龍三と七人の子分たち

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」

 小さい頃に爪噛んでいたら指が短くなっちゃったとか、子どもに嘘を言うのやめてもらえるかな。

 あのたけしのおじさんがとうとう撮ってくれたコメディ映画!おそらくたけし監督って本業が漫才師だから(自分では今はタレントって言っているけど)、映画でも同じことをやるのにはなんか抵抗があって、残酷だったり(とにかく痛い)、虚無的だったり(無意味に突然死ぬ)、抽象的で難解な内容の映画を作り続けていたんだろうけど、最近ではゴダール病はやめようってことで、『アキレスと亀』とか『アウトレイジ』とかだんだん一般人にもわかりやすい映画を作ってくれているんだ(本人曰く“紙芝居”やってたけど“漫画”もたまにはいいなって)。
 とはいえ、ナドレックさんも指摘しているように、これらの作品も笑えるポイントはあるものの、たけし映画特有のその現実はおぞましすぎるから目を背けようってみんなで約束したじゃん!っていう部分を平気でつまびらかにする描写のせいで、安心して笑えるコメディ映画か?と言われると、ちょっと困ってしまう。
 私はどっちも好きで、美術の授業では『アキレスと亀』、社会の授業とかでは『アウトレイジ』上映してもいいんじゃないかって思うんだけど、「あの映画のせいでトラウマになった」っていうクレームも来そうでなかなか参ってしまう。

 しかし、今回のは違う。今までだったらバイオレンスにガガガって突き進んじゃうようなポイントもうまくゆる~い感じに軟着陸させていて、テレビや書籍におけるたけしネタのTHEムービー的な仕上がりになっている。まさに映画監督世界のキタノじゃなくて、タレントビートたけしの映画作品。
 そもそもこの作品のコンセプトは監督の中でずいぶん前から暖めてあって、当初の予定では龍三親分の役は高倉健さんや菅原文太さんにオファーしようと思っていたそうだ。確かにたけし監督はずいぶん前から「高倉健さんで一回ヤクザ映画やってみたい」って言ってて、じゃあ硬派な極道映画なのかなって思っていたんだけど、まさかこういう内容の映画をやらせようとしていたとは、やはり一筋縄じゃ行かないw(ネグリジェ着させようとしていたのか)
 また、インタビューでは「昨今の少子高齢化が裏テーマなんですか?」って聞かれてて、「いや、たまたまだよ」って答えていたけど、これは当然で、もうずいぶん前からたけしさんは本で「若者よりもじじいが暴れた方が絶対に手がつけられない。君たちには将来があるとか説得できないんだから」とか「国民の祝日で昭和のジジイの日を作ろう」とか書いててさ、この映画のネタはそう言う意味では既に発表されたものではあったんだよね。だから初の映像化っていうのが近いのかもしれない。

「龍三親分」
アウトレイジシリーズから一転して、とぼけた雰囲気のヤクザの親分。笑顔がチャーミング。
萬田久子の家から脱出するのにシャンプーキャップはかぶる必要があったのだろうか。

「若頭のマサ」
龍三親分となんでも賭けたがる。本編ではかなり賭けのシーンはカットされたそうだが、その分、うどん屋のシーンが長くなった。「てめえ金もねえのに天ぷらうどんなんて頼みやがって、その女とやりてえだけだろ!女!お前も天ぷらうどん一杯でやらせるのか!」とかすごい迷惑なおじさん二人であった。

「はばかりのモキチ」
ホント中尾彬さんってたけし映画ではいじり倒されてばっかwテレビタレント(またはコメンテーター)としての偉そうな雰囲気をたけしさんは茶化したくなるのか、確信犯的にこういう役をやらせているんだろうけど、一番すごいのは、そんな上島竜兵みたいな役回りを毎回しっかり演じてくれる中尾彬さん本人だと思う。

「早撃ちのマック」
メンバー最高齢。新劇でコンテンポラリーな無声映画を演じていたという人物。完成披露舞台挨拶が黙祷から始まらないかドキドキしたと監督は言っていたけど、考えてみると『アウトレイジ ビヨンド』の花菱会会長を演じた神山繁さんのがずっと年齢は上なんだよな。
最後の襲撃の前にお世話になった病院に電話をしているのが萌えた。

「ステッキのイチゾウ」
公園にすごい場違いな格好で現れた、まるで座頭市のような殺陣を繰り広げるじじい。演じるのは樋浦勉さんで、もうこの人は吹き替え声優としても大御所だよね。

「五寸釘のヒデさん」
メンバーで最も紳士的な物腰の人物だが、彼の五寸釘さばきで詐欺グループ京浜連合は総崩れになった。

「カミソリのタカ」
介護施設にいたじじい。ちょっとコント時の関根勤さんに似てる。

「神風のヤス」
割と後半で登場。たけしさんが大好きな右翼ネタ。
空母に特攻…!と思ったら軟着陸。それを踏まえても、この映画が今までよりずっと安心して観られる作品であることがお分かりいただけるだろう(そうか?)。

 というわけで、テレビや本のネタを映画にした感じだから、別に掘り下げるような内容の映画じゃないし、そもそもコメディ映画やギャグなんていうのは、笑えれば勝ちでそれ以上でもそれ以下でもないんだから、論理的な考察なんていうのは頭でっかちのする野暮なことなんだ。
 もう、何も考えずに笑って楽しむ映画だよ、ほいで自分はビートたけしにこれを期待していたんだって改めて思ったw

 こんなえいがにまじになっちゃってどうするの?
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