『80日間宇宙一周 Sea of hope』脚本①

ルヴェリエ「これは海王星を救った英雄の話です」

「ここは海王星。星のほとんどが瑪瑙色の海の星――僕のふるさとです。
この星はぼくが生まれるずっと前、大きな隕石が落ちて、陸地から何もかも奪っていきました。
たくさんの人が亡くなり、人々は希望を失っていました。それでもぼくはこの星が好きです。」

戦艦や潜水艦が取り囲む小さな島。その島の中央に巨大な城がそびえている。
海王星の王宮で12歳程度の少年が帝王学の授業を受けている。

家庭教師「いいですかルヴェリエ王子。我が海王星は今もなお多くの問題を抱えています。
ひとつめ。もともと少ない陸地が隕石によって更に減り、多くの民が海上での生活を余儀なくされているということ。
ふたつめ。いくつかの海域は隕石によって汚染されており、国内産業が空洞化し、国民の多くが失業し、飢えていること。」
「みっつめ。少ない陸地と物資をめぐって今も争いが続いていること。」
「よっつめ。国民の王族に対する不満は爆発寸前だということ。」

爆発音
城の外では国民のデモ隊と近衛兵の艦隊がにらみ合っている。
「政府は何をやっているんだ~!」
「雇用を増やせ~」
「おなかすいた~!」
「貴族の土地を解放しろ~!」

城内から窓の外を見るアラゴ。
アラゴ「騒がしいやつらだ」
王宮内の執務室に王族や閣僚たちが集まっている。
政策秘書によって長机に書類が置かれる。
ナイアド女王「さてみなさんお集まりいただいたわね。それでは閣議をはじめることとしましょう。まずはアクエリオス水産大臣から。」
水産大臣「は、いくつかの地方では深刻な食糧危機が起きています。汚染レベルが高すぎて食料生産が不可能だからです。やはりほかの星から食料を輸入し、それを配給しなければ・・・」
財務大臣「女王陛下、我が国の財政は破綻寸前です。ポンドはインフレ、他の星から物資を輸入しようにも自国通貨のレートが安すぎて購入することができません。惑星連合へ復興支援の打診は?」
外務大臣「それがですなスペンサー卿、惑星連合は追加の食糧支援を打ち切ることにしたのですよ。20年経っても海王星の復興がいっこうに進まないのは、惑星連合の支援が海王星の自立を妨げているからだとね。」
水産大臣「バカな!」
科学技術大臣「隕石による環境汚染は少なくとも200年以上は続くのですよ・・・」
財務大臣「このままでは我が国の経済は持ちません。やはり増税するしか・・・」
近衛大臣「そんなことすればさらに暴動が起こるぞ、鎮圧する身にもなってくれ。」
アラゴ皇太子「少ない陸地をめぐって争っていたのは衝突前も同じだろ。」
大臣たち「アラゴ様・・・」
アラゴ「金がなければ政治はできねえ。ならば国を立て直すために国民には耐えてもらうしかねえだろ。それが嫌な奴は国外に亡命でもなんでもすればいいんだ。」
「しかしアラゴ様・・・」
窓の外のデモ隊を眺めるアラゴ「あいつらはいいよな。俺が真っ先に逃げ出したいくらいだぜ」
一同が女王のほうに顔を向ける「女王陛下・・・」
女王「アダムス卿の意見は?」
アダムス首相「確かに増税は避けられんでしょうな。しかし今はタイミングが最悪だ。それにいくら増税をしたからといって自国通貨の価値が低ければなににもならない。問題は深刻なインフレをどうするかでしょう。」
水産大臣「とはいえ自国で物質的な生産が困難である以上・・・」
ルヴェリエが手を上げる「あの・・・いいですか?」
財務大臣「は、はいなんでしょう。」
ルヴェリエ「インフレを武器にしたらどうですか?ポンドが安いということは、他の星にとってみれば自分の星の人を使うよりも海王星人を働かせたほうが安く済むということですよね?」
財務大臣「ええ」
ルヴェリエ「ならばこの星に経済特区を作って外国企業を誘致して外貨を稼いだらどうですか?」
財務大臣「素晴らしい・・・!」
アラゴ「ああ・・・まさに教科書通りの解答だな。とっくの昔にそんなアイディアは出てるんだ。どこのもの好きがこんな海しかない星に企業を移すって言うんだ。」
アダムス「ルヴェリエ様。その構想は一度出たのですよ。エンタープライズゾーンといいましてな。
災害当初は様々な惑星から企業やボランティア団体が集まりましたが、いずれも長続きしませんでした。」
ルヴェリエ「それはなぜ?」
アダムス「この星が住みにくいからです。さらに旨みであるはずの海洋資源も汚染されているとなると、いくら低賃金で労働者を雇えるからといって・・・」
アラゴ「わざわざ病気になるような環境の悪い星で働きたくはないわな」
ルヴェリエ「・・・どこの星も大体こんなもんなんじゃないんですか?」
アラゴ「そんなことはない。俺が子供の頃は、この星は水着ひとつで海を泳げるリゾート地だったんだ。
この世の楽園って言われてたってのに・・・隕石の奴が何もかも悪いんだ。」
ルヴェリエ「・・・・・・。」
アラゴ「いいか小僧。正論もいいがもっと現実を見ろ。」
ルヴェリエ「現実って・・・」
アラゴ「俺たちの星はもう終わりってことだよ。お前の教科書には書いてないがな。」

