理科教育法覚え書き①

 主に板倉聖宣を学ぶ単位。

 しかし歳をとると思考の嗜好も変わるんだな~、若い頃はこういう竹を割ったような主張が好きで、衒学的なこと言う奴をこのオレに分かるように説明できないこいつがバカとかボロクソに言ってたんだけどさ、まあ衒学的なのは今も大嫌いなんだけど、そのさ、自分を賢く見せようとしてわざと難しい言葉を使うんじゃなくてさ、まだ言語化されていないような新しい概念とか思想をなんとか一生懸命ひねり出そうとしたうえでのよくわからなさっていうのも世の中にはあるじゃん。
 で、そういう、綾みたいなものがある思想の方が、最近は「え?どういうことだろう??」って知的好奇心が刺激されて、心に残ったり、好きだったりする。
 言い切られちゃうとこっちはさ、ちげーよよくぞ言った!しかないじゃん。ツイッターの発言なんかはそんなんばっかなんだけどさ。
 やっぱりさ、世の中にはよくわからないとか保留っていうのも大事だよなって。そっちの方が世界は豊かなんじゃないかってね。

 んでさ、板倉さんはさ、本当にバッサリわかりやすく言ってくれる人でさ、科学哲学なんかを始めて学ぶ人はさ、もう究極的に分かりやすいから、ネットで喧々諤々な不毛な議論してねーで、この本を一冊読めばいいだろって思うんだけどさ、この人はパラダイム・シフトを認めてなくてさ。
 あれはアメリカで流行っているからみんな使っているだけで、植民地根性が抜けないんだよなあ、って言ってて、それはそれでいいんだけど、板倉さんのこの「なんで回路をつなぐと電気が流れるんですか?」って聞かれて電気が流れるように作ってあるからですって答えちゃう、この潔さっていうか、自明なことはいちいち突っ込むんじゃねーよ的な、行動主義的な態度は、すごいアメリカ哲学っぽいよなっていうw
 あいつらって神がいるかどーかは知らねーけど、その人が神を信じて幸せなら、とりま有用なんじゃねーの?みたいなこと言うじゃん。このズバリ言うわよ感が、学生時代はすごい好きだったんだけど、今はあまりに身も蓋もなさすぎて、永遠に答えが出ない問いでも、もうちょっと深く思考しようぜよってなってんだよねw

参考文献:宮地祐司著『生物と細胞 細胞説をめぐる科学と認識』

授業プラン《生物と細胞》の第1部「生物と細胞」
 《生物と細胞》の第1部「生物と細胞」では、細胞の発見者として有名なフックの経歴や、彼が生きた時代背景をはじめとして、フックがどういういきさつでコルクから細胞を発見したのかを、子どもでもわかりやすいイラストと文書でまとめている。
 著者が第1部で主張したいことは、フックは顕微鏡を使って観察したもの(ノミやシラミなど)を手当たり次第に写生したのではなく、「ただデタラメに見るだけではなく、筋道だてて見ていったら、みんなが気がつかなかったことが見つかるかもしれない」(本書14ページ)と、観察や実験をする前に、あらかじめ仮説や予想をたててから、顕微鏡を覗いたことである。

 これは本書では仮説実験と呼ばれ、著者が重視する重要な概念になっている(いわゆるアメリカの哲学者パースが唱えたアブダクションのことだと思う)。
 さて、フックの細胞発見につながる「仮説」は、「コルクが水に浮かぶのは目に見えないほど小さな隙間がたくさんあって、それで水に浮かぶのではないか」ということだった。
 しかし「たくさんの隙間に水が入ってしまったら、逆に水に沈むのではないか。となると、なにか特別な仕組みがあるのかもしれない」という自説の確認をするために、フックはなんの変哲もないコルクに対して強い目的意識を持って観察したのである。

 こういった、観察の前にまず予想を立てて、そのあと実際に観察することによって自分が立てた予想が正しいか間違っているかを確かめるという、17世紀にフックが行ったプロセスを読者にも追体験してもらえるように、本書の構成は工夫がされている。
 例えば、本書では問題と結果のページのあいだに必ず、読者(特に複数を想定)が予想を立てられるように、いくつかの予想の選択肢が提示されている。
 脂身、髪の毛、爪、骨、さらに目の水晶体・・・これらも本当に小さな部屋の細胞で出来ているのだろうか?読者は自分が選んだ予想が本当に正しいのかを、クイズ番組のように、いや当時のフックのようにワクワクしながら検証できるというわけだ。

 私は科学者ではないが、本書を読んで強くこう思った。自然科学の研究の醍醐味はまさにこの「予想の検証」にあるのではないだろうか。
 もちろん自然科学の研究には武谷三段階理論のような帰納法もアプローチとしてあるし、科学者側の事前の予想はバイアスや見落とし(昨今では不正や改ざん)をはらむかもしれないが、著者はそういう場合にも、まずは科学者側の主体的な働きかけ(アブダクション)なしでは科学という文化は成立しないと考えている(本書5ページなど)。
 つまり、科学とは客観的で無味乾燥な学問ではなく、もっと血の通った主体的で楽しい活動なのだということを、著者は強く訴えているのである。

細胞の発見から細胞説の提唱まで170年かかった理由
 シュワンが『動物および植物の構造と成長の一致に関する顕微鏡的研究』を発表し、細胞説を提唱したのは1839年で、1665年にフックが最初に細胞を発見してから、なんと174年も経っている。自然科学の発見は漸進的なデータの積み重ねによるものであるという一般的なイメージでは、この空白の時期は説明がつかない。
 著者は科学的認識は、目的意識的な実践・実験によってのみ成立する(本書112ページ)という板倉聖宣の主張を引用した上で、シュワンは観察を行なう前に、「種や部位を問わず動物の体はすべて細胞からできており、その細胞が増えて変化することによって成長が起こる」という普遍的な仮説を立てていたと論じている。
 つまりシュワン以前にも顕微鏡で細胞を観察していた科学者はたくさんいたが、「植物の発生の原因は細胞が増えて変化することだ」という友人シュライデンとの会話をきっかけに、すべての動物の部位は細胞で出来ているに違いないと考えた上で顕微鏡を覗いた科学者は、シュワンが初めてだったと言うのである。

 それは、結局、「主体的に予想を立てた人が、その170年間に1人もいなかったからだ」という結論に、ボクとしては落ち着いたわけです。(『生物と細胞 細胞説をめぐる科学と認識』105ページ)

 目の水晶体をありのままに詳しく観察したところで、それが細胞で出来ているなんて気づくはずがありません。(同書117ページ)

 したがってシュワンは、目的意識もなく手当たり次第にいろいろな細胞を調べて、細胞説にたどり着いたのではない。
 彼には「細胞説の検証」という明確な動機があり、その上で観察を行ったからこそ、一見細胞で出来ているように見えない部位は、もっと若い状態のものを観察し、それでも分からなければ発生段階の胚にまでさかのぼって、粘り強く細胞説を検証したのである(でなければ、目の水晶体の細胞は“見れども見えず”だったに違いない)。
 以上のように科学の発見とは漸進的なものではなく、あるときをきっかけにして急進的に起きる。これをトマス・クーンはパラダイム・シフトと呼んだ。具体的にはダーウィンの進化論や量子力学の発見などがこれにあたる。
 つまり、パラダイムとは、その時代その時代に生きる人間の科学的な認識を規定する思考の枠組みのことで、著者はこのクーンの哲学を「客観的にものを認識するためには、主観の働きを活発化して実践することによって主観と客観を対決させることが決定的に重要なんだ」(本書101ページ)と板倉聖宣の文脈に沿って解釈している。

