『「日本史」の終わり』

 これは終わりじゃない。終わりの始まりでもない。始まりの終わりなのさ。(C)ラヂオの時間

 池田信夫さんと與那覇潤さんの対談本。日本の社会システムは明治で近代化(=西洋化)したという通説があるけど、実は全然江戸時代から変わっていないまま、現代まで来ちゃったよ、という話。
 こういう、「江戸時代に現代の日本人の本質を見る」っていう評論は、割とよくあると思うんだけど、この本を読んでて面白かったのは、この江戸的なシステム(=日本人の性根)って、江戸時代よりもずっと昔から脈々と続いてきて、そんじょそこらの改革じゃ断ち切れないぜっていうこと。つまり與那覇さんは「江戸化」とか言ってるけど、おそらく資料的なものが江戸以前は少なくて、確信を持って言えないだけで、日本はずっと前から変わってないんじゃないかと思うw
 例えば、アメリカ軍だって戦後GHQ送り込んで「ジャパンは民主主義の国になったよ、万歳」とか言って喜んだけど、実は全然民主主義国家じゃないっていうねwその勘違いした成功例をもとに「今度はイラクもやってみようか」ってなったら、事態がこんがらがっちゃったわけで・・・

 私がなにげにショックだったのは、日本では司法が本当に全然機能していないという現実が具体的に紹介されていたということ。
 かくいう私も、サイトのコラム(水戸黄門に絡めて)や、Ustream(やっぱり水戸黄門に絡めて)や、ツイッター(絡めたかは忘れた)とかで散々言ったけど、日本人ってもう法律よりも感情で動いちゃってて、感情的に許せない!っていうのがジャスティスになっちゃっているのは、もはや自明の理じゃないですか。
 ヘーゲルみたいな、面倒くさい手続きを踏む合意形成は嫌いで、その場の空気で曖昧にやっちゃうっていう。そしてあとの面倒なことはみんな、お上任せっていうw
 とはいえ、これ(日本は民主主義国家だけど、日本人は民主主義が嫌い)は、多少風刺を込めて大げさに言ったつもりだったんだけど、どうやら本当だったっていう。

 私は学習塾で、現代社会とか公民も教えているから、一応法治主義とか、モンテスキューの三権分立とか学生に説明しているんだ。んでなんだかんだで、日本は法治国家で民主主義国だって思っていたのよ。どうしょうもないのは、末端のオレ達だけで、システムの根幹は近代国家のそれだろ、と。
 だからこそ表現規制の問題は、「ほっときゃいいじゃん」って楽観視していた。なぜって憲法違反だから。だけど、違憲の法律や条例が通っても、裁判所が体たらくで官僚たちに負けちゃうっていう池田さんの話が本当だったら、これはパキPさんの皮膚感覚――悲観論の方が、現状をよく把握しているなって反省したよw
 実は、日本は、この前見た映画のクリプトン星みたいに法が絶対なんかじゃ全然なくて、どんな立場の人も気分で決めちゃっているというw
 それでも、官僚やお役所は規則にうるさいっていうイメージがあったけど、その規則も厳密には法律とはまた違うらしいんだ。霞ヶ関は治外法権!
 だったら立法府の国会や、司法の裁判所なんて、官僚からしてみればクリボーみたいなもんなわけだよ。HP1だよ。

 そんな官僚経験者の池田信夫さんが指摘するのは、つまり、これは別に不安になるようなことじゃなくて、西洋的な民主主義っていう制度は、実は全然イレギュラーなローカルルールなんだよってこと。それも、いくつもの奇跡が重なって偶然できた稀有な例だとw
 池田さんって、なんというかすっごい頭が理系な人で、徹底した構造主義とか相対主義をドラスティックに論じる人で、もう前半なんて、私、読んでて嫌な気分になったからねw
 つまり人間を徹底的に、動物として論じていて、これは社会学とか歴史学というよりは、動物行動学とか社会生物学の話で、なんか自分も中学から高校にこういう話をかじって、得意げに振りかざしていたから胸がキュンとしちゃいましたwエドワード・ウィルソンが・・・とかねw今もたまにやるけどw
 
 例えば、池田さんはもう身も蓋もないんだけど、人間の行動は8割は、まあ、気分とかノリで決めているんだよ、というカーネマンのプロスペクト理論を引用する(^_^;)

カーネマンの認知システムの階層構造
システム1:直感のこと。自動的=潜在的。速い。偏見。省エネモード。原始的。動機オーライ。
システム2:推論のこと。コントロール。遅い。柔軟。燃費悪い。高次的。結果オーライ。

 これは小林よしりんで言うなら、情緒と論理の話であり、自分が論文で取り上げたH・リード的に言えば、感性と理性の話だろう。
 そして、どうやらこの8:2という割合は、人間の集団にも当てはまるっぽい。つまり人間の社会集団においては8割がシステム1で動いていて、2割がシステム2で動いていると。
 これは、偶然にも私が一時期ハマった池上彰ごっこで論じた「そうだったのか!世界樹理論」とも合致する話だ。つまり巨大なリゾーム(無秩序な地下茎)の上にとても小さなツリーが生えていて、その比率はいつの時代のどこの国もだいたい変わっていないよ、という話。
 この現実を議論の前提に置けば、ヨーロッパ型(※)の社会システム(法=システム2の支配。大きな政府)も、中国型システム(徳がある君主が専制政治。超小さな政府!)も、日本型システム(たくさんの拒否権者による相互支配。実はそんなに大きくない政府)も、優劣関係のない世界樹のマイナーチェンジに過ぎないという理解ができる。

 ※(本書では曖昧だが大陸ヨーロッパってことで理解したほうがいい。欧米はちょっと違う気がする。)

