カーズ

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」

 車は楽しみに行くために走っていたんじゃなくて、楽しみながら走っていたの。

 映画史に残るとんでもなく奇抜な設定の映画、それが『カーズ』。
 公開当時は『ゲド戦記』に興行収入で惨敗したものの、どう考えてもこっちの方が面白い。ニホンジン・・・ドウカシテル・・・!(とはいえ私はジブリ映画は見ないんだけど・・・ごめん宮崎吾朗さん)

 自動車が命を持っているっていう設定は分かる。アニメでは『機関車トーマス』があるし、絵本では『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』『のろまなローラー』『はたらきものの じょせつしゃ けいてぃー』(どれも画力が秀逸!絵本は本当にたくさん読んだなあ・・・)など自動車や汽車などを擬人化した作品は意外と多いんです。
 そもそも無生物に命を与えたって言えば、ジョン・ラセター監督はなにより不朽の大名作『トイ・ストーリー』がある。

 しかし!しかしですよ!この『カーズ』の世界は『トイ・ストーリー』と似て非なるもの。ななななんと、人間がこの世界にはいない。
 お前ら一体どこで作られた!?って感じなんだけど、とにかく水たまりに集まる小さな羽虫でさえ、よく見ると自動車・・・!こんな世界、サルトルだったら実存揺さぶられまくりの嘔吐ゲロゲロで、ヘロヘロになっちゃうと思う。

 とはいえ、その奇抜な設定を抜きにして見れば、そこにあるのはまるで『スラムダンク』のようなスポーツを題材にした骨太の人間ドラマ。熱い!オイル圧上がってレッカー車呼ぶはめになります。
 車が大好きな男の子とおじさんはともかく車にイマイチ興味がない人(私も)は、とりあえずカ―ズのキャラクターを人間に置き換えてみよう。絶対泣けるから・・・そしてきっと車が好きになる!
 エコだあ?知ったこっちゃねえ!『カーズ』に登場する車種は、「ポルシェ911カレラ」などの例外もあるものの、ほとんどがオタク感涙であろう、燃費が悪いがとにかくかっこいい1世代前の古き良き時代の自動車ばかり。
 「ハドソン・ホーネット」を筆頭に、私も名前は知っている「シボレー・インパラ」、学生時代のローワン・アトキンソン(この人真性自動車オタク)がこれに乗ってライブに行ったという「フォルクスワーゲンのバン」、『ルパン三世カリオストロの城』でおなじみ「フィアット500ルパンモデル」(確か大塚康生さんの当時の愛車)、極めつけは「29年型T型フォード」だ!!お婆ちゃんキャラにこの車種を使うという発想に感動!!シュワちゃんがハマーだったり、こういう発想って大好き!(欲を言えば日本語吹き替えでも玄田哲章さんだったらなお最高だった)

 な~んてもぐりコメントしているけど、正直私は車はそこまで詳しくない・・・詳しくないが友人が車オタクだったので、ちょこちょこは名前だけは知っているんです。
 それになんつったって私もダイナソーオタクだから、マイナーな車種が出ると「よくぞこれを・・・!」って気持ちは分かる!
 「いや、こんなのマイナーじゃないよ」って言われそうだけど・・・でも車種の年代を見るにラセター監督絶対こだわりましたね。

 さて、車の話はこの辺にして、この映画はとにかく物語が良くできています。

 主人公の「ライトニング・マックイーン」は若手ナンバーワンの天才的レーサー。自信満々なルーキーである彼は、自分だけの力でレースを勝ち抜いてきたと考えている節があり、その才能にちょっと自惚れている。とはいえ、彼の実力は本物で、ピットクルーの評価は最低なものの多くのファンを獲得していた。
 自分の才能、実力だけを信じる。ライトニングはその方法で自分を鼓舞し、勝利し続けてきた実はストイックなアスリート。
 43台のレーサーが戦う「ストックカーレース(テレビゲームの「デイトナUSA」みたいな奴)」の大会「ピストン・カップ」で、ライトニングは優勝射程圏内に入り、デビューの年に彼がピストン・カップを制すれば史上初の快挙だった。
 彼の優勝を阻むライバルは、長年王座に君臨してきた今季引退のカリスマベテランレーサー「キング(ストリップ・ウェザース)」と、ラフプレーを得意とする(これって実際のレースでやっていいの?)ひげがトレードマークの「チック・ヒクス」。
 レースは三つ巴となりラストの400周目・・・なんとライトニング、キング、チックの3台が同着という前代未聞の結果となった。
 大会本部はこの3台による王座決定戦を、1週間後カリフォルニアで開催することを発表。ピストン・カップを制して石油メジャーの「ダイナコ」と契約するため、さっそくカリフォルニアに向かうライトニングだったが、とあるハプニングで「ルート66」に一人(一台?)置き去りにされて・・・

