『芸術による教育』の要約②

「第2章 芸術の定義」要約
 第1章においてリードは、芸術教育における「教育」の部分を定義したのに対し、この章では「芸術」について基本的な定義を行なっている。
 リードは芸術の定義を、科学の領域から客観的に行なうとし、美を定義する上で重要な要素である形について、自然界に見られる形態には美的な秩序構造(数学的規則)があることを指摘している。リードによれば、自然とは人間の個人的特性の外部にある美の基準であり、自然と芸術の関係について、自然の形の内部構造についての無意識直観的な模倣であること、また自然の形の内部構造に由来する規則を十分理解していることという二つの点を挙げている。つまり模倣する対象(自然)の構造の理解が重要であり、それが人工的な芸術作品にしろ、自然物にしろ、美しい形とは収斂されるのだという。
 次にリードは色彩について、形の表面的な要素であるものの、感覚に大きな影響を与えるものであるとしている。色彩は「赤は怒りのイメージ」というように人間の無意識的な心理作用として働き、また色彩の視覚的特性を活かし、複数の色の調和によって、平面に三次元の形を暗示することができることも挙げている(色価)。
 芸術における色や形とは、そのものの物質的性質を強調し、またこれらを対比し組み合わせることで生まれるバランス、リズム、シンメトリーによってイメージや状態を暗示することを構成と定義している。
 三つ目にリードが取り上げるのは、科学的な芸術観ではなく、主観的な側面、鑑賞者の重要性である。リードは鑑賞者による感情移入を、鑑賞者が自分の主観的感情を芸術作品に投影するのではなく、鑑賞者が芸術作品の中に感情の要素を発見し、その気持ちを作品の要素と同一化することだと定義している。
また、主観的気質の心理学的類型に基づき、美的活動も四つに区別することができるとリードは論じ、全ての人間が従うべき唯一の芸術の類型はなく、人間の数だけ芸術も存在するとしている。
1.思考的美的活動・・・写実主義など。客観的対象の正確な描写をする
2.感情的美的活動・・・理想主義など。視覚イメージを駆使した一つの独立した現実を作り出す。
3.感覚的美的活動・・・表現主義など。感覚や経験を近くした時の反応を造形化する。
4.直感的美的活動・・・抽象的様式。個人の主観的要素をすべて排除し、空間、量、色彩、音などの純粋な形式に対する美的な回答を求める。
 しかしこのような芸術の主観的側面は個人の気質によるものだけなのか、という問いに対し、リードは芸術における主観的側面すべてに共通した要素である想像力の存在を挙げている。想像力とは、気質に基づく多様な主観的側面と、一定不変な客観的な美の法則とを調和する働きを持つとし、その上で自然の秩序構造を超えて、自分の感覚や感情を反映した独自の世界を創造しようとする自由意思の存在があると論じている。
 さらにリードは芸術の魅力は、無意識の精神レベルから引き出された原初的なイメージがその作品の中に存在していることによるとし、これは第6章の伏線となっている。
 この章の結論として、芸術には形と創作の二つの原理があり、形の原理とは客観的側面であり、知覚の働きによるものであり、創作の原理とは、想像力の働きによるもので、主に主観的であるが、形の原理によって普遍的で客観的な存在をあてはめることもできるとしている。また社会的側面と言った他の要素の存在も示唆している。リード曰く自然によって生み出された生命そのものは根源的に美的であり、美的かどうかの判断は具体的か超越的かではなく、規則性があるかどうかであると述べている。
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