『ラストパーティ』脚本⑧

エゼルバルド城中央ゲート
城門は戦時中ということで厳重に閉じられている。
堀の跳ね橋も上がっており、通行止めになっている。

門の前にゼリーマンのペガサスが舞い降りる。
衛兵「そこで止まれい!!現在、戦時中のため城下には入場制限がかかっている!!」
ゼリーマン「ガリアごときにビビッて街ごと引きこもりかい。」
衛兵「黙れ下級モンスター。ここで成敗してやろうか?」
ヨシヒコ「小田原城みたいだな・・・」
衛兵「異世界の連中がやっと引き上げたと思ったら今度はガリア軍だ・・・」
ゼリーマン「そのガリア軍の情報を持ってきたと言ったらどうだ?」
衛兵「本当か!?ようし、場内へ入れ!
とでも言うと思ったか!お前がトロイの木馬じゃない証拠を見せろ!」
ゼリーマン「やれやれだぜ・・・」
衛兵「勘違いするなよ下等生物・・・お前らモンスターが俺たち人間と対等に渡り合えるなんて思うんじゃねえ。てめえらは、原っぱで勇者パーティに通り魔的に惨殺されて、わずかな経験値を提供するだけの生ごみだ。」
哀れに思うヨシヒコ「きみ、モンスターにも人間にも罵倒されてるな・・・」
小声でゼリーマン(覚えてろよ・・・メドのように後でぶち殺してやる・・・)
衛兵「何か言ったか?」
ゼリーマン「い・・・いえ・・・旦那、金貨を・・・」
ペルセウスの金貨を衛兵に見せるヨシヒコ
「王立捜査局のものだ・・・国王ライオンハーテドの命で腕利きの戦士をリクルートしに来た・・・
この供のスライムも体中にゼリーを塗ったくった潜入捜査官だ。」
衛兵「これは確かにペルセウス殿のもの・・・し・・・失礼しました!!
人間だったんですね・・・!」
敬礼をして、部下に跳ね橋を下げさせる衛兵。
ゼリーマン「いいよ、馬で飛び越えるから。」
ペガサスにまたがるゼリーマン。
翼を広げるペガサス。
衛兵「・・・・・・。」



モンスターハンターギルド
店内は酒場のようなにぎやかさで、壁には、お尋ね者のモンスターの張り紙がたくさん掲示されている。
「メデューサ  討伐難易度:高  賞金額:25万ゴールド  容疑:違法賭博胴元
(※討伐されました。ご協力ありがとうございました。)」の張り紙。
ゼリーマン「ここなら、腕自慢のウォリアーがたくさんいますよ・・・」
ヨシヒコ「よくモンスターを駆除する連中の店に入れるな・・・」
カウンターのマスターに話しかけるゼリーマン
「よう、マスター。あんたの店に金に困っている腕利きはいないか?」
マスター「一人いる・・・リオレウス卿だ。ふたつ名は竜殺し。腕は確かだ。」
ゼリーマン「そいつを雇いたい。報酬は弾む。」
マスター「残念だったな。先週、異世界からやってきた連中に雇われて出てっちまったよ。」
ヨシヒコ「異世界だって・・・?」
ゼリーマン「いつ戻ってきそうだい?」
首を振るマスター「今頃はジャバウォッキーのフンだ。」
ヨシヒコ「コマキ社の第9救助隊だ・・・」
ゼリーマン「他の連中は?」
マスター「腕の立つ奴はほとんど徴兵されちまったよ。
残ったのは野盗崩れの飲んだくれだけさ・・・(店内の客を見渡して)こいつらならオレでも勝てる。
店がなかったら、俺が手を貸してもよかったがな。悪いなゼリーマン。」
マスターにチップを渡すゼリーマン「いいさ、また今度飲みに来るわ。」

階段から中年の騎士と若いシスターがギルドホールに降りてくる。
採用担当「今後のご活躍をお祈り申し上げます。」
シスター「無慈悲に不採用にしといて、これ以上心の傷をえぐらないでよ。」
騎士「もういいから・・・」

振り返るヨシヒコ「彼らは・・・?」
マスター「うちで働きたいとかいう無職だ。」
ゼリーマン「立派な騎士に見えるが、不採用なのか?」
マスター「エントリーシートの志望動機が、ギルドは安定していて福利厚生がしっかりしている、クビがない、しか書かれてなくて、企業分析が全くなかったからな・・・
確かにうちの賞与はデカいが、それは危険手当がついているだけで、決して楽な仕事じゃねえ。
自己PR欄も、「かつて世界を救った」とか抽象的なことしか書いてないから、具体的にどんな冒険をしてどういったスキルがあるかが不明確・・・」
ヨシヒコ「それはぼくでも落とすな・・・」



城下町の市場で強者を探すヨシヒコとゼリーマン。
首を振る街の民。
ゼリーマン「なかなか勇者って見つからないもんすね・・・」
ヨシヒコ「だから勇者なんだろうな・・・」
ゼリーマン「旦那も収穫なしですか。」
ヨシヒコ「何人かの町民が、勇者ならリーズガーデンのスナイデル・ヴィンツァーがいいのではと言っていたが。」
ゼリーマン「ヴィンツァー卿ですか?それは論外だ。」
ヨシヒコ「知っているのか?」
ゼリーマン「ライアー・ナイト。あれは嘘つきで臆病者の根性なしですよ。」
ヨシヒコ「かつての戦乱で世界を救ったと言っていたが・・・」
ゼリーマン「証人がいない。」
ヨシヒコ「では、なぜ彼が救ったことになっているんだ?」
ゼリーマン「あいつ以外の勇者パーティがラスボス戦で全員死んじまったからです。
結果的に邪神による世界の破滅は免れたが・・・
別の原因かもしれないし・・・そもそも世界の破滅自体が誰かの陰謀論だったのかも。」
ヨシヒコ「世界人口の3分の1が減ったらしいから、陰謀論じゃないんじゃないか??」
ゼリーマン「俺はこれでも情報リテラシーが高いんです。
そんなソースが薄弱なおとぎ話は信じねえ。」
ヨシヒコ「そうか・・・もしそんな人材がいたら即中途採用だったが・・・」
ゼリーマン「旦那。よく考えてもみてください。
世界を滅ぼすほどの力を持った存在をたったひとりの勇者が剣一本で倒せると思いますか?」
ヨシヒコ「・・・そういう世界だろう?」
ゼリーマン「そういうデマが蔓延する世界ってだけです。
あいつは自分だけが生き残ったのをいいことに、世界の救済を自分の手柄にしやがった。
こっちは毎日汗水たらして泥棒してるってのに、あいつは生涯勇者年金で悠々自適のFIREですよ。」
ヨシヒコ「・・・羨ましいの?」
ゼリーマン「とにかく、あいつはやだ!みんなにチヤホヤされやがって!」
ヨシヒコ「わかったよ・・・ぼくは君を信じる。別の人材を探そう。」

その時、中央の広場に人だかりができているのに気づく2人。
ゼリーマン「なんだ?大道芸か?」
ヨシヒコ「ちがう・・・」
そういうと、背伸びをして人だかりの向こうを覗くヨシヒコ。
ゼリーマン「なんですか?」
ヨシヒコ「きみの友だちだ・・・」

人だかりの真ん中では葬儀屋と商人が何やらもめている。
葬儀屋は魔女のような黒づくめの格好をしており、一方の商人の方は二人組の中年で、どことなくアジアンテイストの格好をしている。
葬儀屋のメグナ・テスタメント「ごめんね・・・葬儀は取りやめよ・・・」
商人のトクガワ「なに?」
テスタメント「墓も掘ったし柩も用意したんだけど・・・」
トクガワの相棒のマサノブ「なら早いとこ埋めてやれよ!」
トクガワ「渡した金じゃ足りないのか?」
テスタメント「金じゃないんさね・・・
そりゃ20ゴールドくれりゃあ、あたしゃどんな人間のクズだって弔ってやる。
でもダメなのよ。」
そう言うと、トクガワに金貨を返すテスタメント。
トクガワ「どうなってやがる・・・あいつを埋めてやりたいのはあんたも同じだろう。」
テスタメント「信心深いわね・・・きっと天国に行けるわ。」
トクガワ「おい、そういうことじゃないんだよ!オレたちはおっぱいパブのチェーンを各地で経営しているケチな商売人だ。
で、ここに来る道すがら裸の女の死体が転がってて、なのにみんな知らん顔だ・・・葬ってやるのが三河商人じゃないか。」
マサノブ「・・・もう、いいんじゃないすか?」
トクガワ「そうはいかん!あのまま、ここに置いといたらそれこそ腐って、ただでさえ不衛生な中世の城塞都市がますますウンコだぜ!」
テスタメント「あたしだってウンコは嫌だけど、この街ではそれができないんだ。
当局があの死体は墓場にふさわしくないんだってさ。」
トクガワ「はあ・・・?あんたんとこの墓場で眠っているのは、人殺しや盗人やサイコパスの類だよ?」
マサノブ「人のチンコを切ってソーセージにして食っていたやつの墓もありました。」
テスタメント「それでもみんな人間なんだ・・・あの子は、モンスターなのよ・・・」
トクガワ「たまげたね・・・死んだあとも差別されるのか。」
テスタメント「みんなモンスターが怖いのさ・・・スタッフもみんな逃げちまった。」

