「面白い度☆☆ 好き度☆☆」
飛行機は美しい夢だ!設計家は夢に形を与えるのだ。
なんか魔が差して公開初日に見に行っちゃった。ということで人生二度目の映画館でジブリアニメ。私やっぱりジブリが苦手で、それはジブリそのものが受け付けないのか、日テレのジブリのゴリ押しに憤っているのか分からなくなってきてるんだけど、とにかく見る限りは先入観を持たずに鑑賞しました。
いや、本音を言えば見てもいないのに「あれはゴキブリの話」とかさんざナメきって最終的に土下座することになったアリエッティの奇跡をちょっとだけ期待したんだけど、なんというか・・・フツー。
まいったぞ。『崖の上のポニョ』と感想が全く同じだというw
んで書く事がなくて困っている最中なんですが、結局のところ、ジブリ云々じゃなくて、その人がアニメに何を求めるかで感想は変わっちゃうよね。
オランジュリー美術館とかで印象派の絵画を見るのが好きな人は、ジブリアニメのあの映像美に惹かれるのだろう。前にも何度も言ったけど(だって感想が同じなんだもん!)絵画で形のないものの表現、重さや風はすっごい高度なんだって。しかもタイトルが『風立ちぬ』よ?そりゃ半端ないよ。畳の目だって描いている(ような気がする)
そこらへんの技術は、まあとにかくすごい。まるで絵巻物のような大量の人ごみを同時に動かしたり、飛行機の機体のわずかなきしみによって、どの部分にどれだけの強度やしなやかさがあるかすら感じさせるように描いてるんだもん。
あ、そうだ。飛行機といえば、唯一あれは笑っちゃった。飛行機が落ちるシーン。あれはアニメどうこうじゃなくて実際の映像でも私ツボなんだけど、もちろん本当はシャレにならない大事故で笑っちゃ不謹慎なのはわかっているんだけど、でも、どうにも私ダメなんだ。なんかうまく説明できないんだけど、爆笑NGの香りがプンプンしてさw
航空力学って科学技術の中でもかなり高度で、現代科学の粋を結集させたのが、飛行機――それも新型機なわけじゃない。それがちょっとのミスであっさり羽が折れてポテッてあっけなく落ちちゃうのが、線香花火的なペーソスと、偶像破壊的なカタルシスのダブルパンチって感じで、吹き出してしまう。よくドッキリ番組でVTRを巻戻したり早送りする際にかかる「♪デッデデデッデ、デッデデッデッデ」ってやつあるじゃん?あれをかけたらもう最高だよなあってw
ジブリが航空機墜落を描いたら最強だってことはわかった。
・・・え~っとなんの話だっけ?あ、そうそうアニメに何を求めるかの話か(;^ω^)私が重視するのは教訓とか、「これは一本取られた!」っていう新しい視点なんだけど、まあこれはアニメに関わらずすべての媒体に自分が求めている点か。この話は、一度置いておこう。
で、映像美についてなんだけど、これって今のアニメの福音と不幸なんだよね。だってヴァルヴレイヴをはじめとして今のアニメの映像ってどれも本当にすごいんだもの。
画力のインフレというか。その映像美のアベレージが今はかなり高いから、自分なんかはもう画力の高さを刺激に感じなくなってきててさ。それってある意味不幸なことだよね。実際自分であのレベルの絵を描いてみればわかるよ。描けないもん。
画力だけじゃなくて演出や構成といったアイディア面も、例えばシュールレアリスムの文脈を萌えに持ち込んだ『魔法少女まどか☆マギカ』みたいにすごいものがあるし。
だからジブリはすごいなあって思うけど、身を乗り出して「うおおおおお!」って思わないんだ。ジブリって自然主義的というか、かなり保守的な画風だから「すげえ!」よりはどこか安心してしまう。実際日本で人気が高いのはラファエロのような女性のうまい画家と印象派だそうだ。なおセザンヌのような後期印象派は人気が低い(山田五郎著『知識ゼロからの西洋絵画史入門』)。
で、案外それがジブリの人気の秘密なのかなあって。ジブリって一度も続編を作ってなくてピクサーと比較されちゃうけれど、実はすっごい保守的なアニメばっか作っている気がするんだ。中庸というか、どんな人でも当たり障りなく見れるように、政治的なメッセージ性とかが(宮崎さんの中では明確にあるにしても)すっごいマイルドに抑えられていて、わからない人には全然認識できないというか。
ピクサーはその点けっこうはっきりとメッセージを伝えちゃうんだよね。伝わっちゃうことを恐れていないというか。これはどっちが優れているとかじゃないんだけど、意外と国民性なのかもしれない。
この前マイクル・クライトンボットが言ってたんだけど、こういう主題をぼかして、見たい人にそれぞれ判断を委ねるようなやりとりって、実はアニメ鑑賞だけにとどまらず、議論を避ける日本人の戦略としてすっごいあるよなあって。答えを出さないことが答えみたいな。だから議論が上達しないんだよね。
そう言う意味で、ジブリ最大の秘密は、宮崎さんは怒るだろうけれど「安心」なのかもしれない。安心して見れるから、みんな何度も見ているのに日本テレビを回してしまう。中には文句言いながら見てる奴もいる。恐るべき同調圧力!
まあ確かに、あの人は日本一安心できる変人かもしれないな。本当にやばいやつだったら周りの人みんな不安になるだろうしね。いろいろ気性の激しい人みたいだけど、やっぱりどことなく可愛いんだろうね。
でも天才ってずり~よなあwもしあの脚本を全くの素人が書いてきたら、この映画絶賛している人、評価したのかなあって。「詰め込みすぎです。もっと視点をまとめましょう」とかダメ出ししたんじゃないかなあ。でもその荒削りさすら評価されるんだから巨匠権限すげえよ。
あ、そうそう一部で話題になっていた、主人公の声。別にどうってことなかった。
それは素晴らしい悟りだ。『プロメテウス』のゴーリキを知ってれば誰だって許せる。(『マスターキートン』第4巻※嘘)
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