『マンガ学―マンガによるマンガのためのマンガ理論』

 著者はスコット・マクラウド氏。19日の『アベンジャーズ』オフ会の際に、パキPさんに貸していただいた絶版本。

 漫画についての本は日本にもそれこそたくさんあるけれど、この本は漫画家志望者が読むような漫画の描き方本ではない。漫画表現の構造を学術的に考察した研究本なのだ。
 漫画を連続性の芸術とし、コマとコマの非連続的な構成に対して、読者が連続的な意味性を能動的に補完するような、漫画特有のコンテキストについて言及するところとか、まるでエイゼンシュテインの映画論のよう(カットがコマになったような感じ)。

 というわけで「漫画文化は日本が世界一。アメリカごときに漫画が分かるのかよ」と馬鹿にしていた岡田斗司夫さんも、どっぷりハマってしまい監訳までやってしまったという、とってもインテリジェンスで読み応えのある本なのです。
 
 かくいう私も、後半の「美術史において絵画表現が再び意味性を重視しだした」っていうところあたりからすっごい面白くなってきちゃって、あとはもうあとがきまで一直線!
 漫画は恥じることのない日本の文化だ!というなら、私たち日本の読み手もこれくらいまで学術的に漫画を理解しても楽しいと思う。
 ※でもこの本、漫画で書かれている割には前述したとおりかなり内容が硬派で、正直一気読みはすっごい疲れます(経験者は語る)。

 まあそんな感じで本書は、美学的文脈から漫画という表現手法を1から定義していく。例えば、中世以降まで優れた美術作品はないと言われていた英国ロマン主義の画家ホガースを漫画の文脈で紹介するあたり、すっごい新鮮。
 漫画を取り巻く状況は日本よりもアメリカのほうがアゲンストなのかも。だからこそ著者は、古代~現代に至る全ての美術を振り返って、漫画の文脈が美術史にどのようにコミットしていたかを丁寧に論じていく。漫画だって立派な芸術なのだ、と。

 また『マンガ学』170ページからの「作家の6つのステップ」は私たちワナビ必読の章。
 6つのステップとは「1発想と動機」「2表現形式」「3文法」「4構成」「5技術」「6外観」なんだけど、著者のスコット・マクラウド氏曰く大体の漫画家志望者は6⇒1に進んでいくらしい。
 でも私の場合はストーリーから作っていくからこの6つのステップは全く逆で1⇒6に進んでいくんだよなあ。
 ・・・というか、6⇒1って優れた鑑賞者(受け手)が歩むステップじゃないか?とも思う。作家の精神性に他者が接近するときこの順序で紐解かれるような。大体は6どまりか、よくて5。

 またこの章でとりわけ印象的な「見てくれだけ良くても齧ってみると…からっぽだ(179ページ)」というちょっと毒のあるアナロジーは、粗造乱造されている「ゆる萌え漫画」に近いのかもしれない。
 私が思うに、この手の漫画は、その空っぽの空間に読者がアイデンティティを能動的に補完しているから意味(面白さ)が発生しているのであって、あのジャンルにあるのは器(場)だけのような気がする。
 だからこそこの手のジャンルにちょっとでも批判的な意見があると、ファンは脊髄反射的に反論してしまう。自分のアイデンティティを批判されたと勘違いしてしまうから。

 しかしアメリカっていうのは宗教のせいか、文化や歴史のせいかわからないけれど、どんな分野でもリアルにしっかりコミットするようなところがある。サブカルチャーと揶揄される漫画や映画の世界でもそう。
 リアルからの逃避のための文化というよりは、人がリアルに直面するためのきっかけになるような文化を作っているところがかっこいい。

 アメコミの方が日本も漫画よりも全面的に優れているとは思わないけれど、日本の漫画にはない勉強になるところはいっぱいある。
 そのひとつがこの「リアルを主題にすることから逃げない」という点だ。お説教臭くなくエンタメの形をとりながら、それでもできることはある気がする。最初から空気読んで諦めちゃなあ。表現者なんだから。

 そんなわけで『80日間宇宙一周』アイドル編を公開に踏み切った。もうなにも怖くない。いや怖いけど。すっごい怖いけど。
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