『恐竜大陸サウラシア』脚本③

大陸横断鉄道を降りるフィリップ一同。
セントラルサウラシア駅は高台に建てられており、その周囲をぐるりと高いフェンスが囲んでいる。
フェンスに書かれたパネルを読むリズリー。
リズリー「恐竜の檻・・・?」
アニー「ここからワイオミングへは乗り換えです。駅馬車を呼びましょう。」
フィリップ「呼んできます!おまかせあれ~!」



駅で二人になるリズリ―とアニー。
リズリ―「ミス・ブラウン…」
アニー「あの・・・さっきからずっと言おうと思ってたんだけど・・・ミスじゃないんです。ミセスよ。
それにアニーでいいわ。」
リズリ―「え?結婚なさってたんですか!?」
アニー「ええ・・・」
笑うリズリー。
アニー「?・・・リズリ―ちゃん?」
リズリ―「いや、あいつ馬鹿だな~って思って。・・・アニーさんの旦那さんってどんな人なんですか?」
アニー「名家の当主だったけど、わたしのような貧しい人にも優しい人だった・・・主人はワイオミングに金鉱を持っていたんです。」
リズリ―「へ~カリフォルニア以外にもあるんですね。」
アニー「私はそれを継いだの。羽振りがいいのはそのため…」
リズリ―「それって・・・」
アニー「主人は恐竜に殺されたの。」



駅前のバザーをうろつくフィリップ「ええと駅馬車乗り場は・・・」
「安いよ安いよ」
「檻の中は危険だよ!装備をそろえていかないかい?」
フィリップに声をかける武器屋「ミスター!」
フィリップ「なあ駅馬車乗り場はどこだい?」
武器屋「それなら反対側だぜミスター!それより檻の中は凶暴な恐竜でいっぱいだぜ?なにか買ってかないかい?」
フィリップ「いやいい、俺にはこれ(ムチ)があるんでな・・・」
武器屋「え・・・それだけ・・・あ、ああ・・・そう・・・な、なんかいろいろごめんな・・・」
ほかの通行人に話しかける武器屋「ようミスター!このスラッグ防竜ガン(でかくてごついショットガンを持ち上げる)はすごいぜ!」

ハンターの怒鳴り声「てめえ騙しやがったな!」
バッカー「騙すなんてそんな・・・このライフル弾はブラキオサウルスも一撃で殺せる代物で」
ハンター「嘘つけばかやろう!ヒプシロフォドンにも効かなかったぞ!」
バッカー「そりゃあ旦那の腕が・・・」
ハンター「なんだとてめえ!!」
ドン・マーシュ「なんの騒ぎだ?」
ハンター「はっボ、ボス。こいつがまがい物ばかり売りつけていて・・・」
バッカー「まがい物だなんてそんな・・・」
マーシュ「ほう・・・」
バッカー「あんた名うての恐竜ハンターと見たぜ!これ買ってかないかい?
(メガホンを取り出す)あの恐竜の王様ティラノサウルスの鳴き声が出る画期的道具だ。これさえあればどんな恐竜も逃げ出すぜ?」
マーシュ「面白いな、じゃあお前はレックスの鳴き声を聞いたってわけか」
バッカー「そりゃあもちろん・・・」
仲間を引き連れその場を後にするマーシュ「うそだな。」
バッカー「買ってくれよ旦那~」
マーシュ「やつに出会った人間は必ず殺される。てめえで試すんだな。」

バッカー「・・・・・・くそ。」
フィリップ「おい、それ本当にどんな恐竜も逃げ出すのか?」
バッカー「え・・・?」
フィリップ「いくら?」
バッカー「ミスターわかってるねえ!ほ、他にもいろいろあるんだ見てってよ!って・・・兄貴!」
フィリップ「お前バッカーか?!生きてたかバカ野郎何やってんだよここで!」
バッカー「そっちこそ!いやね、オレ舞台の小道具とか特効やってたじゃない、でも最近ショウビズの世界も先が見えなくてさ、ジョン・カーネギーっているじゃん?」
フィリップ「あああの実業家か。」
バッカー「なんだか知らないけどあいつがブロードウェイの劇場をバシバシ買収してさ、ボクらみんなクビにされちゃったんだよ。
だから今は恐竜ハンター相手に特殊効果で培った技術を使って商売しているってわけ。」
フィリップ「なんだよ舞台の小道具かよ・・・」
バッカー「いやいやいや!恐竜にだってハッタリは通用するよ」
透明な銃弾をつまむフィリップ「なんだこのひときわ胡散臭い弾丸は・・・?」
バッカー「いくらオレッチでもそんなちゃちなもんは売らないな。さっきのやつらが落として行ったんだな」
「ふ~ん・・・」
「で、兄貴の方は?」
「あ、そうだ駅馬車みつけねえと!」
「ああ、待った待った!」
「?」
「安くしとくよ」



リズリー「あいつなにやってるんだろう・・・」
アニー「駅馬車が全て出払っているのかもしれませんわ」
二人に駆け寄ってくるフィリップ「駅馬車来ました!」

馬車を引く巨大な角竜がのろのろ歩いてくる。

リズリー「なんか・・・ずいぶんくたびれた馬車ね・・・」
バッカー「わかってないねえお嬢ちゃん!こいつは最強の角竜トリケラトプスだ!」
「トリケラって・・・三本中、二本角が折れてる・・・」
フィリップ「お乗りくださいアニーさん!」
アニー「・・・・・・。」
フィリップ「アニーさん?」
何事もなかったように微笑むアニー「ありがとう。さあいきましょう。」
バッカー「ね、ね、これ(恋人)?」
「ま、まあな・・・!」
「相変わらずモテモテだね~」
リズリー「フィリップ!」
バッカー「あの子は?ファン?」
フィリップ「ん知らない子」

トリケラトプスにムチを入れる御者。荒野を進む馬車。



馬車の車内。
フィリップ「・・・どうした?暗い顔して。」
リズリ―「・・・ねえ。用心棒やめたら・・・?」
フィリップ「ここまで来て何言ってるんだ。俺はやるよ?やっちゃうよ??」
リズリ―「いい?その小さな脳味噌でもう一度考えてみて。街を壊滅させるような恐竜と本当にあなたが戦えるの?」
フィリップ「任せろ。俺は愛の力で戦うから。アニーさん。」
アニー「まあ頼もしい。」
リズリ―「ほんとステゴサウルスよりバカだ、こいつ・・・」



夜。
ぼんやりと外の景色を眺めているリズリ―。暗闇の中で光る目に気付く。
フクロウのような目と鉤爪を持った夜行性の小型の恐竜が叩き潰されたゴーストタウンをあさっている。
恐竜は餌を指で器用につかみ、何かを食べている。
違和感を感じ暗闇に目をこらすリズリ―。
恐竜が咥えていたのは人間の手だった。
身震いするリズリー。
男が木の枝に突き刺さっている。
「タスケテ・・・タスケテ・・・」
小声のアニー「助けようと思ってはいけません。彼はもう死んでいます。」
リズリー「でも声が・・・」
アニー「あれは声帯模写が得意なメトリアカントサウルスのはやにえです。ああやって助けようと近づいた人を襲うんです。」
茂みの中で恐竜が「タスケテ」と声を出している。
リズリ―「とんでもないところにきてしまった・・・」



夜明け
ステゴサウルスと戦うアロサウルスの群れ。
それを双眼鏡で眺めるコープ「アロサウルスが強敵のステゴサウルスを狙うとは・・・エサ不足は深刻か・・・」
馬の足音に気づき逃げ出すアロサウルス。
馬にまたがった男たちが銃を撃ちながら恐竜を追いかける。
「イーハー!あのステノプス、俺がいただく!」
「うるせえ!俺の獲物に手を出すんじゃねえ!」
「たわけが!早い者勝ちじゃ~!!」

コープ「あいつら、こんなとこまで・・・」

ハンター「しっぽに気をつけろ!」
しっぽで殴られるハンター達「ぎゃあああ!」
「くそ、生け捕りは諦めろ!撃ち殺せ!」
マーシュ「待て・・・」
「お頭・・・」
「新兵器を試してみようじゃないか・・・」
バレットに透明の弾丸を詰めるマーシュ。
不思議な弾丸を撃つマーシュ。消えるステゴサウルス。
コープ「あれは・・・」



