主な参考文献:トレシー・グリーンウッド、ケント・プライヤー、リチャード・アラン共著、後藤太一郎監訳『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』、高橋正征編『中学理科2分野の発展的学習』、吉田邦久著『好きになる生物学』、あと高校時代の私のノート。
光合成の生化学反応
光合成は、無限に供給され続ける太陽光のエネルギーを、化学結合エネルギーとして蓄積する、生命や生態系の根源に関わる極めて重要な反応である。光合成の反応物は食物連鎖で利用され、高等動物の生存に必要不可欠な酸素も発生する。
そしてあまりに壮大なサーガすぎて現役時代の私も詳しいメカニズムは投げちゃった思い出がある。
カルビンこのやろう!!
・・・さて、ブラックマンによれば、光合成の時に葉緑体で起きる生化学反応には、光が直接関係していて温度の影響を受けない反応である明反応と、光が直接関係しないで温度の影響を強く受ける暗反応の2種類がある。
明反応は葉緑体内にあるグラナ(チラコイドという膜が積み重なったもの)で起きる。
明反応では、太陽光と細胞液内の水を材料に、酸素と水素とATPが作られる。
暗反応は葉緑体内部の液状部分ストロマで起きる。
暗反応では、二酸化炭素と、明反応で作られた水素とATPを材料に、水と三炭糖リン酸が作らる。
三炭糖リン酸は、多くの経路を経てグルコース(呼吸の燃料)、セルロース(細胞壁の材料)、デンプン(貯蔵エネルギー)、二糖類(果実のフルクトースや、サトウキビのスクロースなど)、脂肪とアミノ酸などに変換される。
明反応(エネルギー捕獲)
明反応は、光のエネルギーを使って電子を中間的なエネルギーにまで持ち上げる光化学系Ⅱと、光化学系Ⅱが持ち上げた電子のエネルギーを光のエネルギーを使ってさらに高いエネルギーレベルに持ち上げる光化学系Ⅰの二階建ての仕組みになっている。
ちなみに、外部からのエネルギーによって、粒子のエネルギーレベルが上がっている状態のことを励起状態という。
化学反応式は以下のとおり。
水×12+NADPイオン×12→NADP×12+水素イオン×12+酸素×6
光化学系Ⅱ
①水の光分解
光で水を分解し、電子伝達系で減った電子を補充する。
水は電子を失い、酸素分子と水素イオンになる。
②クロロフィル
チラコイドにあるクロロフィル分子が光を吸収すると、電子が高いレベルに励起される。
③電子伝達系
クロロフィルによって励起した電子は、チラコイド膜の電子伝達体から電子伝達体へリレーされる。この時、電子のエネルギーは、チラコイド膜の内側に水素イオンを汲み入れるために使われるので、電子のエネルギーは減少していく。
④ATP合成酵素
水の光分解や電子伝達系で出た水素イオンがチラコイド膜を通って外へ戻されるのと同時に、ATP合成酵素はADPと無機リン酸をATPに変換する。
光化学系Ⅰ
①クロロフィル
電子伝達系から受け取った電子を光エネルギーで再び励起状態にする。
②NADPイオン還元酵素
NADPとは電子を伝達してくれる化合物。正式名称はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸といい、絶対覚えられないので略号にされている。
チラコイドのNADPイオン還元酵素は、チラコイドの外にあるNADPイオンと水素イオンを、NADPHと半量の水素イオンに還元し、この時できた水素イオンはNADPHによって暗反応のカルビン・ベンソン回路に運ばれる。
暗反応(カルビン・ベンソン回路)
ニュージーランドの教科書では、暗反応といっても別にこの反応は暗いところでしか起こらないわけではないので(反応に光がいらないだけ)、この名前は適切ではないと炭素固定って呼んでいる。
ちなみに暗反応は、発見者にちなんでカルビン・ベンソン回路とも言うのだが、“回路”というくらいなので、反応が山手線みたいに一周している。
よって、どこを始点にして説明していいかわからないけど、とりあえず光化学系Ⅰの水素イオンがストロマまで運ばれてきたところからプレイバックする。