その様子を複雑な表情で見つめるゼリーマン。
広場に横たわっているのはハルの死骸だったからだ。
ヨシヒコ「何とかしてやろう・・・」
広場に出ていこうとするヨシヒコ。
それを制止するゼリーマン。
ゼリーマン「旦那、ダメだ。」
ヨシヒコ「・・・あそこにいるのは君の友達じゃないか。」
ゼリーマン「俺に友達なんかいねえ。
それに・・・こんなつまらねえことで旦那を巻き込むわけにはいけねえ。」
ヨシヒコ「つまらないって・・・」
ゼリーマン「これは俺たちモンスターの問題です。異世界の旦那には関わりのねえことだ。」
ヨシヒコ「ゼリー・・・」
ゼリーマン「旦那は、スライムを殺して毎回葬儀を上げている勇者を見たことがありますか?」
ヨシヒコ「・・・私は、そういった人物こそ・・・本当の勇者だと思うが。」

マサノブ「じゃあ、代わりの社員を呼んでこいよ・・・!あんた、それでも送り人か!」
テスタメント「冗談じゃない!この街に何人差別主義者がいると思ってるのよ!
モンスターを弔ったとなれば、うちは営業停止じゃすまない・・・」
その時、広場の脇から誰かが声を上げる。
騎士「私がやろう・・・」
そう言うと、ギルドで就活をしていた無職の騎士が、ハルの死体をお姫様だっこのように優しく持ち上げて、霊柩馬車に乗せてやる。
テスタメント「ちょっとあんた・・・!勝手なことはやめてちょうだい!
この霊柩車は高級なんだ、もし反魔物主義者にぶち壊されたら・・・」
そう言うと、テスタメントに金貨を投げるヨシヒコ。
ヨシヒコ「これで弁償する。」
ヨシヒコの方を向いて会釈をする騎士。
霊柩馬車に乗り込む騎士。
すると、若いシスターも馬車に近づく。
シスター「葬儀のミサができる人間もいるでしょう?」
騎士はシスターに腕を貸してやり、シスターをステップに上げる。
騎士「行こうか・・・共同墓地へ。」
シスター「あたしはまだ入りたくないからね・・・」
そう言うと、馬車を発進させる騎士。

街の中央通りを通過する馬車。
民家が道の左右にひしめいており、どこからも霊柩車が狙える危険な状況。
どこからか罵声が聞こえる。
市民「お前らも魔物なんだろ!」
市民「井戸に毒でも入れに来たのか?」
シスター「ゴミみたいなツイートね・・・」
手綱を握る騎士「無視無視・・・」

とある窓に人影ができる。
騎士「左側、3軒先の2階に弩弓を持った市民がいるぞ。」
弓を構えるシスター「素人の弓なんて怖くないわ・・・もう少しで射程に入る・・・」
騎士「教会で習ったのか?」
シスター「忘れたの?私の血筋はケルト系よ。弓のセンスはDNAに刻まれてる・・・」
その時、弩が発射され霊柩車に火矢が飛んでくる。
シスターは弓をうち、その火矢を矢で跳ね返し、進行方向を変えてしまう。
騎士「やられたか?」
シスター「バカね・・・矢に火をつけたら軌跡が丸見えじゃない・・・」

共同墓地にたどり着く馬車。
すると、墓地の前にモンスターハンターたちが集まっている。
騎士「歓迎員だ・・・」
シスター「どっかのバカが通報したのよ・・・」
馬車から降りる騎士「どうかしました?」
馬車に立ちふさがるハンター「止まれ・・・誰の許可で魔物を埋葬しようとしている・・・」
騎士「保健所です・・・」
槍やハンマーやバトルアックスを構えるハンター「馬鹿にするんじゃ・・・」
その刹那、騎士が剣を抜くやいなやハンター達の武器がすべて真っ二つにされてしまう。
ハンター「・・・!!」
剣を鞘に戻す騎士。
シスター「現役時代よりも早いんじゃないの?」
騎士「なんか、たまにやるとうまくできるね。」

すると騒ぎに気づいてパトロール中の兵士が駆けつけてくる「何事だ?」
シスター「なにも。(ハンター達の方を向いて)そうよね?
・・・柩を埋めるのを手伝ってくれる?」
偏見のない町民が馬車に駆け寄ってくる。
金貨を掲げるテスタメント「あたしの奢りよ!飲んでちょうだい!」
歓声が上がる。
騎士の方に駆け寄るトクガワ「おい!いいもん見せてもらったぜ!」
マサノブ「とんでもねえ居合抜きだ・・・!すげ~な・・・!」
マサノブに剣を渡す騎士「剣お返しします・・・」
騎士の周りに人だかりができる。

その様子を眺める二人。
ヨシヒコ「・・・あの太刀筋・・・見えたか?」
首を振るゼリーマン「恐ろしい・・・気づいたときには敵はあの世だ・・・」
コンピテンシーリーダーを騎士の方へ向けてレーザーを飛ばす。
ゼリーマン「何者ですか?」
コンピテンシーリーダーを読み上げるヨシヒコ
「・・・ええと・・・
戦闘経験:レベル99
剣技レベル:カンスト
人間性:誠実で心根が優しいが、やや控えめで優柔不断
職歴:王立騎士団軍事顧問、勇者ギルドトップランカー、現在無職・・・」
ゼリーマン「・・・本物の勇者だ・・・」
ヨシヒコ「氏名:スナイデル・ヴィンツァー」

『ラストパーティ』脚本⑦

甲冑を着けるヨシヒコ。
ランスを渡すゼリーマン「ほいで、これが槍です。」
ヨシヒコ「・・・めちゃくちゃ重いな・・・」
ゼリーマン「やっぱり俺が代わりましょうか??」
ヨシヒコ「・・・やりたいのか??」
そう言うと、馬のドードー鳥にまたがるヨシヒコ。
ゼリーマン「ずいぶん脚が短い馬っすね・・・」
手綱を引くヨシヒコ「でも、脚は速そうだ・・・どうどう・・・」

支配人室からトーナメント会場を見下ろすメド
(バカね・・・あのデュラハン卿に勝てるわけがないじゃない・・・
あまりに圧勝しすぎてギャンブルとして成立せずブリジッド政府に禁止されたくらいなのだから・・・
それに、あの異世界人が仮にチート技を使用しても、ベット額の5倍は絶対に不可能・・・
デュラハン卿はケンタウロス族・・・そう、下半身が馬・・・!
絶対に落馬はないのよ・・・)
メド「・・・それでは両者スタンバイが完了したようです・・・!
コロシアム中央のウィル・オー・ウィスプが赤から青になったらスタートです!!
エト・ヴ・プレ?(準備はいい?)」

青コーナー
ゼリーマン「旦那!リラックス!一騎撃ちは臆病風邪に吹かれたほうが負けます!
負けたって、せいぜい肋骨粉砕骨折だ・・・!人生、生きてりゃ勝ちよ!!」
ヨシヒコ「にわかに緊張してきたぞ・・・」

赤コーナー
ミノタウロス「人間の体は信じられないくらいひ弱だ・・・加減はしてくれ・・・」
デュラハン「私はプロだ。心得ている。さあ、正々堂々いざ勝負勝負!!」

ウィル・オー・ウィスプのシグナルが青に変わる。
メド「ア・ヴォ・マルケス・・・アロン!!(始め!)」
互いに突進するデュラハンとドードー。
ぐんぐん接近していく・・・
が、デュラハンのオーラに臆して、ドードーがくるりと向きを変えて逃げ出してしまう。
慌てて手綱を引くヨシヒコ「おい!何処へ行く!!」
逃げ出すドードーをそのまま追いかけるデュラハン。
円形コロシアムをぐるぐると回る、追いかけっこが始まってしまう。
観客の大ブーイング。
スケルトン「ふざけんな~~!!もう骨がねえよ、バカヤロー!!!」
怒りが収まらないギャンブル狂の魔物たちが観客席からコロシアムに飛び降りて、追いかけっこに加わり出す。しっちゃかめっちゃかなコーカースレース。

その様子を呆然と見つめるサイクロプス「兄弟・・・この場合は勝敗はどうなるんだ?」
無線をかざすミノタウロス「姐御・・・無効試合ですか?」
メド「青の負けにしなさい!!これで24000ゴールドはいただきよ!」
勝敗をアナウンスしようとするミノタウロス「この勝負・・・」

