化学実験覚え書き

 立派な中年になりました。(33)祝え!(´;ω;`)

 大学近くのネットカフェが潰れたから、なかなか記事をアップできなかったんだけど、先月末に最後のスクーリングであるケミカル実験に行ってきたのです。
 案の定、神様のような教授でした。この先生は昨年の面接試験での面接官で、その時からお世話になっていたんですが、面接時すごい意気投合して、地学実験の時に通りがかった時もお互い顔を覚えていたという。
 な~んで私みたいなカスを気に入ってくださったのかなってずっと思ってたんだけど、実はこの先生、専門は生化学なんだけど、なにかの機会で造形教育にも携わっていたことがあって、科学と美術のコラボにもともと興味があったそう。おかげさまで高倍率の試験を通して頂いたと。初めて美術の肩書き役に立ったな。
 んで最後の授業の時に、「理科教育について大学院で勉強したい」って言ったら、専門家を紹介してくれると快くおっしゃてくださったんだけど、欲を言えばこの先生の下で学びたかったよ(先生は院を担当してない)。やはり渡米してハイイログマを研究するしかねえな。

先生のポリシー
レポートをまとめるための実験や観察は本末転倒なのでレポートの提出を義務化はしない。
①何か感じて、②発想を展開させ、③行動をする。そしてその行動によってまた何かを感じるというフィードバックを、先生は発想スパイラルと名づけている。ぱっとみPCDAサイクルに似ているが、こちらはプランをあらかじめ立てているので、発想スパイラルとは似て非なるものであろう。
オレ達ノープラン。

空気の重さ調べ
宮本武蔵の師匠として知られる沢庵和尚は、ちびっこのおもちゃである空気でっぽうの仕組みに興味を持ち、目に見えない何かが紙玉を押し出していると、ボイルに先駆けすでに見抜いていた。徳川家光あたりの頃の話である。
この時代ヨーロッパでは科学革命が起き、太陽の見過ぎで目をやられた天文学者ガリレオもまた沢庵和尚と同じく空気を探求の対象にしていた。

たくあん法
さて、沢庵和尚といえば、漬物のたくあんだが、3800円くらいで漬物を作るために容器内の空気を抜く調理器具が売っている。そこで、完全な真空までとはいかないが、この漬物容器を使って空気1リットルの重さを量ってみる。
空気を抜く前の容器の重さをてんびんで量り、空気を抜いてからの重さと比較して算出する。
実験に使った漬け物容器の容積は1800mL、空気を抜く前の重さは408g、抜いたあとの重さは406gなので、2gの減少。これを1リットル当たりに換算するとだいたい1.1g/Lとなる。

ガリレオ法
ガリレオ・ガリレイが実際に行なった実験。スプレー缶(ガリレオはガラス容器)に空気入れで空気を入れてその重量を量ったあとに、その空気の一部を水を貯めたタライにつけたメスシリンダーの中に入れて、メスシリンダーに入れた空気の体積を量り、スプレー缶の重さがどれだけ減ったかを調べる。
実験では500mLをメスシリンダーにうつしスプレー缶の重量を調べた。3回量ってその平均を出すと1.13g/Lとなり、たくあん法とだいたい一致した。

ちなみに理科年表による公式数値は1.29g/L、ガリレオが出した数値は2.5g/Lで、現代のカインズホームでアイテムを揃えれば17世紀の天才より正確な値を出すことができることが分かる。

理論的には、空気の8割が窒素、残りを酸素として大雑把に計算すると、22.4リットルで窒素が28g、酸素が32gなので、窒素は28×0.8=22.4、酸素は32×0.2=6.4、合計28.8。
これを22.4で割れば1リットル分の重さが出るので1.285g/Lで、実験なしでさらにオフィシャルに近い値が出せる。高校化学すごい。

水の表面張力
コップに水を溢れるギリギリまで注ぎ、そこに透明プラスチックの薄い板でカバーをして、コップをひっくり返すと、あら不思議、コップの水はこぼれない。
これは、重力に打ち勝つほどの大気圧と水の表面張力(水分子同士を引き寄せて表面積をできるだけ小さくしようとする力)が働いているからである。
さらにそこに吸盤とフックを付けフックにおもりを引っ掛けると、おもりをコップが引っ張り上げてしまう。実験によっては一般的な大きさのコップで6kgものおもりを持ち上げるという。
コップの口の表面積、容器の柔らかさなど、様々なファクターが水にかかる重力を凌ぎさえすれば、水はこぼれないが、ちょっとでもコップとカバーのあいだに隙間ができるとザッツオールになる。

洗剤の臨界ミセル濃度
専門的にはCMC(クリティカル・ミセル・コンセントレーション)というらしい。
界面活性剤のボールであるミセルができ、洗剤(界面活性剤)の洗浄力が飛躍的に上がる(表面張力が激減する)濃度を言う。つまり単純な比例の直線ではない。
じゃあ、その濃度はどのへんじゃということでキュキュットさんを10倍、100倍、1000倍、10000倍に希釈し、水の表面張力が洗剤の濃さによってどれだけ変化するか、安全ピペッターでそれぞれ1.8mLずつ測りとり、一滴ずつ滴下させるという腱鞘炎必至の地獄の実験を行なった。
すると
×10では120滴、×100では119滴、×1000では99滴、×10000では46滴となり、たった1000倍から水の表面張力は激減することがわかった。
つまり、洗剤は相当ケチれることになる。実際キュキュットのパッケージには「水1Lに0.75mLでお使いください」と書いてあり、一個買えば350リットルくらい使える。いいのか花王!

