塔の上のラプンツェル

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 オレ言ったっけ?その髪の色の方がいいって

 東日本大震災で映画館どころか電車も停まり電気も停まり、結局観に行けなかったディズニーのアニメ映画。
 ディズニーって今なおちゃんと童話を作ろうとしていて、それをベタだとかご都合主義だって言う人もいるけど、そりゃ童話なんて子供が読むものであっていい歳した大人が評論するようなもんじゃない。深読みすればいろいろメタファーはあるけどね。

 とにかく子どもの夢を壊さないようにディズニーアニメにはお決まりの展開があって、そこはもうあらかじめ決定されているところがある。どんなに時代が変わってもお姫様と王子様が結ばれてハッピーエンド!
 そしてもはやディズニーも古今東西のお姫様が出てくる童話をアニメ化し尽くしたんじゃないかって感じだったんだけど(苦し紛れにカエルプリンセスも出したし)意外にも『髪長姫』がまだ残っていて、その『髪長姫』を大体の設定そのままに若干ディズニーアレンジを加えたのがこの『塔の上のラプンツェル』なわけです。

 つーかこの『髪長姫』って珍話の多い童話界でもかなりの異色な設定だよな。
 高い塔の上にアウンサンスーチーさんのように幽閉されているお姫様が、塔の上から長い髪の毛を垂らして外にいる王子様を塔の中へ引っ張り上げて夜な夜なドンペリニョンなんて話、いろいろ辛いことがなければ思いつかないと思います。
 もちろん夜のドンペリニョンな部分はディズニーなのでNGなんだけど、それ以外は大体原作に沿ってやっててうま~くアレンジをしている。うん、もう現代でガチに童話を作ろうとしたらこれが限界だって位うま~く作っています。

 特にお姫様が魔女に幽閉されているという設定を、過保護なお母さんによる自宅軟禁に変えたのが上手いよね。昨今の親子の問題をつい真剣に考えてしまった・・・
 よく子離れできない親っていうのが問題になっているけど、あれって本当は子供を愛しているんじゃなくて煎じ詰めれば親の自己愛だったりするんだよね。
 娘の為とか言いながら自分の欲望の為にうまく娘を誘導し大人にさせまいといている親と、引きこもり娘の戦い・・・本当現代的なテーマに置き換えているのが上手やな~

 まあラプンツェルは引きこもりたくて引きこもっているわけじゃないんだけど(笑)、よく考えれば引きこもりのニートとかだって引きこもりたくて引きこもっているわけじゃないよな。
 社会の構造が変わってそれにうまく適応できない人が、勤勉な世代であった親の貯金で何とかつないでいるわけであって、この問題は言うまでもなくニートだけの問題ではない。マクロ的にはね。
 私も自分の親世代の就職話聞くと「本当にそんな時代があったのかよ!」って思うほど現在と状況が違う。我々がジュラ紀をイメージできないのと同じだ(誰もできねえよ)。
 これは別に親世代が楽をしていたとかじゃないんだけど、少なくとも就職活動に関して公務員は人気なかったし銀行員もいまいち。商社がとにかく花形だったって言うね。
 今なんて安定しているのが公務員くらいしかないっていう幻想があるからね。幻想じゃないか。リアルか。リアルにやばいのか。

 で、塔の上に幼少時から独り(とカメレオン)で暮らしている彼女なんだけど、持ち前の明るさでけっこう一人でも楽しく遊んでいるのが面白い。こいつは暗い部屋の中で体育座りして泣いているようなタマじゃないw
 だから塔にいようが出ようがとにかく元気いっぱい。童話の女の子っていうより「りぼん」などの少女漫画のヒロインってイメージだ。
 こういったアクティブなヒロインを最近のディズニーは好んでやっていて、ついにメチャクチャ保守的なディズニーを動かすほどに女性の社会的イメージが変容していったってことがよく分かるんだけど、まあ日本のサブカルではこんなのとっくの昔に完了していたので、女性が男性と同列に戦うって言う内容自体は別に驚かない。
 だって格闘ゲームやベルトアクションで女性キャラを男性キャラがボコボコにする位男女平等なサブカル文化で育ったのが私たちだから!
 ちなみに彼女の武器は「フライパン」だけど、あれって甲冑騎士には効果的な武器かもしれない。当時の兜は衝撃吸収が上手くできなかったからフットマンズフレイルとかで叩くと衝撃がもろに頭にきてやられちゃうんだよね。