アニー「だいぶ来ましたね。」
リズリ―「あの~・・・ま、まだアニーさんの街にはつかないんですか?」
フィリップ「これはモービルじゃないんだ、無茶言うなよ。」
アニー「あと二、三時間だと思いますよ。もうしばらく辛抱してください。」
リズリ―「で、でもここって無法地帯ですよね。昨日のこともあるし、もう少し急いだ方がいいんじゃ・・・」
フィリップ「びびってんじゃねえよ、まったく・・・」
その直後地響きと轟音が轟く。馬(=角竜)が驚き馬車のスピードが上がる。
フィリップ「おいおい、はええよ、こいつのリクエストはいいから!」
窓の外を見つめ続けるアニー「いや・・・違うと思いますよ・・・周りを団体さんに囲まれてますから。」
暴走する馬車の周りには獰猛な大型肉食恐竜の群れが猛スピードで並走している。
フィリップ「なんじゃありゃああああ!!」
アニー「地獄谷一帯を支配する肉食竜アロサウルスです。」
リズリー「御者がいないよ・・・!」
アニー「フィリップ彼らを追い払いましょう!私は馬車を制御します!」
リズリ―「外に出るのは危険ですよ!」
アニー「しかしこのままここにいる方がもっと危険です!」
アロサウルスが馬車の側面に頭をぶつける。大きく揺れる車内。
アニー「時間がありません!フィリップは援護射撃をお願いします!!」
フィリップ「よっしゃあ!俺の出番だぜ~!」
ライフルを構えるが弾が出ない
「あれ?なんだこれ不良品じゃねえ?」
リズリ―「ええええ!この前ライフル撃ったんでしょフィリップ!あいつらの耳元でズドンとやれば逃げてくわよ!」
フィリップ「このRX3型はオレ使ったことがねえんだよ」
リズリー「なに言い訳してんだ!このバカ横のレバーを押すんだよ!」
その瞬間馬車の側面がぶち壊されアロサウルスの顔が突っ込んでくる。
びびるフィリップ「ぎょえええええ!」
リズリ―「ああ、もう!見てられない!!」
リズリ―はフィリップのライフルを奪おうとする。
フィリップ「やめろ危ないから!銃は危ないから!!」
ライフルをとり合う二人。ライフルは暴発しアロサウルスの肝をつぶす。銃声に驚いた一頭のアロサウルスは速度を落とし、後方へ消える。
リズリ―「ほら!撃てば逃げてくから!」
フィリップ「ようしここは俺に任せい!ヒ~ハ~!!」
ライフルを撃ちまくるフィリップ。
「ばきゅ~んばきゅ~ん!」
「ダメだ全然当たってないよ!」
「うるさいなお前は!当たってるよ!当たってるけど効かないんだよ!」
「じゃあ変わらないじゃない!」
「お前はいつも・・・・」

アニーは外に出て御者の乗るステップに向かう。暴走する馬車の先は崖だった。
アニー「崖・・・!」
手綱を握りなんとか暴走を止めようと試みる。
馬車から人間が出てきたのに気づいたアロサウルスがアニーに牙をむく。
リズリ―「アニーさん!後ろ!」
アニー「・・・・・・!」
パンという銃声。アニーに襲い掛かったアロサウルスの鼻づらから血が出てぶっ倒れる。後方のアロサウルスは急に倒れた仲間にけつまづいて転んでいく。
リズリ―「・・・?フィリップ!?」
ライフルを適当に撃つフィリップ「ヒ~ハ~!!」
リズリ―「すごい・・・めちゃくちゃビギナーズラックだけど!!」
アニー「それより馬を止めないと・・・!」
リズリ―「アニーさんもっと手綱を引いて!」
アニー「駄目です!ちっとも言う事を聞いてくれない・・・!」
フィリップ「恐竜ハンターフィリップに任せとけ~い!!」
アロサウルスを追い払ったことで調子に乗ったフィリップが馬車から軽やかに飛び出てトリケラトプスにまたがり脇腹を思い切り蹴りつけて手綱を引く。
フィリップ「ヒ~ハ~!!!」
馬車の方向が変わり崖っぷちに沿って疾走する。
勢いあまって崖から落ちるアロサウルス。
アニー「すごい・・・!」
リズリ―「さすがサーカス団!」

崖ギリギリを走るトリケラトプスの馬車と猛追するアロサウルスたち。
高台にユタラプトルに乗ったコープが援護射撃をしている。

リズリー「あ、味方ですよ!」
コープ「進路をまっすぐ取れ!連中とまともに戦っても勝ち目はないぞ!」
アニー「ラム!」
バッカー「知り合い?」
再接近するアロサウルス。
フィリップ「こいつらなんで馬車ばっか狙うんだよ!」
アニー「人間を襲う方が手っ取り早いからです。」
地面が振動する。
前方にアパトサウルスの群れが見える。アパトサウルスはムチのような長い尻尾をこちらに向けてくる。
「なんかデカイのがいる~~!!」

アパトサウルスの群れのなかに突っ込む馬車とアロサウルス。
足を持ち上げ踏みつぶそうとする。
ムチのようなしっぽが飛んでくる
アニー「ふせて!」
しっぽが馬車をかすめ後ろのアロサウルスに当たり吹っ飛ぶ。

馬車の前方にオーテリーブのゲートが見えてくる。
リズリー「あれは!?」
「街だ・・・!」

鐘が鳴るオーテリーブ
村人「ゲートを開けろ!」

アニー「もう少しです!」
リズリー「なんかばてて失速してない!?」
フィリップ「頑張れトリケラザウルス!」

ゲート内に滑り込む馬車。
「ゲート閉鎖!」
すぐに閉まるゲート。
ゲートにぶつかるアロサウルス。ゲートの向こうで唸り声を上げ引きかえしていく。

「はあはあ・・・」
「助かった・・・?」
アニー「さすがですわ・・・」
フィリップ「いやあ大したことはないっすよ」
アニー「ええ、あれはまだ中型の方です。もっと恐ろしいものがいる」
フィリップ「え・・・?マジかい」
ユタラプトルから降りるコープ「恐竜大陸サウラシアへようこそ」

『恐竜大陸サウラシア』脚本②

大陸横断鉄道ニューヨーク駅。
アナウンス「大陸横断超特急にご乗車のお客様は・・・」
アニー「もうじき発車みたいですわね。」
アニーの荷物を持つフィリップ「へい!」
リズリ―「かっこわるい。それじゃ、まるでミス・ブラウンの従者じゃない。」
フィリップ「リズリ―・・・!?なんでお前ここに?」
アニー「フィリップ?」
フィリップ「ちょっと時間良いですか。」

腕時計見ながらホームで待つアニー。
リズリ―「きちゃった。」
小声のフィリップ「なんだよ、お前サーカスに帰れよ。」
リズリ―「なによ、心配してついてきたって言うのに。だいたいあんたに美女を守る英雄なんて向いてないのよ。」
フィリップ「はいはい。ぴゃらぱ~」
リズリ―「むかつくわ、その態度。」
フィリップ「おい、とにかく勝手にサーカス抜けだしたらやばいだろうが。早く戻った方がいいぞ。」
リズリ―「ねえ。私も連れてって。」
フィリップ「連れてってって、お前金は・・・」
リズリ―「ないよ。」
フィリップ「汽車乗れねえじゃん。」
リズリ―「ミス・ブラウンに掛け合ってよ。あの人どうせ金持ちなんだから。」
フィリップ「馬鹿言うんじゃねえよ。」
アニー「そろそろいきますよ。」
フィリップ「あ、はい。」
リズリ―「・・・いいのかな~?」
フィリップ「なんだよ・・・」
リズリ―「ミス・ブラウンに猛獣ショーのネタばらしちゃおうかな~」
フィリップ「てってめえ・・・!」
リズリ―「そうなれば、この話はオジャン。あんたも私もサーカスに逆戻り。ふふふ・・・どうする?」
フィリップ「きたねえ・・・!なんてキタネエ野郎だ!」

動き出す汽車。
リズリ―「わあ、動いた!わたし汽車乗るの初めてなんです!」
フィリップ「うっせえよ。すいませんね、こいつ分の汽車賃も出してもらって・・・」
アニー「ふふふ・・・いいんですよ。」
リズリ―「みて!景色があんなに早く動いて・・・」
はしゃぐリズリ―をひっぱたくフィリップ「おめえも礼を言わねえか!」
リズリ―「あ、ありがとうございます・・・」
アニー「お二人はどういう関係?恋人?」
二人「ただの幼馴染です!」
フィリップ「大体なんでこんな貧乏くさい小娘とつきあわなくちゃいけないんですか。御冗談が過ぎますよ。ははは。」
リズリ―「あんただって昨日まで借金まみれだったじゃない。」
フィリップ「うるせえ!」
リズリ―「聞いてくださいよ、ブラウンさん。私がサーカスに売られる時こいつ「将来立派な俳優になって必ずお前を救ってやる」とかくさいこと言って・・・結局こいつも俳優業が泣かず飛ばずで借金背負ってあたしのサーカスにぶちこまれたんですよ~」
フィリップ「て、てめえ俺の忘れたい過去を・・・!」
リズリ―「だからあまりこいつの言う事真に受けない方が・・・」
アニー「そうなんですか・・・」
フィリップ「こいつの話はフィクションであり実際の事件、団体名とは一切関係がありません。」
リズリ―「うそばっか。」
リズリ―と組み合うフィリップ「てめえ、汽車から放り出してやる~!」
リズリ―「のぞむところだ~!」
アニー「ちょっちょ・・・二人ともやめて・・・みてください。橋ですよ。いよいよここからサウラシアです。」