 ちょっと我田引水しちゃったけれど、なんにせよ、この人の相対化は本物で、ネット上のほとんどの人がポストモダン思想や相対主義を、自分のアイデンティティとして振りかざすけど(人は人、自分は自分。だからほっといてくれ!というプラグマティックな用法w)、この人は一貫して中立。虚無。そこは科学者って感じですごい。まあ池田さんは経済学者なんだけどw
 だから、ヨーロッパみたいな近代化や民主化がいいことで、どの国もそのルートへ進化するのが正しい、みたいな一昔前の科学的社会主義みたいな、「べき」論じゃなくて、いやいや中国はこういうルートできたし、日本だってかなり変だぜ?という、多元主義的な視座を提示してくれる。
 それも、ヨーロッパ、日本、中国の三つのルートを中心に、かなり細かいところまで討論してくれている。
 ここまで来たら、朝鮮や東南アジアがちょっとだけしか触れられなかったのは残念だし、アフリカや南米、そしてアメリカやロシアはどうなんだっていうのも気になる。
 三つに絞ったのは、この二人がことさら詳しいってだけで、もっといろいろ調べれば、まあ見事に立論の底板が抜けて、もうどうでもよくね?になるよねw

 ただ日本の社会システムは、とりあえずみんなに拒否権を持たせて、いい気持ちにしておいて、一部の行政担当者が暗黙の了解で、法律は、まあ、それはそれとして置いといて(!)テテっと、社会を動かしちゃうんだけど、このやり方を担保していたのは、中世ヨーロッパの封建制度や江戸の幕藩体制のように、権力が一極集中せずに分立していた現状があったからで、もしそれが崩壊すると、日本はヨーロッパよりも中国に近い社会になるんじゃないかって予想している。どっちも西洋化失敗してるからw
 池田さんは、鎌倉時代の貞永式目(中学校で言う御成敗式目)を、日本が法治国家になるチャンスだったって評しているけど、結局逃しちゃって、そのままダラダラ成文化されたルールなんか使わずにやってこれちゃった。大岡越前の公事方御定書だって、裁判に当たった奉行の気分でさばいちゃダメってしただけで、判例主義(コモンロー)でやれってことだしね。

 それなのに、日本は明治憲法をガッツリ成文化されたプロイセンの憲法を元に作っちゃったから、本来ならそんなもん使いこなせないのに、本音(社会の実態)と建前(法)のギャップを生真面目に埋めようとしてよくわからないジャッジドレッドを量産しているというw
 その点、朝鮮や中国は本音と建前をうまく使い分けていて、そんな純粋まっすぐな葛藤はないとw日本人って意外と、法を超えて匿名で私的制裁をするアメコミヒーローとかに、心情的には近いのかもしれない。
 少年漫画誌に私が馴染めなかったのも、扇動的な少年漫画の文脈と、私の作風があまりに違っていたからかもなあ。私は自分勝手な事をすると最終的にはバチがあたるよっていう、話が好きだから・・・ジュラシックパークとかギエロン星獣とかね。

 でもさ。與那覇さんは『中国化する日本』とか本を書いたけど、もう日本って中国みたいなもんだよね。さっきも言った、地域ごとの権力の分立というタガがネット上にはないから、日本人の心性のデフォルトが中国に近いんだなあってことがよくわかる。同じアジア人だしねw
 だから、中国人を叩いている人って実は、中国人の言動に自分を見ているから腹立たしいっていうのは絶対あるよね。
 私も、対象は中国人ではないけど、アーティストとかはやっぱりむかつくもんw絵かきなんて頭悪いくせに偉そうで、すぐに観念に逃げるトンチキくらいに思っているからねw
 それは、自分の中にある嫌な部分を、そいつがさらけ出しちゃっているからなんだ。シラーが言うように人間は鏡。

 與那覇「法は権力の発動を抑制するためにあるという立憲主義を知らない人が、憲法をうんぬんしている。法を政府が庶民を罰則で脅すための武器だと思っているわけだから、もう法治国家ではなく、韓非子的な「法家国家」とでも名乗ればいいと思います(笑)。」(128ページ)

ウルヴァリン: SAMURAI

 「面白い度☆☆ 好き度☆☆☆」

 やがて生きがいがなくなり浪人になる。浪人とは主君を失った侍だ。 
 
 真っ先に感じたのが、こんなのジェームズ・ボンドの映画でもあったよなってこと。『007は二度死ぬ』っていう日本を舞台にした奴があるんだけど、あれとすっごい酷似。67年の映画なんだけど、日本の勘違い度合いが全く一緒っていうねw
 でもあっちは丹波という、主人公の頼もしい味方の日本人がいたけど、この映画の真田広之さんは最後まで協力してくれなかってっていう(´;ω;`)
 代わりに、赤い髪のヒラメ顔のニーハイソックスのお姉ちゃんが、まとわりついてくるんだけど、なんかよくわからなかった。もともとアニメでも戦闘美少女って私あんまり好きじゃないしね。あと未来を予知できるって設定があるんだけど、割と外れてたw
 まあいいや、とにかく『ウルヴァリンは二度死ぬ』って感じの映画でした。

 牢屋、ナース、火星探険・・・君はどのラブホテルを選ぶ!?

 21世紀に、こんな豪快に間違った日本が出てくる映画が見れるなんて、それだけで奇跡だよねwすごいよね、スタッフロールであんなに日本人が関わっているのに、めちゃくちゃw日本でロケしているのに異世界wパチンコ屋で銃撃があっても、気にせずみんなパチンコやってたり、もう『アウトレイジビヨンド』の世界なんだよw
 ここまで来ると、もはや意図的にやってるんじゃないのって気もする。つまり西洋人が思う「こうあって欲しい日本」っていうイメージがあるんじゃないか、と。
 スタッフロールと言えば、声の吹き替えで、のりおわかもとがクレジットされてたんだけど、どのキャラ当ててたんだろう。あの人すごい特徴的な声質だから普通気づくと思うんだけど・・・ヤクザBみたいな感じで混ざってたのかな(^_^;)

 ただ、なんかこれは自分のテンションの問題だったのかもしれないけど、最近ちょっとアメコミは食傷気味かな、って。ちょっと飽きてきちゃったというかw
 カナダで林業を営むヒーロー、ウルさんが、今回はずっと森に引きこもってて(CWニコルかw)、なんか全編通してすごいウジウジしてるんだよ(挙句の果てに弱体化w)。
 んで、こんな男、この前もどっかで見たな・・・って思ったら、ポストアベンジャーズのアイアン社長っていうね、かぶっちゃったっていうwでも、こんなん一年に何度も見たくないじゃんw
 それとも、こういうトラウマに悩まされるヒーローが今は受けているのかなあ?でも、どうせあれだろ?ロバート・ダウニーJrとかヒュー・ジャックマンみたいなイケメンがウジっているから「私が支えてあげたい♡」みたいに思うだけで、普通のおっさんが落ち込んでも「ふ~ん。で?」って感じだろ。冗談じゃないよ!ヽ(;▽;)ノ

 あの汚い人は誰?

