福岡伸一さんの生物学⑤

 まとめます。

 動物などの進化は、私たちが想像できないほどの時間スケールで起きているため、なかなかそれが実際に起きていることを実感できません。
 私たちが見ることができるのは進化の「結果」だけ(本当はウィルスやバクテリアや昆虫の進化は見れるんだけど)。
 そして進化の歴史を見ずに、結果しか見ないから「なんでこんな複雑な動物が偶然できたのだろう?」と感じてしまうのです。

 しかし現在存在する全ての生物は38億年と言う途方もない時間をかけて進化してきました。7,80年ほどしか生きれない私たちにとって38億年はまさに永遠に等しい時間。
 逆に漸進的かつランダムな変化の蓄積で進化したからこそ、38億年もの莫大な時間を進化に費やすこととなり、私たちが奇跡の産物と勘違いしてしまうほどの「結果」を残せたのです。
 なにしろ生物の「基礎固め」にはなんと30億年かけているのですから。

 福岡先生がダーウィンの対抗馬にあげたラマルク。彼が進化論のパイオニアであることは事実です。ラマルクについてはかつて記事で取り上げたので、ここで深くは述べませんが、進化のメカニズムの説明・・・「用不用説」に関しては明らかに大雑把なものでした。
 それでも、あの時代に「生物の形が変わるんだ」と言ってくれたラマルクの功績は計り知れないでしょう。

 また福岡先生が憧れたという、今西錦司さんのダーウィニズムに対する問題定義も見事だったと思います。本当に適者生存はあるのか?いくら足が速いインパラでも運が悪ければこけて食われるのではないか?そして氏が提唱した「棲み分け」と「食い分け」は私が大好きな理論です。
 しかし今西さんも進化のメカニズムの説明「進化は起こるべき時にいちどきに種の個体全てに対して起きるんや!」はかなり強引で科学的ではなかったことも事実です。
 
 私が最も言いたいことは、福岡先生が「論理的に欠陥がある」とする、ダーウィニズムもドーキンスの利己的遺伝子説も、先生が『生物と無生物のあいだ』で提唱した「生物の美しさ」や「動的平衡(代謝)」をなんら否定してはいないということです。
 そして眼も樹木も貝殻も細胞膜もタンパク質も雪の結晶も、そこに第3者(神、妖精、遺伝子)の意志などありません。それらは単純な物理法則によって自己組織化しているだけです。

 さらに福岡先生の動的平衡は、生物集団(=進化)にも言えます。カオスとコスモスのちょうど境界「カオスの縁」で適応度を最もあげる生物集団「種」は、個体の生と死を繰り返して、更新率を上げ、事前にエラーを回避しています。
 そして進化論においても常に進化し続けなければ淘汰されるという「(ヘレナ・ボナム・カーターのw)赤の女王仮説」というものがちゃんとあります。
 そしてラマルクの獲得形質の遺伝は、この動的平衡の考え方に必要ありません。むしろ害悪です。
 親の獲得形質が子にも遺伝してしまうことこそ、柔軟性を損ない、遺伝子プール内のエラーを増大させ、エントロピーに追いつかれる(絶滅)要因になってしまうじゃないですか。
 世代交代で常に獲得形質はリセットされる。これは体内のタンパク質を自ら壊し、リセットする福岡先生の考えと何が違うのか。

 だから福岡さんのダーウィニズム批判の根拠はいまいち納得が出来ないのです。
 繰り返しになりますが、福岡さんは影響力のある学者なのだから、定説を覆すような事を言って、世間の生物学に関する認識をひっ掻きまわさないでほしいのです・・・
 そして進化を真面目に研究されている専門家の方、「よくいるテレビ御用達学者か・・・」と思わずに、誰でもいいですからコメントをしてほしいものです。
 いち動物オタクの私にはこれが限界なのですから。
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