ミシシッピ内陸海橋を渡る汽車。橋の下にはパキケファロサウルスの群れが走っている。
ツアーガイドがツアー客に解説をする。「え~みなさんここからがララミディア大陸、通称サウラシア、野生の恐竜たちの住むエリアに入ります。
みなさんは恐竜たちが絶滅した原因は巨大隕石衝突であることはご存知ですね。これにより五大陸のうち四大陸の恐竜は絶滅。しかし大航海時代に発見されたこの新大陸だけは、恐竜たちが今なお生き残るまさに失われた世界だったのです。
ピューリタン革命によってこの地に移った英国移民一世はフランスや母国イギリスそして西部に多く生息する野生の恐竜たちと戦い、この大陸をフロンティアスピリッツで開拓していったんですね。」
平原にはオルニトミムスやハドロサウルス、アパトサウルスなどたくさんの種類の恐竜が闊歩している。
窓を覗きこむリズリ―「すごいすごい!見たことない恐竜ばっかりいる!」
フィリップ「どうでもいいよ、そんなん。ガキかお前は。」
アニー「フィリップは恐竜が嫌いですか?」
フィリップ「ええ。連中はただのばかでかいトカゲの化けものですよ。」
リズリ―「恐竜に喰われる役ばっかやらされたからね~」
フィリップ「いちいちうるせえな。」
アニー「わたくしも同感です。恐竜は嫌い・・・」
フィリップ「いやあ、気が合いますな。」
リズリ―「・・・・・・。」
ガイド「さあ、ここからは皆さんお待ちかねのトリケラトプス撃ち放題ゾーンです!」
フィリップ「向こうの客車でなんかはじまったぞ・・・」
リズリ―「ほんとだ。」
アニー「ああ、ファーストクラスの車両には鉄道の旅を楽しみながら恐竜狩りができるサービスがオプションで付いているんですわ。」
リズリ―「どういうこと?」
アニー「ライフルで窓から外にいる恐竜を狩るんです。定額料金を払えば、弾は撃ち放題。
まあ鉄道会社が貴族相手に考えたゲームですわね。鉄道会社にとってはお金も入るうえ、たびたび鉄道を止める恐竜の群れも駆除できて一石二鳥というわけですわ。」
フィリップ「ほ・・・ほほ~・・・」
銃声と恐竜の悲鳴が聞こえだす。
アニー「どうです?本番前に腕ならしでもしますか?」
フィリップ「いや・・・もう有名どころの恐竜は狩りつくしたんで・・・お前どこ行くの?」
リズリ―「・・・ちょっと風にあたってくる。」
アニー「あら、乗り物酔いかしら。」
フィリップ「あいつのことはほっといてください。」

バルコニーに出るリズリ―。ムスサウルスを手のひらに乗せる。
「・・・優しい恐竜だっているのに・・・貴族のたしなみは理解できないわ。」
ライフルを抱えるフィリップ「お前貧乏人だからな。」
リズリ―「フィリップ・・・あんたもしかして・・・」
フィリップ「ミス・ブラウン・・・アニーさんにやらせてもらった。これで俺も貴族だぜい!」
リズリ―「馬鹿じゃないの・・・」
フィリップ「心配するな。ちょっとトリケラザウルスを脅かしてやっただけ。」
リズリ―「どーせ弾が当たらなかったんでしょう・・・あんな事やって絶対後でしっぺ返しが来るわよ。」
フィリップ「ゴジラの逆襲か?なははは・・・なは・・・どうだ面白いか?」
呆れてため息をつくリズリ―。
列車からライフルを撃つ貴族たち。



荒野の真ん中にある寂れた街。
街の周りには恐竜が入らないように高いバリケードがそびえ立っている。
鎧竜が柵に突っ込んでくる
「ぎゃあああ」
「助けて~~!!」
見張り「第二バリケードが破壊!」
帽子をかぶりながら見張り台に指示を出すコープ「鐘を鳴らせ!!住民を避難させるんだ」
コープにライフルを放り投げる自警団「コープ!」
ライフルを取るコープ。素早く弾を装填する「敵は!?」
「ドラコペルタが二頭!家畜の資料を狙ってきやがった!」
コープ「またか・・・」
恐竜から逃げ出す住人たち
自警団「俺たちも加勢するぜ旦那!」
コープ「いやお前らは住民たちを頼む。やつは俺ひとりでやる。」
「しかし!」
ユタラプトルにまたがるコープ「死にたくなければオレに関わるな。」

ドラコペルタに向かって発砲する牧場主「こいつらオレの牧場を!」
コープ「やめろむやみに撃つんじゃない!」
突進してくるドラコペルタ
逃げ出す人々
「怒らせちまった」
発砲してドラコペルタの気を惹き付けるコープ「こっちだ!」
コープを追いかけるドラコペルタ
段差の直前で急に方向転換をし、一頭をひっくり返す

狭い路地に追い込みドラコペルタの両肩の長い刺が塀や建物を切り裂いていく。
そのうち刺が引っかかり動けなくなる。

ドラコペルタの死骸
「やった!」
コープ「ふー・・・でこっちの被害は?」
「踏み潰されて家畜が3頭死んだ。あと刺にやられて怪我人が数人・・・」
ドラコペルタに目をやる労働者のリーダー、ホーナー組合長「いつまでこんなことが続くんだ」
コープ「街を出て行かない限りずっと続くさ」
ホーナー「金鉱を捨てろってか。」
コープ「じゃあ恐竜を一頭残らず皆殺しにするか?」
ホーナー「あんたがやってくれるのか」
コープ「ごめんだね」
ホーナー「だがあんたハンターだろう?」
コープ「いいや・・・」
遠くで肉食竜の咆哮が聞こえる
コープ「あいつらだよ」
ホーナー「早いところバリケードを直したほうがいいな」

『恐竜大陸サウラシア』脚本①

1889年アメリカ合衆国。荒野。
東海岸の都市に向かう大陸横断鉄道が停車している。
ボール信号が下がっている。
停車中の汽車の乗客に美しい貴婦人が乗っている。
乗客1「おいおい冗談じゃねえよ!いつまでまたせんだよ!」
乗客2「まあまあハイボールでも呑んで一杯やろうや」
車掌が客車の通路を通る。
乗客1「おい、今度はなんだ?バイソンの群か?」
車掌「いえ・・・アパトサウルスです。」
蒸気機関車の前には巨大な恐竜の群れがゆっくりと歩きながら線路を横断している。



フィラデルフィア。
「ワイルドウエストサーカス」と書かれた巨大なテント。
団員「よってらっしゃい!みてらっしゃい!マジックにジャグリング、空中ブランコ、猛獣使い・・・!ここでしかみられない曲芸ばかりだよ!」
テントに客が集まっている。
サーカスの看板にはたくさんの恐竜と大きく猛獣使いフィリップの絵が描かれている。
恐竜好きな子ども「ママ!ここに描いてある恐竜の名前全部言えるよ!ええとこれ、パラサウロロフスでしょ、これはステゴサウルス・・・」