①3‐ホスホグリセリン酸がNADPHと水素イオン、ATPによって三炭糖リン酸に変わる。
この時、NADPHはNADPイオンに戻り、ATPはADPと無機リン酸に戻る。
②三炭糖(グリセルアルデヒド)リン酸はグルコースやセルロースなどの六炭類に変換されるが、その一部はリブロースリン酸になり回路の中にとどまる。
③リブロースリン酸はATPによってリンを一つもらい、リブロース二リン酸に変わる。
ATPはADPと無機リン酸に戻る。
④リブロース二リン酸は、二酸化炭素とリブロース二リン酸カルボキシラーゼという酵素によって3‐ホスホグリセリン酸になり、①に戻ってくる。
化学反応式は以下のとおり。
二酸化炭素×6+NADPH×12+水素イオン×12→グルコース(C6H12O6)+水×6+NADPイオン×6
食物の消化
胃では、食物が酸性環境で混合されるため、微生物はみな死滅し、タンパク質は変性、ペプシンの前駆体であるペプシノーゲンが活性化する。
具体的に説明すると、ペプシノーゲンの分子は酸性度が高いと、その一部分が加水分解され、ペプシンに変わる。したがって、胃酸(成分的には塩酸でpH1~2)が分泌されると、ペプシノーゲンはペプシンになり、タンパク質をペプトンに分解していくというわけである。
しかし胃による栄養分の吸収そのものは僅かで、グルコース、アスピリン、アルコールなどの低分子が胃壁を経て吸収されるほどである。
胃と十二指腸をつなぐ幽門括約筋は、小腸に送るキームス(スープ状になった混合物)の量を調節する。
十二指腸では、胃から酸性のキームスが送られるとそれが刺激になって、パンクレオザイミンというホルモンが分泌され、これがすい臓に作用することで、十二指腸の乳頭からすい液が分泌される。
すい液にはアミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの消化酵素が含まれ、アミラーゼはデンプンをマルトースに、リパーゼは乳化された脂肪分を脂肪酸とモノグリセリドに、トリプシンはペプトンをポリペプチドや少数のアミノ酸に分解する。
ちなみに、パンクレオザイミンとは「胆のうを収縮させる」という意味なので、胆のうからの胆汁排出も促す、これにより食物の脂肪分が乳化される。
その後、小腸ではエレプシン、マルターゼ、サッカラーゼ、ペプチターゼなどの消化酵素が含まれる腸液が分泌される。
エレプシンはポリペプチドをアミノ酸に、マルターゼはマルトース(麦芽糖)をブドウ糖に、サッカラーゼはショ糖をブドウ糖と果糖に、ペプチターゼはペプチドをアミノ酸に分解する。
ホメオスタシス
体内環境の調節をホメオスタシスという。
ホメオスタシスは神経系と内分泌系の二種類の調節系によって保たれている。
この二つは構造的には全く異なるが、前者は行動、後者は生理を調整するため、相互作用することが多い。
神経系は、刺激に関する情報を、ニューロンという神経細胞を使って、電気化学的な活動電位の形(細胞膜の内と外の電位が瞬間的に逆転している状態のこと。インパルス)によって伝達し、電気信号を正確、かつ非常に速いスピード(数ミリ秒以内)で、長い距離にわたって伝えることができる。
その持続時間は短く、標的への経路は神経を介するため特定の細胞に特異的である。
また、刺激に対する応答が再び刺激になって伝わるため(フィードバック)、再調節が可能である。神経系は腺からの分泌や筋肉の収縮を起こす。
一方、内分泌系は、情報の伝達を血液中のホルモンを使って行なう。そのため、どの部位の標的細胞にも広く作用する。
スピードは神経系に比べると比較的遅く(数分、数時間、もしくはそれ以上)、その分、持続時間は長時間である。ホルモンは代謝活性の変化を起こす。
ホルモン量の調節
体内のバランスは、ホルモンという化学伝達物質を血中に放出することで保たれている。
ホルモンはごく微量で大きな影響を及ぼす。
内分泌腺は、ホルモンを輸送するための管を持たないため、血流中に直接ホルモンを分泌する。
