『あなたが死んだら私は悲しい』

 著者は心理学者の碓井真史さん。

 朝起きたら、アマゾンからこの本が届いてた。・・・すごいよね。(確かに注文したのは私だけどさ・・・)
 まあ言うまでもなく、自殺の本なんだけど、金八先生が言うように日本人ってとにかく自殺しちゃう。
 自殺で亡くなった人は年間三万人をキープし続けており、世界ランキングでは五位。女性の自殺率に関しては第三位。毎日百人近くの人が自ら命を絶っていることになる。
 世界中の貧しい国を渡り歩いたマザーテレサさんでさえ「本当の貧困はここにある」と述べた国、日本。彼女は、パッと見豊かで安全な、まるでエデンの園のような国に、第三世界にはない「飢えの本質」を見たわけだ。

 人生がうまくいっていたら私たちはいい気なもんで、生きる意味とか本質なんて考えない。でも普段のんきだった奴が急に「形而上学的には・・・」とか哲学的なことを言いだしたら要注意だ。
 人間、なにかうまくいかなかった時に初めて悩みだすもの。そして悩めば問題が解決すると思ってしまうから苦しいのだ。
 悩み続けるだけで、悩みに対する答えが出るならば、私たちはきっと人生でこんなに追い込まれはしないだろう。
 そもそも、そういった問に答えなどないのだ。出るならとっくにソクラテスさんあたりが解いちゃってる。
 これは何も自殺に限ったことじゃなくて、生きている人間なら誰しもが経験すること。それなら、自殺する人としない人の境界線ってなんだ。
 その人の気質なのか、運なのか、環境なのか・・・まるで交通事故や自然災害と同じように、どの人にも平等に自殺という災厄が降りかかってくるようだ。なにしろ一般的に成功者と言われる人だって死を選ぶことがあるのだから。

 私は自殺って行為は、その人が出した究極的な結論だと思う。動物と神の中間にあると言われる人間の精神が、本能や肉体に勝利したというか。キングオブ自由意思というか(私は構造主義も好きなので人間の自己決定権については懐疑的ですが・・・)。
 もちろん自殺を美化したり正当化しているわけじゃないんだけど、ほかの動物と比べて人間って興味深いなあって思うところでもある。
 どこの世界に「配偶者ができないので死にます」とか「生きるのが辛くなったから死にます」と言って自殺しちゃう動物がいるんだ。
 いや、いくらかの社会性昆虫などでは、群れのためにどう考えても自殺行為としか言えないような行動を取る個体はいるんだけれど、私たちの自殺もメタ的に見ればそれと同じなのだろうか。
 集団の個体数調整のために、私たちの精神にはあらかじめ自爆スイッチみたいなものが取り付けられていて、一定の許容量を超えたら死ぬようになっているのかもしれない。

 言うまでもなく「死」というのは究極的な命題で、なんといったってこの地球上に70億人近い人がいるのに、誰ひとり死んだことがある奴がいない。誰も知らないものがこんなに身近にある。それが恐ろしい。
 もし自分が死んだらどうなってしまうんだろう。どこかに生き返った経験がある人でもいれば、私たちの心も少しは救済されるのだろうが・・・あ、でも生き返った人が「うげ~あの世は本当地獄だったよ、くせえし、痛えし・・・」とか言ったら、それはそれで悪夢だな。やっぱ最後の最後のお楽しみにとっておこうw
 
 しかし、今の若者はもっとすごい。悪く言えば想像力が貧困とも言えるんだけど、7割の子供が死んだら生き返るって思ってるんだって。
 いや、その可能性だってないわけじゃないし、物理学的には私たちの死骸は原子レベルでリサイクルされちゃうから、輪廻って言えばそうなんだけど・・・
 問題は、テレビゲームや漫画やアニメの出来事を、リアルと適切な距離感を置いて認識できないということだよ。
 そして自分のアイデンティティにしてしまうから、人類が何千年かかっても解けないようなアポリアにあっさりと結論を下してしまう。
 そういう子供たちにとって、世界は「自分がわかるもの」でしか構成されていない。無知の知なんてないわけだ。

 カウンセラーの先生に聞いた話なんだけど、今の子どもを自分の子ども時代と当てはめて勝手にわかった気になっちゃ絶対ダメなんだって。
 キレた子に「そんなに言うならナイフで刺してみろ」なんて強気に挑発して、内心(どうせそんな度胸もねえくせに・・・)なんて思っていると、本当に刺してくる。
 それは彼らが極悪で残酷だからじゃない。だって死んでも生き返ると思ってるんだから。ハリセンでなんでやねん!と同じノリでやっちゃうのかもしれない。
 
 ・・・こんなことをクリスマス・イブに考えている時点でいろいろ察されるような気もするんだけど、この日にこの本が届いちゃったもんはしょうがない。
 そんな感じで、いや~っはっは今年はクリスマス・ウツだぜ!って居直って、ページをパラパラめくってたんだけど、これがまた、予想とは違って癒される。

 日本一優しい気持ちになれる自殺の本なんだ。

 内容に関しては・・・その、いろいろ為になって、素晴らしく、その、漫画のネタにいくつか使いたいなあって感じで、ここでは詳しく書きたくないんだけど(ずるいでしょw)、それでも一つだけ言いたいのは、イデオロギーがなくなって、自分自身で生きる意味を模索せざるを得なくなった現代では、遅かれ早かれ、宗教性の需要がゆりかえしで高まるんじゃないかなって思ってる。
 なぜなら全ての人が自由意思や自己責任論に基づいて、己や社会の実存に向き合えるほど、人間は強くはないから。
 宗教なんて言うとオウム真理教かよ、カルトかよって拒否反応を示す人もいるんだけど、はっきり言って私たちがハマっている、漫画やアニメ、映画だって、多少なりとも「物語」がある。
 そして素晴らしい物語とは、ずいぶん前にもブログで書いたけど「ルールが明確化」されている。明確化されたルールとは煎じ詰めれば、因果律。
 そう、宗教が教え諭す「神」というわけだ。

 なんかほとんどの日本人って、科学や哲学、芸術と同じくらい宗教にも偏見を持っているんじゃないか。でも人間に宗教観があったからこそ、科学や哲学、芸術は発展した。そしてその恩恵を私たちは受けている。
 宗教とは高い壷を売りつける団体のことじゃない。物語だ。そして物語は常に私たちの身近にあり、私たちに生きる希望を灯してくれる。
 クリスマスが本来キリスト教的にどんな日だったか知らなくてもいい(私もよく知らん)。でも、誰もがクリスマスとは愛する人と共に過ごす日であることを知っている。それも宗教であり物語なんだ。だからこそ人は生きていける。
 キザだけれどクリスマスくらいは一番大切な人にこう言ってやろうよ。

 あなたが死んだら私は悲しい。

 あ~彼女欲しい。
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