借りぐらしのアリエッティ

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」

 やっべ、トトロ超えた。

 なんか「アリエッティって自分だったらゴキブリの話にするなあ」という記事を書いたら、実際にこの映画を見た方からとてもトラックバックをしていただいたので、これはもう観るしかないと、生まれて初めて映画館でジブリ映画を観ました!
 ちなみに「ゴキブリの話」とは、アリエッティの見た目をゴキブリにするんじゃなくて、つまり可愛い小人の女の子に恋をした少年も、結局は己のプライバシー保護のために「許してくれ!アリエッティ!」と泣きながらスリッパでアリエッティを駆逐する悲恋ものを私なら作るというはなしです。ゴキブリは本当に見た目“だけ”で嫌われているのか?という考察の映画。

 ・・・ちゃかして悪かった!!(モニターの前で土下座)

 この映画大変よくできている。この夏の「友」でもあり「ライバル」でもあるアニメ映画『トイ・ストーリー3』とこの映画は、内容がとっても対称的。どちらも「主役が小人」「主役がおもちゃ」とファンタジックなのに、そこで描いているものは全く逆。
 「ファンタジー」の設定で徹底的に「リアル(人間のネガティブな感情や別れ=死)」を描いたのが『トイ・ストーリー3』だとすれば、『借りぐらしのアリエッティ』は「ファンタジー」の設定で「より純度の高いファンタジー」をストレートに見せてくれた!
 「アリエッティ」の世界に、自動販売機の中で違法賭博やっているおもちゃは存在しないんですよ!(なんか熱くなってます汗)
 私なんかも漫画を描くときには「リアル」を削り出して描写するために、あえてファンタジー的要素を用いて、そのギャップで攻めることをやるし、それが好きなんですけど(中学校から基本的にこの手法は変わっていない)、この映画はそんなひねくれた戦法はしない。
 すっごい純粋な人たちが作ったんだろうな、お母さんが自分の子に読ませたくなるような童話の基本系なんです。文部科学省とか推薦しそうだ、というかもうしてる??
 
 さて、この映画を見る前は「こういう記事を書くだろうなあ」と私は思っていました。今からその鑑賞前の脳内イメージを思い出して書き起こしてみます。


 スタジオジブリはもう駄目ですね。『借りぐらしのアリエッティ』は『となりのトトロ』の二番煎じで、それは「もはやジブリはファンサービスしかできない」ということを示しているのではないでしょうか。
 「コナン」「カリ城」「ナウシカ」くらいから宮崎監督をずっと好きな人は「エヴァンゲリオン」や「踊る大捜査線」のファンように「おっ!待ってました!」と相変わらず映画館に見に行ってくれるし、グッズも買うことでしょう(特にゲリオン)。
 しかしそれってもうこのスタジオがエスタブリッシュメントと化したということで、そこに新しいチャレンジ精神はないわけです。
 宮崎駿さんという「超強力なジブリのエンジン」が古くなり(言葉は悪いですが)ポンコツ寸前なのではないか?という話は随分前から言われてきたし、実際ジブリという飛行船は「死の翼アルバトロス(分かる人だけ分かってw)」のようにどんどん高度を下げて墜落の危機。
 宮崎駿さんがやってきたようなアニメを書き続ければ、飛行機の高度を維持できるというのは大間違いで、常に「宮崎を超えてやる!」いや、「ジブリから宮崎を追い出してやる!」くらいのクリエーターの人がジブリにいなきゃ遅かれ早かれ宮崎さんがいなくなってジブリは墜落ですよ。
 宮崎監督っておそらく「もののけ姫」やってジブリから出るべきだったんです。確か「これがぼくの最後の作品だ」とか言ってましたよね。天才的なアニメーターなのは分かりますからアニメーターはやめないにしてもジブリからは出ていくべきだった。
 なぜなら「もののけ姫」って「ナウシカ」を時代と国を変えてもう一回やっているだけだったし、それはつまりやりたいことを一周したってことですよね。ならいいじゃないですか。
 ジブリはもう若手に任せて(別に育てなくてもいい。クリエイタ―って教育に関係ないところで勝手に育つもん)、ジブリから出ていった方がジブリの作家には良かった気がします。
 なにしろあんな個性の強い人がスタジオにいて仕切っている限り、宮崎さんの模倣になるのは目に見えているんですから、宮崎さんはジブリに未練がましくしがみつかず飛び出すべきだった。
 「なにい?もののけ姫のCMこんな残酷にしやがって!ふざけるな!俺は出ていく!」ってそのまま出ていけばいいんだよ!ジブリを立ち上げ、そしてつぶしたのは宮崎駿だ!!


