福岡伸一さんの生物学③

 福岡先生の「動的平衡」が特にオリジナリティのあるものや新しい概念ではなく、生物学においては基礎中の基礎である概念であることを確認しました。
 しかしこれだけでは福岡先生の意見が間違っている!とは到底言えません。

 そこで二つ目です。究極的に間違っているのは福岡先生の進化論に対する考え方。これはちょっと見過ごしちゃいけないと思うんです。
 なんで他の学者は誰も指摘しないんだろう?やっぱり相手にするほどのことじゃないって思っているのでしょう。どう考えても科学の話じゃないから。

 プロの科学者がミスをしないと言うのは大間違いです。ここでノーベル賞を受賞された益川敏英先生の著書『学問、楽しくなくちゃ』から重要な話を引用したいと思います。

「ある時、物理学会で特別講演を頼まれたことがありました。少し数学的な話で、ぼく自身の中心的なテーマではなかったのですが、大事だから誰かが紹介する必要があるだろうというので、益川はそういうことを比較的ほいほいと話すからやらせなさいということで役目が回ってきたんです。
そしたらその講演が終わった後に、その分野の非常に数学的なところで仕事をされている先生が、「益川さん、益川さん」――「益川君」じゃなくて「益川さん」。私から見ると先輩の方ですよ。紳士なんですね――と声をかけてくれて、「さっきの話のあの部分は、もう一度、関係の論文を見直しておいた方がいいですよ」と言った。「あなたの話は間違っている」とは言わなかったんですが、そう言われたので後で調べてみたら、ぼくの引用の仕方が明らかに違ってました。(『学問、楽しくなくちゃ』34ページ)」


 この話で私は益川さんがより好きになりました。そして間違いをそっと指摘してくれた数学の先生も。科学においては間違っているところはやっぱり間違っている。間違いを素直に認める姿勢が科学者として大切なんだと思いました。

 で、福岡さんはおそらくドーキンスをはじめとする「遺伝子至上主義」が嫌いなんだと思います。それは福岡先生の講演でも伺えます。

 多くの生物は、実はできるだけサボろうとしている、できるだけ楽をしようとしています。ダーウィンやドーキンスには「利己的な遺伝子」という言明があります。「生命の目的は子孫を増やすこと。DNAは自己を複製することが目的であって、私たち個体はその乗り物にすぎない」という意味ですが、これとは違う遺伝子の側面を見ることができます。

遺伝子が自己を複製したい、私たち個体が子孫を残したいという行動はたくさん見受けられますが、実はそうではない生命の時間もたくさんあります。それは、できるだけサボろう、できるだけ楽をしようということ。

遺伝子は「自己を複製しろ」とだけ命令しているのではなく、むしろ個体に対して「自由であれ」と言っているようにも見えるのです。


 福岡先生のこの講演のソース:http://www.academyhills.com/note/opinion/tqe2it000004wiek.html

 科学者が最も注意しなければならないのがアナロジー(例えばなし)。
 このような説明をされてはあまりにドーキンスが不憫です。福岡先生はちゃんと『利己的な遺伝子』を読んだのでしょうか?
 私たちの体や意思は遺伝子によって「自己を複製しろ~」と操られている・・・そんなことドーキンスは言ってません。遺伝子に意思などないのです。遺伝子は「自分を複製しろ」とも「自由であれ」とも言っていません。命令もしていません。
 地球上に生物が出来たのは全て偶然。そこに神の意志も遺伝子の意思も関与はしてません。少なくとも科学的には・・・

 細胞膜の自己組織化を『生物と無生物のあいだ』で紹介してくれた福岡さんがこんな事を言うとはとても信じられない。

 そして福岡さんはさらに大きな誤りをこの講演で犯します。
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