SF思考論

 わたし全然「You Tube」にどんなコンテンツがあるのか詳しくないんですけど、この前偶然に岡田斗司夫さんの対談を発見してしまい、それがすっごい面白い。
 SF大好きどころか愛しているんじゃないかってほどSFに詳しい岡田さんに比べれば、私なぞペーペーですが(実はマイクル・クライトン作品以外でSFはあまり読んでない。中学の頃はSFよりも科学の本を読んでいた)岡田さんのやってることや言っていること、思考の仕方を見ていると、結局あの人は人生全てをSF的に考えているんだろうなと思います。
 まだ実現していないような新しい会社の経営形態(EXシステム)とか論じているし・・・つーか実践してるし。

それが端的に分かるのが、今日視聴したYou Tubeの神田昌典先生との対談動画。

神田氏:さて、アニメ界の方ってのはさまざまいらっしゃると思いますけど、やっぱり“物語”で完結してしまっているじゃないですか。でも岡田先生の場合はどちらかというと物語の向こうからぽ~んと出て・・・

岡田氏:そうですね。現実じゃなきゃいやですね。だからぼく昔から自分で作っているアニメも自分たちの今の生き方をアニメにすることしか考えていなかったんです。

 (中略)

岡田氏:現実と虚構を混ぜて、で、虚構と現実がシンクロして進んでいくしか、ぼくらは生き方として知らない。

神田氏:現実のメタファーでしかない。


 その後議論は、多かれ少なかれクリエーターはそういった思考をしているという流れになるのですが・・・この現実と虚構のシンクロの割合で、現実の未来にウェイトを置いて虚構を描いているのがSF作家のSF思考(わたしが今適当に作った言葉)で、いわゆるファンタジーはSFに対して現実よりも虚構の割合の方が大きいのだと思います。

 そして最近のSFは「ファンタジー化」していて、あくまでも現実を見据えてその延長線上に物語を置いていたSFが、いまや全く逆のコンテキスト――現実逃避の手段として用いられるようになったと、岡田氏は分析しています。
 なるほど!確かに私が『アバター』や『時をかける少女』『サマーウォーズ』に対して強い不快感を感じたのは、現実と向き合うべきリアルな物語のジャンルだったSFが、現実逃避の道具として使われていることへの怒りだったわけです。
 特に『アバター』は「ときめきメモリアル」だから。ギャルゲーのパッケージに「ジャンルSF」って書かれているのが嫌なのと同じ。いやいやこれは恋愛シミュレーションゲームだろ、と。
 だから美少女的な絵で相対性理論とかを解説する「萌える相対論」とか言うあざとい本が大学で売ってたけど最悪だった。てめえら萌えキャラに科学の何が分かる!?(※これは女性差別発言ではなく、萌えキャラ差別発言です)

 いや~とにかく岡田先生の鋭い分析で胸のつっかえが取れました!パブリックドメイン最高!

 つまり、どんなに馬鹿馬鹿しい技術(反重力とかタイムマシンとかワープとか)でも、書き手は本気で(ここ重要)その技術がいつかは実現できると確信しているのが本来のSFのはず。
 実際SF作家が空想した様々な未来の科学技術は実現しないのも多かったけど(透明人間とか)、実現したもの(潜水艦、クローン)も大いにある。

 よってSFを愛する人(書き手読み手問わず)は現実逃避ではなく「現実の行く末」に大変興味がある。人類の、科学の、地球の、宇宙の未来が知りたい。気になって仕方がない!でも寿命的にそんな未来の世界は見れない!!
 そんな超深刻な悩みから捻り出されるのがSF。わたしもあと2億年くらい生きたいもん。人類の絶滅の後どんな動物が進化してくるか知りたいし。
 でもそんなに生きるのは無理だから私はSFを描いて楽しむしかない!興味のない人にはどうでもいい自己満足的な営みだけど、本人にとってはけっこう本気で悩んでたりする(バカだ)・・・

 で、コラムの第15回でも書いたんですけど、現在の市場において現実世界の行く末や科学の未来に興味がある人(=SFや科学本を好んで購入する人)がいないんですよね。
 人ってなにかを評価する時に無意識的に「自分にとってそれは損か得か」を計算しちゃうから、科学の進歩に比例してどんどん暮らしが便利になった18~19世紀ならともかく、公害問題などを経験し「科学の進歩は決して人類の幸福(だけ)につながらない」ということを知っている現代において「科学なんて私たちの生活にとっちゃどうでもいいもん」って人が増えちゃって、SF人気はかなり低迷しているんだと思います。

 どうでもいいから楽しいとも思うんだけどね。
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