 ・・・こんなことを書く予定でした(長かった?)。でもこの「アリエッティ」って「トトロ」と似て非なるもの。
 細かい設定はもちろん似てますよ。ジブリオタクじゃない私でも感じるのですから、詳しい人は「あ、あれはあの作品のオマージュ・・・」って相似点をたくさん発見するんでしょうね。
 でもこの映画って近年のジブリアニメには珍しく、ストーリーにテーマを貫くしっかりとしたがあるんです。ジブリでこの芯を感じたのは『紅の豚』以来かな?
 つまり私って「考えるな。感じろ」って大嫌いなんです(ブルース・リー強くてカッコいいけど)。
 むしろディベートが最も苦手と言われる日本人が世界と交流する今こそ「感じるな。考えろ」の時代なわけで、「芸術の解釈なんて好き勝手でいいじゃ~ん?」というスタンス?の「千と千尋」「ハウル」や「ポニョ」・・・まあ大体のジブリ作品がこれが理由で駄目だったんです。一番ひどかったのやっぱり『ハウルの動く城』ですね・・・

 「アリエッティ」のストーリーってたしかに単純でひねりがないかもしれませんが、描きたいものがピュアでストレートな人間の美しい心なら、やっぱりピュアでストレートなプロットで描くのが最善なんです。だからこの映画は「これ以上面白くしようがない!」で「面白い度☆5」なんです。

 さて、その美しい心ってなんだ?っていうと、別に誰でも解るし思ったり感じたりしたであろう「誰かの為に生きたい」という気持ち。今の若い人達(私も含まれますが)って実はこの気持ちが上の世代が想像するよりも強かったりするんですよ。
 アリエッティも病弱なショウ君(モヤモヤさまぁ~ずかよ!)もその思いは共通していて、だから時に事態をいじくって悪化させてしまう。うん。ハイゼンベルグ不確定性原理を地で行くストーリー展開!
 「美しいなあ」と雪を手でつかまえると、美しいと感じた雪の結晶が壊れてしまうように、人間の干渉(主体)は自然環境(客体)を変えてしまう。
 だから「環境を守ろう」も「壊そう」も実は環境にとってみれば同じこと。世界は人間がどうあがいても変わってしまう。このアリエッティや翔の運命のように・・・なぜ?主体と客体は不可分だから。人間は自然の一部でしかないから。

 世界は変わっていく。そしてエントロピーの法則でいずれ美しいものはすべて消えてしまう。翔君が熱力学第二法則を知っていたかは知りませんが(病床で読んでいる本がプリゴジンだったらオレ失禁したと思う)、若いのに無駄に賢い彼はそこら辺を知っている。そして絶望している。「どうせ死ぬからいいや、楽しいことやってみよ!」と全裸で街を突っ走ってみる(それ楽しいか?)元気もない。心臓弱いから。
 で、同じく若いアリエッティは小人族の滅びをうすうす感じながらも否認している。見なかったことにして空元気で日々を乗り切っている。ふたりとも本当にいい奴。でもやはり若い。若いから出した答え(「ニヒリズム」「否認」)に「それでいいのかな・・・?」と心の中で自問自答し自己矛盾を抱えている。