授業プラン《生物と細胞》の第2部「細胞と生物」
 《生物と細胞》の第2部「細胞と生物」では、たった一つの細胞で生命活動をしている単細胞生物の紹介から、単細胞生物のようにヒトの細胞も環境を整えて栄養を与え続ければ生かしておけるかどうかを問題提起し、そもそも生き物が生きているというのはどういう状態を指すのか?という哲学的な思索を試みている。

 例えば、人間の体を構成する細胞一個一個は定期的に死に、3ヶ月ほどで体のすべての細胞は交換されてしまうというが、このような新陳代謝は、個体としての人の死ではない(細胞としては死んでいるが、個体としては生きている)。
 これとは逆に、ヘンリエッタ・ラックスさんの子宮がんの組織「ヒーラ細胞」は、ヘンリエッタ・ラックスさんが病気で亡くなったあとも、1951年から現在に至るまでシャーレの中で生き続けている(個体としては死んでいるが、細胞としては生きている)。
 つまり単細胞生物では「細胞の死」はすなわち「個体の死」であるが、多細胞生物において「細胞の死」と「個体の死」が一致しないというのだ。

 本書はさらに面白い例を挙げる。ヒトの体は60兆個の細胞で出来ているが、医者が「ご臨終です」と言った瞬間、その人の60兆個の細胞すべてが一斉に死ぬわけではない。となると細胞が全体の何割死ねば、個体の死と考えていいのだろうか?
 仮に「全体の半分の細胞30兆個以上が死ぬことが個体の死である」と定義するなら、29兆9999億9999万9999個と30兆個の境界はなんなのだろうか?
 まるで哲学のテセウスの船のような命題であるが、著者は個体の死は連続的に起こるものであり、ここからが個体の死という一瞬は存在しないと論じている。

 そして章の後半では、心臓や小腸、肝臓といった臓器の働きに、一個一個の細胞がどのように関わっているかを、クイズ形式で取り上げている。
 心臓の細胞は心臓と同じように細胞一個一個も伸縮しているのか、小腸の細胞は細胞一個一個がそれぞれ栄養分を吸収しているのか、肝臓の細胞は細胞一個一個が栄養分を貯蔵しているのか、などの興味深い問いが続き、これによって生徒は、細胞一個一個の働きがたくさん集まって、臓器全体の働きは成立しているということを楽しみながら学習できるようになっている。

 つまり、生命活動とは、細胞一個一個がそれぞれ仕事をしていることによって成り立っているのだ。したがって細胞を壊してしまうと、全体の働き(個体としての生)は失われてしまう。
 部分は全体を兼ねるというわけである。

いくら細胞をたくさんスケッチしても細胞説が提唱できなかった理由
 フックの「コルク細胞の発見」(1665)からシュワンの「細胞説の提唱」(1839)まで174年かかったわけだが、フックが王認学会で発表したノミやシラミなどの写生図をまとめた『ミクログラフィア』(1655)の影響で、顕微鏡を使って微小な世界を観察する人は当時もたくさんいた。イギリスの医師ネヘミア・グルーもそんな一人で、顕微鏡を使って植物の組織の緻密なスケッチを残した。

 しかしこれほどまでに細かいスケッチをもってしても、「生物はすべて細胞からできている」という細胞説の発見にたどり着くことはなかった。
 グルーは植物組織の模様の美しさや精巧さを、いかに本物そっくりにスケッチするかということに関心があり、「生物はすべて細胞が集まってできているにちがいない」という見立てをして観察に臨んだわけではなかったのである。
 実際グルーは、フックが名づけた「cell(小部屋)」という言葉を使わずに「bladder(袋)」という言葉で細胞(に当たるもの)を呼んでおり、フックの研究を直接引き継いだわけではなかった。
 またグルーが細胞を認識せずにスケッチを行っていた間接的な証拠としては、細胞と細胞の仕切りを繊維の縦糸と横糸のように描いていたことからも伺える。

 とはいえグルーの図は大変美しく、見ごたえがあり、例えばミカンの実のつぶつぶはひとつの細胞であるという俗説が誤りであることを検証できるほど、緻密なレモンの図も残されている(実のつぶつぶの中にもさらに細かいたくさんの細胞がある様子がしっかりと書かれている)。このようにグルーの図を引用し、参考書に書かれる段階で間違った説明がなされることもあった。

 いずれにせよ、「フックがコルクの細胞を発見してから、しだいに、いろいろな人が顕微鏡でいろんな生物をのぞいて、だんだん生物は細胞からできているらしいということが言われるようになった」という歴史観(本書146ページ)は誤りで、「生物はすべて細胞が集まってできているにちがいない」という予想を持って確かめようとする人が現れない限り、いくらグルーのように顕微鏡を用いて正確なスケッチを書いたところで、細胞説という科学的な認識は生まれなかったのである。

生物学概論覚え書き②

参考文献:トレシー・グリーンウッド、ケント・プライヤー、リチャード・アラン共著、後藤太一郎監訳『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』

生物の分類の変遷
まず生物は、古代から植物と動物の二つに大きく分けて考えられてきた。
その後、近代になり生物学が博物学に吸収されると、生物は鉱物と共に、植物・動物・鉱物の3つに分類されていたが、やがて生物学が博物学から別れると、再びリンネによって植物と動物の二界説が提唱された。
これは動物ではない生物は全て植物にしてしまう考え方であった。つまり分解者である菌類や細菌類は植物として分類された。

19世紀になり顕微鏡が発明されると、レーウェンフックが微生物を発見、これにより二界説では新たな生物群を分類しきれなくなり、生物は、植物界・動物界・原生生物界の三つに分類されるようになった。これを三界説といい、1894年にヘッケルが発表した。
ちなみに原生生物界とは、ヘッケルが1866年に創設したグループで、ミドリムシのように植物とも動物ともとれるような原始的な生物など(原生生物、細菌、真菌類、単細胞藻類)が、ここに分類された。

次に出てくる五界説は、1969年にホイタッカーが提唱した説で、生物を、植物・動物・菌・原生生物・モネラの5つに分類するものである。
モネラ界とは、すべての原核生物(細胞内で核と細胞質の区別がない生物。細菌やラン藻など)が含まれるグループである。
原生生物界には、細胞内で核と細胞質の区別があり、植物、動物、菌、モネラのいずれにも属さない単細胞生物が分類された。

さて、五界説では、モネラ界と、残り4つの界を、原核細胞をもつものと真核細胞をもつものの2つに分けていたが(2ドメイン。ドメインとは界よりも大きな分類単位)、1996年に、メタノコッカス・ジャナスキーという古細菌の全DNAが解読されたことによって、生物は2つではなく、3つのドメインからなることがわかった。
この細菌は、極限環境生物であり、85℃の高温の環境に生息する。これは真核生物のみならず、ほとんどの細菌にとっても致死的な温度である。
この細菌と、細菌類、真核生物との遺伝子には共通部分がたった44%しかなかったため、2つだったドメインが3つに修正された。

こうしてウーズによって1990年に提唱された3ドメイン説は、真正細菌ドメイン・古細菌ドメイン・真核生物ドメインの3つに生物を分ける説である。

真正細菌ドメインは、古細菌ドメイン同様、明瞭な核や細胞小器官を持たない。しかし古細菌よりも穏やかな環境を好む。よく知られている病原菌や、多くの無害な細菌、シアノバクテリア(ラン藻類)が含まれる。

古細菌ドメインは、真正細菌に多くの点で似ているが、細胞壁の組成と代謝特性が大きく異なり、原始地球の環境に似た過酷な環境に生息する。硫黄、メタン、ハロゲン(塩素、フッ素など)を使って代謝をして、多くの種類は極限の温度や塩分濃度、pHに耐える。