テント内では小柄な美少女が空中ブランコの芸をはじめるところだ。
団長「さあ、彼女がむかうは地上15メートル!」
ブラキオサウルスに咥えられて、高所のステップに持ち上げられる女の子。
団長「しかも下にあるのは安全ネットじゃなく剣山だ~!」
ブランコの下にスパイクのついた剣竜が移動してくる。
声を漏らす観客。
団長「落ちたら死あるのみ!彼女の運命やいかに!鳥になれ!リズリ―・ダグラ~ス!」
リズリ―「鳥になれ…か。」
幸運のお守りのスカーフを握る「守ってよね・・・さあ、いこう。」
ブランコを掴み勢いよくスイングさせるリズリ―。
照明機材を持って飛行するプテラノドンがリズリーにスポットライトを向ける。
パラサウロロフスが合図のトランペットのような鳴き声を出す。
リズリ―はスイングする空中ブランコから手を放し、空中で回転しながら、曲竜(アンキロサウルス)のピラミッドに着地する。
観客の大歓声。リズリ―は微笑んでお辞儀する。
団長「さあここからはたいへん危険です!みなさん我がサーカス会場に凶暴な肉食恐竜が襲来しました!みんな逃げるんだ~!!」
照明が消え、再び照明がつくと鎖につながれたワニのような顔つきの巨大な肉食恐竜アンガトラマがステージの上で暴れている。
ステージの裏では鞭を持った男が出番を待っている。
「さてと、いよいよ主役の出番だぜ。」
アンガトラマの鎖が切れて恐竜はステージを歩きまわる。
会場に悲鳴が上がる。
「こいつはやばいぞ!こうなったらあの男を呼ぶしかない!いよいよ我がサーカスの目玉!彼の前ではどんな怪物もひれ伏すでしょう!ミスターフィリップ・バックランド!拍手でお迎えください!」
パキリノサウルスにまたがって登場するフィリップ「イッツァショータイムだ!ヒ~ハ~!!」
角竜から飛び降りるとフィリップは一切恐れることなく鞭で恐竜と戦う。
アンガトラマは腕の鉤爪をふるって攻撃するがフィリップは鞭で相手の腕を叩き、ひるませる。
歓声が上がる。
アンガトラマは長い顎を大きく開き怒号をあげる。
フィリップ「は~はっは図体がでかいだけの雑魚が~!
そんな脅しこのフィリップ様には通じんわ~!ヒ~ハ~!!」
その瞬間、フィリップはパクリとアンガトラマに食べられてしまう。観客の悲鳴。
団長「なななななんてことだ~!まったくの予期せぬ事故!我らの英雄フィリップがやられた~!!」
雄たけびをあげるアンガトラマ。
団長「もはやこの人食い恐竜から我々を救う救世主は現れないというのか~!!」
フィリップ「は~はっはっは~!俺はまだまだ死なんぞ!」
団長「フィリップどこだ!?」
アンガトラマが苦しみだす。
団長「み、見ろ!怪物が苦しんでいる!フィリップがお腹の中で戦ってくれているんだ!」
照明がアンガトラマのケツに向けられる。
恐竜のケツからひょこっと顔を出すフィリップ「ヒ~ハ~!」
団長「あ、あそこだ~!」
ケツから飛び出すフィリップ「フィリップ様ただいま復活!」
会場はヒートアップ。
フィリップ「さあ第二ラウンドだぜ!!」
会場の恐竜好きな生意気なガキ「ママ。さっきからアイツやたらはりきってるけど・・・あの恐竜って魚しか食べないんだよ。」
その一言で会場が凍りつく。「え・・・・・・。」
無言でぞろぞろと会場から出ていく観客。
フィリップ「あ、あのクソガキ、何言って・・・!」
観客「ブーブー!てめ~嘘だったのか~!ひっこめ~!金返せ~!」
フィリップ「う・・・嘘じゃねえ!現に俺こいつに一回食われてケツから出てきたじゃねえか!」
観客「それこそ嘘じゃねえか!死ね~!」客に物を投げつけられるフィリップ。
フィリップ「い、いてえなこの野郎!」
投げつけられた物が当り「キャイ~ン」と情けない声をあげて舞台そでに逃げていくアンガトラマ。
フィリップ「あ、コラ!にげるな!」
大ブーイング。しかし観客の一人だけは感動しフィリップに拍手を送っていた。
アニー「街を救えるのはあの人しかいない・・・」
最悪の形で興行を終えたサーカス。看板に描かれたフィリップの顔には落書きがされている。



団員の楽屋。
椅子にふんぞり返り机にドンと足を投げ出す。
フィリップ「なんだ、あのクソガキ。」
メイクを落とすリズリ―「気にしない方がいいってフィリップ。」
職人「そうそう。幕張の恐竜博とか行ったらああいう生意気なガキ必ずいるんだ。」
フィリップ「魚しか食べねえってんなら、てめえがやってみろってんだ・・・」
アンガトラマにばんそうこうをはるフィリップ「ほい、いっちょあがり」
フィリップをなめるアンガトラマ
「や・・・やめろ!やめろバカ野郎!大量のよだれが!」
リズリー「あいかわらず恐竜と仲がいいこと」
フィリップ「どこがだ!これだから恐竜は嫌いなんだよ」
ムスサウルスがフィリップのフルーツを盗む
「あ!てめえオレの果物返せ!」
リズリー「恐竜と同レベルだから好かれるのね・・・」
フィリップ「いちいちうるせえな・・・おいおいとっつあん、なにやってんだよ。」
サーカスの看板のイラストをペンキで描き変える職人「いや・・・」
フィリップ「ちょちょちょちょっと待てよ。俺の絵消されてるじゃねえか。」
職人「団長の意向でな。」
フィリップ「グレゴリーが?」
楽屋に入ってくる団長「その通り。フィリップ、もうあの猛獣ショーをうちの目玉にするのは限界だよ。みんなあの恐竜が“大きな子犬”だってことを知ってる。」
フィリップ「冗談じゃねえよ。じゃあこのサーカスは何を目玉にすればいいんだよ・・・」
フィリップの代わりにリズリ―の絵が描かれている。
団長「これからはリズリ―の空中アクロバットショーを目玉にする。彼女には今の三倍飛んでもらえばいいだろ。実際今日もお前さんよりも受けてたわけで…」
団長の胸倉をつかむフィリップ「俺にこいつの前座をやれって言うのか!」
リズリ―「そ、そうですよ、私だって今の三倍もあれをやるなんて無茶です・・・勘弁してくださいよ・・・!」
団長「きみらはどうもわかってないようだな。雇い主は私だ。決定には従ってもらう。」
リズリ―「そんな・・・」
フィリップ「俺を誰だと思っていやがる!」
団長「失業中の俳優だろ。しかも恐竜の喰われ役。」
フィリップ「うるせー!」
団長を突き飛ばすフィリップ
咳き込む団長「現実を見てくれよフィル。もうあんたが拍手喝采を浴びることはないんだ」



楽屋に残ったフィリップとリズリ―。
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
リズリ―「私なんてあんなこと続けてたら遅かれ早かれ死んじゃうよ。実際どんどんショーの内容が過激になってるし・・・」
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
リズリ―「そのうち火の輪くぐりもコラボされる。きっと。」
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
リズリ―「ダイハツコルテオじゃないんだこっちは。」
フィリップ「グレゴリーのくそったれ。」
楽屋のドアがノックされる。フィリップ「お前でろ。」
リズリ―「はいはい。」
煙草に火をつけるフィリップ「グレゴリーのうんこ。」
来客とドア越しに会話するリズリー「・・・あの、失礼ですが人違いでは・・・それにそういう話は保安官か猟友会にするべきでは・・・」
背を向けて声をかけるフィリップ「なに!?」
リズリ―「どう考えても怪しい依頼なんだけど・・・」
フィリップ「とっとと追い返せ・・・こっちはこれからの人生考えるので手一杯なんだよ」
リズリー「バックランド本人もそう申しておりますので、大変失礼ですがお引き取りを・・・」
フィリップ「・・・ったく馬鹿共が・・・」
リズリ―「ミス・ブラウン・・・」
フィリップ(女!?)振り向くとドアのそばに身なりのいい美しい女性が立っている。
アニー「そうですか・・・無理を言ってすいませんでした・・・」
リズリ―「ええ、確かにサーカス団員に街の用心棒を頼むのはばっかじゃねえのっていうか・・・」
リズリ―を突きとばすフィリップ「どけい!」
リズリ―「ぐわっ!」
フィリップ「先ほどはこのこ汚い小娘が失礼を。どうぞお座りください。詳しいお話を聞きましょう。」
リズリ―「こ、こいつは・・・」

貴婦人にお茶を出すリズリ―「安物ですがどうぞ。」
アニー「ありがとう。」
フィリップ「いやあ、掃き溜めに鶴とはこのことですな。」
リズリ―「わたしゃ掃き溜めかい・・・」
アニー「わたくし西部ワイオミングからやってきましたアニー・ブラウンと申します。さきほどのバックランド様のショー・・・大変感動いたしました。」
フィリップ「いやあ、あれしき大した事ありませんよ。」
リズリ―「相手は巨大な子犬だしね。」
アニー「子犬?」
フィリップ「あいつの言う事は聞き流してください。たびたび辻褄の合わないことを言うので。」
リズリ―「ひでえ。」
アニー「バックランドさんは一体どうやってあの凶暴な恐竜たちを手懐けているんですか?」
フィリップ「ああ、あれ?大したことはないですよ。連中も所詮は動物ですからね、私がムチでピシリとやれば逆らっちゃきません」
アニー「どんな恐竜もですか?」
フィリップ「うん、まあね。だいたいいけるね」
アニー「すごい!あなたに会えて本当によかった・・・!」
フィリップ「ひ~は~!」
ため息をつくリズリー「は~」

