言語化できなくても言語は必要です

 連載用長編漫画『ソニックブレイド』のネームをコンピューターに詳しいdario氏に見せる。彼はこの漫画を2003年の時にも読んでなかったらしく意外。なんつったってこの漫画の主人公のモデルは彼なのだから(学ランの下にフード付きトレーナーという服装も一緒)。
 
 で、第一話で早速「先輩。普通こういう場所にサーバーのコンピューターは置きません。埃が入って故障します」とひとこと。
 うおおおお、やはりハイテク音痴のボロが出た!『ジュラシック・パーク』のメイキングで、恐竜のCGを描くのに使ったスーパーコンピューターの筐体がズラリと並んでいた部屋のイメージで、このシーンは描いたから何分情報が少ない&古い・・・

 こういう指摘は本当に助かります。私も恐竜映画でティラノサウルスの指が三本だったらそこでもうNGだもん(実は退化した三本目の指の痕跡はある)。それくらい調べろや!!(怒)って。
 だからこの漫画もできるだけコンピューターやプログラムに詳しい人に怒られないようなレベルのものにしたいんだ。

 そういえば夏目房之介さんの『マンガ学への挑戦』をまたまたトイレで読んでいるんだけど、ちょっと面白い部分があった。
 「第四章 漫画と批評」ってところで、夏目さんは「つげ義春先生」って言う漫画家さんを漫画批評家がインタビューして、その人が必死につげ先生の作品の面白さや意味を言語化しようとしている事に対して冷静に分析しているんだけど・・・

 これはしかし、あらゆる表現についてもいえることで、もしここで語られるような批評的な言語で百パーセント変換できるのならば、作品化する必然性がなくなってしまう。
 作品化されなければならない必然は、作家の中の、主観的ではあるが、「絶対的」な「何か」であって、疑うことができないほどはっきりと存在している。が、他の人間に向かって相対的な言葉でいいかえることができないような「価値」なのだ。『マンガ学への挑戦』86ページ


 このつげ先生ってのはかなり文学的な漫画を描く人らしく作家主義的な作家のようだ(エンターティナーではなくアーティストタイプ)。
 確かに日本って文学にしろ漫画にしろ映画にしろ、よく言えば一人の天才によって支えられ、悪く言えばそのワンマン体制によって個性的な作品を生んできたように思える。
 これはハリウッド映画の作り方とはまったく異なる歴史だ。

 そして作家個人に宿る絶対的な主観を純粋に作品に投影するのが文学的で素晴らしい作品であって、その創作の過程をマクドナルドのアルバイトのようにマニュアル化、言語化することはできない、できたとしてもそれで作られたものは所詮ジャンクフードだ、という神秘主義は確かにある。

 でも私はこれに異を唱えたい。作品すべてを言語化することはできないけれど、言語を交わすことで様々な人の知識を借りて、その相互作用でもすばらしい作品はできるはずだと。
 たった一人の人間が生涯学べることはあまりに少ないし、正直苦手な分野もある。でも色々な人と色々なアイディアや情報を交わすことで作品はもっと面白いものになるだろうし、色々な人が楽しめるものにもなる。
 いくら精神性が高い崇高な作品って評価されても、一部の専門家やマニアだけ面白くてもねえ・・・って思うんだ。

 夏目さんも

 批評というものがマンガ家や作品のちょうちんもちでありえない以上、一般論として、作品を発表して、それに対して何かをいわれることは、この社会では覚悟の上のはずである。もし不当と感じるのであれば、機会を奪われていないかぎり反論すればいいのだが、じっさいには言葉を上手く操るのが苦手だからマンガ家になっている人の方が多い。『マンガ学への挑戦』6ページ(強調引用者)

 ・・・と言っているように、日本では芸術表現に携わる人はコミュニケーションが苦手で結果的に作家業しかやれなかったんだい!て言うのが多いけど、これって本当はおかしな話なんだよね。自己表現が得意ならばコミュニケーション能力はあるはずなんだから。
 コミュニケーション能力がないから絵を描いているなんて、まだ言葉がうまく操れない発達段階の子が描くスクリブルと同レベルだよ。

 結局何が言いたいかって言うと「プログラミングとかに詳しい人オィラに力を分けてくれ」ってこと。
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