 才能があるがそれゆえに挫折をまだ知らず、ただひたすら自分の道を突っ走るライトニング。彼の成長がこの映画の核。
 私はスポーツに詳しくないので想像ですが、アメフト選手のK氏の話なんかを聞くと、やはり選手として第一線で活躍できる期間はかなり限られている(競技によるだろうけど)んだと感じます。
 それゆえに若いライトニングも心の底でどこか焦っていたのかもしれない。
 
 しかし彼が辿りついたのはカリフォルニアでなく、地図から消えたさびれた街「ラジエータ・スプリングス」。
 現代のスピード重視の社会とは無縁の生活をする「ラジエータ・スプリングス」の住人達。当初ライトニングは彼らと深く付き合う気は全く無く、とっととこの街を出てカリフォルニアに向かいたかったのだけど、どこか癒されるこの街のペースに徐々に乗せられて・・・

 彼を成長させるカギとなるのが、無邪気なオンボロレッカー車「メーター」と、ロサンゼルスで弁護士経験があり、その忙しい生活に自分を見失った過去を持つ「サリー」・・・そしてなんといっても過去と向き合うことを恐れている、伝説のレーサーだった「ドック」。

 とにかくライトニングと対になっている重要なキャラがドックなんですよ。サリーもライトニングに大事なことを教えてくれるんだけど(後述)、とにかくドック。ドックが熱いんですよ。
 二人とも優秀なレーサーだけど、性格は正反対。ライトニングは後ろなんて振り向かずバシバシ未来に向かって爆走する「超前向きタイプ」で、ドックは逆に過去に縛られ過ぎてひねくれちゃってる「超後ろ向きタイプ」。

 そこで重要な役割を果たすのが、かつて挫折し一回り強くなった女性弁護士のサリー。キャリアウーマンだった彼女は、ライトニングの気持ちもドックの気持ちもどちらの気持ちも解るのだ。彼女の言葉でライトニングもドックも大切な何かを見つけ(ドックは思い出し)人生において大きな一歩を踏み出した。
 そしてライトニングとドックは共に協力し、王座決定戦を戦う・・・!なんてすばらしい展開・・・!!
 レースの結末と言い、ただの子供向け自動車アニメだと馬鹿にしてはいけません。スポーツマンシップについてとても深いものを示唆しているのがこの映画なのです。

 私はサリーがライトニングに「ラジエータ・スプリングス」の歴史、過去を打ち明ける「ホイール・ウェル」のシーンで、もう号泣。理由が分からないんですけど、あのセピアのシーンになってあの歌「♪ロングアゴ~・・・」が流れると条件反射的にボロボロ泣いちゃうんですよ。メーター錆びてないし~!
 でも彼女のセリフは本当に深い。「インストルメンタル(手段的)」と「コンサマトリー(完結的)」の話を、哲学や思想書ではなく、アニメで聞かされるなんて・・・本当に深い・・・
 ※記事の最初で引用したサリーのセリフの「車」の部分を「人」に、「走る」を「生きる」に置き換えてみよう!きっとすっごいぞ!

 最後に私が一番好きなキャラは、タイヤ屋さんのルイジ。黄色いフィアット500なんですけど、このキャラの日本語吹き替えをしているパンツェッタ・ジローラモさんのカタコトのセリフが最高!なんか、もう相棒のグイドとセットで超可愛い・・・!萌え~!!シューマッハが来店してよかったね!
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