アニー「ワイオミングの集落は今凶暴化した恐竜によって深刻な危機にあります。」
フィリップ「穏やかじゃないな。」
アニー「ご存知の通り恐竜には一頭でアフリカゾウの群れに匹敵する体重のものもいます。
彼らが一度街で暴れたら取り返しがつきません。」
フィリップ「恐竜どもは昔から西部の街を襲ってたんですか?」
アニー「いえ、数年前までは人間の住む集落には近づきもしませんでした。でも、今は・・・私達の街の近くの集落が次々に壊滅していくのに保安官や軍隊は凶暴化した恐竜に恐れをなして動いてくれません。
今こそあなたのような勇気のある人の力が必要なんです・・・!」
腕を組むフィリップ「ふむ・・・」
リズリ―「思慮深い振りして何も考えてませんよ、この人。」
フィリップ「出てけ、この野郎!・・・わかりました。恐竜討伐お引き受けしましょう。」
リズリ―「ちょっと、なにいってんの!あんた団長に借金してこのサーカスに雇われてるんだよ・・・!ショーはどうなるのよ!?」
フィリップ「どうせサーカスのスターはお前になるんだ。ここに・・・俺の居場所はねえ。」
リズリ―「なにかっこつけてんだ、こいつは!」
団長「話は聞いたぞ!」
リズリ―「グレゴリー団長!・・・聞いてくださいよ、この男サーカスやめて恐竜ハンターになるとか言ってますよ!」
懐に札束を隠している団長「いかせてやりなさいリズリ―。私にはお前がいればいい。私は話の分かる興行主だ。」
リズリ―「はあ!?・・・ってなんですかその懐にごっそりある札束は!」
団長「彼も進化の時なのかもしれんな・・・」
リズリ―「なんかこのオッサンもくさいセリフ言ってるんですけど!」
アニー「もちろん借金の肩代わりだけでなく、あなたには多額のギャラをお支払いしますわ。
さあ、この小切手に好きな数字をどうぞ…」
フィリップ「まじで!?」
団長「その貴婦人を救ってやれ!」
リズリ―「本当にサーカスをやめちゃうの!?もう一度考え直そうよフィリップ・・・!」
フィリップ「・・・・・・。」
リズリ―「フィリップ・・・!」
フィリップ「悪いがギャラは受け取れないな。」
安心して微笑むリズリ―「フィリップ!そうよ、恐竜ハンターなんて絶対危ないもん!」
フィリップ「私のギャラは貴方の笑顔で結構。」
リズリ―「はあああああ!?」
フィリップ「さあ、参りましょう。」
アニーと共に楽屋を出ていこうとするフィリップ。
アニー「なんて素敵な方・・・ありがとう。では明日の朝さっそく現地へ。汽車の手配は済んでおりますわ。」
フィリップ「じゃ、グレゴリ―世話になったな!」
団長「御達者で。」
フィリップの脚をつかむリズリ―「ちょっと本当に行っちゃうの!?」
フィリップ「はなせい!煩わしいな、スターの俺にこんな小汚い所似合わねえんだよ!」
リズリ―「こんなうまい話絶対裏があるって・・・!」
フィリップ「てめえこの人が俺を騙してるって言うのか!蹴とばすぞ!」
団長「ほら、はなすんだリズ!」
フィリップ「サーカスのことはお前に任せた!じゃあな!」
リズリ―「この馬鹿野郎!恐竜に喰われろ!」



満月の夜。
恐竜の厩舎で体育座りして物思いにふけるリズリ―。
リズリー「なんか・・・ひどいこと言って別れちゃったな・・・あいつ・・・馬鹿だったけど・・・
もう二度と会えないんだよな・・・・・・もう・・・謝れないんだな・・・」
厩舎でさみしそうにうずくまっているリズリ―に恐竜たちが近づいてくる。
リズリ―「・・・ん?なぐさめてくれるの?」
アンガトラマが鼻づらを優しく近づける。
パキリノサウルスが団長の小屋の窓の近くに立ち、それに乗ったムスサウルスが窓をのぞく。
小屋の中では団長が酔っ払って寝ている。ムスサウルスが合図を送る。
ブラキオサウルスがリズリ―を咥えてフェンスの外に持ち上げる。
リズリ―「ちょちょちょ・・・なにを・・・!」
翼竜がリズリ―の荷物の入ったリュックを持ち上げフェンスの外に運ぶ。
サーカスの外に下ろされるリズリ―「みんな・・・」
リズリ―を見送るサーカスの恐竜たち。
リズリー「ありがとう。」
リズリ―の肩にムスサウルスが乗っているのに気付く。
リズリ―「よし。いこうかチビすけ。」

『恐竜大陸サウラシア』登場人物

 サイトの「カートゥーン」で紹介している漫画作品は、実はすべてが漫画になっているわけじゃなくて、脚本の段階でストップしちゃっているのがいくつかあります。2009年のこの『恐竜大陸サウラシア』もそのひとつ。あとは『風と翼』かな?じゃあ、あんまないっちゃないのかw
 
 んで、私、この前生命保険に入って保険屋に「人生何が起こるかわからないですよ~」とか脅されて、しかも納得しちゃってw「そうだよな~いつ死んじゃうかわからないもんな。だったら脚本の段階でもブログにおいておくか」ってことで、約5年間封印していた脚本をアップすることにしました。
 おそらく作画の方は当分は『超音速ソニックブレイド』をやることになりそうなので、これと『風と翼』はここ数年間は漫画化出来そうにないんですよね。この二つが短編ならまだしも、かなりボリュームのある脚本なので・・・(映画サイズ)
 しかし時が経つのはあっという間ですよね。これ書いてた時、私まだ大学に行ったっていうのがすごい&情けないw

 さて、去年『80日間宇宙一周』の続編シリーズの脚本をブログに載っけてわかったんですが、実は脚本だけ読んでも映像イメージを自分で建てられちゃう人が結構いて、それならそれで読んだ人がそれぞれ好きなように想像すればいいかって、さらに人に甘えたスタンスになってしまいましたw
 前の記事でそういう現代アートのスタンスが嫌いって言っておきながらねw

 でも、この作品は私は死ぬ前に絶対に漫画化するつもりなので(というかビジュアル化してナンボなシーンが多い)、漫画になってから初見で読みたいという人は、スルーしちゃてください。とりあえずブログの記事の足しってことで置いておくだけなので・・・何が言いたいかっていうと、保険屋にビビったんだよ!


あらすじ
 1889年西部開拓時代のアメリカ。 俳優を目指し都会に出て見事に挫折したフィリップ・バックランドは、幼馴染の少女リズリーと共に巡業サーカス団「ワイルドウェストサーカス」で猛獣使いとして働いていた。巨大肉食恐竜を相手に鞭一つで戦うフィリップのショーは当初は大ウケだったものの、ある日恐竜に詳しい子どもの「あの恐竜は見た目は怖いが魚しか食べない」の一言で、彼のショーは破滅する。
 しかしそんなフィリップのうそっぱちの猛獣ショーに観客席からひとり拍手を送る貴婦人がいた。彼女はワイオミングに金鉱を持つアニー・ブラウン。アニーは西部で暴れる凶暴かつ強大な恐竜と戦う勇敢な恐竜討伐人「ダイノ・スレイヤー」を探し求めていたのだ。
 莫大なギャラでサーカスからフィリップを引き抜こうとするアニー。奇麗な女性の前で、すぐかっこつけるフィリップは、この依頼の恐ろしさを一切考えず二つ返事でアニーの仕事を引き受けてしまった。
 どう考えても恐竜に食べられてしまうと感じた幼馴染のリズリーは、フィリップを止めようと、サーカスの恐竜たちの協力によってこっそりサーカスを抜け出し、大陸横断鉄道でふたりと合流。
 かくしてフィリップ、リズリー、アニーの三人は野生の恐竜が支配するフロンティア「恐竜大陸サウラシア」に旅立ったのだが・・・