ムラサキキャベツと酸・アルカリ
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酸アルカリといった溶液の性質を調べることができる伝説のベジタブル。青いバラのように美しい。冷凍した葉っぱを200mLの水にひたすと試薬がもう出来上がり。

この試薬を2、3滴、パスツールピペットで8本の試験管に滴下する。
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右から、水、4%塩酸、4%水酸化ナトリウム、飽和炭酸水(重曹)、レモン、卵白、カタバミ、そのまま。
写真はカタバミを試験管に入れる前だが、カタバミは弱酸性でムラサキキャベツ溶液はピンクっぽくなった。

ムラサキキャベツゼリー
デザートとして美味しいかは謎だが、ムラサキキャベツ溶液20mLと寒天をビーカーに入れて、コンロで加熱し、その後、飽和食塩水を加えて放置、冷蔵するとできる。
このゼリーにシャーペンの芯を2本つき差し、これを電極にして電気を流すと、ゼリーの色が変わってちょっと楽しい・・・がわりとくさい。
これはゼリーに混ぜた食塩水が電気分解され、陽極には塩素ガス、陰極には水素ガスと苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が引っ張られるため。水に溶けた塩素は酸性なので陽極はピンクに、陰極はアルカリ性の水酸化ナトリウムによってグリーンになる。
・・・ってちょっと待ってくれ、陽イオンのナトリウムイオンが陰極に引っ張られるのはわかるが、水酸化物イオン、キサマは陰イオンだろというツッコミがあるが、これはあくまでも電極周辺の水酸化物イオンがナトリウムイオンと結びついていると考える。
実際ソーダを工業的につくる場合はイオン交換膜という“しきい”を作って水酸化物イオンが陽極に行かないようにしている。
ちなみに水酸化ナトリウム水溶液の原液は劇物で薬品庫で厳重に管理しなければならない。

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また、こんな市販のキットもある。てってれ~マイクロ実験セット~(大山のぶ代の声で)
これは21世紀に開発された、実験の準備や片付けを手っ取り早くするために作られた小さなパレットのような学習教材なんだ。
・・・って実はこれ、うちの大学の化学の教授が10年以上前に考案していて、いつの間にか商品の形にまで実現していたという。ちょっと感動したが、価格はなんと14500円!高え!!
ちなみに、このセット・・・ウズラの卵のパック(100枚で1000円)で代用できるらしい。
セット内容は、シュウ酸塩(酸性代表)、フタル酸塩(弱酸性代表)、中性リン酸塩(中性代表)、ほう酸塩(弱アルカリ性代表)、炭酸塩(アルカリ性代表)となっております。
写真のA列の試薬はムラサキキャベツ、B列はBTB溶液、C列はマローブルー。マローブルーは長期間放置するとメロンソーダみたいな色になる。

水に対する溶解性
いろいろなものを水で溶かしてみる実験。
グルコース、ガラクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、塩化ナトリウム、塩化アンモニウムをそれぞれ0.5g量って、水2mLと混ぜる。
ラクトースはなかなか溶けてくれないが、電動の試験管バイブレーターを使うと、ウルトラリング的な感じで溶ける。
ちなみに、徳島県や香川県には和三盆糖というトラディショナルなシュガー(竹糖で作る)があり、これはカキの殻の灰という“不純物”をあえて加えることで、時間がかかる糖の再結晶を促しているという。

さらに、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノールも2mL量って水2mLに混ぜると、1-ブタノールだけは溶解度が9なので水面に水飽和ブタノールが出来るだけで、溶けてくれない。
ちなみに「1-」というのはOH基が右から数えて何番目のCにくっついているかを表す。

C-C-C-C-OH

で1-ブタノール。

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で2-ブタノール。

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では、Cがヨコ3列になるためブタノールではなく、2-メチル-2-プロパノールとなる。
ちなみに最近ではt-ブチルアルコールと呼ぶことが多いらしく、こいつは溶解度がインフィニットであり、溶解度曲線は引けない。

塩化アンモニウムの再結晶
水50mLに塩化アンモニウム25gを混ぜて溶かすと、吸熱反応を起こしビーカーの温度がキンキンに冷える。
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これを今度はインキュベーター(恒温槽)に入れて、温度を70~80℃まで上げる。
その後、冷えた水が入ったメスシリンダーに注ぐと、メスシリンダーの温度がカイロ的に上がりながらどんどん雪のような結晶が降ってくる。これを結晶化熱という。
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ちなみに、塩化アンモニウムの結晶はスノードームのようにカワイイが、窒素分が多いため別に集めて破棄しなければならない。