真核生物ドメインは、核と細胞小器官がある複雑な細胞構造を持つ生物が含まれる。つまり伝統的な五界説のうち、植物、動物、菌、原生生物の4界が該当することになる。

オゾンホールの拡大とその影響
地表から17~26キロメートル上空の成層圏の上部には、オゾンの薄い層が存在する。
オゾン層は太陽からの有害な紫外線の99%を吸収し、地表に届くのを防いでいる。
オゾン層が1%減少すると、地表に届く紫外線は2%増えると言われている。

紫外線は生物のDNAを傷つけるため、これが増加すると、深刻な日焼け、皮膚がんや白内障の増加といった人間の健康に関わる問題の他に、動物の免疫系の抑制、土壌微生物の減少、植物の生育阻害、穀物収穫量の低下、森林の生産力の低下、植物プランクトンの減少、スモッグの増加、さらに地球規模の気候変動の影響になる可能性が高い。

オゾンは極めて不安定で、人間が生産したわずかなオゾン層破壊物質によってたやすく壊れてしまう。
オゾン層破壊物質には、クロロフルオロカーボンやハロン、臭化メチル、メチルクロロホルム、四塩化炭素があり、これらが成層圏まで上昇し紫外線を照射されると、反応性が高い塩素原子が放出、この遊離塩素がオゾンと反応することで、オゾンは酸素分子と一酸化塩素分子になってしまう。

オゾン層破壊は1984年に初めて取り上げられた。研究者は、南極大陸上空の成層圏上部のオゾン層が、南極の春から初夏の間に破壊されていることを発見し、オゾンホールと呼んだ。
しかしそれは「穴」というよりは、著しいオゾンの濃度低下で、オゾンの水準が50~100%の範囲で減少していた。
2000年には、南極上空のオゾンホールの規模は過去最大になり、さらにオゾン層の破壊は北極の空でも観測された。1999~2000年にかけての冬のあいだに、北極上空18000メートルのオゾン層の水準は60%減少した。

1987年にモントリオール議定書が採択されて以降、各国はオゾン層破壊物質の消費を70%削減したが、オゾン層破壊物質の段階的な削減はまだ完了しておらず、クロロフルオロカーボンの闇市場も存在している。
とはいえ、成層圏の遊離塩素の量は1999年あたりをピークに、今後1世紀以上かけて減少すると見積もられている。
2050年までには極地のオゾンホールは1975年の水準に戻るとされるが、1950年以前の水準には、さらに100~200年はかかると考えられている。

自然環境における水循環
水が集積、浄化され、地球上の限られた供給源に分配される一連の流れを水循環と言う。
雨水は、内陸部の水源に水を補給するとともに、土地を侵食し、溶存する栄養分が生態系内、生態系間を運ばれる際の主な溶媒となる。

地球全体で見ると、海からの蒸発量は、海への降水量を上回るが、これは海から蒸発した水蒸気が風によって陸上へ運ばれるためである。
一方、陸地では、地上への降水量が、地上からの蒸発量を上回る。
これは、降水量の一部が雪や氷となり閉じ込められるからであるが、ほとんどの水は地表や地下を流れて、最終的には海へたどり着く。こうして主要な水の循環は完結する。

生物、特に植物は、この水の循環に多かれ少なかれ関与しており、海上では水蒸気のほとんどは蒸発によるものだけだが、陸上での水蒸気の90%は植物の蒸散によるものである。

また、人間の活動も水循環に大きな影響を与えている。例えば、川やダム、地下からの水は水道水(生活用水)として消費され、農業、発電、工業、森林伐採や造林などの産業活動、さらに地球温暖化による、水の蒸発量と降水量の急増(水循環サイクルの加速)、氷河の融解も、水循環に大きな影響を与えている。
なにより人間は産業革命以降、人口が爆発的に増大している。これに伴う急速な都市化や開発は、森林の減少、砂漠化、生態系の破壊、土砂流出(洪水)、水不足など、深刻な環境問題を引き起こしている。

ちなみに地球上の水の97%は海水で、淡水は水全体のわずか3%、しかもその淡水の70%は北極と南極で凍っている。

参考サイト:国立環境研究所 http://www.nies.go.jp/nieskids/index.html

消化管と食餌との関係
ヒトなどの雑食動物の食事内容は多様性に富んでおり、植物をメインにたまに肉を食べる動物や、植物と肉をほぼ等しく食べている動物もいる。そのため消化管の構造も多様である。
ヒトの胃は消化管全体の20~30%を占め、ほかの雑食動物に比べると小さい。水素イオン濃度(酸性度)はpH2である。
小腸の長さは身長の10~11倍で、ほかの雑食動物よりも長い。
盲腸はあるが、あまり発達していない。
大腸の長さは比較的長い。
以上から、胃の水素イオン濃度はどちらかというと肉食動物に近く、腸の長さは植食動物に近いことがわかる。

イヌなどの肉食動物は、消化管における微生物発酵はほとんどないか、全くない。肉の消化が繊維質の多い植物(セルロース)の消化に比べて容易だからである。
イヌの胃の容量は消化管全体の60~70%で、水素イオン濃度はpH1か、それ以下。
小腸は短く体長の3~6倍ほどで幅が広い。
盲腸は未発達か、ない。
大腸は単純で短い。

ウシは、胃内細菌との共生関係に依存する反芻性植食動物である。
そのため、ウシの胃は巨大で容積が消化管全体の70%を占め、セルロースを分解する微生物のための部屋(第一胃=ルーメン)で拡張されている。
胃の部屋は複数あり、そのため食物の移動が遅くなり、消化しにくいセルロースを分解する時間が十分に確保できる。
ルーメン内の微生物は揮発性脂肪酸を生産しエネルギーを供給し、微生物自身も消化されることでルーメンにタンパク質が供給される。胃の水素イオン濃度はpH5~7。
小腸は体長の10~12倍で、盲腸は短いか中程度(これが後腸消化タイプのウサギでは非常に長い。ウシの胃の代わりを盲腸が担っているため)。
大腸の長さも中程度で、ここでの発酵はあまり重要ではない(これもウサギではとても長い)。

生物学概論覚え書き①

 いよいよ理科の単位の履修が本格化してきたんだけど、試験範囲が懐かしの外国史概説並みに広い単位がこれ。単位認定試験では、レポート課題の範囲外からの出題が多いので、300ページ弱あるニュージーランドの高校のテキスト(でかくて重い)を網羅的に勉強する必要がある。
 ちなみに、この教科書、ほとんどの問題が記述式でお国柄を感じる。日本は東大でさえ作文問題をやめちゃったもんな。そんなわけで、このテキストは高校生対象ではあるんだけど、内容的には大学初年時のレベルも含んでいる。
 そして対立遺伝子の記述問題が究極的に難しい。いくつかの論文を読んでもイマイチよくわからないので、T大の生化学博士課程のあのお方に電凸する予定です。

主な参考文献:トレシー・グリーンウッド、ケント・プライヤー、リチャード・アラン共著、後藤太一郎監訳『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』

細胞膜の構造
細胞膜とは、生物と外界を隔てる境界である。
細胞膜の構造は、かつてはロバートソンが提唱した単位膜モデル(1959年)が有力だった。
これはリン脂質の二重膜をシート状のタンパク質が覆っているというモデルであり、細胞膜の厚さとも合致はしたが、タンパク質は水をはじくため、生体膜のモデルとしては疑問も残った。

その後、ベンソンとグリーンが1968年に、脂質に球状のタンパク質がくっつき、そのサブユニット(タンパク質複合体を構成する単一のタンパク質分子のこと。ポリペプチド鎖)が疎水結合で平面上に広がったモデルを考えたが、X線回折などにより細胞膜の基本的な構造が脂質の二重膜であることが明らかになったため、このモデルも否定された。