そのとき会場に精悍な騎士が現れる。
騎士「待った!!」
ミノタウロス「なんだあんた・・・!大事なギャンブル中に!!」
すると、身分証を見せる騎士。
「王立捜査局主席捜査官のペルセウス警部補だ!
賭博目的のジュースティング開催は風営法で禁止されている!!
ただちに試合を中止し、おとなしくお縄に付けい!!」
サイクロプス「さ・・・サツだ!!!」
会場に悲鳴上がり、モンスターたちが逃げ出す。
しかし、巨大な盾を持った王立機動隊の騎士が会場になだれ込み、魔物の行く手を阻む。
モンスターたち「違法賭博は極刑だ・・・!もうやるしかねえ!!」
魔物と騎士たちが乱戦を繰り広げる。

メド「くそ・・・なんでここがバレたのよ!!」

ペルセウスがゼリーマンに近づく。
ペルセウス「寝返ってくれて感謝するスライムくん。
なかなかジュースティングが現行犯で押さえられなかったんだ。
これで私も警部になれる・・・」
ゼリーマン「礼はいい・・・約束の金は?」
ペルセウス「セリポス島の5万ゴールド金貨だ・・・持って行きなさい。」

その様子を眺めて怒りに震えるメド「あのクソゼリー・・・!はなからあたしをハメやがった!!」
すると、デスクの中にしまっていた尻尾を引き抜く。
尻尾の先にはごついガトリングガンがついており、窓越しにゼリーマンに一斉掃射を試みる。
メド「死に晒せええええ!!!!」

あわてて銃弾をかわすゼリーマン。支配人室のデッキを指差す。
ゼリーマン「あの人が主犯です・・・!」
ペルセウス「わかった!君は危ないから下がってなさい!!」
ゼリーマン「勇敢な警部補にアテナの加護があらんことを。」
ペルセウスは頷くと、剣を抜いてメデューサと戦いをはじめる。
ペルセウスなど眼中にないメド「待てやゼリー!!」
ペルセウス「お前の相手はこの私だ!!」
メド「どきなさいよ!!邪魔よ!!」

とうとう、コロシアムの壁に勢い余って激突してしまうドードー。
ドードーから落馬し地面に転がるヨシヒコ。
ヨシヒコ「あたた・・・!」
後ろを振り返ると、ランスを抱えたデュラハンが突進してくる。
デュラハンのランスが届く寸前、ペガサスに乗ったゼリーマンがヨシヒコの手を取って、ペガサスの背中に乗せる。
ペガサスはその白い翼を広げて、コロシアムの上空を飛んで行き、天窓を突き破って「ハリーハウゼン」を脱出する。
ゼリーマン「12ゴールドが4100倍になりましたよ。」
ヨシヒコ「馬に乗るのは誰でも良かったんだな・・・」
天窓を見上げるメド「覚えておきなさい・・・ゼリーマン!!」
その直後、ペルセウスに首を切られてしまうメド「ぐえええ!!」
振り返って微笑むゼリーマン「地獄で会おうぜ!」



美しい朝焼けの空を飛行するペガサス
ヨシヒコ「また、火事場泥棒でこんな白馬を盗んだのか・・・」
ゼリーマン「オレのたった一つの取柄なんでね・・・」
ヨシヒコ「金貨をもらうよりも、あの捜査官を味方につけた方がよかったんじゃないのか?」
ゼリーマン「ペルセウスって・・・何をした人か知ってますか?」
ヨシヒコ「・・・アキレス腱を痛めた人だっけ・・・?」
首を振るゼリーマン「あいつの知名度はそんなもんです。
それに・・・出世の為にオレみたいな薄汚ねえモンスターと司法取引するような奴だ。
信用ならねえ・・・警視総監を約束されたら親だって裏切りますよ。」
ヨシヒコ「なるほど・・・」
ゼリーマン「その点、旦那は信用できる。金でも地位でも動かねえ。
実直な兄貴だ。いや、愚直なのかな・・・?」
ヨシヒコ「・・・どうも。」
ゼリーマン「そんな強い信念のある人物はこの世界には貴重だ・・・
弱気を助け、強きをくじく気高い勇者を見つけないと・・・」
ヨシヒコ「そんな勇者がその金貨につられて仲間になるか?」
ゼリーマン「勇者はまっすぐすぎて、社会で冷遇されているもんです。
なのでだいたい金に困っている。」
ヨシヒコ「悲しい世界だな。」



サントノーレ修道院
「タックスフリー」の看板。
駐車場にペガサスの手綱を結ぶゼリーマン。
ドアを叩くゼリーマン「休憩。大人二名。」
ヨシヒコ「・・・モンスターを泊めてくれるのか?」
ゼリーマン「修道士はそんな差別はしません。宿泊料さえ払えば。」
扉の小窓が開く。
小窓の隙間からカギを出す修道士「この時間だと宿泊料金になるが・・・」
ゼリーマン「じゃあ、モーニング付けてくれや。」
修道士「スタンダード?デラックス?デラックスならミートパイに半熟卵が乗っかるけど・・・」
ゼリーマン「デラックスで。エールもくれ。」
修道士「あいよ・・・お熱い夜を・・・」
小窓を閉める。
ヨシヒコを見つめるゼリーマン。
ヨシヒコ「ぼくにそんな趣味はないからな・・・」

粗末なベッドのあるツインルーム。
ゼリーマン「二段ベッドだ!旦那!どっちにしますか?」
ヨシヒコ「わたしが上でいいかな・・・きみの体液が垂れてくるから・・・」
ベッドに転がるゼリーマン「ラジャー!」
シーツがにわかにびしょびしょになる。
ヨシヒコ「うまいぞ・・・机と筆記用具がある・・・」
机の上には、小鳥大の妖精がカゴに入っており、ほのかに明かりをともしている。
羽ペンをとるヨシヒコ。
ゼリーマン「誰かに手紙ですか?」
ヨシヒコ「冒険の記録をつけようと思ってね・・・
いや、冗談だ。コマキ社に手紙を転送する。
近くに転送ポイントがあるからね。」
ゼリーマン「手紙を送れば、向こうから加勢が来るとか?」
ヨシヒコ「・・・そんなものは期待してないが・・・
これが湯浅専務に届けば・・・少なくとも結城の妨害は防いでくれる・・・
あいつの嫌がらせで、小田さんは亡くなった。やつはその罪を償うべきだ。」
紙を丸めると、妖精をかごから出して、手紙を脚に括り付ける。
ヨシヒコ「向こうの中年のメガネをかけた紳士まで頼む・・・
しかし、アロハシャツの男には気をつけるんだ。」
妖精は頷くと、窓から飛んでいく。



夜が明ける。
修道院の食堂。
朝食のミートパイをがっつくゼリーマン。
その様子を宿泊客の紳士が見つめる。
新聞紙を開きながら紳士「巡礼かね?」
くちゃくちゃしてモーニングを食べるゼリーマン「この俺が巡礼者に見えるか?」
紳士「いや・・・むしろ罰当たりな軟体生物だ・・・出身は湖水地方かね?」
ゼリーマン「そんなとこだな・・・あんたは?」
紳士「ガリア大陸から。帝国軍の進軍に混ざってきたんだ。」
ゼリーマン「あんた・・・その見た目で軍人か?」
微笑む紳士「この私が軍人に見えるか??私は学者だよ・・・
ゴート大学の歴史学者でね・・・勇者学を研究している。」
ゼリーマン「・・・勇者学だって??あんた・・・勇者に詳しいのか?」
紳士「まあね・・・」
ゼリーマン「ズバリ、この世界で一番の勇者は誰だ?」
紳士「その勇者に会いたくて私はブリジッド領にやってきた・・・
かつて世界の崩壊を食い止めた伝説の勇者・・・」
ゼリーマン「おい、あんたもしかしてサー・ヴィンツァーの伝説を信じているのか?
ぎゃっはっは・・・!あいつはただのホラ吹き男爵だよ!
破滅の邪神ニャルラト・カーンを殺せるわけがない!」
紳士「では・・・なぜこの世界はまだ終焉を迎えていないのかね・・・」
ゼリーマン「答えは簡単だ。そんな邪神はそもそも存在しなかったんだ。」
紳士「では、ガリア大陸北東部をゴッソリえぐりとったエリスクレーターはなぜできた?」
ゼリーマン「ああ言えばこう言うインテリゲンチャだな・・・」
紳士「君が言うとおり、勇者といえどたかが人間・・・神は殺せまい。
彼の人柄に惹かれて優秀な戦士や高名な魔導師がパーティに加わったらしいが、邪神との戦いで生き延びたのはサー・ヴィンツァーだけ・・・彼は生き証人なのだよ。
私は歴史学者として彼の証言を後世に残す義務がある・・・」
ゼリーマン「ふうん・・・で、ヴィンツァーはどこにいるんだい?」
紳士「おそらく、ここからずっと北のローク地方だと思われる。」
ゼリーマン「じゃあ、あんたはそこを目指すのか?」
紳士「ああ・・・ガリア軍とは別れてね・・・連中は残虐極まりない・・・
ああいう暑苦しいのは好きじゃないのだよ。」
ゼリーマン「俺たちも勇者を探してるから・・・もしヴィンツァーに会ったら・・・あんたが会いたがっていることを伝えておくよ。」
紳士「それは助かる。」
ゼリーマン「あんたの名前は?」
紳士「ゴート大学リベラルアーツ学部、学部長のローワン・ウイリアム主席司祭だ・・・」
そう言うと、祈りを捧げて食堂から出ていくローワン。
入れ違いに食堂に入ってくるヨシヒコ。
風呂上がりで機嫌のいいヨシヒコ「まさか、こんな修道院に温泉があるとはな・・・生き返ったよ・・・
どうした?誰かと話してたのかい?」
ゼリーマン「勇者マニアの変なおっさんがいました。」
ヨシヒコ「?」
ゼリーマン「それより・・・勇者を探すのにうってつけの場所を思い出しました。」
ヨシヒコ「どこ?」
ゼリーマン「モンスターハンターのギルドです。」

