参考文献:トレシー・グリーンウッド、ケント・プライヤー、リチャード・アラン共著、後藤太一郎監訳『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』
生物の分類の変遷
まず生物は、古代から植物と動物の二つに大きく分けて考えられてきた。
その後、近代になり生物学が博物学に吸収されると、生物は鉱物と共に、植物・動物・鉱物の3つに分類されていたが、やがて生物学が博物学から別れると、再びリンネによって植物と動物の二界説が提唱された。
これは動物ではない生物は全て植物にしてしまう考え方であった。つまり分解者である菌類や細菌類は植物として分類された。
19世紀になり顕微鏡が発明されると、レーウェンフックが微生物を発見、これにより二界説では新たな生物群を分類しきれなくなり、生物は、植物界・動物界・原生生物界の三つに分類されるようになった。これを三界説といい、1894年にヘッケルが発表した。
ちなみに原生生物界とは、ヘッケルが1866年に創設したグループで、ミドリムシのように植物とも動物ともとれるような原始的な生物など(原生生物、細菌、真菌類、単細胞藻類)が、ここに分類された。
次に出てくる五界説は、1969年にホイタッカーが提唱した説で、生物を、植物・動物・菌・原生生物・モネラの5つに分類するものである。
モネラ界とは、すべての原核生物(細胞内で核と細胞質の区別がない生物。細菌やラン藻など)が含まれるグループである。
原生生物界には、細胞内で核と細胞質の区別があり、植物、動物、菌、モネラのいずれにも属さない単細胞生物が分類された。
さて、五界説では、モネラ界と、残り4つの界を、原核細胞をもつものと真核細胞をもつものの2つに分けていたが(2ドメイン。ドメインとは界よりも大きな分類単位)、1996年に、メタノコッカス・ジャナスキーという古細菌の全DNAが解読されたことによって、生物は2つではなく、3つのドメインからなることがわかった。
この細菌は、極限環境生物であり、85℃の高温の環境に生息する。これは真核生物のみならず、ほとんどの細菌にとっても致死的な温度である。
この細菌と、細菌類、真核生物との遺伝子には共通部分がたった44%しかなかったため、2つだったドメインが3つに修正された。
こうしてウーズによって1990年に提唱された3ドメイン説は、真正細菌ドメイン・古細菌ドメイン・真核生物ドメインの3つに生物を分ける説である。
真正細菌ドメインは、古細菌ドメイン同様、明瞭な核や細胞小器官を持たない。しかし古細菌よりも穏やかな環境を好む。よく知られている病原菌や、多くの無害な細菌、シアノバクテリア(ラン藻類)が含まれる。
古細菌ドメインは、真正細菌に多くの点で似ているが、細胞壁の組成と代謝特性が大きく異なり、原始地球の環境に似た過酷な環境に生息する。硫黄、メタン、ハロゲン(塩素、フッ素など)を使って代謝をして、多くの種類は極限の温度や塩分濃度、pHに耐える。
真核生物ドメインは、核と細胞小器官がある複雑な細胞構造を持つ生物が含まれる。つまり伝統的な五界説のうち、植物、動物、菌、原生生物の4界が該当することになる。
オゾンホールの拡大とその影響
地表から17~26キロメートル上空の成層圏の上部には、オゾンの薄い層が存在する。
オゾン層は太陽からの有害な紫外線の99%を吸収し、地表に届くのを防いでいる。
オゾン層が1%減少すると、地表に届く紫外線は2%増えると言われている。
紫外線は生物のDNAを傷つけるため、これが増加すると、深刻な日焼け、皮膚がんや白内障の増加といった人間の健康に関わる問題の他に、動物の免疫系の抑制、土壌微生物の減少、植物の生育阻害、穀物収穫量の低下、森林の生産力の低下、植物プランクトンの減少、スモッグの増加、さらに地球規模の気候変動の影響になる可能性が高い。
オゾンは極めて不安定で、人間が生産したわずかなオゾン層破壊物質によってたやすく壊れてしまう。
オゾン層破壊物質には、クロロフルオロカーボンやハロン、臭化メチル、メチルクロロホルム、四塩化炭素があり、これらが成層圏まで上昇し紫外線を照射されると、反応性が高い塩素原子が放出、この遊離塩素がオゾンと反応することで、オゾンは酸素分子と一酸化塩素分子になってしまう。
オゾン層破壊は1984年に初めて取り上げられた。研究者は、南極大陸上空の成層圏上部のオゾン層が、南極の春から初夏の間に破壊されていることを発見し、オゾンホールと呼んだ。
