久々の経済学覚え書き。今回は国際経済について。
フランソワ・ケネー(重農主義)
元々はヴェルサイユ宮殿の宮廷医師。
農業を重視し当時(18世紀)の重商主義を批判。アダム・スミスに先駆けて、自由放任、レッセフェールを主張。『経済表』はレオン・ワルラスの一般均衡理論(ミクロ経済学)、ケインズの有効需要理論に影響を与えた。ディドロとダランベールの『百科全書』にも寄稿。
デビット・リカード(比較生産費説)
アダム・スミスを読んで経済学の道に入ったイギリスの経済学者。
『経済学および課税の原理』で比較生産費説(比較優位説)を主張。
国際分業を訴え、穀物法(保護貿易)を支持するイギリスの地主を批判し、商工業者の主張する自由貿易を擁護した。
フリードリッヒ・リスト(保護貿易主義)
ドイツの経済学者。19世紀のドイツは工業後進国であり、『経済学の国民的体系』において、関税や輸入数量制限などの保護貿易を主張した。
発展し始めた幼稚産業には国際競争力はなく、自由貿易はその分野の発展の可能性を摘んでしまうと考えた、
自由貿易を主張したリカードと同じく、国際分業を訴え、さらにEUにつながる欧州統一理論のパイオニアでもある。
カルテル(企業連合)
同じ産業の企業が生産量、価格、販売市場などについて協定を結ぶこと。
日本では独占禁止法で禁止されている。
19世紀のドイツはイギリスに対抗するため、販路確保を目指して団結。当時のビスマルク首相に働きかけて関税を引き上げさせた。
トラスト(企業合同)
同じ産業の企業が合併し、新しい大きな企業を作ること。
三菱東京UFJ銀行など。独占禁止法により制限がかけられている。
コンツェルン(企業連携・企業結合)
持株会社があらゆる産業分野の傘下企業を支配すること。~~グループなど。
戦前の財閥がそれで、GHQによって解体されたが、現在は原則解禁されている。
コングロマリット(複合企業)
様々な産業や業種で合併と買収(M&A)を繰り返し多角的に事業を行う巨大企業。
戦前の財閥とほぼ一緒だが、一族経営がコングロマリットには見られない。
アメリカのシティグループなど。
国際収支
国際取引における収入と支出。
IMFのマニュアルによれば、貿易収支(モノの輸出入)、サービス収支(輸送、旅行、金融、知的財産)、所得収支(雇用者報酬、利子・配当。メジャーリーガーのギャラなど)、経常移転収支(外国への食料支援、医薬品の援助、労働者の送金)があり、それらを合わせて経常収支と言う。
経常収支=貿易・サービス収支+所得収支+経常移転収支
現在の日本は貿易・サービス収支が低下し、所得収支が増加している(成熟した債権国の段階)。
また投資収支(海外工場建設、外国株購入)とその他資本収支(道路、ダムなどの資本形成のための無償資金援助、特許権買取)を合わせて資本収支と言う。
資本収支=投資収支+その他資本収支
開発援助委員会(DAC)
経済協力開発機構(OECD)とともに設立された援助を推進する下部機関。
OECDの下部機関はほかにも貿易委員会、経済政策委員会がある。
プレビッシュ報告
国連貿易開発会議(UNCTAD)の事務局長プレビッシュさん(アルゼンチンの経済学者)の報告。「援助よりも貿易を」がスローガンとして掲げられた。
フェアトレード
途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を促す適正な価格での取引をいう。
コーヒー、バナナ、カカオなどが有名。
資源ナショナリズム
多国籍企業に支配されてきた途上国の天然資源を、自国の主権下に置こうとする動き。
新国際経済秩序(NIEO)
ニエオと読む。1974年の国連資源特別総会で採択。
途上国の天然資源に対する恒久的主権、多国籍企業の規制、途上国に不利な交易条件の改善などを求めた。
特恵関税
貧しい国の輸入品を特別に低い関税や無税で受け入れること。
セーフガード
緊急輸入制限のこと。
特定産品の輸入量急増によって自国産業に損害が生じた際に、一時的に輸入を制限する措置を言う。日本では中国産のネギ、シイタケ、い草について2001年に発動された。
GATT(関税と貿易に関する一般協定)
自由・無差別・多角をモットーとする。
多角的貿易交渉会議は1960年のディロンラウンド(第5回)から「ラウンド」と呼ばれることになる。
GATTケネディラウンド(1964~67年)
一括引き下げ方式による工業製品関税引き下げ。
GATT東京ラウンド(1973~79年)
農作物の関税も引き下げ。非関税障壁(輸出補助金、工場規格、安全・衛生基準、数量制限など)の軽減。
GATTウルグアイラウンド(1986~94年)
農作物の非関税障壁撤廃。例外なき関税化。
サービス貿易の自由化。知的財産権の保護。