このようないきさつで、誕生した説が1972年にシンガーとニコルソンが提唱した流動モザイクモデルである。
これは、「単位膜モデル」のようにタンパク質分子が脂質の外側を覆うのではなく、脂質の二重膜の中に埋め込まれているモデルで、脂肪分子はそれぞれの尾部をお互いに向けることで流動的な二重層を構成している。
タンパク質分子は、この層に流動的に漂っており、能動輸送(物質のエネルギーを消費して濃度勾配に逆らって積極的に物質を移動させること)などの機能を担っている。

流動モザイクモデルのそれぞれの部位の役割は以下のとおりである。

糖タンパク質
糖鎖がついたタンパク質で、細胞認識や免疫反応において重要な役割を持ち、ホルモンや神経伝達物質の受容体としても働く。糖脂質とともに膜構造を安定化させる。

コレステロール
脂質の二重膜に含まれることで、リン脂質がくっつきすぎるのを防ぐ。コレステロールは膜の流動性を調節して、膜の安定性を維持する。

脂質膜を貫通しているタンパク質
細胞内への特定の分子の取り込みや、細胞からの排出を制御している。イオンや炭水化物などの特定の物質はこのチャネルタンパク質を介して膜を通過する(選択的透過性)。

また、細胞膜は不完全な半透膜なので、水のように脂質膜を直接通過する物質もある。

参考文献:議田博子『生体膜からみた高校生物教育の体系化に関する一考察 ~実験シリーズの開発を中心に~』

対立遺伝子の意義
有性生殖をする生物のほとんどは、対になる染色体である相同染色体のセットを持っており、その片方のセットは一方の親に由来し、双方の親からどのようなセットを受け継ぐかで発現する形質が異なる。

遺伝の法則を研究したメンデルは、エンドウのいくつかの形質において、同一個体で同時に現れない、異なる2種類のバージョンがあることに着目した。
例えばエンドウの種子の形には、丸とシワの2種類の形質があるのだが、これらは同時に発現することはない。
また、種子が丸い個体と、種子がシワになっている個体を交配しても、二つの形質が交じり合うこと(融合説という。例えば丸とシワの中間的な形の種子ができるなど)はない。
このような形質を対立形質といい、この形質に対応している遺伝子を対立遺伝子(アレル)という。対立遺伝子は染色体上で同じ場所(座)に位置して競合している。

集団遺伝学の分野では、対立遺伝子は同一生物種の集団の個体の多様性を担保するものであると考えられている。
対立遺伝子の種類が多ければ多いほど、その組み合わせで様々な個体や系統、時には新種ができ、さらに環境の変化や伝染病などによる個体数激減や絶滅のリスクは低減されるというわけである。

対立遺伝子は遺伝子突然変異によって生じると言われている。
突然変異とは、同一種の個体間に見られる形質の差異である変異が突然生じ、非連続的で遺伝性であるものをいう。
突然変異には、機能欠失型と機能獲得型があり、機能欠失型には完全に機能を失う場合と、部分的に機能を失う場合がある。機能獲得型には、既存の機能を妨げる機能を獲得する場合と、新たな機能を獲得する場合がある。
遺伝子突然変異は、10万回に1回、もしくは100万回に1回というわずかな確率で起こる遺伝子の複製ミスによって引き起こされる。
突然変異には、塩基1つが置換されるものから、塩基が新たに挿入されたり、欠損することで変異箇所以降の塩基配列が全てずれ、大規模な読み込み枠の移動(フレームシフト突然変異)をもたらすものまである。

例えば赤血球が細く尖った形になり、毛細血管を通りにくくなることで起こる鎌状赤血球貧血症という病気は、ヘモグロビンの異常によるもので、この変異はヘモグロビンの一部(β鎖)の情報を担う遺伝子の17番目の塩基がチミンからアデニンに変わったことによって引き起こされる。
このたった1つの塩基の複製ミスによって、6番目に作られるアミノ酸がグルタミン酸からバリンに変わり、酸素を離した時にヘモグロビンが凝集、これにより赤血球内の浸透圧が低下(ヘモグロビンが塊になって溶けにくくなるから)、水が出て鎌状に潰れてしまう。
ちなみに鎌状赤血球は、貧血や血行障害を起こすが、マラリアにはかかりにくい(すぐに溶血するのでマラリア原虫が増殖できない)というメリットがある。
遺伝子突然変異による病気の例はほかにも、地中海貧血(βサラセミア)、脾臓線維症、ハンチントン病などがある。

突然変異を引き起こす原因には、紫外線や放射線(X線、γ線、中性子線)、化学物質が挙げられる。
亜硝酸塩やマスタードガスという毒ガスのほか、食品添加物や農薬として使われていた物質(甘味料のチクロ、赤色1号、防腐剤のAF-2)やタバコやアルコール、脂質の多い食事も突然変異を誘発する。

参考文献:吉田邦久著『好きになる生物学』

ヒトゲノムプロジェクト
ヒトゲノムプロジェクト(HGP)は、23対あるヒトの各染色体の連続した塩基配列を読み取る計画で、アメリカを中心に世界中の多くの組織が関わって遂行された。
その一方で、1998年にアメリカのセレラ・ジェノミクス社(初代会長はクレイグ・ベンター)が商業的にHGPに乗り出したことで、HGPは競争的なプロジェクトになり、結果的に公共的なHGPも加速した(セレラ社はヒトゲノムのデータベースを有料化しようと考えていた)。
こうして2000年に両者が最初のドラフトゲノム(ゲノムの概要のこと)を解読し、現在では全ゲノム配列が高品質な配列として利用できるようになった。
これに加えて、遺伝子の同定・配列決定・マッピング(染色体上の位置を決めること)が行われた。

HGPは以下の重要な研究結果を残している。
①ヒトゲノム上のタンパク質をコードする遺伝子は考えられていた数(少なくとも10万以上)よりもずっと少なく、たった2万~2万5000である。
②当初は埋めることができなかったギャップ(未解読領域)が400分の1の341に減った。
③極めて高い精度で、遺伝子を含むゲノム上の99%が読まれた)。
④ほぼすべて(99.74%)の既知の遺伝子を正確に同定。
⑤正確かつ完全であるため、病気の原因を体系的に研究することができる。

次にHGPによる医学的な恩恵は以下のとおりである。
①遺伝子検査による疾病と疾病素質の診断が改善。
②遺伝子検査による病気の保因者の特定。
③遺伝子配列から得られるタンパク質の構造を使ってより良い薬をデザインできる。
④変異遺伝子の修復を目的とする遺伝子治療の成功率が高まる可能性。
⑤夫婦が子どもの病気の原因となる遺伝子変異を持つ可能性を調べることができる。

医学以外の恩恵には以下がある。
①遺伝子検査により、家族関係について知ることができる(裁判における父親の特定など)。
②DNA分析によって科学捜査が進歩する。
③ヒトとほかの生物との進化的な関係について理解が深まり、より正確な分類ができる。
④ヒトとヒトの祖先のDNA配列を比較することで、ヒトの進化の理解が深まる。

一方で、HGPによる倫理的な問題や課題もある。
①多くのバイテク企業が自社が解読した配列情報の特許を取ってしまうこと。
②保険会社などの第三者が、遺伝子検査の結果を見る権利があるかどうか。
③病気に対する治療法が見つからない場合、病気の原因になる遺伝子の知識は役に立たないこと。
④遺伝子検査は高額で、誰が支払うべきかを判断することが難しい。
⑤ゲノム情報は遺伝するため、個人のゲノムは家族の情報も含んでいる。
⑥遺伝子情報による差別が行われないようにするための法規制。