 私はなんだかんだ言って、本も映画も、自分の日常生活に具体的に役に立つような、ある種の実学的なマニュアルとして読み解いているから、こういうウジウジが通用するなんて言われても、到底承服できないよ。愛想つかされて終わりだってw
 スーパーヒーローの真似をしたら、少しはモテるようじゃないと啓蒙としてはダメだよね。いや女にモテたいなんてのは不純か、でもやっぱヒーローたるものみんなの規範にならないと。
 オレだって、みんなと同じで悩んでいるんだよ、なんて言われても、でもお前超人的な力あるじゃん、そしてイケメンじゃんってなるしね。
 ・・・って何、私は本気でアメコミのキャラに嫉妬してるんだろう・・・だから美少女アニメも見れないんだよね。モテる主人公にジェラシー感じちゃうからw

 ジェラシーといえば、2012年の自分の中での流行語大賞だった「ターボタスティック!」だけど、昨日『シュガーラッシュ』のDVD届いてさ、さっそく見たんだよ。で、つくづく思った。やっぱり悪役のキャラがしっかりしていると、物語は引き締まる。
 今回の敵、ヤシダさんは、なんか作中ほとんど出てこないし・・・うん、出てこないから「ワハハ、オレが黒幕だ」って言われても、動機とかがよくわからなくてw
 せっかく長崎の原爆シーンで、ウル侍とヤシダさんが絡んでいるんでいるんだから、あそこはもっと雰囲気だけじゃなくて言葉で説明して欲しかったなあ。
 でも、原爆のシーンとかやっちゃうハリウッドはやっぱすごいよね。なんかもう尊敬しちゃうというか・・・ハリウッドにやれないものはないのだろうか。

 あの惨状を見て、ウルヴァリンもヤシダさんも思うところあったんだろうけど、やっぱりそこまで深く掘り下げるのは、難しかったのかなあ。
 「私はあの時圧倒的な死を見た。だからこそ今回の計画を練ったのだ」とか。あ、でも、原爆シーンにすでに刀に「不老不死」とか書いてあった(^_^;)
 もっと言えば、日本人って義理堅いから(特に戦中の人は)ああいう恩をあだで返すタイプの悪役はちょっとイメージに合わない気がする。
 それに、ああいう日本の大企業がアメリカを脅かしていたのってもう何年も前の話じゃんw今は韓国とか中国の方がしっくりくるしね。もう日本というより、そこら辺ひっくるめた「東アジア」ってことなのだろうか。

 ここらへんは本当はもっとリアルに描けたんだけど、大人の事情でほのめかすくらいしかできなかったんだよって言われると、あのシーンの評価は変わりそう。まあ、なんにせよ、とにかく原爆のシーンはすごい。
 日本軍もアメコミ黄金期みたいなイーブルじゃなくて、ちゃんと血のかよった人間として描いてるし・・・捕虜も逃がしてたよね(撃ってる奴もいたがw)。
 でも『X-メン』って確か、放射線かなんかで突然変異を起こした超人の話だったよね?だったら、やっぱり、原爆に絡めてもっと描ける余地はあったし、描きたかったんじゃないかな。というか、そういう複雑な心理描写を私が見てみたかった。
 ここは未来がもっと平和になった時の宿題なのかもしれない。思い返せばキューバ危機を題材にした『ファーストジェネレーション』も取ってつけたように、歴史的出来事を絡めていたなあw本当はそれが、物語の主題やキャラの葛藤に繋がって欲しいんだけどね。

 あと、これは、原爆のシーンと並列に語るのは抵抗があるけど、東海道新幹線のシーンは必見だ。あんなバカバカしいシーンは滅多に見れないってw
 あそこまでして命令に従う、日本のヤクザの根性ったらないよね。

 「さんざん体使わせやがって、勝手にしろ馬鹿野郎!」

日比谷への旅

 旅っていうか、割とちょくちょく行ってるんだけど・・・(^_^;)

 休日を利用して朝から夜まで一日中東京へ行っていました。目的は、ここ数日密か?に進めていた『80日間宇宙一周』小説化プロジェクトの打ち合わせと、パキPさんと『マン・オブ・スティール』の鑑賞。それが終わったら、ひとりで『タイピスト!』も見て帰ろうかな、と思ったら、パキPさんが「そういえば田代さんが好む映画を一度くらいは見てみたい」ってことで、『タイピスト!』にも付き合ってくれて、おっさん二人でドジで貧乏な女の子が、都会で素敵な男性と恋に落ちるという、THE少女マンガな映画を観る試練に耐えてきました。すまん・・・!ちがうんだ、これはちがうんだ。私は『オーケストラ!』の切ない共産主義者イワン・カブリーノフさんみたいなキャラを期待したんだ(T_T;)

 まずは午前中に帝国劇場で、YELLの社長と打ち合わせ。『80日間宇宙一周』のネームと、突貫工事で仕上げた小説版を同時に持ち込んで、読み比べてもらった。
 愚かにも社長が大阪人だってことを忘れていて、エセ関西人が出てくる漫画を読ませちゃったんだけど、「なんやこれ、こんなんよういわんわ、しばくぞ」とキレられる事もなく、事なきを得ました。自分と喋るときは標準語にしてくれているから、すっかり忘れていた・・・ひ~
 関東の人間が書いた割には、80日~のライトの関西弁は、大阪人が見てもほとんど違和感がなかったようなんだけど(奇跡が起こった)、標準語のミグと普段の生活でしゃべっているシーンならともかく、危機的状況ならライトはコテコテの関西弁に戻ると思う、とリアルなコメントをいただきました。
 でも、打ち合わせでも思ったんだけど、オレ、なんでアメリカ人のライトを関西弁のキャラにしたんだろう??考えたのもう昔だから覚えてないwでも「キャラにあってますね」って言われた。関西の人にそう言われると、やたら嬉しい。
 
