参考文献:『カラー版徹底図解地球のしくみ』
地球の大気組成の歴史
地球ができた頃の原始大気は以下の3つの段階を経て変化してきた。
第1段階は水蒸気の大気である。
この段階の原始大気は、微惑星の衝突によって、微惑星に含まれていたガス成分が蒸発して出来たと考えられ、当時の微惑星と同様の成分を持っていると思われる隕石や、現在の地球のマグマから放出されるガスを調べると、原始大気の組成は、200気圧にものぼる高圧の水蒸気がメインで、以下、二酸化炭素、窒素、硫黄・フッ素・塩素と続いた。水蒸気は大気の高層で雨となったが、地表に達する前に蒸発してしまい、大気の内部で循環していた。
第2段階は二酸化炭素の大気である。
水蒸気が雨となって地表まで届き、海洋ができたあとに現れたもので、第1段階で2番目に多かった二酸化炭素が大気の主成分になっている。
第1段階で大気中に含まれていた、硫黄・フッ素・塩素は水に溶け海洋を酸性にし、そのため中性の水に少し溶ける二酸化炭素は、海洋に溶けることができなかった。
しかし、二酸化炭素は非常に高い温室効果を持っており、本来-18℃の放射平衡温度になるはずの現在の地球の平均気温を15℃にまで温めている。
さて、第2段階の大気組成(1位:二酸化炭素、2位:窒素)は、現在の金星や火星の大気組成と一致している。特に金星と似ているが、金星には海がないのにかかわらず、大気中にも水蒸気が存在しないのは、不思議である。水蒸気はどこへ消えたのだろうか?
その理由は、金星では暴走温室効果(水蒸気の温室効果が水を蒸発させ水蒸気にし、その水蒸気がさらに温室効果を推し進めること)によって海ができなかったため、大気中の水蒸気が長期間紫外線にさらされ、水素と酸素に分解してしまったからである。
ちなみに、水素は宇宙空間に逃げ、酸素は地表の物質を酸化して固定化されたと考えられている。
第3段階は二酸化炭素が減少し、窒素が主成分になった大気である。
海水に岩石のナトリウムイオンやカリウムイオンが溶け、海水を中和すると、二酸化炭素も海水に取り込まれるようになった。
二酸化炭素は、海中のカルシウムイオンと反応して炭酸カルシウムになり、石灰岩を大量に作ることで大気から取り除かれていった。その結果、地球の大気には窒素だけが残り、大気の主成分になった。
また、27億年前になると、シアノバクテリアが登場、石灰岩質の殻を作り二酸化炭素をさらに固定していった。ちなみに、シアノバクテリアは、地球史上初めて光合成を行った生物として以後も繁栄し、大気中に大量の酸素を放出した。
地球磁場のメカニズム
地球の地場は27億年前に急速に強くなったらしい。
地球の磁場は、内部が非常に高温なため、永久磁石があるとは考えられない(数千℃の高温では永久磁石は磁力を失うから)。
よって残る可能性は電磁石である。地球磁場を説明するダイナモ理論によれば(ダイナモとは発電機のこと)、地球の磁場の発生は外核の対流と地球の自転によって説明できるという。
外核は溶けた鉄なので、電流を流すと電磁石になるわけだが、では、その電流はどこからやってくるかというと、磁場の中で外核の鉄が対流することによって発生すると考えられている。
つまり、このときの電流が新たな磁場を発生させ、その磁場によって電流がさらに強化されるという連鎖反応を繰り返すことによって、地球の磁場は発生しているというわけだ。
では、そもそも外核の対流のきっかけになる現象はなんなのかというと、マントルオーバーターンという有力な仮説が提唱されている。ちなみに、マントルオーバーターンとは、マントルの上下の物質が大きく入れ替わることである。
これはプレートテクトニクスによって沈み込んだ原始的なプレートの残骸が、上下のマントルを2層に分ける仕切りになっていたのだが、27~28億年前に、プレートの残骸が初めて下部マントルの底へ落ちていき(プレートの残骸の密度が下部マントルの物質よりも大きくなったため)、外核の一部分を冷やした。
これにより外核で対流運動が活発化し、地球ダイナモ運動が始動されるきっかけになったと言われている。
この仮説では、地球ダイナモ理論の他、のちの時代の火山活動や、超大陸形成についてもうまく説明をしている。
さて、27億年前に強くなった地球の磁場は、宇宙からの放射線を遮るバリアとなり、生命が光が届く浅い海底に進出し光合成を行うことを可能にした。
これにより、海水中の鉄イオンが光合成によって発生した酸素と結びついて、酸化鉄の沈殿となり海底に大量に降り積もり、現在の縞状鉄鉱層となった。縞状鉄鉱層は重要な金属資源として人間に恩恵をもたらしている。