 しかしあれだよね。ラプンツェルの日本語吹き替えをした中川翔子はハマり役だよね。これ「しょこたん(中川さんの別称)」をイメージして作ったんじゃないかってくらいピッタリ。
 言うまでもなくしょこたんは、元気いっぱいの活動的なアイドル歌手であると同時に、根はけっこうインドアなタイプで学生時代は教室で一人で黙々と漫画を描いていたようななかなか奥深い人だw
 その漫画の腕は「考える一コマ」でもトップクラスで、ダウンタウンの松本さんも「くやしいわ~」と嫉妬したほどである。
 だけど私やしょこたんってギリギリオタク第2世代で、オタクが「キモイ」と差別されたおそらく最後の世代だ。
 これ以降はオタクってかなり市民権を得て、とはいえ「キモイ」っていうのは変わっていないけど今は「キモイ」ってことをみんなが知っているのでそこまで嫌悪はしなくなったと思う(「萌え」とか「ツンデレ」とか「腐女子」そういったオタクのイメージを指し示す使い勝手のいい言葉が普及したのは大きい)。
 一番人が嫌悪感を抱くのって得体の知れないものに出会ったときだからね・・・
 
 私はなぜか漫画をバリバリ描いていたわりには差別の憂き目には会わなかったんだけど(Kという強力なファン&用心棒もいたしな)教室でのたち振る舞いが苦手だったしょこたんはなんかけっこういじめられていたらしく、傷心の旅で憧れのジャッキー様に会っていなかったらおそらく自殺していたほど人生のどん底を味わった人だ。
 そんな彼女の半生を知っているもんだから、塔に幽閉されながらも本を読んだり絵を描いたりして時間をつぶしているラプンツェルがしょこたんとオーバーラップして涙がつーって出てきそうになっちゃったよ。このキャラをしょこたんはどんな気持ちで演じていたんだろうってw
 しかししょこたんも数々の悲しみを乗り越えて今は逆にちょっと躁なんじゃないかってくらいはしゃいでいるんだけど、そんな一面もラプンツェルにはピッタリで、彼女が生まれて初めて塔から出て外の世界で大はしゃぎするシーンはしょこたん以外考えられない(断定型)!本当キャスティング巧いよなあ・・・

 そういや塔に幽閉されているお姫様と言えば世代によってはまっさきに『ルパン三世カリオストロの城』を思い出しちゃう人もいると思うんですが、確かに城及び城下街が湖(海?)にあるというデザインはかなり影響受けている気もするし、冒険の舞台がお城周辺に限定されているのもあの映画と似ている点ですよね。
 なにしろ『カリ城』にも水路や酒場のシーンは出てくるわけでこれは絶対狙っていると思うのですが、とにかく『ヒックとドラゴン』の時も言ったけど、背景が本当に上手い。
 もうデザインはおろか木の一本の配置に至るまで緻密に計算されていて、このCG世界を自由にテレビゲームで歩き回りたいほど美しい。
 そのうちテレビゲームのスペックが上がったらこういった緻密な背景がゲームとして処理できるようになるのだろうか??

 デザインと言えばキャラクターデザインもすっごいよかった。ちゃんとディズニーの描き方をふまえながら可愛く&リアルに仕上げている。
 歴代のディズニープリンセスの中では最も萌え系なデザインだったようにも思えるし、王子様役のあの盗賊もすげえカッコいいよね?むしろあの盗賊のグッズが欲しい位なんかニヒルでカッコイイ。
 よくCGで人間を作ると「不気味の谷」に陥って違和感が出るって言うけど、やっぱディズニーはとんでもなく表情をつけるのが上手くて「不気味の谷」なんてあっさり越えているしそこら辺は手書きで培った長年のノウハウがものを言っているんだろうね。

 あ、そうそう私が苦手な毎度おなじみのミュージカルのシーンなんだけどラプンツェルが城下で街の人たちと踊るシーンは私すっごい好きで(曲が超良かった)なんかミュージカル耐性ついたのかも(笑)
 お母様が「外の世界は怖いよ~」ってラプンツェルを歌で脅すシーンは「長えよババア」って思っちゃったけど・・・

 さて最後に一言。永遠の若さと健康を与えることができる黄金の髪を持つ女の子が皆に狙われるという内容のこの映画・・・私はずっと中世版ムーア裁判だよな~って思っていました。
 これは1976年ジョン・ムーアと言うアメリカの放射線技師の人が白血病を見事に克服し、そのメカニズムに大いに興味を持った医師たちがムーアさんの体を研究、彼に特殊な細胞があることを突き止めその細胞株で特許を申請したという話です。
 自分の体の所有権は自分のものと言うある種当たり前の権利を主張したムーア氏はカルフォルニア大学や研究者を相手取って裁判を起こしたのですが、手術によってとられてしまった組織の商業的権利は認められませんでした(※判決は1990年)。
 
 この騒動をベースにした話はあのクライトン先生も最後の作品『NEXT』でSF風にアレンジしているし、私も『走れシンデレラ』で近いことをやっているのでつい頭から離れなかったんですよね。
 本家でラプンツェルの吹き替えをしているのもムーアさん(Mandy Moore)だしね。これは偶然か必然か。
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