタル測定器と発信機がついているので、これを頼りに何度か救助隊を送ったのですが・・・」
ヨシヒコ「つまり、桃乃はまだ生きていると。」
頷く小田。
ヨシヒコ「だいたい分かった。まずはその被害現場のストレイシープ村に向かおう。」
小田「あそこはもう崩壊してモンスターの巣ですが・・・」
ヨシヒコ「モンスターの種類は分るか?」
図鑑をめくる小田「ええと・・・キャプラ・メガロセラス・・・ホモ・オルニトゥス・・・
なんて読むんだ、これ・・・パラメシウム・ファンエヴァンドレイラス・・・?」
ヨシヒコ「ヘルゴートにハルピュイア・・・それに・・・グレート・スライム・・・こいつは珍しいな。」
小田「どれも危険な怪物です・・・」
ヨシヒコ「なんてことはない、ただのでかいヤギとハトとゾウリムシだ・・・
見た目が不気味なだけで、この種族は人間は襲わない。」
「安全第一!装備は常に最強装備にすること」と書かれた看板のある武器庫の方を指差して、小田「で・・では・・・武器は持っていかないんですか?」
ヨシヒコ「そんなものを持って行ったことは一度もないよ。」
小田「危険な世界だから閉鎖したんじゃないんですか?」
ヨシヒコ「“だから”だ。武装したところで我々には勝ち目はないのさ。」
腕にブレスレットをはめて、背広をはおうヨシヒコ。



コントロールルーム
結城「転送地点をMK42になさい・・・」
オペレータ「泉さんが指定したポイントと違いますが・・・」
結城「あの子、この私をぶったのよ!
会長にも殴られたことがないに・・・!
許せないわ・・・マジックキングダムでならず者の騎士にちょんぎられちゃえばいいわ。」
オペレータ「会長の娘さんの救出はどうするんです・・・!?」
結城「シャラップ言うとおりになさい・・・!
あんたたちの賞与の査定をしているのはこのあたくしよ!」



最終転送ゲートの前に立つヨシヒコと小田。
名刺入れを確認するヨシヒコ。
小田「・・・ホントにスーツで行くんですか?」
ヨシヒコ「どのみち、我々はエトランジュ(よそ者)・・・なら正装で尋ねるのが筋だろ?
冗談はさて置き・・・スーツほど機能的な防寒着はないのさ・・・
現地はもう秋になる・・・夜は冷えるぞ。」
オペレータ「現地に接続中・・・完了、ゲートを開放します・・・!」
アナウンス「勇者のみなさん、マジックキングダムへようこそ!
ここは剣と魔法の世界。エゼルバルト城に囚われたプリンセスを仲間と共に救出しましょう!」
微笑む小田「この声、あたしなんです。」
腕時計に目をやるヨシヒコ「滞在時間は20分だ。
現地は戦時中・・・ストレイシープ村を探索したらすぐに引き返そう。」
小田「了解です。」
ゲートが開き出すと、転送エリアに日が差し込む。
心地よい風と木漏れ日、そして小鳥のさえずりが聞こえる。
ゲートの向こうに足を踏み入れる2人。
アナウンス「さあ、スリルとロマンスいっぱいの大冒険の始まりです!」



コントロールルームに戻ってくる湯浅
オペレータ「泉さんら2名がマジックキングダムに転送されました。」
結城「専務のお気に入りの泉ちゃんはうまくやるかしら・・・」
湯浅「含みを持たせるじゃないか・・・
行ってしまったら最後、こちらから現地の様子はわからない・・・祈ろう。」



ドリームワールド
キャッスルヴァニア地方ホーン平原
のどかな草原を歩くヨシヒコと小田。
ヨシヒコの持つポータブルセンサーを見て小田
「それはなんなんですか、泉さん。」
ヨシヒコ「これはコンピテンシーリーダー・・・
こうやって人にかざすと、その人材の経験やスキル、強みや積極性が読み取れる。
人事採用の最終兵器さ・・・」
小田「ほえ・・・」
そう言うと、小田にコンピテンシーリーダーを当てる。
ヨシヒコ「小田順子・・・20歳・・・本名は響琴音・・・きみ、本名の方が芸名っぽいな。」
小田「どういう原理なんですか??」
ヨシヒコ「ドリームワールドのスタッフの名簿データを入れているだけさ・・・
もともと子役で16歳で声優デビュー・・・
メルヘンが好きで夢見がちな性格・・・
記憶力に優れ、アニメの台本の他、異世界の言語も数日で習得・・・
ほう、これはすごいスキルだ。」
小田「へへ、褒められちゃった。
私の夢は、この世界で白馬の騎士様の玉の輿に乗ることですから。
言語習得は古魔族語からエスカイヤ階級のアクセントまでばっちりです。」
自分が作った機械を見つめてヨシヒコ「・・・けっこう正確だな、これ。
・・・で、ストレイシープ村はどこだ?」
小田「あれれ・・・そろそろ目印の水車小屋が見えるはずですが、おかしいな・・・転送位置がずれちゃったのかも・・・」