登場人物と恐竜

フィリップ・バックランド
巡業サーカス団「ワイルドウエストサーカス」の猛獣使い。
性格はお調子者で女性とお金が大好きなかっこつけ野郎。その軽はずみな言動は本人もたびたび後悔する。彼はかつて俳優でニューヨークのブロードウェイでは恐竜に喰われる役しかもらえなかったことから恐竜が嫌い。自身が主演の西部劇を上演するのが夢。

リズリー・ダグラス
サーカス団員の少女。フィリップの幼馴染だがしっかりしていてフィリップよりもずっと大人。
サーカスでは身のこなしの良さを買われて花形の空中ブランコをやらされている。彼女は幼いころサーカスに売り飛ばされてしまったが、本人はサーカスから出て広い世界を自由に旅したいと願っている。ネズミ大の恐竜ムスサウルスを飼っている。

アニー・ブラウン
恐竜に襲われている鉱山労働者街「オーテリーヴ」を救う救世主を探しに東部にやってきたおしとやかな女性。都会知らずでフィリップのうそっぱちの猛獣ショーを信じ込み、恐竜退治を依頼する。その清楚で従順なイメージからフィリップは一目惚れし依頼を引き受けるが・・・

ラム・コープ
百戦錬磨の腕利き恐竜ハンター兼サウラシア大陸の用心棒。孤独を愛する寡黙な男。
アニーとは一時期恋仲だったらしい。同じ恐竜ハンターであるマーシュとは因縁の仲。恐竜一頭仕留めるのがどれだけ危険なことかを知る。

ヘンリー・バッカー
フィリップの古い友人。散弾銃、催涙弾、ティラノサウルスの咆哮発生装置といった対恐竜用のさまざまな装備を開発&調達する胡散臭いバイヤー。

グレゴリ―団長
「ワイルドウエストサーカス」の興行主。お金の為には団員に命がけの曲芸を要求することも厭わない。でも本人にたいして悪気はない。

ホーナー組合長
「オーテリーヴ」金鉱で働く貧しい労働者のリーダー。金鉱を所有するアニーに未払い分の賃金を要求する。

ドン・マーシュ
無法者のハンターたちのボス。彼らが付近の草食恐竜の数を減らしたため、街に肉食恐竜がやってくるようになった。彼らの目的は因縁のライバルであるコープよりもたくさんの種類の恐竜をハンティングすることと、コープですら倒したことがない最強の恐竜ティラノサウルスを仕留めること。

ジョン・カーネギー社長
マーシュをオーテリーヴに送り込んで街を買い取ろうとする大企業の社長。カーネギー社が所有する博物館の恐竜コレクションは世界屈指。

サーカスの動物たち
ムスサウルス・・・ネズミ大の小さな恐竜。リズリーのペット。サルのようにずる賢い。
パキリノサウルス・・・中型の角竜。フィリップがサーカスで乗る“馬”。
プテラノドン・・・翼竜。照明担当。
ケントロサウルス・・・小型の剣竜。トゲトゲで危険なショーを演出する。
パラサウロロフス・・・楽曲担当のカモノハシ竜。
アンガトラマ・・・フィリップの猛獣ショーの相手。ワニのようないかつい恐竜。名前の意味は「勇者」だが、その真実は・・・
ブラキオサウルス・・・恐竜で最も背が高い。リズリ―を空中ブランコのステップに乗せる。

アパトサウルスの群
大陸横断鉄道をたびたびストップさせる巨大な恐竜。こんな時はハイボールを飲むしかない。

ユタラプトル(ノースクロー)
人間の言うことも理解できる知能の高い恐竜。
コープの相棒で彼を乗せて時速60キロで疾走する。

トリケラトプス(リッチフィールド号)
バッカーが用意した駅馬車をひく草臥れた角竜。目の上の片方の角がへし折れている。

アロサウルス(トレイルキラー)
無法地帯の荒野を駆ける大型肉食竜。たびたび荒野を行きかう馬車を襲う。

ティラノサウルス(シャープトゥース)
最強の恐竜の王。フレンチ・ダイナソー戦争では軍隊を壊滅させたなど、さまざまな伝説があるが意外に子煩悩らしい。ワイオミングで次々に集落を襲っており、知事がこの恐竜の首にかけた賞金は1000万ドル。

ミリアタイト鉱床
ウランの三倍もの比重を持つ新種の鉱物で時間と空間をゆがませる性質がある。この鉱床によりサウラシア大陸には異なる時間軸の恐竜が生息していた。
カーネギーはこの鉱物を狙って、鉱床付近のオーテリーブを地上げしようとたくらんでいる。
またミリアタイト鉱床には古代文明の遺跡とティラノサウルスの営巣地がある。
なお地球にはもともと存在しない元素であり6500万年前に地球に衝突した超巨大隕石が宇宙から運んできたという説が有力。元素記号はMi。

ディノトランス弾
異なる時間軸からやってきた恐竜をもとの時代に強制的に送り返す効果がある銃弾。
またミリアタイトでできた薬莢を割ると転送した恐竜を呼び戻すことができる。
どんな恐竜も安全に捕獲できるとされているが・・・

闘竜場ジュラシックピット
カーネギー財団が秘密裏に建造したアミューズメント施設。マーシュがディノトランス弾で捕獲した恐竜たちを使って来場者が恐竜同士のバトルを楽しむコロシアムのようなもの。

『学問のすすめ』

 著者は言わずもがなTHE一万円福沢諭吉さん。明治4年(一冊の本として売られたのは明治13年)に出版されたベストセラー啓蒙本(70万部売れた)。
 情報7days ニュースキャスターでおなじみの斎藤孝先生が現代語訳を手がけたのはずいぶん前から知ってて気にはなっていたんだけど、とうとう今になってしまった。

 福澤諭吉さんといえば、もって回したような言い回しが嫌いな人で、彼の「わかりやすく相手に説明できないってことは、自分が説明できるほどちゃんと理解していないってことだ」って主張は、若かりし頃の私に大きな影響を与えた・・・というか、私もわざとジャーゴンというか小難しい言葉を使って偉そうに言う人が嫌いなので(美術系の大学に結構多い)、できるだけ相手に伝わるように誠意を持ってわかりやすく解説するのは大切なことだと思うんだけどね。頭がいいならもっとわかりやすく言ってくれよってw
 んで、本当は自分でもちゃんと理解してないんじゃないか?とか疑うと、こういう人に限って屁理屈だけはうまくて、聞き手に想像の余地がないなんて面白くないじゃないか、とかいうw
 それとこれとは違うと思うぞ。会話や議論は現代アートじゃないんだから。

 齋藤先生:学者によっては、人にわかられるしまうともう新たに出すものがないという人もいれば、内容がたいしたことがないのでわざわざ難しい言葉を使ってごまかす人もいます。正確さを期して難しい言葉を使うケースもありますが、わかっていることの本質をクリアに相手に伝えようとする姿勢自体が欠けている場合もあるのです。その多くは、啓蒙的能力の欠如と、百パーセント理解されきってしまうことへの恐れに起因します。(p241 解説)

 てわけで、そもそもそんなに難しい本じゃないんだけど、今回の斉藤さんの現代語化で読みやすさを心がけた古典の名作が小学生にも読めるくらいにさらに読みやすくなった。
 斉藤さんがなんでこんなことしたかっていうと、大学で『学問のすすめ』読んだ人いる?って聞くと読んでいる人がほとんどいないんだって。数百人に聞いても読んだ人0人。
 で、斉藤先生って明治大学の先生なわけじゃん。明治大学生ですら読んでいないってことは一般の人なんて多分まったく読んでいないってことなんだよ。

 私は十代の頃に出来心で読む機会があったんだけど、この本の影響かどうかは知らないけれど、社会問題に関する私の判断基準は本書のものと大きく変わらない。
 福澤さんっていうのは、巻末で斉藤先生も言ってる通り、とっても論旨がクリアな人でストレート、逃げも隠れもせず、言い訳なしで体当たりでぶつかってくるような気持ちよさがある。
 だから偉そうなことを言っているのになにも行動せず、挙げ句の果てにその知識が社会のために行動を起こさない言い訳になっちゃっているような人を福澤さんは、無価値であるとバッサリ批判する。
 福澤さんが定義する「学問」とは自分自身の自立のために用いるのは当たり前であり(よって経済的な自立は誇るべきことではない)、他者や社会のために役立てて初めて価値がある。つまりとっても実学的な主張の持ち主なわけだ。

 一身独立して一国独立す。

 とにかくその批判や論考はまったく時代を感じさせない。第2編では時空を超えてニート批判をしていたり(第17編では引きこもり批判)、また第6編では、私的な復讐は絶対に許されず(『キックアス』の親子などバカもいいところ)、どんなにこちらの筋が正しくても民主社会のルールに則って、現状に即した社会批判を展開している。今こそ、再びこの本が必要な時なのかもしれない。