さて、HGPの次の挑戦は、遺伝子によって作られるタンパク質の同定と、その働きを調べ、遺伝子疾患に対する理解を深めることである。これをプロテオミクスという。
さらにヒトゲノム以外の他のゲノム配列プロジェクトも開始され、すでに100以上の微生物とウィルスのゲノムや、ミツバチ、線虫、アフリカツメガエル、フグ、ニワトリ、ラット、イヌ、ウシなどが解読されている。
また2002年には、国際ハプロマッププロジェクトが、ヒトのハプロマップ(人種、民族、体質などの多様性や、どういう進化をたどってきたかを調べるための遺伝子地図。ハプロタイプとは対立遺伝子の組み合わせのパターンのこと)を作成することを目的に始まった。
最初のデータは、アフリカ、アジアとヨーロッパに祖先を持つ4つの集団から取られ、現在では、ほかの集団も含めて、ヒトの遺伝的多様性に関する分析が行われている。

参考文献:フランク・ライアン『破壊する創造者』

アポトーシスとネクローシス
アポトーシスとはプログラムされた細胞死のことで、特定のシグナルに応答する正常な細胞の自殺の過程である。
アポトーシスは、成体における細胞数の維持や、ウィルスに感染したり、DNA損傷を起こしている危険な細胞に対する防御など、重大な役割を担っている。
また、アポトーシスは発生の過程で、指の間の水かき状の細胞を殺し、指を形成するなど、胚組織を“彫刻”する。
ここで発生した細胞の残骸や破片は完全に処理される。

一方のネクローシスは、プログラムされていない細胞死(壊死)のことで、細胞が外傷を受けた際に、その内容物を細胞の外へばら撒いてしまう。
この時ばらまかれた内容物には、老廃物や消化酵素を含むものもあるので、これが炎症を引き起こす。

アポトーシスは、細胞の生存を助ける因子(正のシグナル)と、細胞を死なせる因子(負のシグナル)とのバランスによって制御されていて、このバランスが崩れると不完全なアポトーシスを招いてしまう。
例えば、アポトーシスの発生が低いと、不死になってしまった細胞が暴走的に増殖を繰り返し、がん化する。

アポトーシスは以下の段階を経て行われる。
①細胞が収縮し、隣り合う細胞との接触を失う。クロマチン(DNAとタンパク質がくっつてできた繊維)は凝縮し分解され始める。
②核膜が分解され、細胞容積が小さくなる。クロマチンはクロマチン体に凝縮する。
③細胞膜の表面にゼオーシスという泡状の突起ができる。
④核が崩壊するが、膜に囲まれた細胞小器官は影響を受けない。
⑤核は小球に分断され、DNAも小さい破片に分断される。
⑥細胞は多数のアポトーシス小体に分断、食作用により速やかに吸収される。

また、アポトーシスは以下のように制御される。

正のシグナル
アポトーシスを抑制し、細胞の正常な機能を促す。
具体的な例としては、インターロイキン2という種類の免疫細胞から出されるタンパク質(サイトカイン)が細胞の生存のシグナルを出し、細胞死を阻害するbcl-2タンパク質や成長因子を働かせる。

負のシグナル
死の活性剤と呼ばれ、細胞死へとつながる変化を起こす。
具体的な例としては、DNA損傷や細胞飢餓などのストレス応答として、細胞自身が発する誘導シグナルが、細胞内のがん抑制遺伝子p53を活性化させ、細胞死を誘導する。
このときミトコンドリアから流出したシトクロムc(細胞呼吸で電子伝達系を担うタンパク質)が、カスパーゼを調節するApaf-1に結合して、カスパーゼ9が活性化、アポトーシスが起きる。
ちなみにカスパーゼとは、アポトーシスのシグナル伝達経路を構成する、重要なタンパク質分解酵素(システインプロテアーゼ)である。

また、細胞死の受容体(デスレセプター)は、免疫系などの細胞から発信されるTNF(リンホトキシンなど)やFasリガンドなどのシグナルに応答して細胞死を誘導する。
シグナルを受けたデスレセプターはアダプター分子を介してカスパーゼ8を活性化する。

参考サイト:http://www.geocities.jp/mizuhase/index.htm

地学概論覚え書き②

参考文献:『カラー版徹底図解地球のしくみ』

地球の大気組成の歴史
地球ができた頃の原始大気は以下の3つの段階を経て変化してきた。

第1段階は水蒸気の大気である。
この段階の原始大気は、微惑星の衝突によって、微惑星に含まれていたガス成分が蒸発して出来たと考えられ、当時の微惑星と同様の成分を持っていると思われる隕石や、現在の地球のマグマから放出されるガスを調べると、原始大気の組成は、200気圧にものぼる高圧の水蒸気がメインで、以下、二酸化炭素、窒素、硫黄・フッ素・塩素と続いた。水蒸気は大気の高層で雨となったが、地表に達する前に蒸発してしまい、大気の内部で循環していた。

第2段階は二酸化炭素の大気である。
水蒸気が雨となって地表まで届き、海洋ができたあとに現れたもので、第1段階で2番目に多かった二酸化炭素が大気の主成分になっている。
第1段階で大気中に含まれていた、硫黄・フッ素・塩素は水に溶け海洋を酸性にし、そのため中性の水に少し溶ける二酸化炭素は、海洋に溶けることができなかった。
しかし、二酸化炭素は非常に高い温室効果を持っており、本来-18℃の放射平衡温度になるはずの現在の地球の平均気温を15℃にまで温めている。

さて、第2段階の大気組成(1位:二酸化炭素、2位:窒素)は、現在の金星や火星の大気組成と一致している。特に金星と似ているが、金星には海がないのにかかわらず、大気中にも水蒸気が存在しないのは、不思議である。水蒸気はどこへ消えたのだろうか?
その理由は、金星では暴走温室効果(水蒸気の温室効果が水を蒸発させ水蒸気にし、その水蒸気がさらに温室効果を推し進めること)によって海ができなかったため、大気中の水蒸気が長期間紫外線にさらされ、水素と酸素に分解してしまったからである。
ちなみに、水素は宇宙空間に逃げ、酸素は地表の物質を酸化して固定化されたと考えられている。

第3段階は二酸化炭素が減少し、窒素が主成分になった大気である。
海水に岩石のナトリウムイオンやカリウムイオンが溶け、海水を中和すると、二酸化炭素も海水に取り込まれるようになった。
二酸化炭素は、海中のカルシウムイオンと反応して炭酸カルシウムになり、石灰岩を大量に作ることで大気から取り除かれていった。その結果、地球の大気には窒素だけが残り、大気の主成分になった。
また、27億年前になると、シアノバクテリアが登場、石灰岩質の殻を作り二酸化炭素をさらに固定していった。ちなみに、シアノバクテリアは、地球史上初めて光合成を行った生物として以後も繁栄し、大気中に大量の酸素を放出した。

地球磁場のメカニズム
地球の地場は27億年前に急速に強くなったらしい。
地球の磁場は、内部が非常に高温なため、永久磁石があるとは考えられない(数千℃の高温では永久磁石は磁力を失うから)。
よって残る可能性は電磁石である。地球磁場を説明するダイナモ理論によれば(ダイナモとは発電機のこと)、地球の磁場の発生は外核の対流と地球の自転によって説明できるという。
外核は溶けた鉄なので、電流を流すと電磁石になるわけだが、では、その電流はどこからやってくるかというと、磁場の中で外核の鉄が対流することによって発生すると考えられている。
つまり、このときの電流が新たな磁場を発生させ、その磁場によって電流がさらに強化されるという連鎖反応を繰り返すことによって、地球の磁場は発生しているというわけだ。

では、そもそも外核の対流のきっかけになる現象はなんなのかというと、マントルオーバーターンという有力な仮説が提唱されている。ちなみに、マントルオーバーターンとは、マントルの上下の物質が大きく入れ替わることである。
これはプレートテクトニクスによって沈み込んだ原始的なプレートの残骸が、上下のマントルを2層に分ける仕切りになっていたのだが、27~28億年前に、プレートの残骸が初めて下部マントルの底へ落ちていき(プレートの残骸の密度が下部マントルの物質よりも大きくなったため)、外核の一部分を冷やした。
これにより外核で対流運動が活発化し、地球ダイナモ運動が始動されるきっかけになったと言われている。
この仮説では、地球ダイナモ理論の他、のちの時代の火山活動や、超大陸形成についてもうまく説明をしている。

