造岩鉱物
地球上のほとんどの岩石はだいたい7種類ほどの造岩鉱物で出来ている。
岩石の造岩鉱物は偏光顕微鏡で観察するが、偏光板(物理学者のニコルさんが作ったのでニコルとも言う)一枚で観察することを開放ニコル(オープンニコル)、二つの偏光板を直交させて観察することを直交ニコル(クロスニコル)と言う。
直交ニコルの場合、直進する光は遮断されてしまうが、試料の結晶を通過した光は屈折をするため、二枚の偏光板を通過し観察することができる。
以下、白っぽい岩石(酸性岩)に含まれているものから順に紹介する。
①石英
無色、もしくは半透明。
非常に硬く、風化に強い。へき開はしない。
二酸化珪素(SiO4四面体)が、公園の回転遊具のように立体的に網目状に組まれてできている。
SiO4って、じゃあ二酸化珪素じゃなくて四酸化珪素じゃねーかって思うけど、SiO4四面体は結合の際に酸素の部分を隣同士で共有、つまり”半分こ”するので、1ブロックあたりの化学的組成はSiO2となる。
②カリ長石
白色、もしくは赤。
その名のとおりカリウムがたくさん含まれている長石。
石英同様、二酸化珪素が立体的に網目状に組まれてできている。
③斜長石
白色、もしくは灰色。
結晶の形は柱状。
へき開は1~2方向。
白っぽい岩石に含まれる斜長石はナトリウムが多く曹長石(アルバイト)と呼ばれる。
黒っぽい岩石に含まれる斜長石はカルシウムが多く灰長石(アノーサイド)と呼ばれる。
また、カリ長石も長石もアルミニウムの含有率が高い。
石英同様、二酸化珪素が立体的に網目状に組まれてできている。
④黒雲母
花崗岩や流紋岩など白っぽい岩石に含まれる。そのため花崗岩はわかめふりかけおにぎりのように見える。
黒雲母というが、風化すると褐色になる上、観察方向でいろいろな色(開放ニコルで黄褐色~黒褐色)に見える強い多色性を持つ。
結晶の形は柱状。
へき開は明らかで1方向。
二酸化珪素はシート状につながっている。
⑤角閃石
多色性があり開放ニコルで青緑~黄褐色。
結晶の形は柱状。
へき開は明らかで1~2方向。
二酸化珪素は二列の鎖状につながっている。
⑥輝石
ほとんど無色(淡緑~暗緑色)。
結晶の形は柱状。
へき開は明らかで1~2方向。断面は八角形。
二酸化珪素は鎖状に一列につながっている。
⑦カンラン石
オリーブ色。
結晶の形は粒状、または短い柱状。
上部マントルはほとんどカンラン石だと考えられている。
二酸化珪素は独立して存在している。
ちなみに(マグネシウム+鉄)/(珪素+アルミニウム)の比(=密度)は造岩鉱物ごとに
カンラン石→輝石→角閃石→黒雲母の順で低下。
最も密度が小さいのは、無色鉱物の長石。
火成岩
マグマが冷えて固まってできた岩石の総称。
酸性岩
白っぽい火成岩(二酸化珪素65%以上)。
花崗岩や流紋岩など。
多い順に、ナトリウム、カリウムの酸化物が多く含まれている。
塩基性岩
黒っぽい火成岩(二酸化珪素45~52%。それ以下は超塩基性岩)。
玄武岩、斑レイ岩、カンラン岩など。
多い順に、鉄やカルシウムやマグネシウムの酸化物が多く含まれる。
ちなみに、これらは化学の酸性、アルカリ性と全く関係がない。また、塩基性岩は地球にある岩石全体の半分弱(42.9%)を占める。
玄武岩質マグマ
高温で粘り気が小さい。黒っぽい。
盾状火山になる。ハワイのマウナロア、三宅島、三原山
安山岩質マグマ
中くらい
成層火山になる。桜島、浅間山、富士山、男体山
流紋岩質マグマ
低温で粘り気が大きい。白っぽい。
溶岩ドームになる。昭和新山、有珠山、雲仙普賢岳、二子山
結晶分化作用
マグマに含まれる成分は液体から固体になる凝固点がそれぞれ異なる。そのためマグマ(液体)が冷えていくと凝固点の高い成分から固体(=結晶)になりマグマから分離していく(晶出)。
この作用によってさまざまなマグマや火成岩ができる。
①まず最初に玄武岩質マグマが冷却されるとカンラン石や輝石の結晶ができて(比重が大きいため)マグマだまりの底へ沈んでいく。
このとき晶出した鉱物でできる岩石がカンラン岩で、残ったマグマは安山岩質マグマになる。
②その後角閃石や、斜長石が晶出する。斜長石は初期はカルシウムの割合が多く、やがてナトリウムの割合が増えていく。
このとき晶出した鉱物でできる岩石がはんれい岩や閃緑岩で、残ったマグマは流紋岩質マグマになる。
③そしてカリウムの多いカリ長石が晶出、残ったマグマは化学組成が変化するとともに量も減っていく。
二酸化ケイ素の量は相対的に増加していき粘度もアップ、最後に石英が晶出する。
火成岩の岩体
岩体とは地質図で示される広範囲に分布する岩石の塊のこと。以下のものがある。
岩床
地層の層理のあいだに水平に挟まれた岩体のこと。
岩脈
地層を斜めに横切る形で板状に貫入した岩体。
底盤(バソリス)