 ・・・とか言ってもどうせみんな読まないと思うから、章ごとに私が面白いなって思った箇所をここにメモっておきますw
 本当は実際に本を買って読んだほうがためになるし、斉藤先生も喜ぶってもんなんだろうけどね。

自由と平等について(初編 学問には目的がある)
 天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず・・・とか言うけど、なんか世の中みてみると、賢い人もいればバカもいるし、貧乏人も金持ちも、地位の高い人も低い人も色々いるよね・・・その差は、その人が学問を学んだか学んでないかによって発生する。
 西洋では『天は富貴を人に与えるのではなく、人の働きに与える』というけど、人間は生まれた時は平等。ただその人がしっかり学んだ結果、社会的地位が高く、豊かな人になっているってだけ。機会は平等なんだから、人はみんな学ばなければいけない。

 ここでいう学問は難しいことをたくさん知っていればいいってことじゃない。それはいくら正論でも机上の空論で、最優先でやるべきことは、手紙の書き方や帳簿のつけ方、計算の仕方といった普通の生活に役に立つ学問である。できるだけわかり易い言葉で教育すべきだ。

 自由とわがままをごっちゃにしちゃダメ。いくら使っているのは自分の金だ、人に迷惑かけてないだろ、といっても、酒や風俗でやりたい放題遊んではいけない。そいつは結局ほかの人の悪い手本になってしまう。社会の害になるようなことは慎むべき。

 自由独立とは一個人だけではなく国家全体にも言えることだ。欧米列強国といっても結局は同じ人間。学び合い、譲り合いの精神で付き合っていこう。
 外国に我が国が好き勝手にやられそうな時は国家のために命懸けで戦うのは当たり前だが、中国のように外国人をすぐに差別して馬鹿にしてた挙句、結局外国にやられちゃうようなことはないようにしよう。自分の力、相手の力を客観的に分析することが必要だ。

 これからは生まれや身分によって社会的地位が決まるのではなく、その人の人間性や才能によって社会的地位が決まる。つまり社会的地位が高い人が尊いのは、その人自身が尊いのではなく、国家のために尊い仕事をしているからである。
 だから政府に不満があったら遠慮せずに意見を言うべきだ。不満を抑えて政府を恨むよりも、合法的な抗議の手段をとって積極的に行動するのが筋。
 なにも学ばず、働かず、行動をしない恥知らずな人々が増えると、当然社会の治安は悪くなる。そうすると社会秩序のために政府は規則を締め付けなければいけない。厳しい政府は愚かな国民が作るのだ。国をよくしていこうとするならば、自分の行動を正し、ちゃんと学ぼう。

基本的人権について(第2編 人間の権理とは何か)
 難しい本を読んでりゃ学があるってわけじゃない。現実の世の中に適応し、社会貢献できなければゴミといっしょ。
 どんな人も基本的人権を侵害してはならない。金があって社会的地位が高いからといって、その立場を利用して、社会的地位の低い人をいじめてはいけない。これは相撲取りが腕の力があるといって、一般人の腕を折るのと一緒だ(※諭吉はこの比喩が好きw)。普通の人だってその腕で問題なく生活ができるのに、理由もなく相撲取りに腕を折られる道理はねえ。切り捨て御免とか最悪。

 学問がなく、物の道理も知らず、食って寝るしか芸のない人間がいる。

 こういうニートはダメ。政府と渡り合えるような人間になろう。もしも暴力的な政府を避けたいならば、今すぐ学ぼう。

国民主権について(第3編 愛国心のあり方)
 国民と政府は同等と言ったけど、国家と国家だって同等だ。もちろん今は差があるけれど、そういった差はあらかじめ決められていて変えられないようなものではない。今日のバカが明日は賢いかもしれない。かつて豊かで強大な国が今は植民地だったりもする。
 我が日本国民も一生懸命学んで、しっかりと気力を持てば、西洋人など恐るるに足りず。いい国とは交際し、悪い国は打ち払えばいい。

 一身独立して一国は独立する。つまり自分自身に独立の気持ちがない人は、国を想う気持ちも薄い。人々が独立心を捨て依頼心ばっかりで一方的に国に頼ってばっかりだと、内政問題ならまだいいが、外国から侵略されたとき誰も国家のために戦おうとしなくなってしまう。
 国民主権なんだから、国民はお客様スタンスであってはいけない。こんなこと欧米の国では当たり前過ぎて、笑われちゃうよ。
 政府も独立心のない国民の方が支配しやすくて便利とか思っちゃダメ。足元を救われて愛国心のない国民によって国家が売られることだってあるのだ。
 国民を政府が一方的に束縛するのではなく、国民を解放し、ともに苦楽を味わおう。

官から民へ(第4編 国民の気風が国を作る)
 民主主義国家において、政府は内側の生命力で、国民は外部刺激のようなものだ。現在の我が国で遅れているのは「学術」「経済」「法律」である。日本は長いあいだ専制政治に慣れてしまって、自分の意見を言えなくなってしまっている。でもこれからはそれではダメ。

 官僚はろくなのがいないように思えるけど、実際会って話してみると度量が大きくて立派な人物である場合が多い。でもなんでそういう人たちが集まるとバカっぽく見えるのか不思議である。その原因は慣習とか気風というものに縛られすぎているからである。
 ならばいっそ、賢い学者(主に洋学者)や知識人は公務員になることにこだわらず、民間で活躍すべきだ。日本には政府はあるが未だに国民がいない。ならば我々慶應義塾の同志が手本を示すことで国民の教育水準を上げていこう。それには官僚になるのではなく民間で働いたほうが都合がいい。つーか民間でやれ。有能な人材が政府を去るのではないか?というお便りも来たが、外国に行くわけじゃないし、同じ日本で仕事をするのだから問題ない。民間主導でもっとやってみようよ。
 民間では食っていけないなんて立派な人物が言う言葉じゃない。そんなに才能があれば官だろうが民だろうがどこでも食っていけるはず!
 ちょっと官僚になって大した仕事もせずに偉そうな人は我々慶應義塾の仲間じゃない。

物質的自立と精神的自立(第5編 国をリードする人材とは)
 第4編は学者向けに書いちゃったからちょっと文章が難しかったかもしれない。ごめん。この第5編も学者向けでちょっと難しいかもしれないけど、ほかの編はわかりやすく書くから、4編と5編だけ読んで「難しい本」って判断しないでね。

 今の日本は明治維新からまだ10年も経ってないのにかなり物質的には豊かになった。でもそれだけじゃまだ足りない。レンガ造りのビルや鉄橋とかをみて政府のすごさにビビって卑屈になっちゃダメ。これからは中産階級の力が重要になってくる。文明は民間が発展させ、政府はそれを保護するだけなのだから。
 学者は文明を育てる立場として、国民における「文明の精神」が衰えていくのをほうっておいてはいけない。メタな立場に逃げてただ現状を嘆いているのは無責任だ。まだまだやるべきことは多い。頑張ろう。

法治国家について(第6編 文明社会と法の精神)
 法律はとっても大切。私的な復讐は気持ちはわかるけど、絶対ダメ。それをやったら復讐の連鎖になるし、犯罪者と変わらない。だから忠臣蔵を美化してはいけない。あれはバカが47人いただけ。暗殺で幸せな世の中が来たことはない。
 法は尊いが絶対不変なものではない。納得がいかないなら正当な手続きで訴えるべきである。

 実際この前、うちの慶應義塾でも文部省とひと悶着あったんだけど、いくらこっちが正しいからって勝手に規則違反をしていいわけじゃない。泣く泣く涙を飲んで外国の先生の採用を諦めたよ。この出来事は、ひとつの塾だけの不幸ではなく、日本の学問にとっての大きな損失であって、内心「バカバカしい規則だなあ」とは思ったけど・・・これに関しては近日中あらためて出願しなおすつもり。

社会契約について(第7編 国民の二つの役目)
 国家を会社と例えるならば、国民は経営者とお客の二つを同時に兼ね備えているようなももだ。でも国民全員が社長にはなれないから、何人かの代表者を置こう。この代表者を自分たちが選んだからには、代表者の決めた方針を無視して勝手なことをやってはいけません。
 酒を売ろうとしている会社なのに、酒が嫌いだからと社員が勝手にぼた餅を発注したらその会社は倒産します。

 およそ世の中に、何がうまい商売かと言って、税金を払って政府の保護を買うほど安いものはない。(95ページ)