 とにかく、社長がSF好きだったのも幸を奏して(会社経営者はSFを読んでいる人が多いって話は本当だったのか)、概ね好感触でYELLの小説枠を『80日間宇宙一周』用に一つ取ってもらえるようになりました。
 しかし、17歳の頃のジャンプの打ち合わせの相手はずっと年上で、2008年のマガジンの頃は相手も自分とほぼ同年代、そして今はとうとう年下の人と打ち合わせ・・・時の流れを感じてしまった。自分も、もうライトよりはミグの年齢だもんな・・・だから小説版を書いてて自然とミグの一人称には力が入っちゃったね。そしてちょっと漫画版よりも哀しい話になったね!
 打ち合わせで一番面白かったのは、土星編のあらすじを説明していた時。「この物語は戦闘機のテレビ通販のシーンで始まるんですよ。ユニクロはTシャツ売ってるけど、土星はそんなグローバル経済の論理で兵器売ってる星なんです」と自分のアイディアをちょっとひけらかしたら、「そうですか~確かに戦闘機の購入の話とか来ますもんね」という予想だにしなかったリアクション。
 企業の社長が自家用ジェットやヘリを買うのはわかる。だが待ってくれ。今の金持ちは戦闘機を買っているのか。これが今日の出来事で一番衝撃を受けた話だった。
 なんか節税対策で一口一億円とかで財産として所有するらしい。「うちではとても買えませんけどね」とか言ってたけど、まず庶民にはそんな話がそもそも来ないww

 それと、入門書すら正直わからない人のための、文系でもわかる高校数学の対談本計画は、企画に見合った人物を選ぶのが難しそう(頭の回転が早く、さらに頭の回転が絶望的に遅い自分の質問を忍耐強く聞いてくれる人)。いい機会があったら連絡してくれるらしい。
 でも、小説よりも私が自信があるのは、こっちの企画なんだよな。高校数学って本当やたら複雑になるけど、東大に行った人とか、どこまで本当に理解しているのか気になるんだよね。
 まずこういうものが、何に使っているかとか、どんな歴史でそれが研究されたのかとかも謎だし。それを数学の一般的なテキスト形式じゃなく、対談本として出すのが新しいと思うんだよね。歴史や文学みたいな分野では割と新書とかであるんだろうけれど、高校数学では聞いたことないし。
 だいたい入門書が難しいんだよ。多くの人は入門レベルの問題集からついてけないんだよ!入門、中級、実践はたくさんあるけど、本当に全く数学ができない人でも、ある程度のおおまかなイメージを掴むような入門の入門がない。ないってことは書けないからなのかもしれないが、それは文系が噛んでないからだと思うんだ。で、自分やっぱり文系だと思うし・・・
 読むと、問題が具体的に解けるようになるような、テストで実践的に役立つような本になるかは怪しい。でもそれ以上に読んでて楽しい本にしたい・・・って全然動き出しちゃいないけど!でも自分だったらそういう本が欲しいんだよ~

 で、あとは話が脱線して、漫画のキャラのかき分けの話とか、携帯小説の一般書籍化の話とか、生物学とか宇宙論とか、量子力学の話とかしてて、午前中が終わった。
 社長と別れたあと、正午にパキPさんと合流し、映画鑑賞。感想をいつもみたいに単体記事にしたいところだけど、もう疲れちゃったから、ここでちゃちゃっと覚書。なんか、どっちも想像以上に手堅い出来の映画でしたw

マン・オブ・スティール
「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆☆」
 マンステはとにかく壊す壊す。地球に壊すものなくなって最後人工衛星も壊してたw異星人のはた迷惑な二・二六事件に人類がとばっちり受けたような映画。
 あととにかくリチャード・シフ。リチャード・シフの作中登場時間が最長の映画だったかもしれない。もう後半シフしか見てなかった。『ジョニーイングリッシュ気休めの報酬』あたりからロマンスグレーの素敵なおじ様になっていたけど、あの映画と違って今回はサブキャラクター。そしてエディ・カー同様、命懸けでかっこいいことしやがるw
 ただ新生スーパーマンなんであんな人相悪いの?空を飛ぶ際に見せる笑顔が悪役の「ニヤリ」のそれで、こんなやつに「信じろ」って言われても信じられないよw
 でもパキPさんに貸してもらった、スーパーマンが貧困問題という強大な敵に立ち向かう漫画を帰りの電車で読んで泣いた(´;ω;`)やっぱあいついいやつ。
 笑いどころは、無限増殖するラッセル・クロウと、ファミレスで勤務してるスーパーマンのデブの幼馴染。ああいう『グーニーズ』のチャンクとか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のビフみたいなキャラは、条件反射で笑っちゃうよなw

タイピスト!
「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆」
 『タイピスト!』は、もう、とんでもなく場違いで、おっさん二人で見るような映画じゃなかったwもはや『けいおん!』見に行ったほうがまだマシっていうか、上昇志向のある女性がときめくような、素敵な恋と仕事のお話。『オーケストラ!』みたいな政治風刺ギャグはほとんどなかった…気がする(^_^;)
 フランス人って、とことんポジティブなのか、多少強引でもアムールをデウスエキスマキナにしちゃっていて、清々しいくらい展開がド直球w
 映画の見どころとなっている、タイプ選手権の女同士のえげつない戦いは、コミカルで面白い。おすすめバトルはフランス大会決勝。
 しかし人間って面白いよね。実用性を追求したはずの道具で、いつの間にやら、まったく非生産的なゲームをやりだしちゃうんだから。進化のランナウェイ説というか・・・
 でも見世物として経済が動くから無意味じゃないのか。でもさ、私なんというか、音ゲーの世界大会みたいに見えちゃってw確かに技術は凄まじいよ?でもそれ何の役に立つの??っていうw
 あと、この大会ってタイプライターを作っている会社の宣伝合戦にもなっていたらしいから、多少不公平でも、大会で使用するタイプライターは選手の自由なんだよね。同じ規格を使わなくてもいいという。なら、もう紙をああやって手動で取り替える必要がないタイプライター作れよ、とは思ったw

 まあそんな感じで楽しい一日でした。

 あ、最後にもう一度、小説について。私は漫画部門だったから、知らなかったんだけどYELLでは、小説の更新は毎日(!)らしく、そんなペースじゃ私はどう考えても、早かれ早かれ原稿を落とすので、予め殆ど完成させてから連載を開始することにしました。だから冬くらいになりそう。
 それに『80日間宇宙一周』って冬のように寒い星の冥王星からスタートするし、それくらいの時期なら、小説も完成しているかなあって。突貫工事とは言え、5日で6万字書けたからね、私。出来はわからないけど・・・
 あと、文字のフォントがひとつだけなのと、斜体や大きさも変更できないのは正直辛いなあって・・・でも仕方ないから表現方法を工夫します。載せてもらえるだけありがたい!