花崗岩質岩石の大規模な岩体。貫入時期の異なるさまざまな深成岩の岩体が合体したものだと考えられている。
マグマだまり
地殻内でマグマが溜まっている場所。
マントルでできたマグマは浮力によって上昇を始めるが、マントルと地殻の境界(モホロビチッチ不連続面)で上昇を一時的にやめ、周囲の物質を取り込んだり、揮発性のガスを出すことでさらに密度を減らし、再び上昇、密度の釣り合うところにマグマだまりを作る。この部分にどんどんガスが貯まると圧力は次第に上がり、最終的に噴火をする。
鉱床
有用な鉱物が密集している場所。火成活動以外にも風化・堆積作用によっても作られる。
正マグマ鉱床
マグマが高温の時期に、鉱物がマグマだまりの底で沈殿したタイプ。クロム鉱やニッケル鉱など。
ペグマタイト鉱床
マグマの大部分が固まった時期に、マグマの残液から石英、長石、雲母などが大きな結晶を作ったタイプ。
熱水鉱床
マグマから分離した熱水に含まれる金属元素が沈殿し、濃縮したタイプ。金、亜鉛、鉛鉱など。
海底火山活動によってできるものは、海底熱水鉱床という。マンガンノジュールやコバルトクラストなど。
スカルン鉱床
石灰石が熱水によって化学反応を起こしてできたカルシウム豊富な鉱物の集合体。
火山の噴火
マグマは地下のマグマだまりに一時蓄えられたあと、マグマに含まれる水蒸気が低圧になったために気泡となり膨張、岩石を打ち破って地表に噴出する。これをマグマ爆発という。
ちなみに、地下水が間接的にマグマによって温められ急膨張して起きる爆発は水蒸気爆発、地中のマグマが地下水や海水に直接接触して、一気に発生した大量の水蒸気によって起こる爆発をマグマ水蒸気爆発という。
また、火山の噴火様式は、噴火の仕方が穏やかな順に5つに分けられる。
アイスランド式
広いエリアの割れ目から大量の溶岩が流出。
二酸化珪素の量は最も低く(=粘度が低い)、溶岩の温度は最も高い。
ハワイ式
山頂や山腹の割れ目から溶岩を流出する。
ストロンボリ式
火山中央部の火口で起こる噴火(中心噴火)。マグマやスコリア(黒っぽい軽石のこと)を間欠的に噴出。
イタリアのストロンボリ山でよく見られるため、この名前が付いた。
ブルカノ式
中心噴火。高圧の火山ガスによって、マグマが爆発的に噴出される。
イタリアのブルカノ山から。
プリニー式
中心噴火。激しい爆発で、大量の軽石や火山灰を降らす。
二酸化珪素の量は最も高く(=粘度が高い)、溶岩の温度は最も低い。
ベスビオ火山大噴火を経験し、それを記録したローマ時代の学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスにちなむ。
変成岩
岩石が地球内部の圧力や熱に長期間さらされることによって化学反応を起こし、組織を変化させたものを変成岩という。
以下の四種類が有名。
①結晶片岩
鉱物が一定の方向に綺麗に並んだ岩石。このような組織を片理という。片理の原因は岩石に大きな圧力がかかったためである。
②片麻岩
粗い有色鉱物と無色鉱物が互い違いに分布し縞模様になっている岩石。
③ホルンフェルス
細かく緻密で硬い鉱物を持つ岩石。鉱物の配列に規則性はない。
ホルンフェルスでは、岩石中の一部の鉱物が、斑状組織のように大きく成長することがある(斑状変晶)。
④大理石(結晶質石灰石)
方解石の結晶がモザイク状に集まって出来た岩石。石材として有名。
変成作用
高温で安定していた鉱物は、常温常圧の環境下で水と反応すると分解され、低温で安定する粘土鉱物に変わってしまう。この反応は、熱を放出し、水が加えられる水和反応である。
逆に粘土鉱物を熱すると、鉱物は水を放出することで分解され、高温で安定する鉱物に変わる。この反応は熱を吸収し、水分が失われる脱水反応である。
陶芸において、粘土を窯に入れて熱すると焼き物ができるのは、このためである(再結晶)。
広域変成作用
プレートが衝突することによって岩石の組織が変化すること。
プレートの沈み込み部分(低音高圧の場所)では結晶片岩が、マグマだまりの周辺では変麻岩ができる。
接触変成作用
熱い花崗岩質マグマが接触することによって、岩石の組織が変化すること。
砂岩や泥岩がマグマに接触すると、黒色のホルンフェルスに、石灰岩がマグマに接触すると白色の大理石になる。
キンバーライト
カンブリア紀以前のすごい古い大陸のすごい深いところから、すごい火山活動ですごい速さ(マッハ1)で噴出した超塩基性の岩石。ダイヤモンド原石が含まれている岩石として有名。
ダイヤモンドは極めて高い圧力の条件下で形成されるため、日本のような新しいプレートからはみつからないと思われていたが、2007年に愛媛県で1μmという超ミクロなダイヤモンドが発見された。まさにダイヤモンドの赤ちゃんである。
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