その時、遠くの丘から馬に乗った騎士が現れる。
ヨシヒコ「君の花婿が来たぞ。」
感動する小田「うわ、甲冑騎士って初めて見ました・・・!」
ヨシヒコ「つまり、非常時ってことだな・・・あれはどっちの勢力だ?」
双眼鏡を取り出す小田「鎧の紋章が小さくて・・・」
すると、小田を抱きしめるヨシヒコ。
ドキっとする小田「泉さん・・・?」
ヨシヒコ「しっ!!」

大地が振動する。
ヨシヒコ「ブリジッドだ・・・旗を見ろ・・・」
小田「へ?」
丘の向こうから軍旗が見え隠れする。
しばらくすると丘の向こうから騎馬戦士の大群がこちらに押し寄せてくる。
ヨシヒコ「こっちに来るぞ・・・!まずい・・・!!」
逃げ出そうとすると、向こう側からはガリア帝国の重装歩兵軍団が突進してくる。
ガリア帝国は調教された巨大なヤギにカタパルト(投石器)などの攻城兵器をひかせている。
小田「挟まれました・・・!」

ブリジッド騎士「カタパルトの射程まで要塞に接近させるな!ここで撃破する!!」
ガリア帝国兵士「ヘルゴートを5頭放て!!愚かな騎兵を蹂躙しろ!!」

すると、2人の方に矢の雨が降ってくる。
小田を押し倒すヨシヒコ「危ない!!」
小田の盾になるように彼女にのしかかる。付近の地面にドスドスと矢が突き刺さる。
ヨシヒコ「だ・・・だいじょうぶか小田さん!?」
見ると、小田の肩に矢が突き刺さっている。
泣き叫ぶ小田「あああ・・・!痛い!!」
ヨシヒコ「急所は外れてる・・・!」
小田「熱い熱い・・・体が溶けちゃう・・・!」
ヨシヒコ(・・・マジックアローか?)
苦しさのあまりに、ここから逃げ出そうと体を起こしてしまう。
小田「王子様、助けて・・・!!」
ヨシヒコ「バカ!頭を上げるな・・・」
すると、ブリジットの騎士がすれ違いざまに、小田の体を真っ二つにしてしまう。
宙を舞う、小田の首。
血を吹き出し、地面に倒れる胴体。
その直後、ガリア軍のヘルゴートが突進し、小田の死体を踏んづけてぺちゃんこにしてしまう。
一瞬で跡形もなく消えてしまった小田順子。
頭を抱えて丸くなるヨシヒコのすぐそばでぶつかり合う両軍。
騎士「喧嘩上等!やってやらあ!」
重装歩兵「ガリア軍なめんなよ!!ぶち殺す!!」
戦に巻き込まれないように、戦場を転がるヨシヒコ。

ガリア兵「隊長!カタパルト行けます!」
ガリア隊長「目標マイヤー砦第一隔壁!撃てえ!!」
カタパルトが回転し、燃えさかる巨石を砦に向かって放つ。
暴走したヘルゴートの第一陣は、城門に突進し突き破ろうとする。



ヨシヒコは戦場を離れて斜面を降り、草むらに飛び込む。
ふらふらと立ち上がって、戦場の様子を振り返る。
爆発音がとどろき、砦のあちこちで火の手が上がる。
息を整えるヨシヒコ「あいつ・・・わざと戦場のど真ん中に転送しやがった・・・!!」
すると、ヨシヒコの隣に、若く美しい女性の顔が現れる。
ヨシヒコ「・・・小田さん??」
しかし、よく見ると、若い人間の女性なのは上半身だけで、体のほとんどは巨大な怪鳥になっている怪物が、ヨシヒコに顔を近づけていたのだ。
肝を潰すヨシヒコ「うわああああ!!」
怪物は、ヨシヒコとともに草むらに転がってきた小田の死体に群がり、死肉をあさり出す。
ヨシヒコ「あ・・・あっちいけ!!」
怪鳥「チョーダイ。チョーダイ?」
ヨシヒコ「そんな言葉ばっかり覚えやがる!!やめろ!
その人はお前らの餌じゃない!!」
埒があかないので、石を怪鳥の羽にぶつけるヨシヒコ。
怪鳥は西の空に飛び去っていく。
ヨシヒコ「待てよ・・・ハルピュイアは壊滅した村の食料を狙う・・・
あいつを追えば・・・」
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