 ちょっとお金を払うだけで、泥棒や強盗に入られる心配も、旅行中山賊に襲われる心配もない「安心」を買えるのだから、税金くらいケチケチ言わずに気持ちよく払ってやろう。
 
 とはいえ、政府が政府としての職務を果たさなかったら、どんどん批判しよう。契約違反だから。ダメな政府に対してどういう手段をとるかはいろいろあるけど、武器や暴力を持たず、正しい道理で政府に訴え続けるのが最善である。
 本当にどうしようもない政府だって結局は同じ人間。力を持って敵対すれば水掛け論だが、静かに道理を持って接すればいつか必ず報われる。よりよい社会のために自分の人生をどう使うかを考えよう。

性差別と家制度批判(第8編 男女間の不合理、親子間の不条理)
 人間の分限を間違わずに生きていけば、他人に咎められることも天に罰せられることもない。他人の権利を侵害しない限り、個人の権利は保証される。他人の利害に関しない限りは、ほかの人からあれこれ言われる筋合いはない。
 ただ女性はどうだろう。子供の頃は親に従えと言われ、結婚したら夫に従えと言われ、老いたら子に従えと言われる。子供が親に従うのはともかく、残りの二つはいくらなんでもあんまりではないだろうか。世の中ひどい亭主もいて、それをただ我慢しろなんてひどい。不公平である。

 男女の割合は、西洋の研究ではちょっとだけ女性が生まれる割合の方が男性と比べて少ないらしい。つまり妾を取る風習は自然界のどうりに反する。ケダモノと言って良い。
 「妾は子孫を作るためだ、孔子だって後継がいないのが最大の親不孝じゃないか」と反論する人がいるが、相手が孔子だろうが知ったこっちゃねえ。
 お年寄りにとって孫ができるのは嬉しいことだが、孫ができないからといって親不孝というのは言ってはならない。そんな屁理屈言う前に自分の胸に手を当ててみて考えてみなさい。
 これは親だってそうだ。さんざん好き勝手に生きてその結果貧乏になり、そこで急に頑固親父になって親孝行しろとはどこまで恥知らずなのだろう。

知識人の社会的義務(第9編 よりレベルの高い学問)
 この編は故郷の友達に当てて書きます。

 経済的に自立しただけで偉そうにしてはいけない。それはやっとアリのレベルになったってだけで、誇るようなことじゃない。自然界では自活は当たり前。動物に負けてはいないよというだけだ。
 人間は社会的な動物である。文明とは先人の人々が一体となって、今を生きる我々に譲り渡してくれた遺産であって、そのスケールは一個人の土地や財産とは比較ができない。その恩恵に預かっている以上、我々には社会的な義務が発生するのだ。
 この世界に生きた証を残し、これを長く後世に伝えることこそ、我々の仕事なのである。仕事には時勢に合う合わないがある。しかしそう言う意味でも現代(注:明治時代です)は自由にいろいろなことがやれてチャンスなのだ。

国際競争論(第10編 学問にかかる期待)
 これからは外国と競争しなければいならない時代に入っていくだろう。日本の名を辱めず外国に誇れる国際人になろう。
 「外国の長所を学んで、短所を補おう」というが、今はまるで我が国にあるものは全て短所で、外国にあるものがすべて長所のように思ってはいやしないだろうか。日本にだって欧米には負けない進んだ文化や風習(公衆衛生)がある。卑屈になる必要は全くない!
 もっと大きな視野を持とう。

専制政治批判(第11編 美しいタテマエに潜む害悪)
 専制政治は仮にリーダーが超人的な素晴らしい政治家でも、国民の自立を促さない。優しい親が子供がいくつになっても世話を焼き続けるようなものだ。そして政府と国民は親子ではない。
 政府が国民生活すべてを管理するような仕組みは結局のところ空想の産物、理想論である。これからは「名分」ではなく「職分」の時代なのである。

議論の仕方(第12編 品格を高める)
 口頭でしゃべると言うのは、内容の重要さはさて置きなかなか面白い。文章にすれば大したことがないようなものでも口で言葉にすれば、人の心を動かすこともある。だからある程度の定形、伝え方は大事。
 学問はただ本を読んでいればいいというものではない。重要なのはそれを生かすことである。学問の本質とは精神の働きにある。物事を「観察」し「推理」することによって自分の意見を組み立てていこう。
 本を読み、本を書き、人と議論して初めて学問をやっている人と言える。自分ひとりだけでできないことは多い。
 いろいろ知っているからといって自己満足しないように。後発は先人を超えることが重要なのだから、先人に追いついて満足するなど、考えが足りない。常に上を目指そう。
 また誰がどう考えてもダメなことを鬼の首を取ったかのように非難するのは議論のレベルが低いと言わざるを得ない。そんな議論をすればかえって人にバカにされるだろう。

自由主義と自己責任論(第13編 怨望は最大の悪徳)

 ねたむな!

 恨む代わりに活動させて、嫉妬の念を絶って、互いに競い合う勇気を出させ、幸福も不幸も不名誉もことごとく自力でこれを獲得できるようにさせたいのだろう。つまり世間中の人をいい意味での「自業自得」にするということをその趣旨としているのだろう。(172ページ)

 そもそも面識のない相手を話の通じない敵と決め付けるのは世の中にとって大きな災いである。

 物事の相談では、伝言や手紙ではうまくいかなかったことでも、実際に会って話してみるとうまく収まることがある。(174ページ)

 言論の自由を妨害し行動を妨げるのは、なにも政府だけではない(それは自分の心かもしれないってこと)。人生を活発に生きる力は色々な経験をしなければ生まれにくい。

計画性と社会保障(第14編 人生設計の技術)
 何かを計画するときはそれを実行するためにかかる時間と難易度を考えよう。いわゆるトレードオフの原理である(C)リチャード・ドーキンス

 社会保障では保護と指図の範囲は一致させよう。これはイギリスの貧民救済でも頭を悩ませている問題らしいのだが、生活保護でお金を支給しても、無駄遣いされちゃ問題の本質的な解決にはならない。薄くするべきところを厚くして、厚くするべきところを薄くしては社会は重苦しくなってしまう。
 ただ経済的な議論に酔って、人を思いやる気持ちを忘れてはいけない。人間ソロバンだけでできてはいない。

懐疑主義と相対主義(第15編 判断力の鍛え方)
 自然科学の発展を見ればわかるように文明とは物事を疑うところから始まる。また西洋文明が100%正しくて進んでいると決めつけてはいけない。
 例えば西洋で女性の権利が尊重されているのは素晴らしいことではあるが、夫を苦しめる困った妻や不良娘がいることまでは見習う必要はない。

コミュニケーション能力(第16編 正しい実行力をつける)
 物質的な豊かさに心を支配されるな。
 いくら正論でも時と場合をわきまえろ。宴会の最中にありがたい道徳の説教をされちゃたまったもんじゃない。空気読め。こういった賢さがないのは蒸気はあってもエンジンがないようなものである。
 あとすぐ「時代に合わなかった」とか「めぐり合わせが来なかった」とか言い訳ばっかりして不平不満を言う引きこもりが多いけど(注:明治時代!)、そう言う人の表情はたいてい不幸そうである。

 ここで言っておこう。次代の若者たちよ、他人の仕事を見て物足りないなあ、と思えば、自分でその仕事を引き受けて、試しにやってみるのがよい。他人の商売を見て下手だなあ、と思えば、自分でその商売を試してみるのがよい。となりの家がだらしない生活をしていると思えば、自分はしっかりと生活してみよ。他人が書いた本を批判したかったら、自分でも筆をとって本を書いてみよ。
 非常に大きなことからとても細かいことまで、他人の働きに口を出そうとするならば、試しに自分をその働きの立場において、そこで反省してみなければいけない。あるいは、その職業がまったく違ってその立場になれない、というのであれば、その働きと重要さを考えればよい。(215ページ)


社交のすすめ(第17編 人望と人付き合い)
 人望とは実際の権力や財産が大きいから得られるといったようなものではない。その人の知性と人格によって次第に獲得していくものである。そして栄誉や人望は努力して積極的に求めるものなのだ。
 わかりやすい説明の仕方を練習しよう。また服装や表情といった見た目の印象も大事だぞ。こういうのは持って生まれたものだから努力してもどうにもならないと諦める人がいるが、手足を使えば筋力がつくのと一緒で、言葉遣いや表情も訓練でどうにでもなる。努力する前に諦めるな!(C)松岡修造
 最後に。引きこもってないで交際をどんどん広げよう。いろいろなことに関心を持ちいろんな人と会って話をしてみよう。

 人間のくせに、人間を毛嫌いするのはよろしくない。
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