食塩水から食塩を取り出す
海水を沸騰させて塩を作るのがトラディショナルかつ一般的だが、今回はそういうベタな方法ではなく、エタノールなどのアルコールを使って海水の水を脱水し食塩を取り出してみる。
5mLのエタノールと、1-プロパノールをそれぞれ入れた試験管に飽和食塩水を滴下すると、すぐに試験官が白く濁り塩の結晶をゲットできる・・・が、これって口に入れても大丈夫なのだろうか。
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ちなみにこれはブラジルかどっかの岩塩。テトリスに匹敵する四角さである。
さて、食塩は海水から採取するもんだと海洋国家ジャパンは考えがちだが、世界に目を移すと世界のソルトの3分の2は岩塩らしい。特にオーストラリアとメキシコに岩塩が豊富で天気もいいので天日塩が生産できる。

日本の塩の歴史
先生が大変熱く語ってくれました。
実は食塩というのは商標だった…!衝撃の事実!食塩は塩化ナトリウムが99%以上のものだけが与えられる称号で、伝統的塩作りをモットーとするHA・KA・TA・NO・SHI・O!は塩化ナトリウムは95%である。
ちなみに日本の製塩法は古い順に以下のとおり。

①藻塩焼き
古墳時代以前から行っていた製法。海草についた塩を取る。

②揚げ浜式塩田
平安時代から江戸時代に行っていた製法。
海岸よりも高い位置に塩田(表面は粘土)を作り、そこに海水を撒いて日光や風で蒸発させる。こうしてできた塩分がたくさん付いた砂を沼井(ぬい)という囲いに入れて、さらに海水をかけて、塩分濃度の高い海水をを煮詰める。

③入浜式塩田
江戸時代の瀬戸内地方で普及。潮の満ち引きと毛細管現象を利用したタイプ。人力で海水を塩田に持ってくる必要がない。沼井を使うのは一緒。

④流下式塩田
Since昭和28年。入浜式がパワーアップ。竹で枝条架(しじょうか)を組み立て、その上から濃縮された海水を垂らす。HA・KA・TA・NO・SHI・O!はこの製法にこだわってソルトを生産していたが1971年に塩田による塩作りが禁止され(塩専売法)ほとんどの枝条架が取り壊されてしまった。

⑤イオン交換膜製塩法
Since昭和47年。もともとは海水から飲み水を作る技術だが、その副産物でソルトができることが着目され、天気に左右されない、少人数で作れる、汚染物が混入しない、などのメリットから政府公認の唯一の製塩法と認定された。
・・・が、工業的過程で作られたソルトはぶっちゃけあまり美味しくなく、平成9年、トラディショナルな製法も再び解禁。
HA・KA・TA・NO・SHI・O!も唯一取り壊しをまぬがれた枝条架で現在も塩を作っている。

しば漬けと乳酸発酵
好奇心の塊である先生が京都のしば漬け工房に直接尋ねたところによると、しば漬けはシソとナスとそして食塩で作られる。これを乳酸菌に発酵させることで酸性化、青いナスが赤くなる。ポイントは食塩の量で、これが少ないとナスが酸性化せずに、中性~弱アルカリ性で活躍する乳酸菌以外のバクテリアがナスを腐らせてしまう。
ちなみに、パンやワインを作ってくれる酵母菌(イースト菌)という奴がいるが、あれってパンのやつもワインのやつも学名は同じで、サッカロマイセス・セレヴィシアエらしい。種小名まで一緒だけど働きは違うという。

固定化生体触媒
パン酵母を化学反応で丸く固定化する。人工イクラもこんな感じで作っている。
フラスコに5%酵母液と2%のアルギン酸ナトリウム溶液25mLを入れてマグネティックスターラーで攪拌、こうしてできた溶液をこまごめピペットを使って、5%塩化カルシウム溶液が200mL入ったビーカーに滴下すると、アルギン酸ナトリウムに膜ができ、イクラの形をしたパン酵母を作ることができる。
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こうしてできた酵母カプセルを、各種糖が入った試験管に入れると、グルコースやスクロースの試験管では酵母が出した二酸化炭素によってカプセルが浮き上がる。つまりパン酵母はこれらの糖を好んで発酵していることがわかる。逆にラクトースやガラクトースはあまり好きじゃないっぽい。

ちなみにどどっとつぶぴょんという、ねるねるねるね的なお菓子があるが、これもクチナシとアルギン酸ナトリウムを乳酸カルシウム溶液に滴下して作る、固定化生体触媒(つぶつぶゼリー)である。味はほぼねるねるねるね。
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て~れってれ~♪

英米文学1覚え書き②

 ・・・これは社会の勉強だと思う。

 そういえば、この前車検だったんだけど、5年間乗り倒したラパンがとうとうペッパーになっちゃって、車を買い換えるハメに。個人的には、ミニクーパー(ミスター・ビーン)とかベンツのMクラス(エディ・カー)がいいんだけど、外車は壊れやすいし部品代も高くつくらしいので、国産車にしました(現時点ではプリウスとかアクアのいわゆるハイブリッドカーを考えています)。
 つーか、トランプの野郎もアメ車を売りたいなら、もっと安くて壊れにくい品質のいいやつを作れって言うんだよな。だいたい日本の狭い道でピックアップトラックは流行らねえって。
 ・・・とまあ、ここまで言ってあれだけど、国産車にした最大の決め手は私、マニュアル免許持ってないんだよね。

