「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆ 三谷幸喜バーストアナザークロニクル☆☆☆☆☆」
宇宙でうまくいかなかった人がどこに行ったってうまくやれるわけないじゃない。
私は三谷幸喜作品が好きで、最近はNHK大河ドラマの『真田丸』くらいしか生きがいがないくらいなんだけど、この映画の評価はとにかく酷評の嵐で、どうした三谷幸喜!?とか、初の駄作!!とか色々言われてて、そこまで言われちゃ三谷先生を弁護するのがファンの責務だってことで(※『宇宙ターザン』での野比のび太先生の教え)、絶対映画館で見ようと思ってたんだけど、これは決して言い訳でもなんでもなく、公開時に仕事がちょっと忙しくて結局見逃してしまっていたんだ。
で、今回とうとうDVDで借りることができたんだけど、ホントにネット上では酷評を通り過ぎて暴言的な感想に溢れていて、レンタル店での人気は、むしろそこまで酷いなら見てみたいという好奇心によるものなんじゃないかっていう嫌な予感もしたんですが、観てみてびっくり、めちゃめちゃ面白い。腹がよじれるほど笑ってしまったじゃないか!
そして私の中で強い憤りの感情がこみ上げてきた。この映画の面白さがわからないってマジかっていう。まさにアルフじゃないけど、「お前らのレベルにはこの面白さはわからねえよ。笑いには知性と教養が必要なんだ」って悪態のひとつもつきたいよっていう(ついたけど)。
今さ、『ズートピア』がヒットしてるじゃん。異なる人種や文化の人たちを受け入れよう、差別はいけないよっていう、まことにヒューマンライツなメッセージのある映画なんだけど。でも、それ(文化多元主義)を言うなら、この『ギャラクシー街道』を評価してこそだろっていう。それくらいこの映画は観客の差別心を試すものだと思う。
価値観の異なる人なんてなかなか受け入れられないのが普通であって、実際、『ズートピア』の舞台のアメリカではドナルド・トランプが大フィーバー、『パディントン』の舞台のイギリスではまさかのEU離脱(加盟国は独自の金融政策が打てないという事情もあるけれど移民問題も原因だろう)、そして『ギャラクシー街道』の日本では移民排斥もなにも、そもそも移民を受け入れていないっていうね。
やっぱり日本人はとんでもなくレイシストな連中なんだって、この映画の感想を読んでつくづく思った。別にそれを糾弾しようとかじゃなくて、ま、そうなんだろうな、それだったらこの映画が低評価なのも当たり前だよな、と。
だから決してこの映画は駄作ではない。むしろこのシュールでナンセンスな世界観は、あの三谷先生がついに吹っ切れてくれた!って心底嬉しかった。
映画冒頭のパックンフラワーみたいな珍生物がガラ悪く窓ガラスに唾を吐くシーンとか、やっぱりものすごい天才だっていう。
3年前の『ステキな金縛り』の時も書いたんだけど、三谷さんの映画って超面白いんだけど、なんというか観客のレベルやニーズに合わせて、やりたいことをセーブしてるなあっていうのをいつも感じていて、いつかバーストすればいいのにって思ってたんだ。
で、バーストしたらやっぱり観客はついてけなかったっていう。三谷さんはシャイだから、この映画が受けなかったことで、もう二度とこういうアクセル全開の映画は作らないんだろうけど、私は一回でもこういう映画を作ってくれたことに感謝したい。
というか、あれなのかな。面白いつまらないとかいう話じゃなくて、いつもの三谷幸喜作品の客層と、この映画が受ける客層にズレがあったのかもしれないよね。
私が強く感じたのは、この映画の雰囲気ってなんというか松本人志さん的なんだよね。ウルトラセブンとかのレトロな特撮をシュールなネタに変換するようなところとか。だからダウンタウンの『ごっつええ感じ』とかで爆笑した人なんかは、この映画すごい面白いと思う。半魚人みたいなのも出てくるしw
自分は頭でっかちなところがあるから、こういう肩の力が抜けた、ナンセンスでシュールなものって思いつかないんだよな。IPPONグランプリとかの大喜利とかも、この人たちどういう瞬発力してんだって思うし。実際、三谷さんってIPPONグランプリの姉妹番組のオモジャンで優勝とかしてたしな。
それと男女の恋愛に対する徹底的に冷めたシニカルな態度。舞台を場末感漂う宇宙のハンバーガーショップにしたアイディアも秀逸。カップルの痴話喧嘩がこれほどまでにしっくりくる舞台設定はないよ。これって窓の外は宇宙ってことになっているけれど、ぶっちゃけ深夜のマクドナルドだもんね(サンドサンドさんってw)。
こういう毒のあるネタって確かに今までの三谷幸喜らしからぬけれど、三谷さんって絶対に深層心理に恐ろしい魔物を飼ってそうな気がしたから、あ、やっぱり飼ってた、飼ってた!って一安心、まさにブラック三谷ワールド!