『ラストパーティ』脚本⑥

ウンディーネ地下水路
発光するキノコをむしり取ってランタンがわりにするゼリーマン。
「もう少し行けばホーン平原の下ですが・・・
やめといたほうがいいっすよ・・・ここら一帯はもはやガリア帝国の縄張りだ・・・
ガリア兵はイナゴみたいな連中でね・・・何もかも奪って食いつぶしちまう・・・」
ヨシヒコ「まいったな・・・一度会社に帰って戦略を立て直したかったが・・・」
ゼリーマン「その会社が邪魔者の旦那を殺すために戦場のど真ん中に送ったんじゃないんですか?
俺が思うに・・・コマキ社は本気で奥様を救出する気はないと思いますよ。
そういう連中がやることは責任逃れの言い訳を考えることだけだ。」
ヨシヒコ「妻の救出に本気なのは出資したGASEだけか・・・」
ゼリーマン「ホーン平原の他にゲートはあるんですか?」
ヨシヒコ「ああ・・・来場者用が6ヶ所と従業員用が2ヶ所・・・」
ゼリーマン「その中で、戦火に巻き込まれていないところを探すとしますか・・・」
ヨシヒコ「・・・お前はずっとついてくるのか・・・??」
ゼリーマン「世話になった旦那が異世界で一人ぼっちなんですよ!力を貸すのはスライムとして当たり前じゃないですか・・・!」
ヨシヒコ「・・・仲間と根城がなくなったから心細いのか?」
ゼリーマン「ばっ・・・冗談じゃない!オレはこれでも雑魚モンスターの王っすよ!
手下はまだまだたくさん・・・」
ヨシヒコ「悪かった・・・私も大切なガイドを失ってね・・・
君のように、人間の言葉もモンスターの言葉もわかる味方は心強い・・・
ついてきてくれると助かる・・・」
ゼリーマン「へへ・・・」
ヨシヒコ「・・・で、どうせ目的は私の世界のゼリーなんだろ?
謝礼はハウス食品ゼリエース1年分でいいのか?」
ゼリーマン「で・・・できればマンナンライフの方も・・・」
ヨシヒコ「わかったよ・・・ウィダーインゼリーも箱で付けてやる・・・」
ゼリーマン「おっしゃあ!これでオレは一生遊んで暮らせる!
ゼリー界の神にオレはなる・・・!」
ヨシヒコ「よ・・・よかったな・・・」
ゼリーマン「旦那、オレに考えがあります・・・」
ヨシヒコ「聞こう。」
ゼリーマン「旦那の会社には味方はいない・・・なら、戻るのは奥様を救出してからだ。
この世界で味方を見つけるんです。」
ヨシヒコ「・・・まあ一理あるな・・・」
ゼリーマン「しかし、凄腕の味方をパーティに加えるには金が必要だ・・・
旦那・・・何ゴールド持ってます?」
ヨシヒコ「・・・現地の通貨は・・・12ゴールド・・・」
ゼリーマン「それ・・・俺によこしてください・・・100倍にしてみせますよ・・・」
ヨシヒコ「どうやって・・・?」
地下水路の隠し通路を開けるゼリーマン「ここです・・・」



通路の奥には、恐ろしいモンスターたちが集まる賭博場がある。
ゼリーマンが賭博場に入ろうとすると、ボディガードのミノタウロスとサイクロプスが入場を阻む。
ゼリーマン「メドの友人のゼリーが来たと伝えろ。」
ミノタウロス「あんた・・・また来たのか・・・」
サイクロプス「帰んな。お前は出禁だ・・・」
ゼリーマン「この俺にそんな口の利き方ができるとは・・・いやはや驚いたぜ。」
ミノタウロス「塩をかけられたくなかったら、とっとと失せろ・・・」
ゼリーマンにヨシヒコ「モンスターの王じゃなかったのか・・・?」
ヨシヒコを見てミノタウロス「あ・・・あんた・・・コマキの人間か!??」
ヨシヒコ「そうだが・・・」
サイクロプス「ひ・・・ひい・・・!この店は見逃してくだせえ・・・!
人間様に虐げられた哀れな魔物が細々とやっているつまらねえ遊戯施設です・・・」
ゼリーマン「ふうん・・・おめえらコマキが怖いのか・・・
この俺はこの方の第一の舎弟だがな。
お前らの態度次第では、コマキを説得してやってもいいが・・・」
ミノタウロス「本当か?」
サイクロプス「どうする兄弟・・・」
ミノタウロス「オーナーに相談だな・・・
コマキの方・・・ど、どうぞこちらへ・・・」
ヨシヒコ「コマキ社を相当恐れているじゃないか・・・」
ゼリーマン「それはそうですよ・・・半年前に完膚無きまでにやられちまったんだから。
地上のモンスターは来場者が怖がるということで、この地下に強制退去ですよ。
ハルみたいな飛行系はここには住めませんでしたがね。」
ヨシヒコ「コマキのせいで難民か・・・」

用心棒の魔物2人に案内されて賭博場を歩いて行くヨシヒコとゼリーマン。
スケルトンの博徒「もう賭けられる骨がねえ・・・!」
ゼリーマン「骨になるまで飲まれるとかバカだろあいつ・・・」

