「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ TARSのキャラ☆☆☆☆☆」
オレたちが“橋渡し”だったんだ。
夢の階層構造という超独創的な設定を繰り出した、ロジカルな脚本の映画ならお得意のクリストファー・ノーラン監督による『2001年宇宙の旅』。
ノーラン監督って、観念に逃げずに広げた風呂敷は最後には論理的にきっちり畳むから、人類が星間飛行(インターステラー)して新たな段階に進化する、あの映画をどうやって料理するか、ちょっとだけ気になっていた。
けれど、自分もかつて宇宙旅行の漫画作って、最後は恒星間飛行をやったから思うんだけど、この手の宇宙旅行を題材にした物語って結局落としどころのパターンはある程度限られていて、大筋の内容は似てしまうんだよね。
漫画もそうですが現場のすぐれたクリエイターたちは「どっちの国が上」なんてことにはこだわらず、敬意あるパクリ合いに努めているわけですよ
SGA屋さんがこんなシニカルなツイートしてたけどさwパクリ合いっていうか、もうやれる選択肢が限られてるんだよね。収斂進化に近いというか。それこそスターチャイルドにでも進化しないと、人間の感覚的な枠組みでは到底無理っていう。
で、やっぱり自分が何年か前に書いたやつと一緒で、それはなにかっていうと、宇宙というすごいマクロなスケールをやろうとすると、それは人間の領域を遥かに凌駕するものだから、結局人間にもわかるように説明すると、微分するしかない。ほいで、すごいマクロとすごいミクロって、人間には未知のスケールである点では共通しているから、つなげてしまおう、と。
だから、なんだかんだで個人的な話、オレのアジフライに気づけ赤松的な、顕微鏡サイズのエモーションというか、ユング的なインナースペースにして、ごまかすしかない。
自分も、最終章で広大な宇宙とは真逆な微生物の世界を研究している人をキーキャラクターにしたり、最後の超高速飛行で主人公の夢を見せたのはそれであって、多分光を超えるとか、ブラックホールに落ちるとかっていうのはさ、死ぬのと一緒で、彼岸に行くようなものだと思うんだよね。
この前に亡くなっちゃったおじいちゃんが、亡くなる数日前に「白い光が見えたよははは」とか言ってたんだけど、あれはマジなのかっていう。死んで消滅すると闇じゃないんだっていう。
実際にこの映画のブラックホールも輝いててさ、あれは割と科学的には正しい可能性があって、漫画書くときに色々な宇宙の本読んだら、ブラックホールって実は吸い込み穴であると同時に光や電磁線の噴射口でもあってさ、だからダムみたいなものなんだよね。
もちろん重力がすごくて、光(およびそれを基準にする時間)すら脱出できないわけなんだけど、なにやらジェット噴射しているぞっていう。
この映画でもキーワードになった「重力」っていうのがネックで。あの力だけ未だによくわかってないからね。未だによくわかってないけど、めっちゃ身近なわけじゃん。電磁力や原子間力とかは論理的に決着ついているけど、なかなか実感できないじゃん。コンセントで感電とかすればあれだけどさ(^_^;)
でも重力はジャンプするだけで、あ、落ちてるってわかるもんね。なのに一番理論物理学者が手こずっているっていう。量子化できないんだよね。もしかしたら、あの力だけは、ニュートン物理学どころか、量子力学の分類にも収まらない対象なのかもしれない可能性はあるよね。となると、重力が一時期の「DNAの突然変異」とか「エヴェレットの多世界解釈」とか「エントロピーって知ってるかい?」みたいなインチキSFのマジックワードになる可能性はあるよね。
この『インターステラー』で一番『インセプション』らしいというか、お前こればっかやなって思ったのが通信技術のくだりだよね。地球からのビデオメッセージが別の銀河にいる宇宙船に届いてしまうっていう。
あれはどうなんだろう?例えば光通信を使ったとして、あの宇宙船が5光年くらい先にいるとしよう。で、地球からメッセージを送って宇宙船に届くと5年かかる。つまり宇宙船の人は、5年前の地球の人のメッセージを見ることになる。
ただし作中でも言っていたように、あっちの銀河の惑星は地球よりも何十倍も時間が経つのが早いから、そうなってくると、プラスマイナス、マイナスくらいでほぼリアルタイムで受信できても矛盾がないっていう。つーか原因と結果が逆転しないまでも、アキレスとカメのパラドクスというか、全然論理的にやりとりできるよっていう。
こういう相対性理論っていうのは、実際に超音速ジェット機で証明されちゃっているのが面白いよね。あ、時計の針ずれたっていうw