 ここで超かっこいいのが、アリエッティのオヤジなんですよ!オレこんな惚れぼれする男キャラを見たのは『紅の豚』以来だわ。アリエッティのパパって無口だけど、大人だからニヒリズムも否認も知っていて、自分でその落とし所をつけて家族のために一生懸命借りをして生きている。
 パパには若い二人と違って、ママとアリエッティという守るべきものがあるから精神的にすごい強い。角砂糖をキッチンに取りに行く冒頭のミッションのまるで特殊部隊のような身のこなしは『トイ・ストーリー1』の記事でも書いたけど、もう私の「直球ど真ん中」で、あれでもう「アリエッティ」の世界にとりこまれたね。やられたよ。私しゃ。

 おいおいこのオッサンちっこいのに無駄に動きがカッコいいぞ!と(笑)。
 
 そしてそのオヤジの運動神経の良さがアリエッティにもちゃんと継承されているのが、もうおかしくてw。パパは両面テープで壁を登ったけど、アリエッティはイヤリングかなんかでカーテンを登り、見事ドアロックを解除!
 大きい翔と小さいアリエッティの協力プレイは、まるでアクションゲームのようで、テレビゲーム世代にはたまりません!!(このゲーム作ってくれねえか!?やりてえ!)
 まあ、こういう小さな冒険を共有し、ふたりとも一回り成長したわけで。この物語において2人の親密度合いを表すバロメーターが「角砂糖」だったんだけど、それをプレゼントして終わるラストとかやっぱぶれてないよな。なにを描きたいかはっきりしてるもん。

 まあ、いろいろ書いたけどまだ書き足らないなあ・・・他の人が書かなそうな所と言えば、生物関係かな?ええと、わたくし「アリエッティはゴキブリ」とか言ってましたが、開始数分でゴキブリ出てきました。しかもこの映画の動物は、カマドウマもゴキブリもネコもカラスもみんなディフォルメしてあって可愛い。タヌキ以外は。
 で、アリエッティと翔君を対面させるのがカラスで(あのシーン『ファインディング・ニモ』の歯医者さんにペリカンが突っ込むオマージュじゃね?)、ラストのアリエッティと翔君の最後の別れを導いたのがネコなんですよね。人間と小人の仲介者が動物なのが面白い。

 あとお手伝いさんの行動が理解できないって人はおかしいんでね。あれはアリエッティに感情移入しているからおかしいと思うわけで、一番心理描写がリアルだったのがハルさんでしょう。翔君の小人へのリアクションがファンタジーなら、ハルさんはリアルな反応ですよね。
 実際に小さい頃カエルやトカゲといった小動物を庭でつかまえて瓶や水槽に飼うっていうのは誰しも経験があるわけで、それが小人だったらなおさらでしょ。私なんて何回家でトカゲを脱走させて怒られたか・・・

 最後に曲。なんか『マスター・キートン』っぽいなあ、と思ってたらどっちもスコットランド的話ですよね。小人や妖精といった「伝承」を生活の中に取り入れて楽しむ文化はイエッス、スコットランドだし、欲を言えばもう舞台もグレートブリテン島でよかったんじゃないかって気がする。
 そっちの方がアリエッティ一家が船出する先が美しい英国の田園風景でよかったんじゃなかったのかな。だって日本の住宅地だったでしょ。最後の画。日本ってイギリスのように古い建物を人から人へ使いまわしていかずに、家が古くなったら壊して新しいの建てちゃうから都市景観がメチャクチャなんですよね。ロンドンなんて100年前とほとんど変わってないんじゃないか?

 とにかく、こんなすごいレベルならもう宮崎監督いなくても大丈夫。むしろもう追い出した方がいいって!
 今回は「トトロ」に気を使ったような話だったけど、若手の人が宮崎監督を意識せずに好き勝手作ったジブリ作品をそろそろみたいなぁ。

 あとアリエッティ・・・やっぱり借りたものは返さなかったw(洗濯バサミだけ返したw)
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