支配人室
メガネをかけたショートカットの美女が大きなデスクで帳簿をつけている。
美女は下半身がガラガラヘビのそれで、しっぽの先っちょはデスクの陰に隠れている。
ヘビ女「ようこそ、裏カジノ「ハリーハウゼン」へ!ここのオーナーをさせてもらっているメド・ゴルゴーンです。
コマキさんへの上納金は先月送金したはずですが?」
ヨシヒコ「・・・うちの会社はモンスターになんてことさせてるんだ・・・」
ゼリーマン「相変わらず美人だなメドちゃん。海神が入れ込んだのも分かるぜ。」
メド「・・・あんたとは口もききたくないわ。」
ゼリーマン「無視は愛の裏返しってね・・・」
メド「キモイ・・・うちのカジノでゴト行為をやって黒服にボコボコにされたのに、よく懲りずに来れたものね・・・店が汚(けが)れるから出ていってちょうだい。」
ヨシヒコ「おたく・・・めちゃくちゃ嫌われてないか?」
ヨシヒコの方を向いて微笑むメド「もちろん泉様はVIP待遇で遊戯を楽しんでいただけますわ・・・
ルーレット、バカラ、ポーカーなんでもござれ。
差し支えなければ、このわたくしがディーラーを・・・」
ひそひそ声でゼリーマン「ここのルーレットには電磁石が仕込んであります・・・」
メド「おだまり、石にするわよ。」
ゼリーマン「コマキに髪を切られちまったからできないだろ。」
メド「あんたに牛乳を混ぜるわ。」
ゼリーマン「おれはフルーチェか・・・」
金貨が入った袋を取り出すヨシヒコ「元手がこれしかないんだが・・・」
メド「あらまあ・・・うちの最低ベッドは20ゴールドなので厳しいですわね・・・
ただし、賭け金を貸し出すことはできますわ。
コマキの社員様には、それこそ低金利で・・・(歯車式の計算機を叩く)トイチでどうかしら?」
ヨシヒコ「・・・おいゼリー・・・破滅への扉が今開いた気がするんだが・・・」
ゼリーマン「何をおっしゃいます!
冷血動物のメデューサにしちゃ甘々のデレデレ!
ここで勝負しなきゃ男じゃねえっすよ旦那!」
ヨシヒコ「ぼくはリスクが高いことには手を出さない主義なんだ。
トイチは年利換算で3100%・・・悪魔的だ。今じゃ武富士だってやらない・・・」
ゼリーマン「おい、その金利で乗った!いくらまで借りれる!?」
メド「あんたには貸さないわよ?私が貸すのはそちらの紳士・・・」
ゼリーマン「わかってらい!
旦那、こちらの羊皮紙にサインを・・・上限いっぱいまで借りましょう!」
サインをするヨシヒコ「お前・・・大丈夫なんだろうな・・・
で、貸し出し上限はいくらなんだ?」
メド「24000ゴールド・・・コマキ様ならはした金ですわ。」
青ざめるゼリーマン「・・・え?」
ヨシヒコ「お・・・おい・・・!!24000ゴールドって一体どれくらいの金額なんだ!」
ゼリーマン「武器屋で一番高い装備が・・・ちがうな。武器屋が買えます。」
ヨシヒコ「やっぱり貸出額は240ゴールドで・・・」
メド「あら残念ね。お客様はすでにサインをしてしまった。
魔界で契約は絶対・・・こちらが24000ゴールド相当のチップです。」
メドがレバーを引くと、金庫が開いて大量のチップがあふれ出す。
チップに埋まってしまうゼリーマン「うあ~!」
メド「さあ、頑張ってくださいまし。
10日で少なくとも2400ゴールド分は勝たないと利子も払えませんわよ・・・
お~っほっほ・・・!」
ゼリーマン「くそう!はめられたぜ・・・!!」
ヨシヒコ「馬鹿野郎!どうすんだこのチップ・・・!」
メド(・・・くくく・・・まんまとコマキのバカ社員を毒牙にかけてやったわ・・・
今まであの会社に奪われた分をふんだくってやるんだから・・・)
ゼリーマン「おいラミア!」
メド「種族名で呼ばないでくれる・・・?」
ゼリーマン「このカジノで青天井のギャンブルは何だ!!」
ヨシヒコ「お前本物のバカだろ・・・!」
ゼリーマン「このチップの量をチビチビかけてたら間に合いませんよ・・・!
こうなりゃハイリスクハイリターンの大勝負をして勝ち逃げするっきゃねえ!」
ヨシヒコ「パチンカスがよく言うセリフだ・・・!」
メド「そりゃあもちろんジュ―スティングに決まってるじゃない。」
ヨシヒコ「ジュースティング?」
ゼリーマン「よっしゃあ!血がたぎるぜ・・・!!」
ヨシヒコ「もしかして・・・馬上槍試合じゃないだろうな・・・!
俺たちはランサーなんか用意できないぞ!」
ゼリーマン「ランサーはここにいる。」
ヨシヒコ「は??」
ゼリーマン「このオレが出場します。」
ヨシヒコ「なんだって?お前馬に乗れるのか??」
かっこつけてニヤリと微笑むゼリーマン「サー・ウィリアム・マーシャル並みにはね。」
メド「あら勇敢なこと・・・!(黒服に)あんたたち、この愚かなスライムに槍と馬を用意してあげなさい。」
ゼリーマンにコンピテンシーリーダーをあてるヨシヒコ。
「ゼリーマン。レベル1、HP5、攻撃力0、防御力0、乗馬経験も0」
ヨシヒコ「・・・終わった・・・」



ジュ―スティングの円形コロシアム
――ジュ―スティング(一騎撃ち)とは、馬に乗った2人の騎士が双方から突進し、相手の胸に木製のランスを当てる競技である。
胸にランスを当てられればベット額の2倍、そのまま落馬させればなんと5倍の配当が得られる、脳汁まちがいなしの中世を代表するギャンブルだ・・・!

メド「さあ、皆さんお待ちかね・・・!
我がカジノ「ハリーハウゼン」にジュ―スティングが帰ってきました!
赤コーナーはディフェンディングチャンピオン!ミスタースリーピーホロウ、サー・デュラハン!
いざ入場です!!」
大歓声を受けて、下半身が馬になった首なし騎士がコロシアムに入場する。

大人気のデュラハンを眺めるヨシヒコ達。
ヨシヒコ「おい・・・めちゃくちゃ強そうだぞ・・・」
ゼリーマン「笑止。試合の前にすでに首が取れてるじゃないですか。
それ、すなわち雑魚キャラ・・・」
デュラハンにコンピテンシーリーダーをあてるヨシヒコ「死を予言する魔物らしいぞ・・・」
ゼリーマン「ふふ・・・この顔が、死にゆくゼリーの表情に見えますか?」
ジャケットを脱ぐヨシヒコ「逆になんでそんな自信満々なんだよ・・・試合には私が出る。」
ゼリーマン「旦那が?死ぬつもりですか?」
ヨシヒコ「お前は馬にも乗れないだろうが・・・!
私は妻に無理やり乗馬に付き合わされたことがある・・・だから少なくとも馬には乗れる・・・
それに・・・ここの連中はコマキを心底恐れている・・・コマキ社員のぼくに手荒な真似はしないだろう。」
ゼリーマン「忖度させるわけっすね!」

メド「対する挑戦者は青コーナー!
トウキョウトチュウオウクという異世界からお越しの株式会社コマキアミューズメント開発部主任、泉ヨシヒコ様!」
観客のモンスターたちは応援していいのか迷って、もじもじしている。
まばらな拍手。
ゼリーマン「おう!てめえらの薄汚ねえ賭博行為、誰が公認していると思ってるんだ!!」
慌てて大歓声をヨシヒコに浴びせるモンスターたち。
スケルトン兵士「最後の骨をミスターイズミに賭けるぜ~!!」

デュラハンに近づいて耳打ちするミノタウロス
「デュラハン卿・・・姐さんからの伝言だ。」
デュラハン「わかってる・・・殺しやしないさ・・・
そんなことしたら、それこそモンスターは皆殺しにされる・・・」
ミノタウロス「とはいえ・・・槍で軽くつついとけってさ・・・
試合中の事故なら何とでもごまかせる・・・
それで俺たち魔物の溜飲もいくらかは下がるだろ。」
デュラハン「面白い・・・」

『ラストパーティ』脚本⑤

茂みの地中に小田を埋葬してやるヨシヒコ
十字を切るヨシヒコ「王子様の夢を見ろ・・・」
立ち上がって西の空を振り返る。



ストレイシープ村
見た目は中世の農村だが、中央の廃屋にはコマキ社のロゴが入ったモニターやコンソールが並んでいる。
その管理デスクには、人の形をしたゼリー状の生命体が椅子の背もたれにふんぞり返っている。
ストレイシープ村に舞い降りてくるハルピュイア。
翼をたたんでゼリーマンのいるドリームワールドの管制塔にひょこひょこと入ってくる。
マジックキングダムのロゴが入ったポップコーンを口に放り込んでゼリーマン
「・・・どうだ?金目のものはあったか?」
複雑な表情をするハルピュイア。
ゼリーマン「ミスリルメイルは?ラストエリクサーは?じゃあ骨付き肉でいいや。」
すると、ハルピュイアが小田が履いていたパンツを差し出す。
ゼリーマン「バカ野郎!ビキニアーマーの上じゃなく下を持ってくる奴がどこにいるんだ!!
まったく、せっかく戦争に乗じて火事場泥棒を命じたのに、この役たたず!」
落ち込むハルピュイア。
ゼリーマン「・・・これでも私はゼウスの親戚だって??姉ちゃんは虹の女神のイリス・・・?」
出自を聞いて臆するゼリーマン
「・・・わ・・・悪かったよ。この異世界の豆菓子を食って元気を出しなさい。」
嬉しそうにポップコーンをついばむハルピュイア。
ゼリーマン「え?この村は人間に攻め込まれないのかだと?
ここを統治しているのは誰だと思ってるんだ!?
雑魚キャラの王である偉大なるスライム、ゼリーマン閣下ぞ!?
人間なぞこのプルプルの触手でひとひねり・・・」

小屋に入ってくるヨシヒコ「・・・相変わらずよくしゃべるモンスターだ・・・」
飛び上がって驚くゼリーマン「ひいいいい!!!」
ヨシヒコ「まだ、こんなセコイ商売をしているのか・・・」
椅子から立ち上がって両手を揉むゼリーマン「・・・い・・・泉の旦那じゃないっすか・・・!
嫌だなあ・・・こっちに来るときは連絡してくださいよ~・・・」
ヨシヒコ「その怪鳥はお前の仲間か・・・」
ゼリーマン「悪い奴じゃあないんですが・・・いかんせん頭が良くなくてね・・・
で、一体なんのようです?」
ヨシヒコ「・・・こちらの言葉がわかるお前がいるなら話は早い・・・先月この村で何があった?」
ゼリーマン「それですよ・・・!旦那の会社の連中がこの村を拠点に開発工事を進めましてね・・・
このハルの住処も伐採されちゃって大変だったんすから。
旦那の世界のアミューズメン・・・パク?には、うちの世界は採用されなかったんじゃないんすか?」
ヨシヒコ「私が退社したあとに、予定が変わったらしい。で、あんたらモンスターが報復に打って出た、と?」
ゼリーマン「はっはっは!我々魔物も見くびられたもんだ!
鋼鉄のドラゴンやメラゾーマもびっくりの火力を持つ異世界の皆さんに喧嘩を売るほど、モンスターはバカじゃないっすよ。」
ヨシヒコ「では、先月2日にこの村を攻撃したのは誰だ?」
ゼリーマン「俺たち野生の魔物は利口ですが・・・召喚獣は魔王の命令に忠実だ・・・
この魔法の小箱(監視カメラ)によれば、ハデスの奴がジャヴァウォッキーをたたき起こして使役したと・・・」
ヨシヒコ「オディオサウルスを!?この世界で最強の魔物じゃないか。」
ゼリーマン「旦那の世界で言う・・・なんて言いましたっけ?アトミックボム?
しかし、ご安心を。この小屋をやっこさんが焼かなかったのが幸いでね・・・」
コンソールをいじるゼリーマン。
ゼリーマン「ええと・・・2日ですよね・・・この小箱に記録が残ってますよ。
しかし・・・時間を保存できる魔法ってどう発動するんですか?」
ヨシヒコ「レンズとCCDとフィルムがあれば・・・(説明がめんどくさくなる)なんでもいいだろ・・・
魔法なんだから・・・」

