シュガー・ラッシュ

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ Turbo-tastic!☆☆☆☆☆」

 そろそろ専門じゃないことにも挑戦してみたっていいんじゃない?

 テレビゲーム版トイ・ストーリーと謳われるディズニーの最新アニメ映画。私はそこまでゲーマーじゃなかったので、見るつもりはなかったんだけど、見た人見た人大絶賛で、いつの間にやら感化されてしまい観に行ってしまった。

 確かに、ピクサーアニメの脚本のメソッドにすごい沿った完成度の高い映画だった。アメリカってこういう架空のものをリアルの文脈でメタに描くのって得意だよなあ・・・アメコミヒーローがもし現実に存在したら・・・という『アストロシティ』や『ウォッチメン』とか、リアルの延長線上に荒唐無稽のものを描いているから、こんな世界あったら面白いなあ、とワクワクしてしまう。夢を見せてくれるんだよね。

 やっていることは本当に『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』そのまんまなんだけど(冒頭の悪役グループセラピーは『ファインディング・ニモ』のサメだねw)、それでもそれを本気で描いているから圧倒されちゃう。
 一人称視点のアーケードガンシューティング(FPSG)はああなっていたのか!とかw理屈を超えたヴィジュアルの説得力がすごいw

 まあ、とにかく脚本の王道をおさえたすっごい出来のいい映画なんだ。キャラの設定の仕方や置き方が教科書通りで、①ちゃんと主人公に大切なものがあって(人望)、②それが与えられず阻害されて(悪役だからヒーローになれないという設定)、③屈辱を受けて(町長に馬鹿にされる)、④分別のない選択をして(他のゲームに行っちゃう)、冒険が始まるという、ピクサーメソッドそのまんま!
 こうやって考えると、感動する話ってちゃんとしたルール…規則性があって、なんだよオレらはただ単純に反応刺激を繰り返すコンピュータかよって味気ない気もしちゃうけど、それでも感動しちゃうのが悔しいw

 仕方がないんだ。軍曹には花婿をサイ・バグに殺されたという悲しい設定がプログラムされている。

 でも私、この映画感動というよりは笑い泣きしちゃってさwもうこの映画『レ・ミゼラブル』と一緒で出来が良すぎて、特にああだこうだ言っても蛇足&ネタバレになるから、深くは考察しないけど、これだけは言わせて欲しい。

 ターボタスティック!のあいつなんなん??(爆)

 素晴らしい映画は必ず悪役がよくできているって思うんだけど、あいつはホントもう『ナイトミュージアム2』のカームンラーさんや、『キャプテンアメリカ』のレッドスカル様以来のヒットだよwう・・・うぜ~~~!!!!!!!!!!
 なんなんだろうな、あのエキセントリック少年ボウイww結局『カンフーパンダ2』と一緒で、ラルフの対極にいるのが、あのターボタスティック!なんだけど(正しい資質をもった悪役と、持っていないヒーロー)、とにかくもうウザすぎて大爆笑w
 正しい資質(ライトスタッフ)があるのはヒーローだけとは限らない。それをああいうメタな設定(ヒーローや悪役はあくまでも職業的な役割)を上手く活かして描いているのはまいった。ただのネタじゃなくて、ちゃんと意味があるという。

 でも、アイツ最初はターボタスティック!のゴリ押しだけだったけど、それで失敗したら、今度はもうちょいやり方が周到になっていたっていうのがいいよねw学習するターボタスティックwやっぱ「シュガー・ラッシュ」でもメチャクチャ浮いてたけどな。だって一人だけやたらテンションたけーんだもんww
 かくいう私も多少ああいうところあるから、反省しないといけないんだけどね(芸術家気質のやつってああいうバカが多い)。でもやっぱああいう人好きw自分のカリスマ性に酔ってて自分勝手で欲張りwでもなんか憎めないというw
 芸術家だけじゃなくて、政治家ってあんな人多そうだしね。『アイアン・スカイ』の大統領を別のベクトルでコミカルにした感じかな。それとも男のリーダーと女のリーダの違いかな。
 う~んいろいろ考察してみたくなるな、ターボタスティック。

 例えば日本でも、ず~っと国会議員の椅子にしがみつく人とかいるんじゃん。あれさっさと引退しろよって気もするけど、やっぱり気持ちはわかるよ。
 自分の権力や肩書きにしかアイデンティティを感じていないなら特に。そして、悲しいかな、そう言う人はやっぱり肩書きだけを見られちゃうんだよね。引退してただの人になったとき、もう誰も自分のことを見向きもしてくれないんじゃないか。

 とはいえ、そういう辛い現実をうまく自分の中で受け入れられさえすれば、人生は幸せになるんだよね。結局どう生きてどう死ぬかは自分との戦いというか。
 だって、どんなに名声があっても、どんなに富があっても人間の欲望にはキリがないもの。それにいまのご時世、どんな人気者でもそれを僻み相対化してしまおうとする人がいる。そう言う意味ですっごい普遍的なテーマを扱っているんだ。ターボタスティック!はw

 去年のマイベスト本『下流志向』にも書いてあったけど、今の世の中ってパッと見華やかでみんなの賞賛を受けやすい職業ばっかりが取りざたされるけど、本当は一見地味でも「周りの人の不利益を事前に排除しておくような」目立たない仕事だって、とっても尊い仕事なんだよね。
 実際、みんなが嫌っていた悪役のラルフがいなくなったことで、「フィックス・イット・フェリックス」はゲームとして成立せず、あのゲームのヒーロー以下すべての人たちが不利益を被ってしまった。こういうブーメランを教訓的に描く話はさすがはディズニーだなあって感心したよ。
 というかピクサーのコンテキストが入って、さらにパワーアップしたよねディズニーwなんというか去年の『メリダとおそろしの森』よりもピクサーっぽかったというかw
 
 あ、ピクサーといえば、ヴァネロペちゃんの声って、どっかで聞いたことあるなって思ったら『トイ・ストーリー3』のボニーの声(諸星すみれさん)なんだよねw
 で、この人うまいな~って調べたらなんと13歳・・・!大ベテラン声優(ラルフが山寺宏一)と子役の共演だったのか!!

 最後に一言。『モンスターズ・インク2』そう来たか。(まさかのビバリーヒルズ青春白書・・・)
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