参考文献:板橋好枝・高橋賢一編著『はじめて学ぶアメリカ文学史』

アメリカの建国理念とその矛盾

疲れ果て、
貧しさにあえぎ、
自由の息吹を求める群衆を、
私に与えたまえ。

人生の高波に揉まれ、拒まれ続ける哀れな人々を。

戻る祖国なく、
動乱に弄ばれた人々を、
私のもとに送りたまえ。

私は希望の灯を掲げて照らそう、
自由の国はここなのだと。


これは、アメリカ独立を記念してフランスから贈呈された自由の女神の台座に彫られた言葉である。
1776年のアメリカ独立宣言は、イギリスや大陸ヨーロッパと異なる実験国家アメリカの誕生を世界に訴えるものであったが、かといってアメリカがただちに旧世界からの精神的・物質的独立を果たしたわけではなかった。
たとえば1788年に発効した合衆国憲法の成立過程においても、イギリス式慣習法の枠を越えることはできず、独立宣言の崇高な理念を裏切るものは少なくなかった。
また、独立13州はそれぞれの権益を守ろうとして独自の自治権を主張し、連邦制を脅かす不安要因はくすぶり続けた。
その端的な例が、合衆国憲法の5分の3条項である。
これは、各州の代表者数を人口から算定する際、奴隷制を基盤とする南部は黒人奴隷を人口に加えるために、黒人5人を自由白人3人分としてカウントするという、独立宣言の平等の理念に大きく矛盾する方策であった。

南部の州権論者のなかには、人間は元々平等に作られておらず、むしろ奴隷制を前提としたギリシャ型民主主義こそアメリカの政治形態にふさわしいとさえ論じるものもいたが、産業資本の蓄積を追求する北部の指導者は、独立宣言の理念を維持しつつ、常に南部と妥協の道を模索しながら連邦の維持を図っていた。
ひとつの自由州が設定されれば、ひとつの奴隷州も設定されなければならないというミズーリ協定(1820年)はその象徴であった。
しかし北部の産業資本主義と、南部の準貴族主義大農園体制の対立はやがて妥協が許されないレベルにまで深刻化し、1861年に世界初の近代戦と言われる南北戦争が勃発する。
この戦争を境に、黒人の文筆活動が盛んになり、黒人教育家ブーカー・ワシントン、黒人の待遇改善を訴えた評論家デュ・ボイス、優れた物語集を著して黒人文学の開拓者として知られるチャールズ・チェスナット(Charles W. Chesnutt)、詩人のジョンソンなどが現れた。

1920年代になると、第一次大戦中、労働力不足を補うために北部に大量に流入した南部の黒人が、ニューヨーク市ハーレム地区に独自の文化を開花させる。これをハーレム・ルネッサンスという。
クロード・マッケイ(Claude McKay)、ジーン・トゥーマー、カウンティー・カレンなどの詩人たちは、黒人なまりやブルース(南部の黒人の労働歌から発展した音楽)やジャズ(ブルースがマーチングバンドなどの影響を受けて発展したもの)のリズムを用いて、人種差別を糾弾する作品を発表、白人中心のアメリカ文学に異質な要素を加えた。

第二次大戦後の1950年代には、ヒステリックな反共運動のマッカーシズム、ジェームズ・ディーン、エルヴィス・プレスリーに象徴される若者文化(サブカルチャー)と共に、黒人公民権運動も胎動を見せた。
黒人差別が合法化されていた南部を中心に、キング牧師が指導した非暴力・直接行動は、アメリカ文学にも影響を与え、ラルフ・エリスン(Ralph Ellison)は、52年に『見えない人間』(Invisible man)を発表、阻害された黒人の内的世界(アイデンティティ・クライシス)と、黒人を取り囲む社会状況を、風刺的かつ寓話的な手法で描き出し、直裁的な抗議小説ではない新たな黒人文学の到来を告げた(白人社会にも黒人解放組織にも徹底的無視される“見えない人間”である「私」は地下で1369個の電灯をともす)。

さて、キング牧師による50年代の黒人公民権運動の成果は、60年代以降になると明確に現れ、皮肉にも黒人暴動をはらむ急進的で暴力的な闘争にも発展した。
この時期に活躍した黒人作家にジェイムズ・ボールドウィン(James Baldwin)がいる。ヴェトナム反戦運動や、公民権運動にも深く関わり、公民権運動のスポークスマンと呼ばれた彼は、白人が期待する主体性のない黒人のイメージを拒否し、むしろ阻害と不安に陥っている白人こそアイデンティティの問題を抱えていると考え、黒人問題は白人側の問題であると定義した。
また、アメリカ黒人の真の解放は性の解放と不可分であるという立場から、人種と性別の壁を越えた様々な愛やヒューマニズムを作品の中で描いた。たとえば『ジョバンニの部屋』(Giovanni’s Room,1956)では白人同性愛者を、『もう一つの国』(Another Country,1962)では、多人種社会を描くことで人間性の根源や回復を探っている。