監視カメラの映像を真剣に見つめるヨシヒコ。
ゼリーマン「この日は、コマキさんのスタッフが視察に来て、村の連中に最後の研修を行っていたようっすね・・・旦那・・・誰かを探してるんですか?」
ヨシヒコ「しっ・・・」
ハルの方を向いてゼリーマン「おい、お前だぞ!静かにしろ!旦那は集中してるんだ!」

モニターには、コマキの社員が村民に風船の配り方をレクチャーしている様子が写っている。
コマキ社員「まず村民の皆さんに確認していただきたいのは、手首のブレスレットです。このブレスレットが付いている来村者(エトランジェ)は、我々ドリームワールドの大切なお客様ということになります。
その際は「お帰りなさいませ勇者様!」と笑顔で出迎え、お辞儀の角度は45度・・・」

ヨシヒコ「・・・ここは飛ばしていい。ジャバウォッキーが襲ってくる映像は?」
映像を早送りするゼリーマン「夕方だと思います・・・」

モニターの村の様子が暗くなり、逃げ惑う村民が現れる。
音声は絶叫しか聞こえない。

ゼリーマン「この時点でもう何個かの魔法の箱は破壊されてますね・・・」
ヨシヒコ「ストップ!!」
パチスロのように一時停止ボタンを叩くゼリーマン「あたあ!!」
ヨシヒコ「・・・桃乃だ・・・」

村民を逃がしながらマスケット銃を構えている女性を指差す。

ゼリーマン「随分勇敢な姉ちゃんですね。全長18mのドラゴンとやりあってらあ。」

スロー再生をするゼリーマン。
ドラゴンは巨大な後ろ足で女性に掴みかかる。
一瞬でフレームアウトする両者。

ヨシヒコ「・・・この怪物にさらわれたのか・・・
ジャバウォッキーを使役しているのは暗黒皇帝ハデスで間違いないのか?」
肩をすくめるゼリーマン「このレベルの召喚獣は魔王の称号を手に入れなければ、逆に食われちまいますよ旦那・・・」
ヨシヒコ「捜索が少し前進したな・・・ありがとう・・・」
ゼリーマン「この女騎士は誰なんですかい?」
ヨシヒコ「うちの妻だ・・・」



ストレイシープ村から北に6km――プランダル村
村の中央広場に陣を敷くガリア軍。
騎士階級の宿舎を急ピッチで設営している。
陣には簡易的な道具屋や鍛冶屋、賭博場も設営されている。
ガリア軍の隊長「え~・・・今日は皆さんご苦労様でした。
ここを我が軍の野営地とします。
それでは、ここからボーナスタイムに突入です。
日頃の疲れを癒していただき、明日以降も頑張って進軍しましょう!」
歓声を上げる兵士たち。
すると、村の畑を荒らし、家の中のツボや宝箱を破壊して略奪行為をする。
兵士「なんだよ、10ゴールドしかねえぞ」
兵士に襲われて逃げ惑う村民。

村の長に近づいていく隊長。
親しげにフレンチキスをする。
「村長、ここはなかなか結構な村だな。気に入ったぜ、この村の人口は何人だ?」
長老「・・・242人です・・・」
葉巻を吸う隊長「そんなに人間がいて、この村には教会の一つもねえのか・・・神様も気の毒に・・・
ブリジッドの連中はどいつも信仰心がねえよ・・・
王が離婚したいがために新しい宗教を作りやがるような国だからな。
若い女は、裸みてえなみっともねえかっこうしやがって・・・そう思うだろう?」

兵士「はいはい、持ち物はすべてこの袋に入れて・・・
老人はあっち、若い女はそっち、それ以外はこっち・・・列を作って並びましょう!」
村人「許してください・・・今年は不作で・・・私たちは何を食べて冬を越せば・・・」
兵士「大丈夫だ!お前ら村民に来年はねえ!」
村民「え?」
兵士「老人は武器の試し切り、若い女は死ぬまで強姦、それ以外の子どもや赤ちゃんはミンチにして軍馬とヘルゴートの餌にします!」

長老「そんな・・・!村民の命だけは・・・!」
隊長「神に祈るんだな。」
長老「あんたらの神はこんな虐殺を許すのか!」
長老にビンタする隊長「・・・うるせえ!俺の立場にもなってみろい、こっちも駐屯する兵士を養わなきゃいけねえんだ!
おい、軍曹!このじいさんから試し切りだ!極上グラディウスをよこせ!」
軍曹「はっ!」
目隠しをされてガリア兵に連れて行かれる長老「地獄に落ちろ~!!」

葉巻をポイ捨てする隊長
「さすがハデス様・・・収穫が始まるこの時期に進軍したのは非常に賢い・・・
長弓が得意なブリジッドの兵士どもは、農村に戻っておるわ・・・
この調子で周辺の村を滅ぼせば、エゼルバルドの篭城戦も厳しかろう・・・」
偵察兵「隊長!南にも村がありました・・・!」
隊長「ほう・・・?うまいもんはありそうか?」
偵察兵「それが・・・奇妙なことに住民は一人もおらず・・・見たこともない魔法装置がたくさんあり・・・」
表情が変わる隊長「・・・魔法装置・・・?なんて名前の村だい?」
偵察兵「ストレイシープ村です・・・」
立ち上がる隊長「・・・半年前、ガリアが奇襲を仕掛けたとブリジッドの野郎が言いがかりをつけた村じゃねえか・・・!魔法装置があって住民がいねえだと?
どう考えてもライオンハーテドの罠だ!上等だ、罠ごと叩き潰してやる。
軍曹、ボーナスタイムは終了だ!兵を集めろ!!」
軍曹「でも・・・極上グラディウスの試し切りは?」
隊長「ストレイシープの連中をみじん切りにしろ!2分で進軍開始!!」
軍曹がラッパを鳴らす。
長老(・・・助かった~・・・)



ストレイシープ村
電子レンジでタコスを温めるヨシヒコ
ゼリーマン「それ・・・食えるんですか?」
ヨシヒコ「美味いらしいぞ。キミも。」
ハルにタコスを投げるヨシヒコ。後ろ足の鉤爪でタコスを握るハル。
バックパックに食料とミネラルウォーターを詰め込むヨシヒコ「世話になったな・・・」
ゼリーマン「旦那、正気ですか?魔王ハデスから奥様を取り戻すって・・・」
立ち上がるヨシヒコ「子どもが家で待ってるんだ。」
ゼリーマン「家庭って魔王と戦って取り戻すほど大切なんすか?」
ヨシヒコ「君にも親や子どもがいるだろう?」
ゼリーマン「ええ・・・愛する子どもが2億人ほどね・・・ほとんどはお腹が減ったので食っちゃいましたけど。」
ヨシヒコ「スライムの道徳観念はわからん・・・」

その時、村に警報がなる。
ヨシヒコ「なんだ?」
ゼリーマン「エレメント・センサーが反応した。村に侵入者だ。」
ゼリーマンの方に目をやるハル。
頷くゼリーマン。
ハルが勢いよく上空へ飛んでいく。
遠くに、軍隊のかがり火が見える。
すぐに、地上付近まで下降し、村周辺の草原に浮いているウィル・オー・ウィスプの明かりを消す。

管制塔から出てくるゼリーマン。
ゼリーマン「なんだ!またガーニーのブタ野郎か!
先週泣かしてやったのに、まだこの縄張りを諦めねえとは・・・」
首を振るハル。
ゼリーマン「え?関東オーク組の奴らじゃない・・・?ガリア軍だって!??」
ヨシヒコ「それは本当か?
そもそも先月、この村を滅ぼしたのはガリア帝国のハデスじゃなかったのか?」
ゼリーマン「きっと、この村のお宝を嗅ぎつけて引き返してきやがったんだ・・・!」
ヨシヒコ「お宝・・・?」
ゼリーマン「この魔法の箱ですよ!相手の戦力は?」
困った顔をするハル。
ヨシヒコが管制塔にあった夜間ゴーグルを持ってくる。
ハルにゴーグルを取り付けるヨシヒコ「これをつけてやる・・・!」
ハルの背中を叩くゼリーマン「ようし行って来い!」
もう一度上空に飛び上がるハル。