さて、27億年前に強くなった地球の磁場は、宇宙からの放射線を遮るバリアとなり、生命が光が届く浅い海底に進出し光合成を行うことを可能にした。
これにより、海水中の鉄イオンが光合成によって発生した酸素と結びついて、酸化鉄の沈殿となり海底に大量に降り積もり、現在の縞状鉄鉱層となった。縞状鉄鉱層は重要な金属資源として人間に恩恵をもたらしている。

酸素の歴史と生物の陸上進出
前述のとおり、27億年前、地球磁場が強くなったことで、生命は光合成を始めた。最古の光合成生物の化石はストロマトライトという層状の構造を持った岩で、これはシアノバクテリアという光合成を行う微生物の集合体が作るものである。
とはいえ、光合成生物が浅い海底で増えるようになって、すぐに大気中の酸素濃度が高くなったわけではない。海中の酸素はまず鉄イオンと結び付き、海水中の鉄イオンがほとんどなくなったあとに、余った酸素が大気中にも放出されていったのである。その期間は約7億年だったと言われている。

7.5億年前になるとマントルの温度が下がり、水(含水鉱物)が海洋プレートごとマントルの中に入っていくようになった。
このようにマントルの中に水が注入され続けると海水の量が減り、陸地の面積は増加、巨大河川による陸地の侵食作用が増えて、堆積岩が盛んに作られるようになる。
すると、有機物が堆積物に埋もれて分解されず、有機物分解に必要な酸素が消費されなくなったために、光合成による酸素は増加、大気中に放出された酸素は、地上20~30キロメートルの高さにオゾン層を作り、有害な紫外線を吸収、生物の陸上進出を可能にした。
ちなみに海水のマントル注入は、マントルの流動性を上げて(粘度を下げて)プレートの動きをスムーズにもさせている。

オゾン層が完成したのは、植物が陸上進出をした4.3億年前で、27億年前にシアノバクテリアが酸素を発生させてから20億年以上の時間が経っていた。
この時(シルル紀)に最初に陸上に進出したのは緑藻類(ノリの仲間)が進化したクックソニアという根も葉もないコケに似た生物で、次の時代であるデボン紀(4.2~3.6億年前)には、発達した根や茎を持ち、地中から水を汲みあげられるシダ植物が出現した。シダ植物は石炭紀(3.6~3億年前)には、超大陸パンゲア全域に広がって大森林を形成した。この時の森林は超大陸の堆積盆地にうもれて現在の石炭になっている。
こうして、石炭紀に有機物が大量に堆積層にうもれると、酸素濃度が一時35%まで増加し、動物にとっても陸上は新天地になり、デボン紀には魚類の中から両生類が出現し、石炭紀には羽を持った昆虫が登場した。古生代末には爬虫類も登場した。

スノーボールアース仮説
約6億年前の地球は寒冷化が暴走し、全海洋はおろか赤道まで氷床が広がり、数万年で-40℃にまで冷えたと言われている。地球全体がまるで雪玉のように凍ってしまったのでスノーボールアース仮説と呼ばれている。

この氷河時代が始まった原因は、超大陸ロディニアなどの陸地面積の増大にある。これにより陸地の浸食作用が活発化し、有機物が大量に堆積岩に閉じ込められた。
すると有機物が腐敗分解して発生する二酸化炭素の量が減り、地球の温室効果が低下していったというわけである。
また風化により陸地の岩石のカルシウムが大量に水に溶けると、大気中の二酸化炭素と結び付き炭酸カルシウムになるため、これも二酸化炭素の低下の一因になった。

いずれにせよ、氷河時代に入り極地から氷床が増加すると、氷床のある部分は白いのでアルベドの関係で太陽熱を受け取らずに反射、気温が低下していく。そして氷床が緯度30度にまで達すると、白い面積が広すぎて地球の熱収支バランスが崩れ、寒冷化が暴走。海洋も含めて全球凍結してしまう。

しかし、火山活動で発生する二酸化炭素が、光合成によって消費されず、凍結した海中にも溶けないため、大気中に蓄積、やがて二酸化炭素濃度が現在の300倍になり、激しい温室効果が起きることで地球は解凍されるという。増えた二酸化炭素は、溶けた海に急激に取り込まれ炭酸塩の堆積物を作った。

PT境界の大量絶滅
約2.5億年前のペルム紀末、古生代に繁栄していた三葉虫、フズリナなどの生物種が大量に絶滅してしまった。特に海底に定住しているタイプの生物への打撃が著しかった。
この大量絶滅は、PT境界絶滅と呼ばれ(P=ペルム紀、T=三畳紀)、古生代から現代に至るまでの大絶滅ビッグファイブの中でも最大の規模で、生物の種類は科レベルで50%に激減した。
古生代と中生代の境界では、世界的な海水の酸素欠乏状態であるスーパーアノキシアも起こった。
プランクトンが作る殻が深海に積もって出来るチャートを調べると、PT境界の前後2000万年間にわたって酸素の欠乏した状態が続いていたことがわかった。
チャート層は、酸素がある環境下では微量な酸化鉄が含まれるために赤いが、酸素がない環境下では酸素がないと分解できない有機物が含まれるため黒いのである。
また、この時期に大規模な海退が起こるとともに、超大陸パンゲアが分裂、その原動力であるスーパーホットプルーム(マントルの対流のうち巨大な上昇流を言う)が地殻に達することで発生した異常火山活動が、PT境界の大量絶滅を引き起こしたという仮説も提唱されている。
異常火山活動の証拠として、PT境界の時期にできたシベリア、インド、中国、アフリカなどの洪水玄武岩台地がある。これは日本の何十倍もの広さの地域が数キロメートルの厚さの玄武岩溶岩で埋め尽くされて出来た地形である。しかし玄武岩質溶岩は爆発性が少ないので、大量の火山灰を巻き上げるような爆発的な噴火は別にあったのではないかと考える学者もいる。

いずれにせよ超巨大噴火を契機とする大量絶滅のシナリオは以下のとおりである。
①大量の火山灰の噴出や、大規模森林火災・石炭層の燃焼によって、大量の粉塵が大気中に巻き上げられ太陽光を遮断、これにより光合成活動が妨げられ酸素欠乏に陥った。

②火山ガスの二酸化炭素によって温暖化が起こり、海底のメタンハイドレートが融解、空気中で燃え出したため酸素欠乏に陥った。

③地球を覆い尽くした粉塵によって寒冷化が起こり、陸地の氷床が発達、このため大規模な海退が起こり生物の大量絶滅につながった。

②と③は矛盾しているように思われるが、寒冷化が起こったあとに温暖化したという仮説もある。『デイ・アフター・トゥモロー』方式ね。

中生代の環境と恐竜の絶滅
中生代は火山活動が活発で、二酸化炭素濃度が増大し温暖化が進んだ時代である。特に白亜紀は気温上昇のピークを迎え、二酸化炭素濃度は現在の4倍、平均気温は現在よりも10℃も高く、北極や南極にも氷床はなかった。

地球の地磁気は、過去1億5000万年のあいだで300回以上もN極とS極が入れ替わっているが、白亜紀に当たる時期には、外核が特別な状態にあったのか、3000万年にわたって地磁気の逆転が起こっていない。これを白亜紀スーパークロンという。
この影響で、白亜紀では中央海嶺の海洋プレートの生産速度が上がり、火山活動が活発化した。

