ダ・ヴィンチ・コード

 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 意外と手堅かった(?)芸術&歴史ガジェット。

 私は大学で美術教育を専攻したのですが、この『ダ・ヴィンチ・コード』がブームの時は「最後の晩餐に隠された驚愕の真実・・・!とか煽ってるけど、どうせトンデモ説だろ」と見もせずに馬鹿にして(流行っているものが嫌いなあまのじゃく野郎)、大学で美術史の専門家である團先生に「あれって専門家から見てどうなんですか?」と聞いたら、何も言わず苦笑いだったので、これでスルーが決定づけられました。
 しかし今日テレビで初めてこの映画を見て、先生の苦笑いの意味が解った様な気がします。それはこの映画の解釈がトンデモだからではなく、けっこうありがちな仮説の一つだから、専門家からしてみれば「別に何も新しい話じゃないだろ」ってことだったんだな、と(実際はどう思っていたか解りませんが。多くを語らない先生だったので)。
 こういう話が好きじゃないと、詳しい人にとってはいくらありがちな説でも一般人は知りませんからね。

 で、この映画・・・やっぱり小説向けの話だと思う。もしくは浦沢直樹さんの『MASTER KEATON』の大長編。謎解きの際に語られる歴史ウンチクが、けっこう矢継ぎ早で(しかも挿入される中世の映像が何気にすごくてそっちに気を取られちゃうw)、だんだんついていけなくなってきます。
 これ、世界史が好きな人、もしくは原作のファンじゃないと、チンプンカンプンだと思う。93年の『ジュラシックパーク』じゃないけど、「この映画が流行った時、ちゃんと筋を理解していた人ってどれくらいいたんだろう?」と気になります(失礼な・・・)。

 私はこの映画は「今見てラッキーだった」と思います。それは二年ほど前に中世の騎士を取り上げた漫画を描くことがあって、十字軍とか騎士団とか本を借りたり取り寄せたりして、いろいろ読んだんです(編集者の受けが「読者には難しい」とあまり良くなく、作品自体がお蔵入りになったので、もうほとんど忘れちゃいましたが・・・)。
 これを公開当時見てたら、もう確実に映画館で寝ていました!

 で、赤十字の原型を作り「病院(ホスピタル)騎士団」ともいわれる、かの有名な「聖ヨハネ騎士団」ではなく「テンプル騎士団」とかもってくるのはけっこうマニアックだと思います(そうでもない!?)。
 「テンプル騎士団」とは「聖ヨハネ騎士団」が慈善救護活動を主にこなしていたのに対して、十字軍遠征によるヨーロッパの治安の悪化を何とかするために設立された、巡礼者の警護団体です。
 初代総長はお爺さん騎士のユーグ・ド・バイアンさんで、友達と「ちょいとわしらも聖ヨハネ騎士団みたいなのやってひと花咲かせんか?」と1118年に始めたのですが、最初はとにかく貧乏で一頭の馬に二人乗るほどでした。
 しかし地道な活動が功を奏し、当時「戦争はしない」という建前を言っちゃったものの、正直ならず者の襲来や、異教徒の弾圧を何とかしたかったキリスト教会のニーズに収納家具のようにぴったり合っちゃったテンプル騎士団は、後に軍事活動も引き受けた聖ヨハネ騎士団と同じく大いに栄えることになります。
 重要なのは、彼ら騎士団の領地は国王管轄じゃなかったので税金を払う必要もなく、その資金はどんどん膨れ上がり、なんと銀行も営んでいたとか。

 この映画のもう一つの鍵となる組織が「シオン修道会」だと思うのですが、これは聖杯伝説に関係があるとされる秘密結社で、この秘密結社の総長(設立者ではない)をユーグ・ド・バイアンが務めていたことから、テンプル騎士団との関係が取りざたされています。
 ただ科学者のダ・ヴィンチやニュートンもシオン修道会の総長をやっていたのかどうかは私はよく分かりません。詳しくないです。

 こういった説明を映像とセリフで数分で説明するのは、観客に予備知識がない限り、おそらく不可能だと思うのですが、映画にしてはけっこう善戦してたんじゃないでしょうか。
 『ジュラシックパーク』のDNAと恐竜のクローンの再生方法の説明並に結構頑張ってた!DVDとかなら巻き戻せるしw。

 でもとにかく私はキリスト教に詳しくないので、ジャン・レノ演じる警部や、白髪の殺し屋(目が青いからアルビノではないと思う)、そして彼の親の僧侶(司教)の関係が整理できず、どことどこが揉めているのかこんがらがっちゃいました。
 ジャン・レノはあの司祭の何なの!?手下??でも「裏切ったな!」とか「利用された!」とかよく解らないし・・・ミステリィ・・・
 またイエス・キリストは神ではなく、単なるホモ・サピエンスだったという内容は、キリスト教の信者さんなら衝撃的なのかもしれませんが、私には心のさざ波すら来ませんでした。
 逆に「キリスト様の子孫21世紀に警官やっとるでw」とちょっと面白かったです。

 そもそも最初のルーブル美術館の館長が、死ぬ間際やたら手の込んだダイイングメッセージを残すシーンから突っ込みどころ満載だったんですけど(こんな暗号を血で描く余裕あるなら、病院行けたぞw)、歴史ミステリーとしてはなかなか良くできていて、映画版でこれならば原作はもっと凄いんだろうな、と思いました。
 私は美術にあまり興味がないので読まないと思いますが・・・(えええ!?)
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