ストレイシープ村に進軍するガリア軍。
上空を飛ぶ魔物を指差す兵士「うわあああ!バケモノだ・・・!」
軍曹「うろたえるな・・・!こんなこともあろうかと、我が軍には先生がいる・・・!先生!!」
すると、ローブをまとった修道士のような男が現れる。
ゴート大学の歴史学の教授、ローワン・ウイリアムである。
軍曹「先生・・・!一発お願いします・・・!」
分厚い魔道書を取り出すローワン「飛行系モンスターに効果的な魔法は高いよ。」
軍曹「金はいくらでも・・・」
メガネを直して、ページをめくるローワン「ま、美味いエールでも飲ませてくれればいいよ。」

上空を見上げるゼリーマン「どうだ!?」
目を凝らすハル。
すると、地上からキラリと光るものが何本かこちらに発射されてくる。
ゼリーマン「!!危ない!なんか飛んできたぞ!」
翼を翻し、慌ててその発光物体をかわすハル。
ゼリーマンの方に目をやり叫ぶハル。
ヨシヒコ「なんて言ってる・・・!!??」
ゼリーマン「まずい・・・!相手は旅団クラスだ・・・!
もういい、戻ってこいハル!ずらかるぞ!!」
すると、かわしたはずの光の矢がUターンをして、ハルの体を貫いてしまう。
落下するハル。村の納屋の屋根につっこみ姿を消す。

ヨシヒコ「や・・・やられたぞ!!」
ゼリーマン「なんてこった!ホーミング式ダイヤミサイルだ!!
あんな上級魔法が使える奴がいるのか!!」
ヨシヒコ「逃げ道はあるのか?」
ゼリーマン「ハル・・・!お前はバカで臭かったけどいいやつだった!
敵はとってやる・・・!」
そう言うと、とある小屋の中に駆けていくゼリーマン。
ヨシヒコ「お・・・おい!!」

軍曹「よ~し!空の魔物は倒した!!突撃だ!!」
ローワン「お気を付けて。」
村になだれ込むガリア兵。
すると、小屋の一つが突然爆発して、中からブリキで出来た巨大ロボットが現れる。
肝を潰すガリア兵。
「な・・・なんだあれは!!」

ラジコンを操作するゼリーマン「機動戦士サイコゴーレム発進!!
愚かな人間どもをタコ殴りにしろ!」
悲鳴を上げる兵士「うあわあああ!巨人だ!!」
軍曹「か・・・カタパルトだ!カタパルト用意・・・!」
村に3基のカタパルトが突入してくる。
カタパルトを引っ張るヘルゴートごと、ゴーレムは横倒しに放り投げてしまう。
ゼリーマン「モンスターナメんなコラー!!」
すると、もう一基のカタパルトが回転し、ゴーレムに巨石をぶつける。
大きく凹んでしまうゴーレムのボディ。
ゼリーマン「うわあああ!何てことするんだこら!!任意保険入ってねえんだぞ!!
ぶち殺す!!」
兵士たちを踏みつぶそうと、突進するゴーレム。

ゼリーマンに怒鳴るヨシヒコ「もういいやめろ!多勢に無勢だ!!村から逃げるぞ!」
ゼリーマン「ちくしょう、いいところなのに・・・(コントローラーのスイッチを入れる)オートプレイモード起動!」
2人は村の古井戸に飛び込む。

カタパルトの二発目がゴーレムに直撃し、やがてゴーレムは膝を付き倒れてしまう。
兵士たち「バンザーイ!バンザーイ!!」
納屋に入る隊長。
絶命したハルピュイアが大事そうにタコスを握っている。
タコスの包み紙をひろう隊長
「見たことのない文字だ・・・
軍曹!ウイリアム先生を呼べ・・・!!」
軍曹「古ブリジットのルーン文字では・・・?」
隊長「いや・・・この戦争・・・そんな単純なものではないのかもしれん。」
そう言うと、タコスをかじる。

『ラストパーティ』脚本④

転送エリアに続く廊下を歩く、ヨシヒコと湯浅。
湯浅「そもそもだが・・・どういった技術で人間を異世界に送っているのかね・・・」
ヨシヒコ「・・・量子テレポーテーションという言葉を聞いたことは?」
湯浅「ああ・・・全く新しい情報通信技術の一種だろう?
量子もつれを利用して、一切のタイムラグなしで情報を遠方に転送できる・・・」
ヨシヒコ「我々もある種の情報ですからね・・・マシンスペックさえあればなんでも転送できる・・・
実際、2003年にアメリカ軍はドローン兵器をイラクに転送していたそうです・・・
しかし、物体の転送は世界経済に与えるデメリットがメリットよりも大きいということで国際的に禁止された・・・」
湯浅「では、どうやって特許を・・・」
ヨシヒコ「実は禁止されたのは、この世界での量子転送なんです・・・」
湯浅「・・・?」
ヨシヒコ「10年前、ぼくは、量子テレポーテーションが、「コマキ・アミューズメントパス」というIDカードの暗号化技術に応用できると考えていた・・・
本社は、このアミュパスを使って、プレイヤーのプレイ履歴や課金額のデータを集め、分析し、さらに依存性の高いゲームを開発したかったわけですが、そこで絶対に防ぎたかったのが情報流出と、不正アクセスです。
この仕事は正直なにも楽しくなかったですけど・・・興味深い現象が起きた・・・
量子テレポーテーションの際に用いる周波数によって、アミュパスのデータが勝手に変わってしまったんです。」
湯浅「外部からのハッキングかね?」
ヨシヒコ「それは原理上ありえません。
しかし、現実問題としてデータが外部から干渉されたように書き換わってしまう・・・
わたしたちの開発チームは落胆しましたよ・・・
そして、とある実験を思いつきました・・・いつもデータが変わってしまう周波数を控えて、今度はメッセージを送ったんです。すると、地球上のどの言語とも異なる暗号文が送られてきた・・・」
湯浅「なるほど・・・異世界との量子転送は・・・」
ヨシヒコ「禁じられていない・・・すぐさま本社は特許を取ったってわけですね・・・
さあ、つきました・・・」
「マジックキングダム」と書かれたゲートの中に入ると、さらにトンネルの石段が続いている。



マジックキングダムの最終転送ルームに小田が入ってくる。
ヨシヒコ「君も同行してくれるのか?」
小田「私は臆病だから正直嫌なんですが・・・
泉さんが退職してから、最もマジックキングダムに入ったのはガイドのわたしなので・・・」
ヨシヒコ「現地の現在の様子は?」
小田「半年前のコマキ社によるキャッスルヴァニア侵攻を、ブリジッド王ライオンハーティドは、ガリア大陸の暗黒皇帝ハデス・モルドレッドによる奇襲攻撃だと決めつけ宣戦布告。
現在、レスター海峡を挟んで全面戦争が起きています。
皇帝ハデスは、この宣戦布告はブリジッド王が大陸領土を手中に収めたいがための、大義のないでっちあげだとして、先月大規模な報復攻撃に打って出ました。
特に、ブリジッド王国内の神都ハルティロードの大神官、イノストランケヴィア3世を捕囚し、大陸側のパーガトリーに教皇庁を強制移転したことは、信仰心の厚いブリジッド民の恐怖と怒りを買い、事態をさらに悪化させる結果になりました。」
首を振るヨシヒコ「開戦理由がうちの会社とはね・・・」
現地の地図を指さして小田。
小田「先月2日、姫川部長はキャッスルヴァニア地方のここ・・・ストレイシープ村のコンセッションで販売するポップコーンのフレーバーの最終確認のため現地入りしました。
キャッスルヴァニア地方をドリームワールドのメインエントランスに選んだ理由は、治安がそこそこ安定しており、野生モンスターの生息数も少なかったためですが、この時すでに皇帝ハデスはブリジッド領内に侵略的外来モンスターを3000頭もはなしており・・・
この平和な村はまっさきに魔物の餌食になりました。」
ヨシヒコ「保安部員は同行してなかったのか?」
小田「まさか戦争がはじまると思っていなかったので、軽武装で・・・
その混乱に乗じて姫川部長はさらわれてしまいました。」
ヨシヒコ「では、どの勢力が桃乃を誘拐したかはわからないのか・・・」
袖をめくって腕のブレスレットを見せる小田「手掛かりは、この入場パスです。
ここにバイタル測定器と発信機がついているので、これを頼りに何度か救助隊を送ったのですが・・・」
ヨシヒコ「つまり、桃乃はまだ生きていると。」
頷く小田。
ヨシヒコ「だいたい分かった。まずはその被害現場のストレイシープ村に向かおう。」
小田「あそこはもう崩壊してモンスターの巣ですが・・・」
ヨシヒコ「モンスターの種類は分るか?」
図鑑をめくる小田「ええと・・・キャプラ・メガロセラス・・・ホモ・オルニトゥス・・・
なんて読むんだ、これ・・・パラメシウム・ファンエヴァンドレイラス・・・?」
ヨシヒコ「ヘルゴートにハルピュイア・・・それに・・・グレート・スライム・・・こいつは珍しいな。」
小田「どれも危険な怪物です・・・」
ヨシヒコ「なんてことはない、ただのでかいヤギとハトとゾウリムシだ・・・
見た目が不気味なだけで、この種族は人間は襲わない。」
「安全第一!装備は常に最強装備にすること」と書かれた看板のある武器庫の方を指差して、小田「で・・では・・・武器は持っていかないんですか?」
ヨシヒコ「そんなものを持って行ったことは一度もないよ。」
小田「危険な世界だから閉鎖したんじゃないんですか?」
ヨシヒコ「“だから”だ。武装したところで我々には勝ち目はないのさ。」
腕にブレスレットをはめて、背広をはおうヨシヒコ。