1960年代以降の文学は、ポスト・モダニズムの文学であるといえるだろう。前時代の文学を利用・引用したり、それ自体の生成過程や形式に言及することで、それが虚構であることを故意にさらけ出すメタ的な文学作品がポスト・モダン文学である。
これまで「現実」と呼ばれていたもの(西欧中心主義、男性中心主義)が唯一絶対で不変なものであるという見方を相対化するポストモダンは、非西欧、非白人、非男性、非異性愛者からみた「現実」に大きな意味を与え、トニ・モリスン(Toni Morrison)、アリス・ウォ-カー(Alice Walker)は黒人女性の苦難の体験を描いた。

英語学概論覚え書き⑤

 第5回は、英語の方言(ダイアレクトdialect)について。大きく分けると、地域方言(リージョナル・ダイアレクト)と、社会方言(ソーシャル・ダイアレクト)の二種類がある。

参考文献:長谷川瑞穂著『はじめての英語学』

地域方言
地域による言葉の変種。ちなみに方言とよく似た言葉になまりがあるが、方言が文法や語彙の違いを指すのに対して、なまりは発音の違いを指す。

①スコットランドの方言
notの代わりにnoやnaeを使う。
He’s no coming. 
I cannae go.

②イングランド北部・南西部の方言
thou thee thineのような古い二人称単数が使われる。

③be動詞の平準化
I is(イングランド北東部)
You am(ウェスト・ミッドランズ)

社会方言
社会方言は話者の社会階級や職業、年齢による変種を言う。
社会方言には発音、語彙、文法に違いがあるが、特に発音において顕著である。1966年にラボフがニューヨークのランクの異なるデパート(イトーヨーカドー~伊勢丹みたいな)で調査したところ、rをちゃんと発音している人の割合は高級店の方が高く、発音における階級差がはっきりと現れた。
ちなみにイギリスでは、ロンドンの下町で話されるコクニー(Cockney)が有名で、「day」を「ダイ」と呼んだり、韻を踏んだ表現を多用したりする。

ピジン(pidgin)
共通の言語を持たない人同士がコミュニケーションのために作り出す、どちらの言語とも異なる新たな言語体系のこと。ピジンは語彙も乏しく、文法構造は単純化され、使用される範囲も限られるが、なんらかの原因によってピジンの語彙や表現が充実し、日常的に広い範囲で使われる(第一言語で使われる)とクリオール(creole)と呼ばれるようになる。
ほとんどのピジンやクリオールはヨーロッパの言語に基づいており、大きく17~18世紀の奴隷貿易による大西洋グループ(アフリカ人がカリブ海へ移ったカリブ海クリオール語など)と、19世紀に募集による農園労働者で発達した太平洋グループ(ハワイピジンなど)に分けられる。

アメリカ英語
方言を超えた一大勢力である。

特徴
①イギリスのいくつもの方言話者が入植したため、その影響を受ける。
②スペイン語などアメリカ大陸に共存した言語の影響を受ける。先住民との接触も。
③世界中からの移民の文化や言語の影響を受ける。
④南部を発祥の地としてアフリカ系アメリカ人の英語(AAVE)が変種として生まれる。

イギリス英語との違い
①母音の後のrを発音する。
②askなどの母音をæsk(アェスク)と発音する。
③現在完了形(have+過去分詞形)よりもjust+過去形を使う。I just moved.
④andやtoを用いない。Come take a look. Go see him.

AAVE
アフロ・アメリカン・ヴァーナキュラー・イングリッシュ。
1960年代以前は「黒人英語」と呼ばれ、いい加減で欠陥のある劣った言語だと差別されていたが、ラボフという学者がレヴィ=ストロース的に研究すると明確な規則性があり白人の下層階級の英語と近いことが分かった。
悲しきハーレム。

AAVEの発音上の特徴
①無声子音がダブる場合は、あとの無声子音は読まない。
books(ブックス)→(ブック)

②有声子音がダブる場合は、あとの有声子音は読まない。
band(ボンド)→(ボン)

③母音の後や母音にはさまれたrは読まない。
your(ユアー)→(ユー)
interest(インタレスト)→(インタイスト)

④最後のtやdは読まない。
find(ファインド)→(ファイン)
liked(ライクド)→(ライク)

⑤母音の後のlは読まない。
myself(マイセルフ)→(マイセフ)

⑥最初のθはtに、最初のðはdとして発音される。
thing(スィング)→(ティング)
this(ズィス)→(ディス)

⑦語尾のθはfと発音される。
tenth(tenθ)→(tenf)

AAVEの文法上の特徴
①be動詞が省略されがち。
He is good at swimming.→He good at swimming.
Mary is loved by everybody.→Mary loved by everybody.