私は全宇宙がこの映画を駄作だと言っても、三谷幸喜についていく!たとえクレジットカードの情報がすべて消えてしまうくらい磁場が強くても。
「ノア」
サンドサンドバーガー・コスモ店のオーナー。ハンバーガーに囲まれて暮らすのが夢なほどハンバーガーが好きなため、ハンバーガーの食い方が恐ろしく汚い優香をあっさり捨てた。
恋愛沙汰なんて傍から見ればそういうどうでもいい小さなことであっさり破局するもんである。身勝手なのはお互い様っていう。
でもラストで「お前の卵は俺の卵だ」と急にカッコよくなった。どういうセリフだw
「ノエ」
登場キャラクターの中で最も地味だが、ハンバーガーの食べ方は綺麗なためノアと結婚した。でもモスバーガーとかって絶対にミートソースがクリーム多めのシュークリームみたいに飛び出すよね。あれが上手に食べられたら免許皆伝感あるよね。
「レイ」
花のように美しい女性だが(実際に頭に咲いてる)ハンバーガーを豚のように食べる。
「ババサビブ」
バルカン星人風。自分たちの星の挨拶みたいな感じで顔を舐めてくるが特に意味はないらしい。
女性の生理的な周期で脱皮する。
「ハナさん」
チーズサンサンバーガーセットににダブルチーズサンサンバーガーを追加するのと、ダブルチーズサンサンバーガーセットにチーズサンサンバーガーを追加するので、なぜ代金が違うのかと素朴な疑問を店長に打ち明けたところ、「そんなことを末端のお前が疑問に思う必要はない」的なあしらわれ方をされたため、号泣、EMPを放射し店内の動力システムを落とす。
「堂本博士」
AI。セリフのバリエーションがおそらくペッパーの1万分の1しかない。抱きしめたい!お前を抱きしめたい!しかし私には首から下、ないからね!!
「ゼット」
あのクールな石田治部が「ビンビンですよ・・・」といつもの不敵な笑みで語っているだけで爆笑。
「メンデス」
あのクールな上杉景勝がまさかの出産・・・つーか産卵!!日本映画史に残るおぞましいシーンかと思いきや、まるでウミガメの産卵シーンのような謎の感動があった。しかし卵の一つはハナさんにダストシュートであっさり宇宙に捨てられた。こんな時キャプテンソックスがいてくれたら・・・!!!
「ズズ」
ヌルヌルしてる西川貴教。産卵シーンで彼の出番かと思いきや、マイクル・クライトンの『スフィア』的に優香に昆布を召喚されてしまった。
「ハトヤ隊員」
ウルトラセブンを知ってるなら彼のたどる展開に腹がよじれるほど笑える。「だけどなハトヤ、ハンバーガーショップで打ち明けるような話じゃないだろ」ってww
キャプテンソックスがとにかく絶妙にダサい。このダサさはなかなか狙って出せるもんじゃない。三谷幸喜おそるべし・・・!!
「ヘア!」という掛け声は小栗旬さんのアドリブっぽくて面白く、また、なぜか「ソックス!」の掛け声はSE的なエコーがかかっていたのも大爆笑。最後まで全くいいところがなく、キャスト全員に「チェックすんなよ!」「役立たず!」と暴言を吐かれて退場した。
とにかく全キャラクター不思議の国のアリスのようにいかれていて、どれも某差別はヤメよう映画のウサちゃんやキツネさんのように、すぐには受け入れられそうにないのがいい。異文化理解とはそんなに甘いもんじゃないんだっていう。でも最後は歌で強引に着地させたところは似ている(^_^;)
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