「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ 3D酔い注意☆☆☆☆☆」
結果はどうあれ、これは最高の旅よ。
見た人こぞって大絶賛&「映画館で見ろ」の『ゼログラビティ』をやっと鑑賞。
せっかくJAXAや若田さんたちが安心!安全!の楽しい宇宙旅行を啓蒙しているっていうのに、ワーナーブロスはなんて映画を撮ってしまったのでしょうか。個人的には『ジュラシック・パーク』以来の純度100%のサスペンス映画!こういう映画久々に見たなあ。スピ監督最近こういう怖い映画撮らないから。
そんなわけで、まあ~恐ろしい映画です。宇宙に漂流って言ったって、地球の軌道上をちょろっと船外活動しただけなんだけど、宇宙のどこであれ人間は裸一貫じゃ生きられないわけで、結局果てしない宇宙が舞台でありながら、すっごい息苦しい閉鎖的な感覚を味わえます。
『ショーシャンクの空に』で囚人が「太平洋?おっかねえよ、そんなでっかいもんは」っていうセリフがあったけど、「周回軌道?おっかねえよ、そんなでっかいもんは」って感じです。
まあ、もともと私は飛行機にすら乗れない臆病者・・・というかテクノロジーに意外と不信を持っているので、こんな映画見なくても、宇宙がいかに怖いのかを『アルフ』で学んだし(「宇宙?何もなくて・・・寒いのよ。」のセリフ)、なによりいま執筆している作品が宇宙を題材にしているから、取材しながら「こんなとこ行きたくないよな~」って思ってました。
宇宙って美しいんだけど、圧倒的な虚無なんだよね。人間以上の神の領域というか。あ、ちょっと生命の皆さんは立ち入り禁止なんで・・・感がw
とはいえ、この映画の大惨事の原因は宇宙そのものにあるんじゃなくて、『ジュラシック・パーク』同様、典型的な人災で(ロシアは反省するように)、超高速で飛んでくる宇宙ゴミがとにかく怖い。もう宇宙の暴走族ですよ。奴らの登場シーンはパラリヤパラリヤ~が脳内で再生されてしまった。すっごい元気よく飛んでくるんだ、またwで、スペースシャトルも国際宇宙ステーションもまるで紙袋のようにグシャグシャに叩き潰しちゃうからね。
さらには、宇宙じゃないと絶対お目にかかれない死体とか出てくるし(アンドロメダ病原体以来の衝撃映像)、理科の授業で見せたら、作用反作用の法則と慣性の法則は、いろんなトラウマと共にばっちり植え付けることができると思う(^_^;)教材用として買っちゃおうかしら。つーか無重力だと火ってああやって燃えるんだね。
そんな感じで、宇宙の描写が、実際どこまで正しいかは若田さんや毛利さんに聞くとして、とにかくリアルなんだけれど、この映画で興味深いのは、恐怖を与える効果を最も担っていたのが、宇宙では聞こえないはずの「音」であったということ。
ホラーって結局、音響がものを言うところあるじゃないですか。実際スピ監督の『宇宙戦争』もテレビ放送よりも映画館で見たほうが音がすごいから、3倍増しで怖かったし(初見ってのもあったけれど)。だから、この映画は無重力映像体験が取り沙汰されているけれど、音の使い方がとにかくうまいなあって思いました。
晴れときどき、衛星の破片ね。
宇宙ゴミで思い出すのが、ピクサーアニメの『WALL・E』だけれど、『WALL・E』と『ゼログラビティ』の共通点って、消火器で宇宙遊泳可能ってところだよね。ジョージ・クルーニーも船外活動の時、無駄に宇宙遊泳で遊んでないで、消火器の一つや二つ確保してれば、エネルギー切れにならなかったのになw
んで、違うところ。宇宙船で宇宙ゴミを吹っ飛ばせない。この宇宙ゴミの問題は、70年代くらいから言われていて、宇宙から帰ってきた宇宙船の船体にボコボコの傷がついていたことから問題視され始めた。今回の映画は、爆発した衛星の破片なわけだから、相対的な速度が半端なく、しかもサイズもでかいので、あんなのが実際に増えちゃったら、もはや人類は地球から宇宙へ出れなくなるんじゃないか?って気もするんだけど・・・まあ、別にほとんどの人は出たくないと思うけど(この映画でそんな人は確実に増えた)。
ただピンボールのように連鎖反応をした宇宙ゴミが他の衛星やステーションを破壊しちゃうのははた迷惑な話だ。ロシアは猛省しなさい!
でさ、宇宙ゴミにも何かいいところはないものかなあって帰りに考えてみたんだ。そして思いついた。未来、宇宙から異星人が侵略してきて、いざ宇宙船を地球へ着陸させようとしたとき、高速移動する宇宙ゴミが船にぶつかって「げっなんだこれ!?バリヤーか!?フフフやるな地球人」って撃退して…くれないね。
しかし、この映画って大作映画には珍しく、登場人物もほとんど二人しかいないんだけど、サンドラ・ブロック演じる医学博士の心理描写が、まるで『2001年宇宙の旅』のデビット・ボーマン船長のごとく、丁寧かつ哲学的に描かれているということ。インナースペースとはよく言ったもんだ。
サンドラ・ブロックが地球でどういう生活を送っていたのか、そういうシーンは直接的には描かれず、宇宙でのジョージ・クルーニーとの会話で触れられるだけなんだけど(彼女の技術のくだりも完全なマクガフィン)、その断片的な情報の散りばめ方が上手で、彼女が自分の人生を虚無的に送っていたことがわかる。彼女を愛してくれる人は、もう地球にはいないのだ。
誰か空を見上げて、君を想っている人はいるのかい。
でも、生還が絶望的な宇宙で、何度も死ぬ思いをしながら驚異的な悪運で(本当どんくさいんだ、この人w普通なら5回死んでます)命をつなげた彼女は、徐々に自分の生き方を悔い改め、過去を受け入れ、神に祈り、時には犬のモノマネをし、自分の人生を肯定できるようになる。そう言う意味で、本当哲学的な寓話になってるんだよね。
自分の人生、とりわけ死というのは、いくら人のせいが得意な人でも、他の人に押し付けることはできない。彼女を最後まで支えてくれたジョージ・クルーニーが、またかっこいいんだけど、クヨクヨして自分をいくら哀れんでいても、悲しい経験や過去はどうにもならないんだ。どこかで、そんな自分を受け入れるしかない。
『あなたが死んだら私は悲しい』という、去年のクリスマスに届いた自殺の本では、突然末期的な病気を宣告され、余命もない人がどうやって死と向き合うか、受け入れるかについて、このように書いてある。それを引用して、今回は筆を置いてみたい。
私の友人の女性が重い病気にかかりました。子育ても一段落し、仕事に復帰した日に、自分がいのちに関わる病気にかかっていることを知ります。彼女はもがき苦しみます。体の痛み、治療の困難さと、そして自分がなぜこんな病気になったのかという思いに苦しみました。妻として母として職業人として、さあこれからというときにになぜこんなことになったのかと。
しかし、クリスチャンであるこの女性は、なぜ病気になったのかという疑問から抜け出し、何のために病気になったのかと考え始めます。そして、闘病生活の中での思いを、当時ようやく普及し始めた電子メールをとおして人々に伝えました。彼女は最期まで愛と感謝を人々に伝え続けたのです。私自身を含めて、どれほど多くの人が彼女から励まされたことでしょうか。
「なぜ」という疑問から、「何のために」という積極的思考へと発想を変えることで、彼女は自分の人生に意味を見出したのです。
――『あなたが死んだら私は悲しい』101ページ
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