②習慣や未来を表すbe動詞は人称によって変化せず、beまたはbeesが使われる。
John is always quick in answering the question.→John be always quick in answering the question.
Tom is often late for school.→Tom bees often late for school.
※ネイティブの先生曰く、現在ではアフロアメリカンの人もこの表現はほとんど使わないらしい。

③三人称単数現在形のsや複数形のs、所有格のsがしばしば付かない。
Tom goes to bed at ten.→Tom go to bed at ten.
five pens.→five pen.
my uncle’s house.→my uncle house.

④過去形の否定にain’t(エイント)が使われがち。
I ain’t go to school yesterday.
She ain’t got no money.

⑤否定に否定を重ねる(多重否定)。
They didn’t give me any money.→They ain’t give me no money.

⑥過去形は現在形でごり押し。
I went shopping yesterday.→I go shopping yesterday.

⑦完了形はhaveではなくbeenやdoneで代用する。
Tom been finished the work.
Tom done finished the work.

英語学概論覚え書き④

 第4回目は、英文法について。そういやSVOCとか最後まで謎だったな・・・

 スヴォク!!(シャザム的に)

参考文献:長谷川瑞穂著『はじめての英語学』

統語構造(syntactic structure)
シンタクティック・ストラクチャー。文章における規則的な配列構造のこと。文章を構成する単語はただ横一列に並んでいるのではなく、その結び付きには強弱がある。だが、時としてそのプライオリティがよくわからない場合がある。以下の文章がそれである。

例:Little girls and cats were playing in the park.

この場合、Littleがgirlsのみを形容しているのか(小さい少女と大きさ不明のネコ)、それともgirls and catsまでを形容しているのか(小さい少女と小さいネコ)によって、文章の意味が違ってくる。

○Alice always loves cats.
×Alice loves always cats.


また、上の文章は文法的にアリだが、下の文章はNG(頻度を表す副詞alwaysは動詞lovesと目的語catsのあいだには入れない)なのは、Loves catsVP(動詞句)というひとまとまりの構成素をなしているために、副詞がそのあいだに割り込めないからであると考えられる。一方、Alice lovesは構成素をなしていないためalwaysが割り込める。

句構造標識(phrase marker)
フレーズ・マーカー。句構造を分かりやすく示す樹形図のこと。分岐分類のクラドクラムのようにステム(枝)やノード(分岐点)もある。
句構造標識で使う範疇(カテゴリー)の略称は以下の通り。

大きい順から
S:文(センテンスsentence)

NP:名詞句(ナウン・フレーズnoun phrase)
VP:動詞句(バーブ・フレーズverb phrase)
PP:前置詞句(プレポジショナル・フレーズprepositional phrase)
AP:形容詞句(アドジェクティブ・フレーズadjective phrase)
AdvP:副詞句(アドバーブ・フレーズadverb phrase)

X’:Xプライム。品詞よりは大きいが品詞句よりは小さい構成素を表す記号。名詞だったらN’(Nプライム)とする。Susan likes this fat cat.の“fat cat”にあたる。

N:名詞(ナウンnoun)

V:動詞(バーブverb)

AUX:助動詞(オグジュアリーauxiliary)
canやwillなど。

P:前置詞(プレポジションpreposition)
toやatやon、in、byなど。強いて言えば日本語の助詞に近いポジション。

A:形容詞(アジェクティブadjective)
名詞を修飾する。

Adv:副詞(アドバーブadverb)
notやaboutやbeforeやafterなど。ほぼ形容詞だが名詞以外を修飾する。

Det:限定詞(デタミナーdeterminer)
単語の範囲を限定する。aやtheなどの冠詞や、this、thatなどの指示詞、my、yourなどの所有格、それとno、everyなど。

I:屈折接辞(インフレクションinflection)
-s や-edなど

特殊な句構造標識
IP:屈折修辞句(インフレクショナル・フレーズinflectional phrase)
~sなどの屈折修辞を句の主要部とする考え方で用いる。

CP:補文句(コンプレメンタイザー・フレーズcomplementizer phrase)
that~で始まる補文(従属節)を、句の主要部とする考え方で用いる。

句構造標識の例
その小さな少女.jpg

太ったネコに公園で会った.jpg

彼は地球で一番背が高い.jpg

節(clause)
節と句はどちらも二語以上で成り立つが、節には必ず内部に主語と述語があり、その点で句と区別される。

重文(Compound Sentences)
複数の節があり、それぞれの節が単独でも文章として成立するもの。

例:Adam likes dog and Eve likes cat.  
訳:アダムはイヌが好きで、イヴはネコが好きです。

この時、それぞれの節は対等な関係で接続詞(and)によって連結されている。こういった接続詞を等位接続詞(orやbutなど)という。

複文(Complex Sentences)
複数の節があり、さらにそのひとつが従属節である文章。

例:He told Susan that he was sick in bed.
訳:彼は「(自分が)病気で寝ていた」とスーザンに話した。

この時のHe told Susanが主節(メイン・クローズmain clause)で、会話の内容を表すthat he was sick in bedが従属節(ディペンデント・クローズdependent clause)である。
従属節は主節がないと文として成り立たない(「病気で寝ていた」と・・・で文章が終わってしまう)。

