アリス・イン・ワンダーランド

 「面白い度☆ 好き度☆☆☆☆☆」

 最初に一言。アリス原作ファンお断り!

 ディズニーがルイス・キャロルの不条理ギャグ(←私の個人的主観)『不思議の国のアリス』をアニメ映画化したのが1951年。それから時は流れて59年。『アリス・イン・ワンダーランド』はそんな『不思議の国のアリス』の続編的作品ですが、ルイス・キャロルの原作の続編ではないようです。

 そもそもこの脚本書いた奴誰だ~!?ひどい!ひどすぎるぞ、この脚本!正直ベタと言うか、単調で、カタルシス感ゼロ。・・・というか『不思議の国のアリス』をバトルアクション映画にするなんて・・・絶対本書いた人原作読んでないなw。
 いや、原作を別に踏まえなくても面白ければいいんです。ポール・バーホーベン監督はハインラインのSF『宇宙の戦士』を読まずに『スターシップ・トゥルーパーズ』を制作し、映画史に残る(?)B級大作映画にしてしまいました。
 しかしこれは・・・

 私はティム・バートン監督版の『バットマン』はあの『ダークナイト』よりも好きで、あのブラックな世界観がバットマンにあっていたと思うんです。
 で、宣伝会社の人が頑張ってこの映画のキャッチコピーとかCM編集している番組を見て「今度のアリスは戦います」とか言ってて、ちょっと嫌な予感がしたのですが、「ティムバートン版バットマン」は好きなので、わずかな希望を持って映画館に行ったんです。
 で、見事に希望は打ち砕かれた。と。

 いや、文学作品なんてお客さんはどう楽しんでもいいとは思うんですけど(アリスシリーズは宮崎アニメよりもずっと高度な破綻をしているし。特に『スナーク狩り』)、それは作り手が好き勝手にやっていいってことにはならない!というのが私のモットーなので、ああいう話をやりたいなら、アリスじゃない方がもっと、血しぶき、手足飛ぶ激しいバトルが描けたと思う。
 私が思うにゴスロリの人とかはアリスのイメージだけをとって、勝手にアリスをダークメルヘンだと解釈していますが(私も当時の英国の形式主義を風刺した不条理ギャグと勝手に解釈してますが)、まさにそんな表面だけのイメージのみで構築された映画だったな、と。

 で、物語ははっきりいって原作以下の以下だと思うんですけど、世界観のイメージ、映像の方も原作以上に暗い・・・!怖い・・・!さすがティム・バートン・・・!ワンダーランドをゴッサムシティにしちゃってます。
 じゃあ、キャラクターはどうなのか!?性格と言う意味でのキャラが立っているキャラクターはあまりいませんでしたが、デザインでカッコいいのはいました。
 ドードー鳥とマーチ・ヘア、そして特にジャバウォックは原作のジョン・テニエルの挿絵を踏襲しつつも、格好良くデザインしてあって見事の一言!

 「あんなドラゴン、アリスにいるんかい。勝手に映画で作っただろ」と言う人もいますが、ジャバウォックは『鏡の国のアリス』の「ジャバウォックの詩」(映画の作中いかれ帽子屋が口ずさんだやつです)という歌の“歌詞だけ”に出てくる怪物です。
 「ジャバウォックの詩」の、息子が剣を振り上げジャバウォックと戦っている挿絵は、当初『鏡の国のアリス』の表紙に使われる予定だったのですが、テニエルが描いたジャバウォックの造形があまりに恐ろしかったので「これを最初に見せられたら子どもが怖がる」と表紙を没になった経緯もあります。
 あと映画は恐竜みたかったですけど、テニエルのジャバウォックの挿絵は、もう少し虫やコウモリが入っている不気味なもので、さらにそんな気持ち悪い怪物なのになぜか靴とチョッキを身につけています。
 そしてあの映画はストーリー上、アリスがジャバウォックの首を取らなきゃいけなかったので意図的に「ジャバウォックの詩」の「ジャバウォックに心せよ息子」という一節が抜かれていました。

 登場が意外だったのが「ジャバウォックの詩」に出てくる怪物三強(私が勝手に呼んでるだけですが)です。それはジャバウォックとジャブジャブ鳥、そしてバンダ―スナッチなのですが、実はジャブジャブ鳥とバンダ―スナッチは私が知る限りテニエルは挿絵を描いておらず、文章から推測するしかありません。
 ジャブジャブ鳥はおそらく、鳥と言っているのでまあ・・・鳥なのでしょうが、問題はバンダ―スナッチ。名前から全く想像できません。
 バンダ―スナッチの姿における有力はヒントは『スナーク狩り』にあります。『スナーク狩り』はちょっとどんな話か簡単には説明しづらい(ようはめちゃくちゃ)物語なのですが、「スナーク」という動物なのかすら良く分からない「存在」を狩りに行く一団のお話で、こずるい銀行マンがバンダ―スナッチの餌食になる描写があります。
 バンダースナッチは命乞いをする銀行マンに構わず「首を伸ばして」顎で銀行マンを「つつき」いかれさせてしまいます(リーダーのベルマン曰く「もうこいつは使い物にならん!」)。
 これらの僅かな証言をふまえると・・・首の長いアリクイ、もしくはツチブタを私は勝手にイメージしていたので(顎でつつくから)、あんな凶暴な野獣になっていて唖然。
 あのバンダ―スナッチは人を喰い殺しちゃいますって・・・!奴は人間をいかれさせる別の意味で恐ろしい動物なんです。

 そういえば、この映画で感じたのが赤の女王の虐殺の直接的な描写。『不思議の国のアリス』を読めばわかるように、ハートの女王は「首をはねよ!」と言ってもそれは全部「フリ」というグリフォンのセリフ(このキャラもかっこいいのになぜか登場が見送られた)があります。
 あの映画ははっきりいって子どもが楽しむコメディをシリアスものにしていて、やっぱり無理があります。
 なにより、あの世界は行ってみたくない・・・!楽しそうじゃない・・・!!
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