マラケシュ協定(1994年)
世界貿易機関(WTO)が設立。
暫定的なGATTと異なりWTOは正式な国際機関で、モノの貿易以外にもサービス貿易、知的財産も対象とする。
また紛争処理機能が強化され紛争処理の小委員会に提訴できるようになった。小委員会の判断(パネル)に不満があれば上級委員会に上訴もできる。
最初のラウンドは2001年のドーハラウンド。
無差別原則①最恵国待遇
ある国が貿易相手国の関税率を引き下げた場合、他のすべての加盟国にも同じ待遇をしなければならないこと。
無差別原則②内国民待遇
国内税や国内法が輸入品よりも国内産品をえこひいきしないということ。
互恵性の原則
交渉当事国同士が互いに譲歩しながら自由化に向けて合意形成を行うこと。
政府開発援助(ODA)
オフィシャル・デベロップメント・アシスタンス。
途上国の経済の発展、福祉の向上のために先進国が行う経済援助。
二国間で行われる贈与と貸付、多国間で行われる国際機関への出資、・拠出がある。
日本が行う貸付を円借款という。
1970年の国連総会では各国のGDPの0.7%をODAに当てるという目標が採択。
日本は総額で見れば世界有数の援助大国だが(96年では第一位、2011年には五位に転落、現在トップはアメリカ、次いでドイツ、イギリス)、ODAに占める割合は低く(2012年では0.19%)、無償援助の割合も低い(贈与は47%)。またODA事業において工事の請負い、資源の調達を日本企業に限定することを紐付き援助と言い、国際与論の批判を浴びた。
後発開発途上国(LDC)
飢餓や内戦により累積債務に苦しむ国。アフリカ、特にサハラ以南に多い。
その中でも更に厳しい国を最貧国(LLDC)と言う。
地域的経済統合(リージョナリズム)
結びつきがゆるい順から以下の5段階がある。
自由貿易協定(関税障壁を緩和、最終的に撤廃を目指す)
↓
関税同盟(域内の関税撤廃&域外では共通の関税を課す)
↓
市場統合(ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に移動)
↓
通貨統合
↓
政治統合
自由貿易協定(FTA)
特定の国や地域間の関税を撤廃し、モノやサービスの流通を自由にする協定。
経済連携協定(EPA)
モノやサービスだけでなく、労働力の移動や知的財産権、投資などにも分野を広げた協定。
FTAをパワーアップさせたようなものだが、ニュースでは割と区別せずに使っている。
ヨーロッパ統合の歩み
1957年
ローマ条約
ヨーロッパ経済共同体(EEC)ヨーロッパ・エコノミック・コミュニティ
↓
ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)ヨーロピアン・コール&スティール・コミュニティ
ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)ヨーロピアン・アトミックエネルギー・コミュニティ
↓
1967年
ヨーロッパ共同体(EC)ヨーロピアン・コミュニティ
↓
1979年
ヨーロッパ通過制度(EMS)導入。共通通貨エキュ(ECU)
↓
1986年
単一ヨーロッパ議定書(市場統合へ)
↓
1993年
マーストリヒト条約発効
ヨーロッパ連合(EU)ヨーロッパ・ユニオン
↓
1998年
ヨーロッパ中央銀行設立(ECB)
↓
1999年
ユーロ導入、アムステルダム条約発効(政治統合の強化、拡大)
↓
2003年
ニース条約発効(アムステルダム条約を強化)
↓
2009年
リスボン条約発効
EUの新基本条約で欧州理事会常任議長(EU版大統領)と外務・安全保障上級代表(EU版外務大臣)を新設。
単一通貨
メリット
安定した通貨、金融政策が可能。
域内の為替変動が除去できる。
為替取引の手数料が不要になる。
貿易や投資活動が活発化する。
巨大な経済圏になり、通商に有利。
域内の旅行が楽。労働力の移動に制限がない。
参入市場の拡大が容易。
デメリット
加盟国によって景気循環が一致しないので金融政策が難しい。
金融業は為替手数料が取れない。
域内の地域格差問題。
給料の高い国へ労働者が流れ、給料が低い国は失業者増加に歯止めがかからない。
域内の価格競争が激しくなりすぎて企業利益が減る。
北米自由貿易協定(NAFTA)
南米南部共同市場(MERCOSUR)
ラテンアメリカ統合連合(ALADI)
東南アジア諸国連合(ASEAN)
アジア欧州首脳会議(ASEM)
ASEAN自由貿易地域(AFTA)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
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