コントロールルーム
結城「転送地点をMK42になさい・・・」
オペレータ「泉さんが指定したポイントと違いますが・・・」
結城「あの子、この私をぶったのよ!
会長にも殴られたことがないに・・・!
許せないわ・・・マジックキングダムでならず者の騎士にちょんぎられちゃえばいいわ。」
オペレータ「会長の娘さんの救出はどうするんです・・・!?」
結城「シャラップ言うとおりになさい・・・!
あんたたちの賞与の査定をしているのはこのあたくしよ!」



最終転送ゲートの前に立つヨシヒコと小田。
名刺入れを確認するヨシヒコ。
小田「・・・ホントにスーツで行くんですか?」
ヨシヒコ「どのみち、我々はエトランジュ(よそ者)・・・なら正装で尋ねるのが筋だろ?
冗談はさて置き・・・スーツほど機能的な防寒着はないのさ・・・
現地はもう秋になる・・・夜は冷えるぞ。」
オペレータ「現地に接続中・・・完了、ゲートを開放します・・・!」
アナウンス「勇者のみなさん、マジックキングダムへようこそ!
ここは剣と魔法の世界。エゼルバルト城に囚われたプリンセスを仲間と共に救出しましょう!」
微笑む小田「この声、あたしなんです。」
腕時計に目をやるヨシヒコ「滞在時間は20分だ。
現地は戦時中・・・ストレイシープ村を探索したらすぐに引き返そう。」
小田「了解です。」
ゲートが開き出すと、転送エリアに日が差し込む。
心地よい風と木漏れ日、そして小鳥のさえずりが聞こえる。
ゲートの向こうに足を踏み入れる2人。
アナウンス「さあ、スリルとロマンスいっぱいの大冒険の始まりです!」



コントロールルームに戻ってくる湯浅
オペレータ「泉さんら2名がマジックキングダムに転送されました。」
結城「専務のお気に入りの泉ちゃんはうまくやるかしら・・・」
湯浅「含みを持たせるじゃないか・・・
行ってしまったら最後、こちらから現地の様子はわからない・・・祈ろう。」



ドリームワールド
キャッスルヴァニア地方ホーン平原
のどかな草原を歩くヨシヒコと小田。
ヨシヒコの持つポータブルセンサーを見て小田
「それはなんなんですか、泉さん。」
ヨシヒコ「これはコンピテンシーリーダー・・・
こうやって人にかざすと、その人材の経験やスキル、強みや積極性が読み取れる。
人事採用の最終兵器さ・・・」
小田「ほえ・・・」
そう言うと、小田にコンピテンシーリーダーを当てる。
ヨシヒコ「小田順子・・・20歳・・・本名は響琴音・・・きみ、本名の方が芸名っぽいな。」
小田「どういう原理なんですか??」
ヨシヒコ「ドリームワールドのスタッフの名簿データを入れているだけさ・・・
もともと子役で16歳で声優デビュー・・・
メルヘンが好きで夢見がちな性格・・・
記憶力に優れ、アニメの台本の他、異世界の言語も数日で習得・・・
ほう、これはすごいスキルだ。」
小田「へへ、褒められちゃった。
私の夢は、この世界で白馬の騎士様の玉の輿に乗ることですから。
言語習得は古魔族語からエスカイヤ階級のアクセントまでばっちりです。」
自分が作った機械を見つめてヨシヒコ「・・・けっこう正確だな、これ。
・・・で、ストレイシープ村はどこだ?」
小田「あれれ・・・そろそろ目印の水車小屋が見えるはずですが、おかしいな・・・転送位置がずれちゃったのかも・・・」

その時、遠くの丘から馬に乗った騎士が現れる。
ヨシヒコ「君の花婿が来たぞ。」
感動する小田「うわ、甲冑騎士って初めて見ました・・・!」
ヨシヒコ「つまり、非常時ってことだな・・・あれはどっちの勢力だ?」
双眼鏡を取り出す小田「鎧の紋章が小さくて・・・」
すると、小田を抱きしめるヨシヒコ。
ドキっとする小田「泉さん・・・?」
ヨシヒコ「しっ!!」

大地が振動する。
ヨシヒコ「ブリジッドだ・・・旗を見ろ・・・」
小田「へ?」
丘の向こうから軍旗が見え隠れする。
しばらくすると丘の向こうから騎馬戦士の大群がこちらに押し寄せてくる。
ヨシヒコ「こっちに来るぞ・・・!まずい・・・!!」
逃げ出そうとすると、向こう側からはガリア帝国の重装歩兵軍団が突進してくる。
ガリア帝国は調教された巨大なヤギにカタパルト(投石器)などの攻城兵器をひかせている。
小田「挟まれました・・・!」

ブリジッド騎士「カタパルトの射程まで要塞に接近させるな!ここで撃破する!!」
ガリア帝国兵士「ヘルゴートを5頭放て!!愚かな騎兵を蹂躙しろ!!」

すると、2人の方に矢の雨が降ってくる。
小田を押し倒すヨシヒコ「危ない!!」
小田の盾になるように彼女にのしかかる。付近の地面にドスドスと矢が突き刺さる。
ヨシヒコ「だ・・・だいじょうぶか小田さん!?」
見ると、小田の肩に矢が突き刺さっている。
泣き叫ぶ小田「あああ・・・!痛い!!」
ヨシヒコ「急所は外れてる・・・!」
小田「熱い熱い・・・体が溶けちゃう・・・!」
ヨシヒコ(・・・マジックアローか?)
苦しさのあまりに、ここから逃げ出そうと体を起こしてしまう。
小田「王子様、助けて・・・!!」
ヨシヒコ「バカ!頭を上げるな・・・」
すると、ブリジットの騎士がすれ違いざまに、小田の体を真っ二つにしてしまう。
宙を舞う、小田の首。
血を吹き出し、地面に倒れる胴体。
その直後、ガリア軍のヘルゴートが突進し、小田の死体を踏んづけてぺちゃんこにしてしまう。
一瞬で跡形もなく消えてしまった小田順子。
頭を抱えて丸くなるヨシヒコのすぐそばでぶつかり合う両軍。
騎士「喧嘩上等!やってやらあ!」
重装歩兵「ガリア軍なめんなよ!!ぶち殺す!!」
戦に巻き込まれないように、戦場を転がるヨシヒコ。

ガリア兵「隊長!カタパルト行けます!」
ガリア隊長「目標マイヤー砦第一隔壁!撃てえ!!」
カタパルトが回転し、燃えさかる巨石を砦に向かって放つ。
暴走したヘルゴートの第一陣は、城門に突進し突き破ろうとする。



ヨシヒコは戦場を離れて斜面を降り、草むらに飛び込む。
ふらふらと立ち上がって、戦場の様子を振り返る。
爆発音がとどろき、砦のあちこちで火の手が上がる。
息を整えるヨシヒコ「あいつ・・・わざと戦場のど真ん中に転送しやがった・・・!!」
すると、ヨシヒコの隣に、若く美しい女性の顔が現れる。
ヨシヒコ「・・・小田さん??」
しかし、よく見ると、若い人間の女性なのは上半身だけで、体のほとんどは巨大な怪鳥になっている怪物が、ヨシヒコに顔を近づけていたのだ。
肝を潰すヨシヒコ「うわああああ!!」
怪物は、ヨシヒコとともに草むらに転がってきた小田の死体に群がり、死肉をあさり出す。
ヨシヒコ「あ・・・あっちいけ!!」
怪鳥「チョーダイ。チョーダイ?」
ヨシヒコ「そんな言葉ばっかり覚えやがる!!やめろ!
その人はお前らの餌じゃない!!」
埒があかないので、石を怪鳥の羽にぶつけるヨシヒコ。
怪鳥は西の空に飛び去っていく。
ヨシヒコ「待てよ・・・ハルピュイアは壊滅した村の食料を狙う・・・
あいつを追えば・・・」
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