しかしそれは「穴」というよりは、著しいオゾンの濃度低下で、オゾンの水準が50~100%の範囲で減少していた。
2000年には、南極上空のオゾンホールの規模は過去最大になり、さらにオゾン層の破壊は北極の空でも観測された。1999~2000年にかけての冬のあいだに、北極上空18000メートルのオゾン層の水準は60%減少した。
1987年にモントリオール議定書が採択されて以降、各国はオゾン層破壊物質の消費を70%削減したが、オゾン層破壊物質の段階的な削減はまだ完了しておらず、クロロフルオロカーボンの闇市場も存在している。
とはいえ、成層圏の遊離塩素の量は1999年あたりをピークに、今後1世紀以上かけて減少すると見積もられている。
2050年までには極地のオゾンホールは1975年の水準に戻るとされるが、1950年以前の水準には、さらに100~200年はかかると考えられている。
自然環境における水循環
水が集積、浄化され、地球上の限られた供給源に分配される一連の流れを水循環と言う。
雨水は、内陸部の水源に水を補給するとともに、土地を侵食し、溶存する栄養分が生態系内、生態系間を運ばれる際の主な溶媒となる。
地球全体で見ると、海からの蒸発量は、海への降水量を上回るが、これは海から蒸発した水蒸気が風によって陸上へ運ばれるためである。
一方、陸地では、地上への降水量が、地上からの蒸発量を上回る。
これは、降水量の一部が雪や氷となり閉じ込められるからであるが、ほとんどの水は地表や地下を流れて、最終的には海へたどり着く。こうして主要な水の循環は完結する。
生物、特に植物は、この水の循環に多かれ少なかれ関与しており、海上では水蒸気のほとんどは蒸発によるものだけだが、陸上での水蒸気の90%は植物の蒸散によるものである。
また、人間の活動も水循環に大きな影響を与えている。例えば、川やダム、地下からの水は水道水(生活用水)として消費され、農業、発電、工業、森林伐採や造林などの産業活動、さらに地球温暖化による、水の蒸発量と降水量の急増(水循環サイクルの加速)、氷河の融解も、水循環に大きな影響を与えている。
なにより人間は産業革命以降、人口が爆発的に増大している。これに伴う急速な都市化や開発は、森林の減少、砂漠化、生態系の破壊、土砂流出(洪水)、水不足など、深刻な環境問題を引き起こしている。
ちなみに地球上の水の97%は海水で、淡水は水全体のわずか3%、しかもその淡水の70%は北極と南極で凍っている。
参考サイト:国立環境研究所 http://www.nies.go.jp/nieskids/index.html
消化管と食餌との関係
ヒトなどの雑食動物の食事内容は多様性に富んでおり、植物をメインにたまに肉を食べる動物や、植物と肉をほぼ等しく食べている動物もいる。そのため消化管の構造も多様である。
ヒトの胃は消化管全体の20~30%を占め、ほかの雑食動物に比べると小さい。水素イオン濃度(酸性度)はpH2である。
小腸の長さは身長の10~11倍で、ほかの雑食動物よりも長い。
盲腸はあるが、あまり発達していない。
大腸の長さは比較的長い。
以上から、胃の水素イオン濃度はどちらかというと肉食動物に近く、腸の長さは植食動物に近いことがわかる。
イヌなどの肉食動物は、消化管における微生物発酵はほとんどないか、全くない。肉の消化が繊維質の多い植物(セルロース)の消化に比べて容易だからである。
イヌの胃の容量は消化管全体の60~70%で、水素イオン濃度はpH1か、それ以下。
小腸は短く体長の3~6倍ほどで幅が広い。
盲腸は未発達か、ない。
大腸は単純で短い。
ウシは、胃内細菌との共生関係に依存する反芻性植食動物である。
そのため、ウシの胃は巨大で容積が消化管全体の70%を占め、セルロースを分解する微生物のための部屋(第一胃=ルーメン)で拡張されている。
胃の部屋は複数あり、そのため食物の移動が遅くなり、消化しにくいセルロースを分解する時間が十分に確保できる。
ルーメン内の微生物は揮発性脂肪酸を生産しエネルギーを供給し、微生物自身も消化されることでルーメンにタンパク質が供給される。胃の水素イオン濃度はpH5~7。
小腸は体長の10~12倍で、盲腸は短いか中程度(これが後腸消化タイプのウサギでは非常に長い。ウシの胃の代わりを盲腸が担っているため)。
大腸の長さも中程度で、ここでの発酵はあまり重要ではない(これもウサギではとても長い)。
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