また、現在産出される石油資源の多くは、中生代のプランクトンが大量に海底に積もって出来たと言われている。
中生代は二酸化炭素濃度が高く、大量の植物プランクトンを育んでいたが、気温も高かっため極地で冷やされた海水が深海に沈み込むような対流も起きず、深海が酸欠状態に陥った。
そこで海底に沈んだプランクトンは分解されず、ヘドロのように溜まっていき、大陸移動の際にこれが地下深くに閉じ込められて石油になった。

さて、中生代の大陸は乾燥していたので、乾燥に強い裸子植物や爬虫類が大繁栄した。
爬虫類では、とりわけ恐竜の仲間が世界各地で多様化した。恐竜は敏捷で運動能力に優れたものが多く、一部の種類は恒温動物であったという説もある。大きさは体長1メートルにも満たない小型のものから、体長30メートルに達する巨大なものまで存在した。

恐竜の時代は1億年以上続いたが、6500万年前のKT境界の大量絶滅で終焉を迎えた。
恐竜の絶滅は、巨大隕石が衝突したことが原因だと言われている。1970年代、カリフォルニア大学のアルヴァレス親子は、イタリアの石灰岩層中のKT境界にある粘土層のイリジウム濃度が異常に高いことを発見した。
イリジウムは宇宙塵によって一定の速度で地球に堆積すると考えられていたが、KT境界のそれは、宇宙塵では説明がつかないほどの高濃度で、これは宇宙から巨大な隕石が衝突し、その際に大量のイリジウムをばらまいたとしか考えられないと、彼らは結論づけた(巨大隕石衝突説)。

実際に北アメリカ大陸のユカタン半島先端付近には、直径180キロメートルに及ぶ巨大なクレーターがあり、地下から採取された安山岩の放射年代測定によれば6500万年前にこのクレーターが出来たことも立証されている。
このクレーターから推定するに、恐竜を絶滅させた巨大隕石は直径10キロメートルほどだと見積もられ、衝突時の衝撃波や津波は地表全体を駆け巡ったとされている。
この時に巻き上げられた大量の粉塵は1年以上も地球全体を覆い、太陽光を遮り、光合成活動や気温の低下をもたらした。
しかし魚類など絶滅しなかった種も多く、隕石衝突と恐竜絶滅の因果関係に関する議論は決着がついていない。

地学概論覚え書き①

参考文献:『カラー版徹底図解地球のしくみ』

地球の内部構造
直接地面を掘って調べるというわけにはいかないので、スイカが熟れたかどうかを外側から叩いて調べるように、地震波を利用して内部の構造を推定する(地震波トモグラフィー)。
地震の縦波のP波は、過密波のために液体中も固体中も通るが、横波(波の伝わる方向と垂直に波打つタイプの波)のS波は、固体中しか通らない。

このような性質を踏まえて地球の内部を考えると、震源地から比較的近い場所で起こった地震の場合、震央からの距離がちょうど200キロメートルあたりで、走時(地震波が発生してから観測地点に到達するまでの時間のこと)と震央距離とのグラフである走時曲線が折れ曲がる(走時と震源距離の変化の割合が小さくなる=地震波の速度が速くなる)。
これは地下深くにP波が通常よりも速く伝わる層(地震の高速道路のようなもの)があり、そのために地震波の速度が不連続に変化することを示している。

この地震の速度を不連続に変化させる境界のことを旧ユーゴスラビアの発見者アンドリア・モホロビチッチにちなんでモホロビチッチ不連続面という(略してモホ面)。
そしてこのモホ面よりも上を地殻、下をマントル(硬いので地震が速く伝わる層)という。モホ面の深さは海洋地域で約5~10キロメートル、大陸地域で30~50キロメートルと大陸地域の方が深い。

次に、震源地から比較的遠い場所で起こった地震の走時曲線を見ると、震央から103度~143度の地域(距離がでかいのでもはや地球の中心からの角度で表す。だいたい11000~15000キロメートルくらい)にはP波が届かないことから、この地域をシャドーゾーンと呼ぶ。

また、103度よりも遠くにはS波が伝わらないことから、、地下約2900キロメートルの深さの場所にも不連続面があり、その下は液体になっていることもわかる。この境界をアメリカの発見者べノー・グーテンベルグにちなんでグーテンベルグ不連続面といい、この面よりも上をマントル、下を核という。

まとめ
地殻
(厚さ7~40キロメートル)

モホロビチッチ不連続面

上部マントル(深さ670キロメートルまで。岩石の結晶構造が圧力で変化する深さ670キロメートルを境に上部マントル、下部マントルに分けられる)

下部マントル(深さ2900キロメートルまで)

グーテンベルグ不連続面

外核(液体の鉄。深さ5100キロメートルまで)

レーマン不連続面

内核(固体の鉄。5000~6000℃と、とても熱いが、圧力もものすごいので融点が高くなって固体のまま)

プレートテクトニクス理論の確立
1910年代にドイツのウェゲナーは、大西洋を挟むアフリカ大陸と南米大陸の海岸線が似ていることから、かつてこの二つの大陸はくっついていたのではないかと考えて、大陸移動説を唱えた。ウェゲナーは自説を証明するために、メソサウルスという爬虫類の化石や、グロッソプテリス植物群の化石が両大陸に分布し、地質構造の連続性があることを発見した。
また、古生代後期の大陸氷河が、南米南部、アフリカ南部、オーストラリア、インドまで広がっていたことを氷河の削り跡から発見した。
こうして、かつて6つの大陸はひとつの超大陸(パンゲア=ギリシャ語で「すべての大陸」という意味)だったことを結論づけて、1912年に『大陸と海洋の起源』という論文を発表した。
しかしこの学説は当時は受け入れられなかった。その理由は大陸を動かす原動力を説明することができなかったからである。

その後、大陸移動説は歴史の表舞台から消え去ったが、1950年代になると再び取りざたされることになった。
マグマが冷えて岩石ができるとき、岩石ができた当時の地球の磁場の方向が残留磁気として岩石に残る。この残留磁気を調べると、大昔にできた北米大陸とヨーロッパ大陸の火成岩の磁北が一致しないことが分かった。つまり磁北を一致させるためには両大陸を移動させる必要があったのである。
また、冷戦時代にアメリカが行った海底地形調査で、海底の巨大山脈である海嶺の存在も明らかになり、海嶺を中心に左右の海底に残された古地磁気の縞模様を調べると、綺麗に左右対称になった。つまり大西洋の海底は海嶺を中心に二つに分かれて拡大を続けているということを認めざるを得なくなった。

こうしてウェゲナーの大陸移動説は、アメリカのヘスとディーツによって海洋底拡大説として説明され、これらの学説を基にプレートテクトニクス理論が生まれた。
プレートとは地球の表面を覆う十数枚の硬い板状の岩盤のことで、ゆっくりとマントルの上を移動している。
プレートは海嶺で生まれて海溝へ沈み込む。その際にプレート同士が衝突したりすれ違ったりする。このプレートの運動を元に様々な地殻変動(巨大山脈の形成、地震や火山の発生原因など)を説明する理論がプレートテクトニクス理論である。

ウィルソンサイクル
プレートテクトニクス理論の構築にもっとも貢献したカナダのツゾー・ウィルソンは、プレートの運動がライフサイクルを持っており、以下の6つのステージに分けられることを示した。
これをふまえると、どんな海洋プレートもやがてはマントルへ沈み込んで地表から消えてしまうが、大陸プレートはマントルに沈み込むことがなく、分裂や衝突を繰り返しながら地表に存在し続けることがわかる。

