2001年宇宙の旅

 「面白い度☆☆ 好き度☆☆」

 シュールすぎる。

 いわずと知れたSFの名作・・・といいながらも、小説版には「英語の教科書に教材として取り上げられていたな~」ってくらいしか思い入れがなく(本はそこそこ読むほうだけど小説とか文学ってあまり読まないから・・・)映画版に至ってはこの前はじめて見た。
 
 アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックが手を組んで考えたらしいんだけど、今見てもとんでもない映像美。『ビルマの竪琴』もすごかったけど、この映画の映像もすごい。
 CGなんかに頼れなかった時代の特撮技術。宇宙ステーションやディスカバリー号の無重力的なシーン(正確には遠心力によって発生させている人工重力)は、もうセットを回転させて撮ったとしか思えないんだけど、真相はどうなんだろう?

 こんなのを当時見せられちゃったら、みんなびっくりしたに違いないだろうなって思うんだけど、意外や意外日本では公開時あまりヒットしなかったらしい。
 確かにこの映画って、内容が難解かつ説明不足でどうにも理解しにくい。そしてハードSFとして科学的にできるだけ正しく宇宙を描いているから、すっごい静か(宇宙では音を伝えるものがない)。静かな上に美しい映像とクラシック音楽・・・スターウォーズごときをSFだと思っているSFファンは寝ます。
 
 これ科学考証が合っているから科学が好きな人の評価は高いって言うのがいいよね。やはり理系は文系と見ているところが違うというか・・・「おおここの宇宙の描写は正しいぞ」って喜んでいるわけでしょ?wこれってすっごいマニアな観方で、文系には「なんてつまらないものの見方しているんだろう。あら捜ししてんの?」って思われそうだ。ほっとけw。

 でも宇宙や工学だけが科学やSFじゃない。なぜか一般にはそういうイメージがあるけど。例えばこの映画を観て生物関係の人はどう思うんだろう?モノリスに触ってサルが進化なんてまさにインテリジェントデザイン説だし、科学考証どころかこれはもうオカルトだよね。
 ドラえもんがこのモノリスとよく似た「進化退化放射線源」っていうひみつ道具持っているけど、この映画を観ると、あのロボットがいかに人智を超えた恐ろしい存在なのかがわかるよ。

 欧米人はとにかく人類の知性は知的な存在によって授けられたって話が大好きだけど、そんなこといったら、人類の知性だけではなく、地球に生物が存在するのも、雪やミョウバンが美しい結晶になるのも、みんなオカルトの力が働いているって考えないといけないと思う。なぜ人類だけ神の力が必要なんだ。そこが一番怪しいよ。
 つまり私が一番不思議だと思うのは自己組織化なんだ。なんでこの世は放っておいても宇宙から何から、ある法則に則ったり、秩序だった振る舞いをするんだろう?

 生物だと思っていたモノリスはクラークによれば宇宙人の作ったコンピュータらしいんだけど(がっかり)、生物とコンピュータの違いって何だろう?
 コンピューターって演算装置のほかに情報端末って側面もあるけれど、生物も情報を保存するし共有するし複製するよね。なんでそんなことしているんだろう?
 私たちは生命誕生から38億年分のデータベースを世代ごとに更新しながらも引き継いでいる。その先には何があるのだろうか。あれこれ自然淘汰で試行錯誤して、完全無欠な遺伝子の組み合わせでも目指しているのだろうか?

 本当にこの映画っていったい何が言いたいんだ。冒頭400万年前の原始時代から始まって、木星探査機が飛ぶ2001年まで淡々と神の視点で描いているんだけど・・・メタ的な映画だから登場人物は印象希薄で感情移入は出来ないし、なんとも語りにくい映画。
 作り手側もわざと観客を切り捨てている感がある。2001年なんて9年前に過ぎたって言うのに全然今の生活とかけ離れている。異世界だあんなん(笑)。
 
 そしてあのラスト・・・卑怯!『告白』や『インセプション』といい、もうこういう解釈を俺ら任せにする映画勘弁してほしいよ。ただこのシーンって小説版ではどう記述されているのか気になる。
 ああいうオチをやるなら、せめて登場人物にささやかな性格付けくらいはしてほしかったな。私が一番好きなテレビゲーム「デザーテッドアイランド」のオチもこの映画と似ているんだけど(つーかパクッたと思うw)、キャラが良かったから楽しめたわけだし。
 愛すべき濃いキャラが出てきて普通にワイワイやった後、最後に一気にハシゴをはずして、あのラストをやったほうがずっと衝撃的だったと思うんだけど。
 サルトルの『嘔吐』やカフカの『変身』みたいなことをやるのがあのオチの意図だとしたら、一度キャラに感情移入させてからのほうが効果的なんだ。観客はブーブー言うだろうけど。

 でも登場人物やストーリーがないと、これ本当にただの環境ビデオだもん。これならハッブル宇宙望遠鏡のドキュメンタリーのほうが面白いよ。
 まあHAL9000だけは腹立たしいほどキャラが立っていたけど。あいつ本当機械の分際で生意気だよね。あのミスが天然なのかワザとなのかも不気味だし。
 でも私たち人類も知性が芽生えちゃったら一気に傲慢になったよね。人類を作ったやつが仮にいたとしたらため息ついているだろうね。オーマイガって。
 で私たち人類が「何でコンピュータを作ったの?」って賢いコンピュータに聞かれてもすぐに答えられないように、人類の神がいても我々が期待するような問いの答えは持っていないような気がする。

 というわけで全てが謎の映画。そもそもこの世は謎だらけなんだから、作り物の映画くらいは何らかの答えを出してほしい。
 これを観ると本当に宇宙なんて別に行きたくなくなるね。なにもねえし、静かだし、動きにくそうだし、退屈そうだし・・・いいことなんてなにもないよ。

 最後にキューブリック監督って情景を説明するシーンを止め絵で等間隔(約5秒ほど)でつないでいくよね。あれはけっこう特徴的だと思った。やっぱりこれも意図がわからないんだけど・・・なぞなぞ秘密・・・おしえな~い
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