シンドラーのリスト

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 こんなことなら浪費グセを直しておくんだったな。

 家庭や学校で大人が「いじめは良くない」とか綺麗ごとの説教するよりも、この映画見せればみんないじめやらなくなるんじゃないか。この映画に描かれるナチスドイツによるユダヤ人の虐殺はいじめの究極形だ。
 学校で感想文を書かせると「戦争は良くないと思います」「平和は素晴らしいと思います」という一辺倒のリアクションで終わってしまうが、戦争や虐殺をしたくてこの世に生まれた人間はいない。いけないことはみんなわかってるんだ。なのに人間の歴史では時にこういうことが起きてしまう。自分とは離れた世界のことと遮断しないで、不愉快かもわからないけれど考え続けていこう。
 もちろんこんな深刻な映画を見ても、1000人に一人くらいヒャッハー映画として楽しんじゃう人がいるのも否定はしない。それは個人の自由だ(頼むから実行はしないでくれ)。
 そして、ユダヤ人をゲームのように嬉々として殺したナチスの将校の気持ち、ちょっとわかるって正直に言う人のほうが、案外信頼できる人物かもしれない。というのも、とある実験では2.8%のドライバーがわざわざ道をはみ出してまで動物をひき殺したのだという。
 私たちの心の2.8%にはそういったスーパーヴィランが存在するのだ。

 アメコミ作家グラント・モリソン氏は『スーパーゴッズ アメリカン・コミックの超神たち』の最後の章「スター、伝説、スーパーヒーロー、そして超神?」で、偉業に対する価値が下がった現代では、誰もがスター、伝説、天才であり、ならいっそ行くところまで行って、みんなでスーパーヒーローを名乗ってはどうだろうか?と提案した。私が印象に残った一節を引用したい。

 多彩なマスクやコスチュームで正体を隠し、身を挺して地域に貢献する、この先駆者たちはいったい何者であろうか?オレゴン州ポートランドには“ゼータマン”がいる。彼は町内を巡回し、ホームレスに食事や衣服を送っている。ジョージア州アトランタの“クリムゾン・フィスト”は、月に二回街に繰り出して助けが必要な人々を探す。
 (略)しかし、衝撃的なことに、カーテンや家電製品で身を固めた彼らは、実在するのだ。(581ページ)

 ふと私たちは、線路を渡って街に入ってくる二人に目を留めた。その片割れは髭面の普通の男であり、一見何の変哲もないコミックファンであった。しかし、もう一人はスーパーマンだった。(略)ファン大会でよく練り歩いている、貧相だったり、太鼓腹だったりするスーパーマンとは異なり、身ぎれいで、たくましく、ハンサムだった。
 (略)駆け出して二人を捕まえたダンと私は、自己紹介し、事情を説明し、いくつかの質問に答えてほしいと“スーパーマン”に頼んだ。彼は承諾し、コンクリートの車止めに腰かけた。片膝を胸のマークにあてたその様子は、完全にくつろいでいた。これこそスーパーマンの座り方であると、その時私は思った。決して傷つくことのない者は、常に悠然とくつろいでいるものである。一般的なスーパーヒーローが好む、威嚇的な身のこなしは彼には必要ない。突如として、スーパーマンに対する新たな視点が開けた。私たちは質問した。「ロイスについてどう思う?」。「バットマンについては?」。返答する声色や内容は、まさにスーパーマンそのものであった――「私や、私の行動をロイスが真に理解することは決してないだろう」。「バットマンは人々の心の暗黒面だけを見つめている。いい面にも目を向けてくれればいいのだが」――実に説得力があった。(588ページ)

 
 600ページ以上にもなる分厚い本なんだけれど、なかでも私はこの章が大好きで何度も読み返した。スーパーヒーローは実在するのだ!と。
 ニコニコ動画やピクシブで確かにクリエイターやアーティストの地位は相対化し、誰でもそれらを名乗れるようになった。ではモリソン先生が言うように誰もがスーパーヒーローになることはできるのだろうか?
 かつて日本でもタイガーマスクが恵まれない子供にランドセルを届けてくれたことがあったし、最近ではご当地を守る戦隊ヒーローがたくさんいるらしい。実に勇気づけられることだけど、問題は自分自身が実際に困った人に出会ったら、どれだけのものを犠牲にしてその人を救うことができるのだろう?ということ。
 そんな利他的な善行は歴史の本に載るような聖人君子しかできないよ、と人は思う。私もそう思っていた。

 しかしスピさんが『ジュラシック・パーク』の次に撮った(!)この映画を見て私の英雄観はかなり変わった。1100人のユダヤ人を救ったオスカー・シンドラーは決して超人でもなければ人格者でもなかったということだ(※この映画のシンドラーを論じています)。
 私はこの映画すごい長かったからか、最後の方(車も売っときゃよかった)しか覚えてなくて、今回再び見てみたんだけど、シンドラーってもともと一攫千金を夢見る野心的なベンチャー起業家で、戦争に乗じてユダヤ人を安く使って大儲けしようとしていた、めっちゃ業の深い人だったんだ。
 もうホリエモンとかワタミみたいなもんで、平時の今、シンドラーが生きて鍋工場やってたら、ブラック企業とか言われてツイッターで叩かれていただろう。ポーランド人よりもユダヤ人を積極的に雇用したのは、とにかく安く使えたからだ。
 英雄は時代が作るとか言いたいわけじゃない。私が衝撃的だったのはこんな人でも英雄的な行為ができるんだっていう希望。つまりワタミの社長だって、もしかしたら時と場合によってはシンドラーなのだ。