①大陸分裂の開始
大陸の下でマントルの上昇流が活動、大陸に断裂ができて2つに分裂し始める。
現在のアフリカ地溝帯はこの段階。

②大陸分裂
大陸の分裂が進み、間に海洋プレートができる。その上に海水が入り込んで海洋が生まれる。現在の紅海やアデン湾はこの段階。

③海洋拡大
海嶺が海洋プレートを生産し続け海洋は拡大を続ける。大陸プレートの縁と海洋プレートは直接つながったまま。現在の大西洋はこの段階。

④沈み込み型造山帯
大陸プレートの移動が妨げられると、海洋プレートとの境界に破断ができ、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込み始める。この部分では火山活動が起こり、弧状列島や山脈ができる。
現在の日本列島や太平洋の南アメリカ西岸がこの段階。
また海洋は縮小しつつある。

⑤大陸縁成長・海洋縮小
海嶺は海溝から沈み込み、海洋底の生産は終わる。海洋は縮小し、両側にあった大陸が接近する。地中海はこうして形成された。

⑥大陸衝突・海洋の消滅
海洋は消滅し大陸どうしが激突する。これにより山脈が形成、現在のインドとヒマラヤがこの段階。

ウィルソンサイクルは3~9億年周期で超大陸の生成と分裂が繰り返されていることを説明する。
大西洋は最も最近の超大陸パンゲアの分裂(おそらく1億3000万年前~8000万年前)によってでき、太平洋はそれよりも前の超大陸の分裂にともなうパンサラッサという海の形の変化よって出来た。

日本列島の歴史
日本列島が現在の形になるまでの過程は大きく3つのステージに分けることができる。

①超大陸分裂による大陸縁の時代(7億~5億年前頃)
7億年前、超大陸ロディニアはスーパープルーム上昇によって分裂し、複数の大陸が誕生、その間には海洋地殻が作られながら広大な海洋が形成されていった。
日本列島の起源となる場所は、ロディニアが分裂し中国南部地塊と北アメリカ地塊に分離した場所の中国南部地塊の縁に当たる場所に該当する。
両地塊がさらに分離すると、間には海が侵入し、中国南部地塊に海洋地殻が接続した構造が作られた。これが日本列島の最も原始的な骨格である。ちなみに、中国南部地塊の断片をなす地層は隠岐、能登半島、飛騨山地に露出している。

②大陸縁での付加体による成長の時代(5億~2000万年前)
5億年前以降、海洋地殻に圧縮力が作用し、日本付近で海溝から海洋地殻の沈み込みが始まったことで、海溝付近では付加体による陸地の成長が始まった。付加体とは、海洋プレートの上に乗っていた堆積物が大陸プレートの下に沈み込む際にはぎ取られ、陸地側にくっついた部分を言う。
その後、4億年にわたり日本列島付近では陸地の成長が続き、400キロメートルほど海溝側に陸地が付加された。
この時、プレートの沈み込みに伴って付加体の一部も地下深部に引きずり込まれ、変成岩の地層ができ、ここに花崗岩マグマが貫入することで、日本列島を作る地殻を垂直方向にも成長させた。
恐竜が発掘される手取層群は、大陸の縁の前弧域で堆積した地層で、古い付加体の地層に覆いかぶさって、浅海、もしくは淡水性の地層として形成された。この層は整然と積み重なった砂・礫・泥からなり、チャートや石灰岩を含まないので、付加体と区別しやすい。
また日本各地の石灰岩の山は、海山の周囲に発達した珊瑚礁が海溝で付加されて陸地の一部になったものである。

③島弧での付加体による成長の時代(2000万年前~現在)
2000万年前になると、日本列島の地殻の下部にプルームが上昇、中国大陸の一部だった日本列島の地殻が大陸から引き裂かれ、日本列島は島弧になった。
また、分裂し陥没した場所には、玄武岩質の海洋地殻が形成され日本海が誕生した。
これに伴い、日本海側では激しい火山活動が起こり、このとき噴出した火山岩は変質により緑色をしているので、この岩石が分布する地域はグリーンタフ地域と呼ばれている。この地域には、当時の火山活動でできた銅や亜鉛に富む黒鉱という鉱物を産することが多い。
そして、2000万年前以降も、海溝側では付加体の成長が続き、日本列島は今なお成長を続けている。

マグマと溶岩の違い
マグマとは熱い岩石が溶融状態になったもの。
地球内部の熱によって溶けていると思われがちだが(私だ)、岩盤どうしが擦れ合うことによって発生する摩擦熱で溶けているらしい。
高温のものでは1200℃以上もある。地表に噴出する前の段階をマグマと言うのに対して、一度地表に現れたものは溶岩と言われる。
ちなみに、マグマとマントルを同じようなものだと思っている人がいるが(私だ)、マントルはカンラン石で出来た固体である。

マグマの構成物質
マグマの主成分はシリカ(二酸化ケイ素)で、ほかには金属などの元素や、揮発性成分として火山ガスが溶け込んでいる。火山ガスは噴火に際してマグマから分離して噴煙となる。火山ガスの大部分は水蒸気で、ほかに二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄などが含まれる。ちなみに火山ガスの成分は、水蒸気以外有毒である。
さらに、マグマはその材料のカンラン石や、発生場所から地表までの通り道にあった岩石を運んでくることがある。このような岩石はゼノリスといい、地球内部の物質的な構成を知る重要な手がかりになる。

マグマの性質を決定する要因
シリカの量とマグマの温度でマグマの性質は決まっている。
シリカの量が多く、温度が低いと、粘り気が強く、白っぽくなる。これをデイサイト質・流紋岩質マグマという。
シリカの量が少なく、温度が高いと、粘り気が弱く、黒っぽくなる。これを玄武岩質マグマという。

マグマができる条件
以下の3つがある。

①高温
マントルのカンラン石が高温になると、圧力が同じでもカンラン石が溶けてマグマが生じる可能性がある。

②低圧
マントルのカンラン石が上昇して圧力が下がると、融点が下がるため、温度が同じでもカンラン石が溶けてマグマが生じる可能性がある。

③水の添加
カンラン石に水が添加されると、カンラン石の溶ける温度が大幅に下がり、高温や低圧にならなくてもマグマが生じる。

地震波の種類
地震波には伸び縮みが伝わる縦波のP波と、ズレが伝わる横波のS波がある。
P波は進む速度が速く(秒速5~6キロメートル)、固体の地殻・マントル・内核も、液体の外核も伝わる。また振れ幅が小さい。
S波は進む速度が遅く(秒速3~3.5キロメートル)、固体は伝わるが、液体は伝わらない。
また振れ幅が大きい。

震度とマグニチュード
震度は地震動の強さを表し、そのため同じ地震でも震源から離れると小さくなる傾向がある。また震源からの距離が同じ場合はマグニチュードが大きいほうが震度は大きい。
震度は以前は観測所での体感や被害の大きさから決められていたが、現在では各地の震度計が感知した加速度で決定されている。震度は国によって基準が異なり、日本では10段階の気象庁震度階級が使われている。
マグニチュードは地震の規模、つまり、放出された地震波のエネルギーの強さを表す。そのためマグニチュードは同じ地震なら同じ値である。基本的にマグニチュードが1上がると地震の規模は32倍になる。

海溝型地震と内陸活断層型地震
海溝型地震は、プレートの沈み込みによって起きる地震。
太平洋岸に、地震動による直接被害や津波をもたらす、マグニチュード8を超えるクラスの地震が、数十~数百年の短い間隔で同じ場所で繰り返し発生する。

内陸活断層型地震は、内陸部の割れ目である活断層が壊れてずれることで起きる地震で、規模はさほど大きくないものの、震源が都市に近い場合は大きな被害をもたらす可能性がある。
1つの活断層による大地震発生間隔は1000年から数万年と非常に長いが、日本は活断層の数が大変多いので(カウントされているものだけで2000を超える)、地震が多発しているように感じる。
ちなみに、西南日本内陸部の断層は横ずれ型が多いのに対し、東北日本内陸部の断層は縦ずれ型が多い。
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