「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」
いつまでも幸せに…なんてものがどこにもない世界に行ったのよ。
やっぱり私の好みの映画だった。なんだかんだ言って私の評価基準って単純で笑えるかどうかだったりする。よって基本的にベタなコメディが大好き。
姫を助けにニューヨークにやってきた王子がディズニーお馴染みのミュージカルシーンの最中サイクリスト集団に轢かれるのとか、もう最高。このシーンをCMで見て心をわしづかみにされました。
そもそも私はディズニーアニメって嫌いじゃないんだけど、昔から唯一苦手なのがこのミュージカルシーンだったりする。脈絡なくこいつら歌い出すじゃんw。
昔の映画って今よりも「総合娯楽」って色彩が強いのか、映画中ずっとクラシック音楽がかかっているのが多いと言う。
当時は「映像と音楽を同時に楽しめるなんて何て贅沢な!」とか思っていたんだろうけど、今は物語の演出や展開重視で、シーンによっては音楽を全く挿入しないから、映画のミュージカルシーンってもう時代遅れなのかもしれない。
でもそんなミュージカルシーンを(あえて)相変わらずやるのがディズニー。なにしろあの『ダイナソー』ですら最初はミュージカルシーンを決行しようとしたほどだから。無茶な!wイグアノドンやストルティオミムスが歌って踊ってもなあ・・・それはそれでちょっと見てみたかったけど・・・w
だからまあ、この映画もミュージカルシーンがちょっと長すぎるかな?って気もするけど、ディズニーのお家芸がこれなんだから仕方がない。これを抜いたらディズニーじゃないだろ、みたいな。
物語上でもこのセントラルパークでのミュージカルシーンが、恋人役の弁護士の心境の変化において重要なポイントになっているわけだし。長めにやってそれを印象づけているんだろうな。
ミュージカルはとにかく「やっぱりディズニーってすごいな」って思うのは、なんだかんだ言っても画力だよね。
最近ディズニーは、実写になっちゃった『パイレーツ・オブ・カリビアン』とか手描きアニメの映画をあまりやらなくて、ディズニーを手描きからCGに移行させた原因であろうピクサーが皮肉なことに「ディズニーよ手描きアニメに戻れ!」とか言ってるんだけど、やっぱりディズニーは絵が巧い。
この映画でも冒頭けっこう長めに・・・大体10分ほどアニメのシーンがあるんだけど、本当に人間の表情とか動物などのディフォルメが巧い。これに比べると日本アニメのディフォルメは本当に稚拙だなって今なお思う。動物のキャラクターとかろくなのがいない。
よく日本の魔法少女もののアニメで、女の子はすっごい丁寧に描くくせに、その傍らにいる小動物の相棒とかのデザインが本当に適当でいつもがっかりする。あ~こいつら美少女とメカしか描くの興味ないんだって。
ただハウス食品の世界名作劇場は動物うまかったけどね。オコジョとかサルとか・・・しまいにゃシャチ描いていたしねw。
さて、この映画、お話の作りを考える上では実は想像以上に深い話だった。アニメの世界に生きていた「ジゼル姫」が、悪い魔女「ナリッサ」によって現実のNYに追放されて、そこで離婚調停を主に扱う弁護士「ロバート」と恋に落ちるって言う・・・まあ単純っちゃ単純な話なんだけれど、意外と登場人物の心理描写が凝ったものになっている。
私はラブコメとかは基本的に全く見ないんだけど、たまに『プリティウーマン』とか『Sex and the City』とかを見ちゃうことがあって、けっこう楽しんでいたりする。あと昔の貴族が現代にタイムスリップして現代人の女性と恋に落ちるって映画ありませんでした?あれ面白かった。
タイトルすら忘れちゃったけど・・・まあいいや、それでいつも思うのはラブコメって、登場人物の内面を描くのが本当に上手いなあってこと。
そりゃ恋愛を描く作品なんだから当たり前だろって話かもしれないけど、意外と恋に落ちている時って人は無自覚(盲目)だったりするから、それを改めて物語として描くのって言うのはなかなか難しいんだと思う。どこかで冷めていないと書けないから。
この映画で上手いなあって思ったのは、今までアニメ作品でお決まりのヒロイン役だったジゼルが、現実の世界の男性を知って(別にエッチなことをするってわけではないです)今までにない別の感情が生まれている事を自覚するって言うところ。
まあジゼルの言うことに対してなんでも「無理だ」とか「違う」とかニヒルな反論をする弁護士に彼女が苛立ったってシーンなんだけど、そこで彼女は自分に芽生えた新しく――そしてずっと複雑な感情を知って喜ぶんだよね。
アニメキャラで善人として描かれた以上、彼女はいつも笑顔で歌を歌って森の仲間と戯れ、悪い魔法使いにさらわれてお城で王子様の助けを待つくらいしか本当はできなかったんだけど、現実の世界にきて彼女は初めてネガティブな感情を表に出す。それは怒りとか哀しみとか嫉妬とか・・・
逆に、現実の世界で大人として生き続けたことで、なんでも現実的にしか物事を考えられなくなっちゃったロバートも、天真爛漫で子どものようにピュアなジゼルと出会うことで、いつのまにか「フッ」って鼻で笑うようになっていた「永遠の愛」とか「思いやり」とかを思いだしていく。そもそも現実世界のロバートだって「大人」と言う役を演じていただけだったんだ。
人は世界に存在する以上意識的にしろ無意識的にしろ何かを演じている。それは広い社会の中で自分のアイデンティティやポジションを確立し維持する上ではとても重要なことなんだけど、時に融通が利かず重荷になってしまうことがある。
ロバートはそれから自由になったし、ジゼルは『ソフィーの世界』で自分の存在が物語の登場人物だと知ったソフィーように、自分の世界を広げていった。
私は今の物語は複雑化しすぎているのかもしれないと、あえてディズニーの王道をメタ的に皮肉るこの映画を見て思った。
なかには「水戸黄門」のような勧善懲悪なんて古臭いし単純すぎるって言う人もいるけど、これはやはり物語の基本なんだ。実際あんなにヒットした『アバター』だってそうじゃないか。
正義役はあくまでも正義。悪役はあくまでも悪。それは確かに単純なんだけど、ただのメタファーにすぎない。正義100%の人間もいなければ、悪100%の人間だっていない。そんなのは作り手だって分かっている。そうじゃない。そうじゃなくて作品の中で正義役と悪役が葛藤する世界そのものが一つの人格のメタファーなんだ。誰の人格?それは作り手の・・・もしくは映画を見ている私たちの。
私たちの意識の中では常にポジティブな面とネガティブな面が共存している。だから私たちは映画の世界に自己の内面を投影し、感動するのではないだろうか。
違いますか、そうですか・・・
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