 シンドラーを英雄にしたのは、結局経理を担当したユダヤ人のシュターンって気もする。彼が頭を使って、真っ先に処分されちゃうような弱い立場のユダヤ人を雇用し、なんとか命を救おうと裏工作をしていたわけで(私も先に粛清される部類の人間だと思われる。1980年代のジャパンに生まれて本当に良かった)。
 んでそれに気づいた我らが社長シンドラーは、もちろんこう返す!「冗談じゃないよ!」THE保身!気持ちは分かるぞ!
 それがナチスのユダヤ人排斥が激しくなるにつれて、シンドラーもついにユダヤ人の青田買いを開始する。自分の工場の労働力にするためにではなく、収容所送りになるユダヤ人の命を救うために。
 彼の手段と目的がいつの間にか変わった動機は大したものじゃない。それは誰にだってある罪悪感だ。『リンカーン』でも思ったけど、スピ監督は歴史的な英雄を、一般的な悩める人間に落とし込んで演出するのが、得意というか好きらしい。

 シンドラーは、勧善懲悪の作品ならば極悪非道の敵キャラである、ナチスの将校を接待し、おだてて、すかして、賄賂を贈り、ユダヤ人を金に物を言わせてガンガン買って行く。
 ホリエモンは「人間お金で買えないものはない!」とか言って世間の顰蹙を買ったけれど、この映画やツチ族フツ族内戦を取り上げた『ホテル・ルワンダ』などを見ると、それはある種の真理だということを認めざるを得ない。

 人の命はお金で買えるのだ。

 もし当時のシンドラーにあの地位と資産がなければユダヤ人を一人も救えなかっただろう。もしポール・ルセサバギナさんにミルコリンホテル副支配人という地位がなければ1200人のツチ族はナタでバラバラに殺されていただろう。
 地獄の沙汰も金次第。どんなに汚い手だろうが、手段を選ばずに切れるカードは全て切ったからシンドラー社長は大勢の命を救うことができたのだ。

 英雄には二つのタイプがいると思う。シンドラー社長やルセサバギナさんのように、凄惨な状況に不可抗力で巻き込まれちゃって、なにがなんだかわからないまま英雄になってしまうタイプと、ガンジーやネルソン・マンデラ大統領のように、そもそも不屈の闘志が自分の中に存在するタイプ。
 前者は言ってみれば優柔不断が吉と出て、後者は頑固さがものを言った。つまりスーパーヒーローにはどんな気質の人でもなれるのだ。必要なのは社会的な立場なのかもしれない。ガンジーはもともと南アフリカ共和国の弁護士だ。

 なんで急にガンジーが出てきたのかというと、リチャード・アッテンボロー監督の『ガンジー』も一緒に借りてきて、英雄映画祭りをやってたんだよね。あと『ガンジー』も『シンドラーのリスト』も『ジュラシック・パーク』に関係してるじゃんw
 『ガンジー』の冒頭部で、ハモンドさんがガンジーをどんな人間として描こうとしているかがわかる。1893年のこと。ガンジーが列車の一等車に乗っていたら、おめーはインド人だという理由で列車から放り出され、その時の屈辱がガンジーの太陽にトリチウム注いでしまったのだ。
 これって考えてみれば結構個人的な感情なわけで、それがきっかけになってインド独立までこぎつけちゃうんだから、本当にシンドラーとは真逆のタイプの英雄だ。

 テロは圧政を正当化する。
 善意はともかく支配するというのは侮辱です。
 正しいとは思うけど、ここまでしなくても・・・(『ガンジー』)


 頑固者というだけでは収まらないレベルの意志の強さが、不暴力不服従という聖人しかできないような運動を多くのインド人に実行させた。
 その結果、ある時には集会を行った1500人の命が犠牲になった。シンドラーやルセサバギナさんが救った人の数よりも多い数字だ。それでもガンジーは自分の意思を貫いた。こう考えると、この手のタイプの英雄と独裁者は紙一重というか、ガンジーは世界一の頑固者だったんだと思う。
 頑固といえばアパルトヘイトを撤廃したマンデラ大統領も似たりよったりで、無理ばっかして全然休もうとしないし、二人とも逮捕と刑務所暮らしはへともないらしい。

 私が我が運命の支配者。私が我が魂の指揮官なのだ。(『インビクタス負けざる者たち』)

 運命を支配した英雄ガンジー、マンデラ。運命に翻弄された英雄シンドラー、ルセサバギナ。ガンジーやマンデラの生き様はちょっと常人にゃ無理だけど、シンドラー社長くらいの英雄なら、ある程度の社会的立場とほんのちょっとの良心(罪悪感)でなれるはずだ。
 そして『フェアゲーム』で私は自己保身で人はいくらでも残酷になれると言ったけど、実はその逆もありうるんだっていうことを私は知った。自己保身のためなら人はどんな英雄的行為も厭わない。
 シンドラーが最終的にあそこまで熱心にユダヤの人を救ったのは、チャリティー活動に目覚めたとか、いいことをしている俺に酔ったとかそういうことだけじゃない。
 もしシンドラーの活動が中途半端に終わったら、それこそ自分の身の上が危ないからだ。そう言う意味で途中から彼には選択の余地はなかったのだ。
 さあネットでワタミを叩いているキミたち!カーテンと電化製品を用意してスーパーヒーローになろうじゃないか!

 助けが来ないわけありません。虐殺を目撃するんですよ?

