アメリカン・ギャングスター

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 ニュージャージーの人間はイカれてる。信じられっか?サツがワルいのを逮捕する。

 勤務先の中学生のおすすめ作品。『エイリアン』や、最近だと『ロビンフッド』『プロメテウス』のリドリー・スコット監督。SFの人ってイメージがあるけど、意外と社会派も監督してるんですよね。
 つーかラッセル・クロウ好きだよねw三谷幸喜と東京サンシャインボーイズって感じだよなw
 てことで今回の映画もラッセル氏があのいつもの表情で強大な権力に一矢報いる話。

 ラッセル演じるリッチー刑事のライバルとなるのが、ベトナム戦争に乗じてヘロインを密売していた大物ギャング「フランク・ルーカス」(演デンゼル・ワシントン)。
 どちらの人物も実在しており、特に軍の輸送機を使ってベトナムで生産したヘロインをアメリカにまで運んでいたエピソードと、アメリカに最初にできた警察の麻薬取締官が汚職まみれだった話は有名。
 多分「世界まる見えテレビ特捜部」か「アンビリバボー」か「世界仰天ニュース」のどれかで取り上げていて、それで知ってた。
 で、ああ!この話をもとにした映画か!って膝を叩きました。いや、実際には叩いてないけど。

 しかし社会秩序や公共の福祉のために働く正義の象徴「警察組織」「軍隊」がここまで腐り果ててたっていうのがすごいよね。マフィアやギャング顔負けだぜってw
 物語の舞台はベトナム戦争の旗色が悪くなって最終的に撤退する70年代前半なんだけど、その一過性のビッグウェーブに乗っかってフランクは今までのドラッグの市場に革命を起こし荒稼ぎをしてしまう。

 物語冒頭でフランクが敬愛するハーレムを取り仕切っていた義賊「バンピー・ジョンソン」が

 こういうのがよくない。なんの権利があって流通を勝手に変える?中間業者をみんな追い出して直接仕入れる、生産者たちからな。アメリカ人は職を失う。誰をナイフで脅せばいいのか・・・それもわからない。無駄だフランク。責任者などいない・・・

 とか言ってたんだけど、皮肉にもバンピーの跡を継ごうとしたフランクはその直販店の方式を裏のマーケットに持ち込む。徹底的なコストカット。合理主義。従来のツリーモデルからリゾームへ。裏社会のネオリベって感じなのだ。
 これに不満なのがドラッグのおこぼれを掠め取っていた中間業者、つまりマフィアや悪徳警察だ。そういう連中を敵に回し、時に排除しながらも、まるでイタリアのマフィアのようにファミリーを拡大させていく。
 まるで往年のホリエモンのようで、差別される立場の黒人が裏社会でのし上がっていく様は、まさにロビンフッド並みの爽快感だけれど、それによってたくさんの人間が薬物中毒で死んでいく。フランクのドラッグって純度高いから。

 日本にいるとなかなか実感がわかないけれど秩序っていうのは、ほんとう紙一重のところで成り立っているんだなあってこの映画を見てしみじみ思う。
 短絡的で愚かな判断する人がある一定数を超えると社会ってものはあっさりひっくりかえってしまうわけで、本当にゲーム理論通りなんだよ。
 ちょっと前に現代人のあまりの当事者意識のなさを嘆いたけれど、本当、「ルールなんて誰かが勝手に決めてくれてそれに従ってりゃいいんでしょ?」なスタンスじゃ危険なわけだ。
 じゃあ「在日の人をリンチしましょう!」なんてルールができたらオレたちはやっちゃうのか。自分はやらなくても黙認しちゃうのか。ルールが一度出来たらみんな黙認しちゃう気がする。でも、それでいいのか。良識や道徳心はないのか。
 大人がそういった民主主義の構造についてあまりに無理解で何も考えてないんだもの、子供だって社会のルールを守るわけない。

 なんでそういったルールがあるのか。そしてルール自体を見直し、議論を重ねてルールをよりよくしていくことが民主主義ではルールを守ることよりずっと大切だとなぜ教えないんだろう。
 ルールは公共の福祉のためのツールでしかないのに、そのツールがいつの間にか目的化してしまっている。本来ルールは変えることができるものだ。そういった矛盾を多分子供の何人かは肌で感じとっているんだろうな。
 そういうことはルールを守ってから言えって言うけど、守れるくらいならそのルールを変えろなんて言わないだろって。

 最後の最後にリッチーとフランクの司法取引によって悪徳警官も一斉検挙されるが、ここらへんの流れが実話とは思えないほど寓話めいてて、なんというか取り調べ室の対話のシーンはえらく宗教的だ。
 リッチーって賄賂、買収のたぐいは絶対しないバカ正直なやつで、これだって作中では深く描写されないけど宗教的な理由だと思うし。
 まああの人正直に浮気しちゃうから奥さんに「あなたの嫌いな汚職警官と一緒に地獄生きよ」って怒られちゃうんだよなあ。
 嘘つかなきゃ悪いことしていいってわけじゃないもんな(笑)
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