魔法少女まどか☆マギカ

 ってアニメがすごい面白い(らしい)。私は第2話の現代アートのコラージュ作品のようなバトルシーンと第4話と第7話しか見てないんだけど(起きてる時は大体「朝まで生テレビ!」見ちゃうから)、そんなに面白いならちゃんと見ればよかった。
 なにが悔しいってこのアニメ元ネタが『鏡の国のアリス』なんだってさ!ええええ!ルイス・キャロルファンとしてはぜひ押さえておきたかった。ただのありきたりな萌えアニメかと思ってたよ。

 しかし実際に放送を見なくても公式サイトの各話あらすじと、アニメブロガーさんの記事で大体内容が解っちゃうから便利。実際に見ないであれこれ想像した方が創作の勉強になるしね。
 ていうか7話さえ見ればこのアニメがどんなにひねくれているか大体わかる。
 これすっごいメタ的なアニメで、萌えアニメで「メタ」って言うとよく登場人物に「それって萌え属性だよね~」とか言わせて、読み手が我にかえっちゃうような寒いギャグを入れちゃうことはあるんだけど、『まどか☆マギカ』は今までの魔法少女アニメとか戦闘少女アニメとかをことごとく皮肉って相対化してしまっている。
 おそらく岡田斗司夫さんがA級戦犯とした『プリキュア』とか『セーラームーン』とかをこのアニメなりに裁いているんだろう。ジャムタルト裁判の如く。

 SFではよく視点を拡張して世界そのものの不思議さを演出する「センス・オブ・ワンダー」って言うのがあるけど、そういう意味ではこのアニメも魔法少女モノの世界そのもの(=設定)の不自然さを皮肉たっぷりに描いている。
 ちびっ子諸君はこういう設定のアニメを普通に楽しんでいるけど、それって本当はこんなに異様な話なんだぜ?って嫌がらせをしているんだよね。
 確かに考えてみれば『セーラームーン』とかおかしいもんな。ただの女子高生がなんで命かけて戦うんだよ、みたいな。アレを見て熱狂していた女の子もすごいよね。妹もちょっと見てたし。

 で、すごい面白かったのが第4話のAパート。もう笑っちゃったよ。第4話は本当にすごい。機会があったらぜひ見てみてください(ないか)。
 4話ってヒーローモノに対するアンチテーゼ全開で、分かりやすく言うならば「ウルトラマンが殺した怪獣の死骸ってどうやって処理するんだろう?」とか「あの戦闘で出来た瓦礫の山の下に一体何人の民間人が犠牲になっちゃったんだろう?」的な身も蓋もない突っ込みに対する解答をやっているんだ。
 オレ戦死したヒーローがどう社会的に処理されるかを見せた作品ってこれが初なんじゃないかって思う。このシニカルさは『スターシップ・トゥルーパーズ』にかなり近いよ。SFバトルモノの現実をグログロ映像で見せつけようとしたわけだから。
 
 出てくるキャラクターもみんな今までの魔法少女もののテンプレートなんだよね。唯一違う主人公の臆病な女の子は、おそらく意図的にキャラを立てていない。
 変に個性的なキャラを立てちゃうと視聴者はこの子も“他者”として三人称的に物語を追っちゃうけど、まどかちゃんはおそらく一番現実の人間(我々視聴者)に近い反応をしているんだよ。誰が魔法少女になって敵に殺されなきゃいけないんだ、みたいな。
 「ごめん!・・・私には無理っ!」って魔法少女になるの泣きながら断念するシーンはアニメ史に残るよね。もうツボに入っちゃって楽しかった。

 主人公以外で一番リアリティの無いメインキャラクターは死んじゃったマスケット銃の人だと思うんだけど、彼女は最もクラシカルかつシンプルな設定の魔法少女だよね。純粋に正義の味方をやっているわけだから。まあアンパンマン型。

 次に古いのはまどかの親友の子。彼女はアンパンマン型がちょっと進化したタイプで、スポ魂併用型。熱血漢でアンパンマンに努力してなろうとするタイプ。この設定は長らく少年漫画の王道とされたため、私たちジャンプ黄金世代はこういうキャラに一番弱い。この前観た大河ドラマに出てきた柴田勝家とか。
 しかし本当なら『スラムダンク』とかで主役を張れるポジティブ設定な彼女も、このネガティブ極まりないアニメでは踏んだり蹴ったり。もうここまでやっちゃうと古典的すぎて新しいよね。だってやってることがアンデルセンの人魚姫だもの。

 あと意外にキャラが立っていないのが謎の転校生。こいつはおそらく『セーラームーン』に出てきた影のある暗い子とかが元ネタなんだろうけど、このアニメでは伏線やプロットの調整役になり下がっちゃっている。
 このアニメってすっごい脚本が緻密に計算されているから、この子がキャラクター性を犠牲にしてある種のスイッチになっているって言うのはあるよね。

 最後にいろいろ割り切って魔法少女をやっているリアリストかつニヒルな女の子(年齢不詳)。こいつが新しさで言ったら一番新しくて現代的なタイプの魔法少女だ。
 「もう正義とか悪とかどうでもいいじゃん」って魔法少女に言わせちゃうような時代になったってことだよね。

 とまあそんな感じでこれを作った人は相当魔法少女アニメが嫌いだったんだと思う。あああ!もうこんなアニメのジャンルぶち壊したい!って感じで、魔法少女もののモチーフになった古典的な伝承(ファウストとか)をあえて引用して逆説的に話を作っていったんだろうな。いや~相当ひねくれてます。

 ・・・で、私はなんでこれが『鏡の国のアリス』が元ネタかよく分からないんだけど、ここまで来たら『鏡の国のアリス』の「一体どっちの夢だったと思いますか?」的な、哲学的な夢落ちも厳しいんじゃないかな。
 最終回で全宇宙的ポテンシャルがあるらしいまどかがこのダークなアニメの世界観を鏡のようにひっくり返して浄化してくれれば面白いのにね。
 それでオープニングアニメのラストショット(魔法少女の三人が凄い高いビルの上で笑っている)で最後終わればいいじゃん。
 なにしろあの三人って主役以外は他界しちゃっているからね。

関連記事
これからの「ロリアニメ」の話をしよう
Calendar
<< June 2017 >>
SunMonTueWedThuFriSat
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930
search this site.
tags
archives
recent comment
recent trackback
others
にほんブログ村 科学ブログへ にほんブログ村 科学ブログ 恐竜へ カウンター
admin
  • 管理者ページ
  • 記事を書く
  • ログアウト