閣議が終わる。
ぞろぞろと部屋を出ていく閣僚たち。表情が重い。

廊下。
デスピナ「ルヴェリエ」
ルヴェリエ「姉さん・・・」
「かっこよかったわよ~母さん喜んでたわよ」
「そうでしょうか・・・兄には机上の空論だと・・・」
「そうかなあ、私には話がむつかしくてよくわかんなかったけど、なかなかい~んじゃないの?
兄さんったらすねて文句ばっか言ってるだけだから。気にしないの」
「はい・・・」
「あ、ダーリンが待ってるから行くわね!ば~い!」

王室
アダムスの書類に何やらサインする女王
アダムス「それでは女王陛下」
女王「・・・これしか方法はないのかしら」
「残念ながら。では失礼します」
アダムスと行き違いに部屋に入ってくるルヴェリエ。
「母さん・・・」
「ルヴェリエ」

「この星はどうなるんですか?」
「それはあなた自身が考えることなのかもしれないわ・・・」
「ぼくが・・・?」
「あなたはどう思うの?」
「私は・・・王室の財産を貧しい人に分け与えればいいと思います。外ではあんなに困った人が大勢いるのに、ぼくらはお城で優雅な暮らしをしていていいんでしょうか・・・?」
「そうね・・・それができたらいいわね・・・」
「やれます、きっと。最後まで諦めなければ・・・」
ルヴェリエの頭を撫でる女王「・・・あなたは私の自慢の息子だわ。アラゴを見習わせたいくらい。」
「母さん・・・」
「あなたはあなたの好きにやりなさい。」

砲撃。揺れる場内
「!!」
女王が倒れる
女王を起こすルヴェリエ「母さん・・・!」
女王「なにごとです!?」

王宮の上空に巨大な戦艦が降りてくる。

王室に入ってくるアダムス「テロリストによるクーデターです!!」

城の周りのデモ隊の歓声。
近衛兵たちを倒して緋色の旅団の戦闘部隊が城に突入してくる。

王室
アダムス「近衛隊!」
女王を守るエガリテ衛士長「エガリテ隊ここに!・・・他の部隊はどうした!?」

緋色の旅団ナッシュ軍曹「連中ならオレたちが買収したよ。あんたらに手を貸す海王星人なんてこの星にほとんどいないんじゃないのか?」
エガリテ「なんだと?」
ピカール「まあまあその辺にしておきましょう軍曹・・・女王陛下に話があって参上しました」
エガリテ「貴様何者だ・・・」
ピカール「これは失礼。わたくしトリエステ・ピカールと申します。女王陛下に是非とも謁見を。」
女王「女王は私です」
剣を構えるエガリテ「陛下下がってください!貴様らテロリストには陛下には指一本触れさせんぞ!」
銃を構えるナッシュ「そうかい。こっちは民主的な話し合いをしようとしているんだがな」
女王「わかりました。話があるなら聞きましょう。
ルヴェリエ、あなたはエガリテとともにここから逃げなさい」
ルヴェリエ「でも・・・」
「エガリテ、王子を頼みますよ」
「は・・・この命にかえても」
エガリテとともに隠し扉から逃げるルヴェリエ「母さん・・・!」

ナッシュ「おい、逃げたぞ。」
ピカール「ほうっておきましょう。では女王陛下。」
女王「・・・・・。」

城に火の手が上がる

通路を駆ける二人。
ルヴェリエ「彼らは・・・」
エガリテ「おそらく緋色の旅団かと。」
「緋色の旅団?」
「圧政に苦しむ労働者が真に平等な世界を目指して結成したテロリストです」
「え・・・?」

連絡通路に立ちふさがる海王国の近衛隊
近衛隊「おとなしくしてもらおうエガリテ隊長」
エガリテ「貴様ら・・・!王家を裏切りテロリストに寝返ったか・・・!」
「俺たちにも家族がいるんでね。無能な政府には用はない。さあ王子を引き渡せ。戦友のよしみで命は助けてやろう。」
「ルヴェリエ様をどうするつもりだ・・・!」
「王族の連中をつるし上げなきゃ民衆の怒りは収まらねえだろ」
ルヴェリエ「そんな・・・」
エガリテ「おのれ・・・この先に脱出用飛空艇があります。王子はそれに乗って、彼を訪ねてください・・・」
懐からコンパスを差し出す

「ここは私が食い止めます、さあ行って!」
反逆した近衛兵たちと戦うエガリテ。
ルヴェリエは脱出艇の方へ走る。

追っ手「王子を逃がすな~!」

薄暗い通路で手招きしているアラゴ
アラゴ「ルヴェリエ!」
ルヴェリエ「兄さん!」
デスピナ「脱出ポッドはこっちよ!」

脱出用滑走路
小型飛行艇に乗り込むルヴェリエ
アラゴ「よし、操縦の仕方はわかるな?」
「兄さん達は?」
「残った脱出艇はこれ一機、それにこいつは一人乗りだ」
デスピナ「そんな・・・!あたしたちは乗れないの?」
「皇太子のオレが王宮から逃げ出すことはできねえよ。お前が羨ましいぜ、全くよ」
「そんな・・・」
デスピナ「お願い私も連れてって!あたしまだ死にたくない!」
「姉さん・・・じゃあこれは姉さんが乗ってください」
「え?いいの?やった~!」
テロリストの流れ弾に当たるデスピナ
「姉さん!」
「これでお前に決定だ。いいか逃げ切れよ。母さんのことは俺に任せとけ!」
「兄さん・・・」
「行け!!」

離陸する飛行艇。
王宮周辺では飛行艇と戦艦と潜水艦が砲火をまじえている。
王宮から広大な海へ飛び出すルヴェリエの飛空艇。
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