 だけど、あの映像を見た人は「怖いわね」っていうだけで夕食を続ける。
(『ホテル・ルワンダ』)

スター・トレック イントゥ・ダークネス

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 お前がオレなら同じことしただろ?論理的に。

 ここのところ劇場で観た映画がそこまでシンクロしなくて、感想記事が体たらくで申し訳ないのですが(^_^;)ついに来た!これは面白い!すごい完成度!つまり書く事がない!見てくれ!
 2009年公開のJ・J・エイブラムス版『スター・トレック』の評価が高かったのは聞いていたのですが、こういう『スター・ウォーズ』のようなサーガ系宇宙SFは新参者お断り!みたいな敷居がなんかあって、敬遠していたんですよね(サーガ嫌いの私)。
 でも本家の「転送してくれスコッティ」(マイクル・クライトンのSFで引用)が知りたくて、ついにこの前DVDを借りてきてみたら、もうキャラがすごい起ってて、続きも見たくなっちゃったw
 んで、くだんのスコッティが今回『トイ・ストーリー3』のリトルグリーンメンのようなすごい美味しいところを持っていくのでお見逃しなく。

 なんかこういう完全無欠な映画みちゃうと、日本のサブカルチャーはもう萌えにしか逃げ場がないんじゃなかってがっかりしちゃう。
 思い出すのは、忘れもしない日比谷(だっけ?※忘れてる)で、あの『アベンジャーズ』を見た時。うわ!ついにハリウッド映画も日本の漫画のようにキャラ起ちさせるようになったのか!って衝撃だったんですが(のけぞった)、この映画もすっごいキャラがいい。
 まあこれは、JJ監督の手腕だけじゃなくて、もともと『スター・トレック』シリーズが積み重ねた遺産が良かったわけで、そうなるとずっと前からアメリカのほうがキャラクターを起たせるのはお手の物だった可能性もあるのですが・・・
 でもいくら素材が良くても、脚本や演出の仕方によってはレッツ三角コーナーなので、やっぱりJJさんとその一座が上手なんだろうな。キャラの動かし方がうまいよ。

 ドラマ作りの王道は①ライバルと②恋人と③強大な敵。つまりどれもが物語にゆらぎを与え不均衡をもたらす要素。そしてそれらは主人公の輪郭を際立たせ、補完させる、ある種の鏡像であるのが望ましい。
 主人公と正反対の要素を持つライバルキャラは少年漫画では王道だし(相変わらずあの二人は仲が悪くて大好き)、『戦火の馬』のベネディクト・カンバーバッチ演じる、超人類カーンは、前作のネオナチっぽい船長よりもずっと魅力的で強大な敵だ(無骨で繊細なハゲ船長もキャラ設定としては悪かなかったんだけど、前作はまずもってメインキャラクターを登場&説明しなきゃいけなかったから、あんまハゲの心情を描く尺が残らなかったように思われる)。

 おいおい②のヒロインはどうなったんだって言うけど、そんなんスポックに決まってるじゃんね。もうこれ、ホモ映画の最高傑作だよね。ちょっと泣いちゃったもん。私高校が男子校だったし、なんかホモ映画が好きなのかもしれない。
 『80日間宇宙一周』も最初『スター・トレック』みたいに熱い男と冷静な男の話で作ったんだけど、あまりにホモホモしちゃったからミグを女性に変えちゃったのはUstreamでも話したけど(ロシア系なのに苗字が男性なのはその名残)、やっぱオレそういう傾向があったのか。まあいいや。今度もし新しいタイトルの漫画を描くときは自分を受け入れて堂々とホモの漫画描きます!(なんの宣言だ)
 
 おいトンガリ耳。立派だがオレはどうなる?
 キミの彼氏は文句ばっかりだ。キミには悪いが、あいつの前髪をむしりたくなる。


 う~んごちそうさまです。
 
 て、ことでホモ漫画家を宣言したところで筆を置いてもいいんだけれど、これは批評とか不満とかそんなんじゃないんだけど、ちょっと気になったところだけ喋らせて欲しい。
 それは先ほど魅力的といった敵キャラ、カーンについて。遺伝子操作を受けて長い間冷凍保存されていた種族のカーンは、超人的な戦闘能力を持つ武闘派な上に、とんでもなく頭が切れる頭脳派だ。ひょろっとスマートで狡猾・・・Tレックスではなくてヴェロキラプトル的ないやらしさがある。
 まあ言ってみれば、ガンダムのニュータイプとかそう言った人類よりも半歩優れた新人類。私は武闘派な敵よりも、こういう知恵の回るずるくて卑怯な策士的な悪役にしびれるので、カーンの悪知恵には大いに楽しませてもらいました。

 これが下手なアニメとかだと、こういう知能指数が高い種族出しても、普通の人類との差別化ができなくて、結局ロボット動かせるのが人よりもちょっと上手いとか、とりあえずIQの桁を大きくしとけばいいやとか、そんなところにしか差異を出せなくなっちゃうんだけど、このカーンは本当に知能指数高いんだろうなあって雰囲気がある。
 まあ悪役の常ってことで最後は、同じく理屈型人間エポックにいっぱい食わされちゃうんだけれど、ここはハリウッドの大作映画だから仕方がない。
 強大な敵を倒せないまま、主人公たちが無力感を知ってそのまま終わっちゃう話とか、私は個人的にはすごい好きなんだけど(スピ監督の『宇宙戦争』とか。私の漫画でも本当に悪いやつはそのまま正義を出し抜いたまま勝ち逃げしちゃうことが多い)、まあそういうオチじゃ一般大衆のカタルシスが得られないのもわかってる。

 ただ欲を言えば、ここまで知恵が回る新人類描けたんだったら、艦隊攻撃の動機が、もっと、なんか、頭良いものにならなかったのかなって気はした。結局悪の秘密結社お馴染みの「劣等な人類を滅ぼし我々の世界を創るのだ!」っていう、もうアニメや映画で何百回繰り返したんだっていう優生思想で、これはちょっと時代遅れだよなあって(^_^;)前作のハゲ船長の動機の方がまだいいよなって(ガリ勉へのバカの復讐)。
 高い知能指数を持つキャラといえば、私の『80日間宇宙一周』でも、最終章で宇宙で一番頭のいい人間を出したんだけど、バカなりに知能指数が高い人ってどういう思考をするのかな?って想像した時、どうやっても優生思想にかぶれないよなあ・・・ってことになったんだ。
 だって、分子進化の中立説とかネオダーウィニズムとか考えれば、遺伝子の多様性を残しておくほうが長期的にはメリットがあるわけで、別に下等な民族を滅ぼすなんて面倒くさいことやったって意味ないじゃん。ラディカルな自滅思考があるならまだしも(ただそれって頭いいか?ってなるね・・・w)。
 多分カーンさんって長いこと冷凍睡眠していたから、思想が1940年代から進歩しなかったと思われる。デリダとかドゥルーズ=ガタリとか、ポストモダン思想の本とか読ませれば、もうちょいどうにかなったのかもしれないよね。「パレートの法則だと!?馬鹿な~~~!!」とか言って、『働かないアリに意義がある』を持ったままガクリと膝をつくカーンさんとか見てみたかった。