酸素の歴史と生物の陸上進出
前述のとおり、27億年前、地球磁場が強くなったことで、生命は光合成を始めた。最古の光合成生物の化石はストロマトライトという層状の構造を持った岩で、これはシアノバクテリアという光合成を行う微生物の集合体が作るものである。
とはいえ、光合成生物が浅い海底で増えるようになって、すぐに大気中の酸素濃度が高くなったわけではない。海中の酸素はまず鉄イオンと結び付き、海水中の鉄イオンがほとんどなくなったあとに、余った酸素が大気中にも放出されていったのである。その期間は約7億年だったと言われている。
7.5億年前になるとマントルの温度が下がり、水(含水鉱物)が海洋プレートごとマントルの中に入っていくようになった。
このようにマントルの中に水が注入され続けると海水の量が減り、陸地の面積は増加、巨大河川による陸地の侵食作用が増えて、堆積岩が盛んに作られるようになる。
すると、有機物が堆積物に埋もれて分解されず、有機物分解に必要な酸素が消費されなくなったために、光合成による酸素は増加、大気中に放出された酸素は、地上20~30キロメートルの高さにオゾン層を作り、有害な紫外線を吸収、生物の陸上進出を可能にした。
ちなみに海水のマントル注入は、マントルの流動性を上げて(粘度を下げて)プレートの動きをスムーズにもさせている。
オゾン層が完成したのは、植物が陸上進出をした4.3億年前で、27億年前にシアノバクテリアが酸素を発生させてから20億年以上の時間が経っていた。
この時(シルル紀)に最初に陸上に進出したのは緑藻類(ノリの仲間)が進化したクックソニアという根も葉もないコケに似た生物で、次の時代であるデボン紀(4.2~3.6億年前)には、発達した根や茎を持ち、地中から水を汲みあげられるシダ植物が出現した。シダ植物は石炭紀(3.6~3億年前)には、超大陸パンゲア全域に広がって大森林を形成した。この時の森林は超大陸の堆積盆地にうもれて現在の石炭になっている。
こうして、石炭紀に有機物が大量に堆積層にうもれると、酸素濃度が一時35%まで増加し、動物にとっても陸上は新天地になり、デボン紀には魚類の中から両生類が出現し、石炭紀には羽を持った昆虫が登場した。古生代末には爬虫類も登場した。
スノーボールアース仮説
約6億年前の地球は寒冷化が暴走し、全海洋はおろか赤道まで氷床が広がり、数万年で-40℃にまで冷えたと言われている。地球全体がまるで雪玉のように凍ってしまったのでスノーボールアース仮説と呼ばれている。
この氷河時代が始まった原因は、超大陸ロディニアなどの陸地面積の増大にある。これにより陸地の浸食作用が活発化し、有機物が大量に堆積岩に閉じ込められた。
すると有機物が腐敗分解して発生する二酸化炭素の量が減り、地球の温室効果が低下していったというわけである。
また風化により陸地の岩石のカルシウムが大量に水に溶けると、大気中の二酸化炭素と結び付き炭酸カルシウムになるため、これも二酸化炭素の低下の一因になった。
いずれにせよ、氷河時代に入り極地から氷床が増加すると、氷床のある部分は白いのでアルベドの関係で太陽熱を受け取らずに反射、気温が低下していく。そして氷床が緯度30度にまで達すると、白い面積が広すぎて地球の熱収支バランスが崩れ、寒冷化が暴走。海洋も含めて全球凍結してしまう。
しかし、火山活動で発生する二酸化炭素が、光合成によって消費されず、凍結した海中にも溶けないため、大気中に蓄積、やがて二酸化炭素濃度が現在の300倍になり、激しい温室効果が起きることで地球は解凍されるという。増えた二酸化炭素は、溶けた海に急激に取り込まれ炭酸塩の堆積物を作った。
PT境界の大量絶滅
約2.5億年前のペルム紀末、古生代に繁栄していた三葉虫、フズリナなどの生物種が大量に絶滅してしまった。特に海底に定住しているタイプの生物への打撃が著しかった。
この大量絶滅は、PT境界絶滅と呼ばれ(P=ペルム紀、T=三畳紀)、古生代から現代に至るまでの大絶滅ビッグファイブの中でも最大の規模で、生物の種類は科レベルで50%に激減した。
古生代と中生代の境界では、世界的な海水の酸素欠乏状態であるスーパーアノキシアも起こった。
プランクトンが作る殻が深海に積もって出来るチャートを調べると、PT境界の前後2000万年間にわたって酸素の欠乏した状態が続いていたことがわかった。