動詞(verb)
いろいろあります。スゲエややこしいです。
♪なんだかとってもイライラするのDoして(C)菅野美穂

自動詞(intransitive verb)と他動詞(transitive verb)
動詞には、自動詞(目的語を必要としない=自分にしか影響を与えない動詞)と他動詞(目的語を必要とする=相手や物に影響を与える動詞)のふたつがあるが、動詞によってはどちらも兼ねるものがあるので、文脈で判断するしかない。
また、ややこしいのが、自動詞はその後ろにofやwithなどの前置詞を置くと、他動詞的に目的語を取ることができる。
たとえばlook at meではlookの後に前置詞のatを伴うので、「~を見る」という他動詞的な意味なのに自動詞。
ちなみにarriveは必ずatやonといった前置詞とセットで使われるので、他動詞になることはない。

連結動詞(Linking Verb)
主語とイコール関係の補語(述語主格)を取る動詞。SVCの時のV。つまり単独では意味が成立しない。
look、taste、smellなど、知覚を表す動詞や、seem(思える)、sound(思える)、feel(感じる)など心理や感覚を表す動詞、stand、stay、keep、remain(残る)、glow(光る)などの状態を表す動詞、またbe動詞が含まれる。

練習問題
次の動詞を用いた英語の文を作れ。時制や人称によって形が変化してもかまいません。そして、その作った文の中で、当該の動詞がどのようなタイプのものか(自動詞、他動詞、補部が必要、目的語がいくつ必要かなど)を述べよ。
初見で問題の意味すらよく分からなかったやつ。マロさんありがとうございます。

take
I took a rabbit in a trap.(私は罠でウサギを捕まえた)
他動詞なので最低でも一つは目的語を取らなければならない。この場合はウサギが目的語。

walk
I walked to the station.(私は駅へ歩いた)
自動詞だが、前置詞とセットなので目的語(駅へ)を取る。

give
Please give me the apple.(私にそのリンゴを取ってください)
他動詞。私とそのリンゴが目的語。

live
Man shall not live by bread alone.(人はパンだけで生きるにあらず)
自動詞だが、前置詞とセットなので目的語(パンだけで)を取る。

look
He looked intelligent.(彼は知的に見えた)
インテリジェントが目的語ではなく補語(形容詞)なので、自動詞かつ連結動詞。

英語学概論覚え書き③

 第3回目は、英単語のフレキシブルさについてです。英語アレルギーの私にとっては、グローバルスタンダードだかなんだか知らねーが、英語よキサマはいつから地球語になったって感じなんだけど、ひとつ感じたのは、みんなで好き勝手にカスタムできるような言語っていうのはヒットするんだろうな。

参考文献:長谷川瑞穂著『はじめての英語学』

形態素
ことばにおける「意味を持った最小の形式」を形態素という。形態素は大きく二つに分けられ、poiceやcarのようにそれだけで単語になるものを自由形態素、edのようにそれだけでは単語になれず他の形態素に付随するものを拘束形態素という。
さらに、拘束形態素は~edのように形態素の語形を変化させ(過去形や複数形など)文法的機能を担う屈折形態素と、un~や~nessのように形態素にくっつくことで、その意味を付け足し変化させ(反~、非~、前~、~主義者など)別語を作る派生形態素に分けられる。

屈折形態素の例
economy→economies

派生形態素の例
economy→economist

teachers
teach 自由形態素
-er 派生形態素
-s 屈折形態素

misunderstanding(誤解)
mis 派生形態素
under 自由形態素
stand 自由形態素
-ing 屈折形態素

unbelievable
un 派生形態素
believ(e)自由形態素
-able 派生形態素

複合語
自由形態素(単語)どうしの組み合わせで作られた語。大部分は複合名詞と複合形容詞で、複合動詞は少ない。
複合語の内部構造に着目すると、複合語には文法的にも意味的にも中心となる部分(主要部)があり、たとえばブラックボード(黒板)はボードの一種であり、ブラックという色の一種ではない。主要部はほとんどの場合、複合語の右側にあり、そのため右側主要部の規則と言われる。

world-famous
意味:「世界的に有名な」
複合語自体の品詞:形容詞
構成要素の品詞:world名詞 famous形容詞
主要部:famous

bittersweet
意味:「ほろ苦い」
複合語自体の品詞:形容詞、もしくは名詞
構成要素の品詞:bitter形容詞 sweet名詞
主要部:sweet

upgrade
意味:「格上げする」
複合語自体の品詞: 動詞
構成要素の品詞:up前置詞 grade動詞
主要部:grade

その他の語形成
いろいろあります。

派生
例:disappear(見えなくなる)appear(見えてくる)に派生形態素disをくっつけている。

転換
例:fish(「魚」という意味から転じて「釣りをする」という意味も) 

略語
例:NASA= National Aeronautics and Space Administration

短縮(省略)
例1:co-op=cooperative(協同組合)
例2:A.M=ante meridiem P.M=post meridiem
例3:B.C.=Before Christ A.D.=Anno Domini(ラテン語で主の年)

借用
例:ombudsman(スウェーデン語の代理人から)

混成
例:bit=binary(二進法の)+digit(ケタ)

逆成
例:window shop(「窓屋さん」ではなく「買わずに陳列品をのぞいて歩く」という意味のウィンドウショッピングから)

意味拡張
以下の3種類がある。

シミリー(simile)
直喩のこと。~のような。

メタファー(metaphor)
隠喩のこと。『ジュラシック・パーク』のマルカム博士の「サトラー博士、まさか“引力の法則”は知っているよね?」のセリフなどがそれ。
メトニミーに比べて抽象的で、場合によっては理解するのに教養がいる。

例:We’ll save a lot of time if we go by car.

