参考文献:杉谷 隆、松本 淳、平井 幸弘『改訂版風景のなかの自然地理』
円錐火山の一生
①粘性の低い溶岩を噴出して火山体を成長させる(富士山はまだこの段階で8万歳ほどの若い火山)。
↓
②溶岩の粘性が次第に高くなり、厚い溶岩流が重なった階段状の山腹斜面を形成。
↓
③火山体が成長すると、重力的に不安定になった山頂部が大崩壊を起こし、山麓に岩屑流堆積面が形成される。
↓
④噴火様式は次第に爆発的になり(粘性が上がる)、多量の火砕流を出すようになり、火山体の周辺には火砕流台地が形成される。
↓
⑤多量のマグマが放出されると、地下に陥没を生じてカルデラが形成され、さらにその中に溶岩円頂丘が形成されていく(箱根山はこの段階で40万歳)。
↓
⑥火山活動が終息すると火山体は急速に侵食されていき、数十万年もすると断片的な溶岩や火砕流堆積物が点在するだけになる。
扇状地の形成(4月出題)
山麓の谷口で川幅が急に広がり、水深が浅くなって運搬力が落ちると、そこに砂や礫が堆積して扇状地ができる。
扇状地が形成されやすい地域的傾向として①中部山岳地帯の盆地域では起伏比(集水域の勾配)が大きいこと、その臨海部では隆起量が大きいこと②関東平野では堆積場が平野域にあること(扇状地の広がる空間があること)③日本海側では豪雨が強くないこと。洪水流量が大きくなると砂礫が遠くまで流されてしまい、河床勾配が小さくなりすぎる。
これらの条件が不利な西日本には扇状地は少ない。
山地の隆起様式
①曲隆山地
圧縮された地殻が100kmの単位でゆるく盛り上がったもの。活断層は少ない。
②褶曲山地
圧縮された地殻の褶曲によって形成。古い奥羽山脈では褶曲が進んで地層が破壊、山麓に逆断層ができている。
③逆断層地塊山地
圧縮された地殻が破断し、その断片が交互に乗り上げ形成。木曽山脈など。
④横ずれ断層地塊山地
横ずれ断層の一部の地塊が高原状にせり上がって形成。飛騨高原、丹波高原など。
⑤正断層地塊
正断層の引っ張る力によって地殻が裂けて形成。
植生遷移
植生は常に様々な植物のせめぎ合いの結果現れるものである。
溶岩の裸地も草原から森林へおよそ千年の時間をかけて、徐々に変化していく。この変化を遷移といい、最終的にできる林を極相林という。極相林では樹木が枯死しても、森全体の樹種構成は変化しない。
温暖湿潤気候の日本では遷移のクライマックスは森林になることが多いが、その過程で現れる樹種は地域によって異なる。
シラカバ林は本来のブナ林が破壊された際にできる二次林であるが、このような二次林は西日本ではシイやカシ、それ以外ではコナラが多い。
高山地帯の植生(5月出題)
高山帯は中部山岳地帯で標高2500m以上、北海道では1000m以上をいい、森林が生育する限界という意味で森林限界と呼ばれる。
コマクサ(可愛い花)やハイマツ(マツだが高さが1~2mくらいにしかならない)といった高山植物が生える。高山植物は肉厚の葉を持ち根が発達、夏が短いので初夏に一斉に花を咲かせる。
周氷河現象
植生が乏しい高山帯では地表がむき出しなので、凍結・融解の繰り返しによって礫が粉砕、構造土ができること。氷河周辺の寒冷地に見られるから、こう呼ぶ。
雪線
氷河ができるには、雪が積もる量が溶ける量を上回り、残雪が再結晶する必要がある。
標高が高いほど氷河は形成されやすく、その最低高度を雪線という。
オランダ・スコットランドのゴルフ場
オランダやスコットランドは2万年前(最終氷期)には厚さ数千メートルの氷床に覆われていて、面的に激しく侵食され凹凸のある広大な岩盤の裸地になった。
侵食土砂は氷河周辺に運ばれてモレーンを作り、凹地は池になっていることもある。
土壌が貧弱で気候が冷涼なので芝地もよく維持できる。
ゴルフはこのような地形を利用するスポーツだという。
日本では、逆に多大な労力をかけて、オランダやスコットランドの貧弱な自然環境を再現している。日本でゴルフをやるならば最も向いているのは、礫床河川の川原が良いという。
砂浜海岸
沖積低地では河川が運ぶ大量の土砂が堆積し、砂浜海岸が見られる。前浜と呼ばれる海側にゆるく傾斜した斜面には、砂がやや盛り上がったバームという部分ができそこにはよくゴミが打ち上げられている。
陸側では風で運ばれた細かい砂が砂丘を作ることがあり、その上には人工のクロマツの防風防砂林が見られることが多い。
近年遠浅の砂浜では、干拓地や埋立地が広がり、護岸ブロックや消波ブロック、高潮、津波防御のための巨大堤防の建設が進んでおり、さらに全国の主要河川にダムが建設されたことから河口まで運ばれる土砂が減少、自然の海岸線は1993年の時点で55.2%(島嶼部を覗くと44.8%)しか残っていない。
瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ=瀬戸内海中央部のこと)に面する織田が浜(愛媛県今治市)は瀬戸内海最大の砂浜海岸だったが、港湾、埠頭整備のために西側の三分の一が埋め立てられコンクリート護岸が伸びる人工的な風景になってしまった。
台地と丘陵(6月出題)
平野周辺の山地との境界部に見られることが多い。
台地や丘陵を作る地層は、山地のものと異なり、数十万年前~数万年前の新しい時代に、当時の低地や浅海に堆積したものであるが、海岸付近では昔の海底が隆起して出来た海岸段丘も台地に入る(火山活動によって出来た溶岩台地や火砕流台地はここでの台地には含まれない)。
台地と丘陵は、時代によって区別され、台地は約13万~7万年前の最終間氷期に形成された地形、丘陵はそれよりも古く標高が高いものを指す。
地盤運動が隆起傾向なら古い地層が台地や丘陵に、沈降傾向ならば沖積低地が広がる。
海水準変動
地球規模の環境問題の一つとして海面上昇がある。温室効果ガスによって対流圏の気温が上昇、海水の熱膨張、山岳氷河の融解、グリーンランドや南極の氷床変化を引き起こし、その結果として界面が上昇すると言われている。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば21世紀末までに0.09~0.88m界面が上昇すると予測されている。
インド洋のモルディブや、南太平洋のツバル、キリギスなどの標高数mしかない珊瑚礁の島々、バングラディッシュなど三角州や湿地帯に多くの人が住んでいる途上国では、十分な護岸や堤防がなく、毎年高潮による浸水被害や海岸浸食が発生している。
山の湖と海の湖
日本には自然の湖が600以上ある。
山の湖とは、火山活動によるカルデラ・火口・マール(マグマが水と触れて水蒸気爆発を起こしてできる小さな火山)などの凹地や、溶岩・泥流の堰止めによってできる湖。北海道、東北、南九州の火山地域に見られる。
海の湖とは、海岸部で砂嘴→砂州→沿岸州(堤防状の砂州)の発達によって外海と隔てられてできる湖。オホーツク海沿岸、北関東や北陸から山陰地方の沿岸部にかけて見られる。
湖は中国・四国地方、九州北部には極めて少ない。
干潟の自然環境(8月出題)
現在の東京湾沿岸部は世界で最も人工改変された海岸地帯だといわれている。戦前までは広大な干潟が広がり乗りの一大養殖地帯になっていたが、戦後になると工場群や団地、ごみ処理施設を建てるため大規模に埋め立てられ、深刻な水質汚染が進んでしまった。砂浜には本来存在しないはずの礫が見られ、干潟に生息する野鳥は姿を消してしまったのである。
九州の有明海には面積が2万3000haもある日本最大の干潟が残されている。有明海の干潟は干満の差が4.9メートルもあり、陸と海が交互に入れ替わる干潟の豊かな生態系は「魚のゆりかご」と言われている。珪藻を食べるムツゴロウという魚はわずか1平方メートルに一匹の割合で生きており、少ない面積で多くの生物が暮らしていることが見て取れる。
鹿児島県喜入市以南、薩南諸島~沖縄にかけての島々の干潟にはマングローブ林が発達している。耐塩性を持つヒルギなどの樹種によって形成されるマングローブは、豊かな生物環境と同時に、人々の資源(燃料、住居、船の材料)も提供している。
さらにマングローブ林は海岸の浸食や高潮から内陸を守る役割も果たしているが、世界的に見ると、燃料や建材を得たり、海岸部でのエビの養殖場を建設するために大量に伐採され消滅の危機に瀕している。
中部日本の6つの季節
①冬(12月中旬~3月上旬)
北西季節風によって西高東低の冬型の気圧配置になる。
日本海側で多降水、太平洋側で寡降水になる。
↓
②春(3月中旬~6月上旬)
季節風が北へ後退、温帯低気圧と移動性高気圧が交互に通過し、天候が周期的に変化する。
ユーラシア大陸から黄砂が飛来する。
↓
③梅雨(6月中旬~7月中旬)
梅雨前線帯が本州付近に停滞、全国的に降水量が多く、日照時間は少ない。
ちなみに北海道では梅雨ははっきりしない。
↓
④盛夏または夏(7月下旬~8月下旬)
北太平洋高気圧が北上することで、東アジアの風系が北上、高温な晴天が続く。
↓
⑤秋霖(しゅうりん)または秋雨(9月上旬~9月下旬)
北成分の風が南下し、秋雨前線帯が停滞。台風による降水も多い。
↓
⑥秋(10月上旬~12月上旬)
春と同様、温帯低気圧と移動性高気圧が交互に通過し、天候が周期的に変化する。
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