6.あの男はやっぱり凄かった

 あの男とは言うまでもなく万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)である。

 宗教と親和性の高い科学の分野がある。それは数学だ。数学の完璧さ合理性は(ゲーテルの定理は忘れて)神の完全性を証明するメタファーとして持て囃されたし、そもそも自然科学は、自然に潜む神の秩序を探求する学問だった。

 もちろん数学や物理法則を考える限り、自然界には潜在的かつ普遍的な原理が存在しているだろう。しかしそんな神の存在を証明する普遍的な原理の一つとして発見された、自然界のダイナミックで動的な現象は、神の存在に逆に牙をむいたのである。

 その事実に15世紀の段階でたどり着いたのがダ・ヴィンチだった。ダ・ヴィンチはなんと古生物学者のはしりでもあった。
 彼は山で魚の化石が見つかることから、今山がある場所には昔は海があったんじゃないか?と環境のダイナミックな変化を予言していたのだ。
 そして実際、イタリアのアルプス山脈などは恐竜の時代には海底なのである。なぜか?アルプス山脈から海洋生物の化石が発掘されるからだ。この古生物学的推論形式はダ・ヴィンチのものと何ら変わらない。
 もっと言えば、ダ・ヴィンチは化石に含まれる大昔の生物の形態が、現在のものとは異なることも知っていたという。

 ここからは空想であるが、天才ダ・ヴィンチは神がつくりたもうた生物が変わらないという個別創造説に限界を感じていたのかもしれない。しかし当時そんな事(=「神様の作った作品変わってんぞオイ」)を口にしようものなら魔女扱いされて焼かれちゃうから、沈黙を貫いたのかもしれない。彼の発見とそこから導き出された仮説は、15世紀にはまだ早すぎたのである。
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