チャート層は、酸素がある環境下では微量な酸化鉄が含まれるために赤いが、酸素がない環境下では酸素がないと分解できない有機物が含まれるため黒いのである。
また、この時期に大規模な海退が起こるとともに、超大陸パンゲアが分裂、その原動力であるスーパーホットプルーム(マントルの対流のうち巨大な上昇流を言う)が地殻に達することで発生した異常火山活動が、PT境界の大量絶滅を引き起こしたという仮説も提唱されている。
異常火山活動の証拠として、PT境界の時期にできたシベリア、インド、中国、アフリカなどの洪水玄武岩台地がある。これは日本の何十倍もの広さの地域が数キロメートルの厚さの玄武岩溶岩で埋め尽くされて出来た地形である。しかし玄武岩質溶岩は爆発性が少ないので、大量の火山灰を巻き上げるような爆発的な噴火は別にあったのではないかと考える学者もいる。
いずれにせよ超巨大噴火を契機とする大量絶滅のシナリオは以下のとおりである。
①大量の火山灰の噴出や、大規模森林火災・石炭層の燃焼によって、大量の粉塵が大気中に巻き上げられ太陽光を遮断、これにより光合成活動が妨げられ酸素欠乏に陥った。
②火山ガスの二酸化炭素によって温暖化が起こり、海底のメタンハイドレートが融解、空気中で燃え出したため酸素欠乏に陥った。
③地球を覆い尽くした粉塵によって寒冷化が起こり、陸地の氷床が発達、このため大規模な海退が起こり生物の大量絶滅につながった。
②と③は矛盾しているように思われるが、寒冷化が起こったあとに温暖化したという仮説もある。『デイ・アフター・トゥモロー』方式ね。
中生代の環境と恐竜の絶滅
中生代は火山活動が活発で、二酸化炭素濃度が増大し温暖化が進んだ時代である。特に白亜紀は気温上昇のピークを迎え、二酸化炭素濃度は現在の4倍、平均気温は現在よりも10℃も高く、北極や南極にも氷床はなかった。
地球の地磁気は、過去1億5000万年のあいだで300回以上もN極とS極が入れ替わっているが、白亜紀に当たる時期には、外核が特別な状態にあったのか、3000万年にわたって地磁気の逆転が起こっていない。これを白亜紀スーパークロンという。
この影響で、白亜紀では中央海嶺の海洋プレートの生産速度が上がり、火山活動が活発化した。
また、現在産出される石油資源の多くは、中生代のプランクトンが大量に海底に積もって出来たと言われている。
中生代は二酸化炭素濃度が高く、大量の植物プランクトンを育んでいたが、気温も高かっため極地で冷やされた海水が深海に沈み込むような対流も起きず、深海が酸欠状態に陥った。
そこで海底に沈んだプランクトンは分解されず、ヘドロのように溜まっていき、大陸移動の際にこれが地下深くに閉じ込められて石油になった。
さて、中生代の大陸は乾燥していたので、乾燥に強い裸子植物や爬虫類が大繁栄した。
爬虫類では、とりわけ恐竜の仲間が世界各地で多様化した。恐竜は敏捷で運動能力に優れたものが多く、一部の種類は恒温動物であったという説もある。大きさは体長1メートルにも満たない小型のものから、体長30メートルに達する巨大なものまで存在した。
恐竜の時代は1億年以上続いたが、6500万年前のKT境界の大量絶滅で終焉を迎えた。
恐竜の絶滅は、巨大隕石が衝突したことが原因だと言われている。1970年代、カリフォルニア大学のアルヴァレス親子は、イタリアの石灰岩層中のKT境界にある粘土層のイリジウム濃度が異常に高いことを発見した。
イリジウムは宇宙塵によって一定の速度で地球に堆積すると考えられていたが、KT境界のそれは、宇宙塵では説明がつかないほどの高濃度で、これは宇宙から巨大な隕石が衝突し、その際に大量のイリジウムをばらまいたとしか考えられないと、彼らは結論づけた(巨大隕石衝突説)。
実際に北アメリカ大陸のユカタン半島先端付近には、直径180キロメートルに及ぶ巨大なクレーターがあり、地下から採取された安山岩の放射年代測定によれば6500万年前にこのクレーターが出来たことも立証されている。
このクレーターから推定するに、恐竜を絶滅させた巨大隕石は直径10キロメートルほどだと見積もられ、衝突時の衝撃波や津波は地表全体を駆け巡ったとされている。
この時に巻き上げられた大量の粉塵は1年以上も地球全体を覆い、太陽光を遮り、光合成活動や気温の低下をもたらした。
しかし魚類など絶滅しなかった種も多く、隕石衝突と恐竜絶滅の因果関係に関する議論は決着がついていない。
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