でもさ、私が一番面白かったのは、まああの板みたいなロボットの吹き替えなんだけど、それは最後に置いといて、科学的にいいなって思ったのは、冒頭なんだよね。
なんだか知らないけど、地球が砂嵐に襲われててさ。作物が育たないんだよ。土壌がダメになった未来の地球なんだよね。でもこれ、お前の国(アメリカ)でよくあることだろっていうw
アメリカの農業って適地適作ですごい大規模に同じ作物を大量に生産するから、土地がダメになって一時期すごい厳しい不作になった時があるんだ。ここらへんは中学生の地理でも習うんだけど。
で、じゃあどうするかっていうと、なんか農家をすごい増やそうという政策に打って出るんだよね。重農主義というか。役に立たない基礎理学は置いといて、まずは第1次産業を最優先で取り掛かろうって、なんと海兵隊とか軍隊も解散して、みんなで農業やってるっていう世界観。これがいいよね。
民主党政権の「スパコンは2位じゃダメなんですか?」発言とか、安倍政権の「三流大学は会計ソフトの使い方教えればいいだろ」的な。会計ソフトそのものは誰が開発するんじゃいみたいな。こういった、ある種反知性的な流れって日本だけじゃなくて、世界的にそうなのかなっていう。
アメリカでもコンステレーション計画とか「意味あんの?」みたいな感じで打ち切っちゃったしね。絶対この映画作った奴「おのれオバマ!」って思っているよねw科学を役に立つか立たないかで短絡的に判断するんじゃねえっていう。
でも流石にソ連のルイセンコイズムほど極端じゃなくて、一部の賢い奴はNASAでしっかり確保していて、いろいろ画策しているっていう。
ここらへんの社会的背景が、冒頭でさらっと流されるだけなんだけど、風刺的で好きだった。もうバカばっかの大衆民主主義はもう全然ダメで、こっそりエリートだけでやっちゃえっていう。まあこれは今もそうで(自説の小さなツリーと大きなリゾーム参照)、建前が歴史ごとに違うだけなんだけど、こういうのを贅沢にメインテーマとはあんま関係ない設定として使っているのがすごい。
で、最後ほんとに地球を捨てちゃうっていうのも、最後の結末をああするなら仕方がないとは言え、思い切ったなっていう。でもそのうち『WALL・E』みたいに探査機を出しそうだけどね。
地球に生まれたからといって地球で死ぬことはない。
本編の方はまあ、無難にまとめたな、みたいな感じだったんだけど。最初の本棚のシーンとかも最後にどうなっていくかは、割とすぐに展開が読めちゃったんだけど、あれももうちょい科学的な説明をして欲しかったかもしれない。
私、あのシーンは絶対にダブルスリット実験のメタファーだ!って思って勝手にはしゃいでいたからねwで、マイクル・クライトンの『タイムライン』みたいな解釈をするんじゃねえかっていう。
実際『インターステラー』もそういう回答だっただけに、マーフィーの法則までやるなら、コペンハーゲン解釈までやってほしかったよ。
で、人類を凌駕する存在が、スケールが違いすぎて、人類に直接干渉できないっていうのは、本当自分の漫画とかぶって悔しかったよ。 とうとうそこに気付く奴が現れたか!しかもクリストファー・ノーラン監督だったか!みたいな。
まあ自分が知らないだけで、いろんなSF作家がやってる気もするけど。そういうのがあるから私はほとんどSF読まないしね。科学の本とかで着想を得ているからなあ。
で、神における預言者みたいな文脈で、結局何が何やら意味不明だった『2001年宇宙の旅』のスターチャイルドを解釈したところは、さすが理屈型映画監督ノーラン!って感じだよね。
最後に一言。この映画にもHALみたいなモノリスというか人工知能が出てくるんだけど、こいつがね、すごいいいよ。
人工知能の設定をファジー理論みたいにパーセンテージで変更できるんだけど、なんか海兵隊のパイロットロボットの払い下げだから、「ロボットの支配下になる気分はどうだ?」みたいな軍曹的口調で、「頼むからお前のユーモアの設定レベル100から75に下げてくれ」みたいなw
で、正直レベルも100%にしちゃうと人間っていうのは関係がぎくしゃくしちゃうからあえて95%とか、あの板が気を利かせてるんだよ!!板が!!!なに、こいつのデリカシーw
『ガーディアンズオブギャラクシー』でロケットラクーンとかアイアムグルートとかが好きな人は絶対気に入るぜ。で、日本語吹き替えがオススメ。
人間信用レベルは?
あんたよりかなり低い。
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