 私の漫画のイルミナは、もうちょい現代的な学者ってことで、もう全部宇宙の運命を受け入れちゃってる人にしたんだ。いくら頭が良くても人間である以上、神ではない。だから自分ひとりでは宇宙の運命は何も変えられない。
 仮に頑張って世界を平和にしたところで、2億年後には海は沸騰しちゃうし、そうなれば地球から生命は滅ぶし、太陽も宇宙もそのうち消滅しちゃう。頭のいい人っていうのは、そんな感じで自分がちっぽけな存在に気づいちゃうと思うんだ。
 まあパッと見、ただのネガティブな人になっちゃったんだけど、キャラのコンセプトはそんな感じで、世界に希望も絶望も持っていない、顕微鏡の世界だけに生きる人畜無害な人にしたかったんだ。テロをしたってどうなるの?っていう。ああいう破壊行為って実は理屈にかなってないんだよ。感情なんだよ。
 でもそこまで悟っちゃった人でも、小さい頃一緒に遊んだ男の子にもう一度だけ会いたくて・・・みたいな感じで最後に人間らしさを見せるという。でもやっぱりただの気弱なオタク少女に見えるねw

 あ、でも、カウンセラーの先生とかの話では、うつの人って意外と頭がいい人がなりやすいんだって。多分ロジックで考えすぎて、いろんな選択肢がたくさん見えるんじゃないのかな。
 で、どれを選んでもうまくいく可能性が低いっていうことになって(世の中運だからこれは事実なんだけど)、どれも選べずにフリーズしてしまうというか。「ええ~い考えるのめんどくせーや、どうにでもな~れ」っていうおバカな行動ができない。
 とはいえ、バカを擁護するわけじゃないけど、この世界ってすっごい複雑かつファジーで、究極的にはロジックや計算でどうにかなるもんじゃないんだよね。
 そこを割り切ってもうちょっとバカになれば、一歩は踏み出せるのに。まあ踏み出した先に画鋲があるかもしれないけど・・・
 オレ達って寿命が決まっているからね。天災を必要以上に恐れちゃった『アルフ』のエピソードじゃないけど、取り越し苦労で人生終わっちゃったら笑えないよ。

 話がそれたけど、そんな感じでカーンの動機だけはちょっと古くてベタかなって思ったけれど、映画全体で言えば、かなり世相を反映していて、この前の『フェアゲーム』で、CIA職員の情報リーク事件って近いうちに映画になるよな、とか言ってたじゃん。
 この映画がまさにそれで、情報化とグローバル化ががもたらした、俺たちは一体誰を信じればいいのかという閉塞感と、マイケル・サンデル的な究極の選択がテンポよく作中で展開され、2時間以上の長尺を全く飽きさせない(思い返せばカーンの引渡しとかスノーデンさんっぽいしねw)。
 私、見る前は「うわ~2時間半!?上映時間なげえよ~見るのやめようかな」とか、案の定弱音吐いてたんですが、生まれて初めて二時間以上の映画で一度も集中力が落ちず、疲れなかった!というか、ちょっと体力が回復した!
 私が、この映画で一番驚いたのそれだよ。超ヒットした『ダークナイト』でも『アバター』でも、私だんだん疲れちゃって結末どうでも良くなってたからねwなんか広大な宇宙の映像ってアルファー波的なのが出て癒されるのかな。
 冒頭で原住民(たくさんいるジョニー・デップ)もエンタープライズ号を拝んでたしね。あのツカミでこの映画の面白さは約束されたよねw

 ボーイズラブ。それは最後のフロンティア。
Calendar
<< July 2020 >>
SunMonTueWedThuFriSat
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031
search this site.
tags
archives
recent comment
recent trackback
others
にほんブログ村 科学ブログへ にほんブログ村 科学ブログ 恐竜へ カウンター
admin
  • 管理者ページ
  • 記事を書く
  • ログアウト

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 86 | 87 | 88 | 89 | 90 | 91 | 92 | 93 | 94 | 95 | 96 | 97 | 98 | 99 | 100 | 101 | 102 | 103 | 104 | 105 | 106 | 107 | 108 | 109 | 110 | 111 | 112 | 113 | 114 | 115 | 116 | 117 | 118 | 119 | 120 | 121 | 122 | 123 | 124 | 125 | 126 | 127 | 128 | 129 | 130 | 131 | 132 | 133 | 134 | 135 | 136 | 137 | 138 | 139 | 140 | 141 | 142 | 143 | 144 | 145 | 146 | 147 | 148 | 149 | 150 | 151 | 152 | 153 | 154 | 155 | 156 | 157 | 158 | 159 | 160 | 161 | 162 | 163 | 164 | 165 | 166 | 167 | 168 | 169 | 170 | 171 | 172 | 173 | 174 | 175 | 176 | 177 | 178 | 179 | 180 | 181 | 182 | 183 | 184 | 185 | 186 | 187 | 188 | 189 | 190 | 191 | 192 | 193 | 194 | 195 | 196 | 197 | 198 | 199 | 200 | 201 | 202 | 203 | 204 | 205 | 206 | 207 | 208 | 209 | 210 | 211 | 212 | 213 | 214 | 215 | 216 | 217 | 218 | 219 | 220 | 221 | 222 | 223 | 224 | 225 | 226 | 227 | 228 | 229 | 230 | 231 | 232 | 233 | 234 | 235 | 236 | 237 | 238 | 239 | 240 | 241 | 242 | 243 | 244 | 245 | 246 | 247 | 248 | 249 | 250 | 251 | 252 | 253 | 254 | 255 | 256 | 257 | 258 | 259 | 260 | 261 | 262 | 263 | 264 | 265 | 266 | 267 | 268 | 269 | 270 | 271 | 272 | 273