時間もお金のように節約(save)できるというメタファー。
時間もお金と同じく価値ある資源だという認識が背後にある。

メトニミー(metonymy)
換喩のこと。メタファーに似るが、こちらのほうが直接的で部分で全体を表す。
「おいそこのメガネ(かけたヤツ)」の「メガネ」がそれである。

例:The hotel was full of suits.

直訳すると「ホテルはスーツでいっぱいだった」になっちゃうが、ここでの「suits」は「重役」と訳す。ほかにも「クラウン」で「王様」、「ハリウッド」で「アメリカ映画界」などなど。

①時間的な長さに基づくメトニミー
二つ以上の行為が同時に起きるときにみられる意味拡張。

例:He turned his back on his own family when they needed help.

「turn one's back」は、本来「背を向ける」という身体的な動作を表す言葉だが、「自分の家族が助けを必要としている」というシチュエーションから、「背を向ける」=「援助を拒んだ」と意味を拡張する。

②メーカーが製品を表すメトニミー
「two Cadillacs」や「a Sony」などで、キャデラック社製の自動車やソニー製品を表す。
会社名は固有名詞なので、普通に会社名が言いたい場合は、複数形のsや冠詞はつかないのに注目。

③推論に基づくメトニミー
「alone(自分ひとりだけ)」なら「寂しい」はずという推論に基づく意味拡張。

同義語(synonym)
シノニム。意味が同じ言葉。
たとえばbig、huge、enormousはどれも「(決定などが)重大な」という意味。
しかし、同義性は言葉の意味が完全に同一であることを必ずしも意味しない(完全な同義性はあり得ないと考える学者もいる)。
たとえばビッグとリトルは主観的(口語的)、ラージ、スモールは客観的(フォーマル)な大きさを表すなどである(ビッグマウスをラージマウスに置き換えると意味が変わってしまう)。

例A:The employees received a little Christmas bonus.
訳:従業員たちはささやかなクリスマスボーナスをもらった。
例B:The employees received a small Christmas bonus.
例:従業員たちはわずかなクリスマスボーナスをもらった


この例では、リトルがスモールと違い、気前がいいというニュアンスがあることが分かる。

反義語(antonym)
意味が反対の関係にある言葉。以下の4種類ある。

①連続的な尺度上の対称
hot-cold、good-bad、long-shortなど
反義語の中間にあたる領域があるため(例えば、熱くも冷たくもない温度など)、前提となる尺度全てをカバーできない。

②相補的な尺度
alive-dead、married(既婚)-unmarried(未婚)、odd(奇数)-even(偶数)
Aじゃなければ必ずBという背理法が成り立つ二者択一タイプ。

③逆方向の移動や変化
ascend(上る)-descend(下る) lengthen(延長)-shorten(短縮)

④反対側からの関係付け
above(~~より高い)-below(~~より低い) ancestor(先祖)-descendant(子孫)
同じ現象でもAから見ればBだが、Bから見ればA的なタイプ。

構造意味論
ある言葉の意味は、他の言葉との関係性に基づいて決定されるという考え方を、構造意味論という。言語学者ソシュールに始まる構造主義による考え方であり、言語の要素はそれぞれが孤立して存在するのではなく、同じ言語内の他の要素とネットワークのように互いに関連し合い、このとき他の要素との差異が認められる場合に限り存在が認められるとする。したがって、同じものを指している言葉でも、意味的に対立する言葉に何を持ってくるかによって、その言葉の意味は変わることになる。

boy(男性)⇔girl(少女=女性)性別で対立
boy(子ども)⇔man(大人の男性)年齢で対立
boy(人間)⇔kitten(子猫)種族で対立

日本語の「水」には、温度の違いによって「湯」という別の言葉が対立するが、英語には湯を表す言葉がなく、水を表す「water」が「湯」を表す際にも用いられる。
日本人は「水」と言うと一般的に「冷たい水」をイメージするが、イギリス人は、冷水からぬるま湯、お湯まで「water」がカバーするので、「water」だけでは水の温度が限定できないということになる。
しかし、「氷」に当たる「ice」は英語存在するため、日本語の「水」は水の温度と状態(相)の違いに対応する言葉だが、英語の「water」は水の状態の違いのみに対応していると考えられる。実際、「水蒸気」を表す言葉は「sterm」として別語があてがわれている。
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