華麗なるギャッツビー

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ 可哀想☆☆☆☆☆」

 それで友よ。僕は君から見てどんな印象だ?無責任な噂や誹謗中傷で間違った印象を持ってもらいたくなくてね。

 あぎゃ~これは映画館で観ておけばよかった・・・なんかテレビCMだと、どんな内容の映画かいまいちよくわからなくて、とりあえずセレブ達が夜な夜な乱痴気騒ぎして「スーパーフリー!イエー」とか言ってるだけのエロ映画なんだろうってスルーしちゃったんですが、これも『ロラックスおじさんの秘密の種』同様、すごい切ない話。
 1920年代のアハハうっふんな『セックス・アンド・ザ・シティ』というよりは、『ロミオとジュリエット』みたいな感じだった。

 とにかく原作が名作小説だけあって、人物描写の掘り下げみたいなものがすっごいうまいよなあって。
 漫画やアニメって誇張の文化だから、人間のある一部の面だけを切り取ってそれを拡張させて、記号的な「キャラ」にしちゃうんだけど、やっぱり人間ってそんな単純なものじゃないし、漫画やアニメのキャラのように、現実の人間や社会を見てしまうのはリスクが大きいと思うんだ。
 で、最近は私も小説を書いているんだけど、やっぱり漫画から入った人だから、無意識の内につい人物をキャラ化しちゃう癖があるんだよね。

 で、オタクの人なんかは「創作物語要素事典」みたいなのを作って、その構造をメタ的に解釈してネタとして楽しんでいるんだけど、じゃあそういった記号の順列組み合わせ“だけ”で、人を感動させる物語が作れるのかっていったら絶対違うわけで。
 まあ私も、あの辞典は笑ったけど(^_^;)あれはあれで、ひとつの独立した“作品”だし、あれを読んで物語が作れたら苦労はないって。
 だいたい、あの栄進ゼミの現代文講師林修先生もドラマの脚本にチャレンジしたことがあるそうなんだけど、一作も書き上げられなかったんだって。あんな頭のいい人でもダメなんだから、やっぱ創作は甘くないよ。

 まあ、どんな小説もテーマやメッセージがある以上、多かれ少なかれ現実のファクターの切り出しはおこなっているんだけど、そのバランス感覚のようなものが、やっぱり漫画やアニメとは違う。デイジーみたいな女性キャラは、日本のアニメは百年かかっても作ることができないと思うし。
 やっぱり漫画やアニメって、教養のないちびっこ(と大きなお友達)でも楽しめるようにわかりやすく作らないといけないから、正義は正義、敵は敵ってやるのが王道で、そうなるとやっぱり、この映画の登場人物みたいな、いい面と悪い面がモザイクのように混じりあった描写は難しいよなあって。
 じゃないと、「こいつは作劇上どういうポジションなの??」読んでいる方が安心できないもん。
 で、それを逆手に取ってるのが、この映画の上手いところ。つまり、ギャッツビーという謎の金持ちを出して、「こいつは一体なんで毎晩乱痴気パーティをやってるんだ?」「どっから金は出てるんだ?」と、観客の興味を惹きつけさせている。
 こういう芸能人のゴシップってみんな好きだし、ネットとかでも「この人どうやって生活してるんだろう?」って人結構いるじゃん。この時間帯にブログ書いている私もそうだけど。
 あまり記号化されていない複雑な人物描写だからこそ、面白くできる物語のパターンっていうのもあるんだよねっていう。

 で、このギャッツビーの正体がまた、まあ、ネタバレになるけど、スーパーポジティブマン。こういうバイタリティのある人物ってすっごい魅力的であると同時に、なんか儚さも醸し出すから切ないよね。
 言ってみれば、強烈に光ってすぐに割れちゃう豆電球みたいなもんで、ギャッツビー(と、それを取り巻くバカ)って世界恐慌前の株取引に狂ったニューヨークの熱気(=実体経済じゃない虚構)を象徴する存在だったのかもしれない。
 でもね、でもね。ギャッツビーは確かに成金だったんだけど、その動機がすっごい一途でいいんですよ。これが『ロミオとジュリエット』たる所以。しかも結末は、それよかずっと悲しい。

 パーティでは、さんざん彼の汚れた正体が取り沙汰されていた。
 だが、彼はそこで汚れのない夢を抱いていたのだ。


 やっぱりベンチャー系の若い社長って「がはは金じゃ金じゃ~」というよりは、「人生楽しまなきゃ損でしょう」みたいな純粋な人が多くて、なんかすごい爽やかなんだよね。なんというかスポーツでもやってる感じ。
 で、結局一番残酷なのは、そういうカリスマにたかってくる連中で、まあそんなことギャッツビー自身も知ってただろうけど、そういう人間の汚さとかを直視しなきゃいけないのが、金持ちのペーソスの一つの要因なのかもしれないよね。

 自分の漫画でも、こういうポジティブな性格のキャラが、すっごい切ない状況に追い込まれちゃう展開ってよくやるから、こういう話やっぱり好みなのかもしれない(ただサイドストーリーになることが多いけど)。
 『80日間宇宙一周』の土星編も、自分の星を豊かにしたいって会社大きくした企業家があっさりみんなに捨てられちゃったりw
 いま小説を執筆している天王星編も、夢をあきらめない明るい女の子が、やっぱり不幸なことになるし。当事者だけが、その不幸に気づいていないっていうシチュエーションが、すっごい胸に来るんだよなあ。『カーズ』のメーターとか。
 私自身は、小学校の頃通知表に「楽観的すぎます」って書かれちゃったタイプなんだけど、小4の頃から毎日「死んだらどうしよう」って考えているタイプなんで、ポジティブだかネガティブだかよくわからないんだよねw
 多分すっごいネガティブだからこそ、ポジティブに生きるしか選択の余地はねえって思っているのかもしれない。くよくよしてても遅かれ早かれ生命も地球も宇宙も滅ぶしね。そこまで視野を広げちゃうと、世の中の大抵の問題って許せるからね。

 彼は長い長い道のりを目の前にある夢をつかもうとして、前へ前へと突き進んできた。
 夢が過去のものだと気づかずに。

 緑の明かりは象徴だった。

 それは年を追うごとに遠のいていく輝かしい未来。
 あの時は逃してしまったけれど、あすはもっと速く走ろう。
 そしてもっと腕を伸ばそう。
 そうしたらいつか手に入る。
 だから進もう。
 流れに逆らう船のように。
 絶え間なく過去へと押し戻されながら。
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