こうして、ホルモンは血流にのって体中に行き渡るが、それぞれのホルモンは特定の標的細胞にのみ作用する。
例えば、十二指腸の内分泌腺から出るセクレチンというホルモンは、すい臓をターゲットにして、すい液を分泌させる。
このような標的細胞の膜の上には、ホルモンを認識する受容体があり、ホルモンの分子はそこに結合し働く。
また、あるホルモンの効果は、それとは反対の作用を持つホルモンによって打ち消されることがある。
例えばインスリンは血糖値を下げるが、血糖値が下がり続けると、今度はグルカゴンが分泌され、血糖値を上げ始める。このように最終的な結果が、はじめの段階に戻って作用を及ぼすことをフィードバックという。
ヒトの出産
ヒトは妊娠しても無事に出産できない確率が非常に高い。
自然流産(15%の確率で発生)の原因の50%は、三染色体性や倍数性といった染色体異常である。
このような染色体の異常は、母親の年齢と高い相関が確認されている。よって、35歳以上の妊婦には、胎児の核型を調べる出生前検査が奨励されている。
染色体異常とは、生殖細胞を作る際の減数分裂の失敗である。
三染色体性は、不完全な卵形成(卵の遺伝子が半減せずそのまま)もしくは、不完全な精子形成(こちらはまれ)が原因で、ダウン症やクラインフェルター症候群の赤ちゃんが生まれる。
一染色体性は、不完全な精子形成(遺伝子が全くない精子ができる)が原因で、ターナー症候群の赤ちゃんが生まれる。
ダウン症
発生率は30~31歳の出産で900回に1回。
女性の卵細胞を作る際の減数分裂時に、21番染色体がうまく分離しないことが原因で生まれる。発達障害や精神遅延などの特徴がある。
クラインフェルター症候群
男子のみ(XXYもしくはXXXYの染色体)。
精神遅延、希薄な体毛、テストステロンの低下で乳房が発達する場合がある。
十分に発達しないペニス、大きく長い手足が特徴。
ターナー症候群
女子のみ(XO)。
知能は正常だが、空間の記憶が困難。短い首、低い身長、二次性徴がない幼児体型が特徴。
卵巣が縮小し、通常は生殖能力がない。
抗生物質耐性
抗生物質とは細菌の成長を阻害する薬剤で、細菌による感染症の治療に使われる。
通常なら効く抗生物質の影響を、細菌が受けなくなることを薬剤耐性というが、これは抗生物質の長年の使用によって、細菌が抗生物質に適応したからで、今やこのいたちごっこはエスカレート、細菌集団に短期間で耐性菌が現れるようになってしまっている。
これに感染すると治療が困難で、致死率も高いので、様々な薬剤に耐性を持つ多剤耐性菌の増加はかなり恐ろしい。
細菌が耐性を獲得する方法は以下の4つがある。
①自然発生的獲得
放射線や化学物質、転写のエラーによって、遺伝子が突然変異し抗生物質耐性を獲得するパターン。
②接合
二つの細菌のあいだで、性線毛を介したプラスミド(細菌が持つ、細胞質にはあるんだけど核以外のDNA。輪っか状の場合が多い)の移動が起こり、抗生物質耐性を別の細菌からもらっちゃうパターン。
③形質導入
ウィルスが細菌に、別の細菌のDNAを持ち込んで、抗生物質耐性をウィルスからもらっちゃうパターン。
④形質転換
抗生物質耐性の情報がある裸のDNAを細菌が飲み込むパターン。
耐性のメカニズムには以下のようなものがある。
①不活性化
細菌内の酵素が、抗生物質を壊すタイプ。
②抗生物質の標的の変化
抗生物質にはそれぞれ専門にする標的が決まっていて、例えばストレプトマイシンはタンパク質の合成、ペニシリンは細胞壁の合成を阻害するが、逆を言えばこのようなターゲットに関する遺伝情報が突然変異で変わってしまえば、その抗生物質に対する耐性がついてしまうことになる。
③浸透性の変化
抗生物質の侵入を締め出したり、低下させるパターン。
もしくは、抗生物質にタンパク質の生産を阻害されるよりも早く、細胞の外へ排出するタンパク質を生産するなど。
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