『マンガ学―マンガによるマンガのためのマンガ理論』

 著者はスコット・マクラウド氏。19日の『アベンジャーズ』オフ会の際に、パキPさんに貸していただいた絶版本。

 漫画についての本は日本にもそれこそたくさんあるけれど、この本は漫画家志望者が読むような漫画の描き方本ではない。漫画表現の構造を学術的に考察した研究本なのだ。
 漫画を連続性の芸術とし、コマとコマの非連続的な構成に対して、読者が連続的な意味性を能動的に補完するような、漫画特有のコンテキストについて言及するところとか、まるでエイゼンシュテインの映画論のよう(カットがコマになったような感じ)。

 というわけで「漫画文化は日本が世界一。アメリカごときに漫画が分かるのかよ」と馬鹿にしていた岡田斗司夫さんも、どっぷりハマってしまい監訳までやってしまったという、とってもインテリジェンスで読み応えのある本なのです。
 
 かくいう私も、後半の「美術史において絵画表現が再び意味性を重視しだした」っていうところあたりからすっごい面白くなってきちゃって、あとはもうあとがきまで一直線!
 漫画は恥じることのない日本の文化だ!というなら、私たち日本の読み手もこれくらいまで学術的に漫画を理解しても楽しいと思う。
 ※でもこの本、漫画で書かれている割には前述したとおりかなり内容が硬派で、正直一気読みはすっごい疲れます(経験者は語る)。

 まあそんな感じで本書は、美学的文脈から漫画という表現手法を1から定義していく。例えば、中世以降まで優れた美術作品はないと言われていた英国ロマン主義の画家ホガースを漫画の文脈で紹介するあたり、すっごい新鮮。
 漫画を取り巻く状況は日本よりもアメリカのほうがアゲンストなのかも。だからこそ著者は、古代~現代に至る全ての美術を振り返って、漫画の文脈が美術史にどのようにコミットしていたかを丁寧に論じていく。漫画だって立派な芸術なのだ、と。

 また『マンガ学』170ページからの「作家の6つのステップ」は私たちワナビ必読の章。
 6つのステップとは「1発想と動機」「2表現形式」「3文法」「4構成」「5技術」「6外観」なんだけど、著者のスコット・マクラウド氏曰く大体の漫画家志望者は6⇒1に進んでいくらしい。
 でも私の場合はストーリーから作っていくからこの6つのステップは全く逆で1⇒6に進んでいくんだよなあ。
 ・・・というか、6⇒1って優れた鑑賞者(受け手)が歩むステップじゃないか?とも思う。作家の精神性に他者が接近するときこの順序で紐解かれるような。大体は6どまりか、よくて5。

 またこの章でとりわけ印象的な「見てくれだけ良くても齧ってみると…からっぽだ(179ページ)」というちょっと毒のあるアナロジーは、粗造乱造されている「ゆる萌え漫画」に近いのかもしれない。
 私が思うに、この手の漫画は、その空っぽの空間に読者がアイデンティティを能動的に補完しているから意味(面白さ)が発生しているのであって、あのジャンルにあるのは器(場)だけのような気がする。
 だからこそこの手のジャンルにちょっとでも批判的な意見があると、ファンは脊髄反射的に反論してしまう。自分のアイデンティティを批判されたと勘違いしてしまうから。

 しかしアメリカっていうのは宗教のせいか、文化や歴史のせいかわからないけれど、どんな分野でもリアルにしっかりコミットするようなところがある。サブカルチャーと揶揄される漫画や映画の世界でもそう。
 リアルからの逃避のための文化というよりは、人がリアルに直面するためのきっかけになるような文化を作っているところがかっこいい。

 アメコミの方が日本も漫画よりも全面的に優れているとは思わないけれど、日本の漫画にはない勉強になるところはいっぱいある。
 そのひとつがこの「リアルを主題にすることから逃げない」という点だ。お説教臭くなくエンタメの形をとりながら、それでもできることはある気がする。最初から空気読んで諦めちゃなあ。表現者なんだから。

 そんなわけで『80日間宇宙一周』アイドル編を公開に踏み切った。もうなにも怖くない。いや怖いけど。すっごい怖いけど。

あの夏、いちばん静かな海。

 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆」

 あの~すいません。9万8千円の奴、1万円になりませんか?

 なるわけないだろバカヤロウ、お前らなめてんのか。


 マロさんおすすめのたけし映画。実は私たけしさんかなり好きだけど、たけし映画ってそんなに見てない。深夜テレビでやってたらちょっと見るくらいで。
 で、この映画は1991年に撮られたたけし映画の第三弾。91年だけあって、作中でチキンタツタ食べてたりいろいろ懐かしい。あの箱・・・!

 たけしさんが今も仏壇で毎日手を合わせている人で映画評論家の淀川長治さんがいる。なんと淀川さんはこの映画を日本映画史の中でもトップクラスの出来と賞賛。
 おそらく当時は「なに芸人ふぜいが気まぐれで映画撮ってんだ、甘くねえぞバカやろう」くらいの風当たりはあったと思うんだけど、淀川さんの評価で本当に風向きが変わったのかもしれない(サーフィンの映画だしね)。
 私の好きな映画で『レミーのおいしいレストラン』ってのがあって、そこに出てくる料理評論家アントン・イーゴー先生は「評論家とは新しい才能を見つけ守ること」と述べている。
 そう言う意味では「世界のキタノ」と呼ばれる映画監督北野武が今いるのも淀川さんのおかげなのかもしれない。

 昨今ネットの進歩で誰もが評論家気取りで、他人の作った作品に偉そうに審判ができるようになった。しかし私たち素人の評論もどきと、評論家の評論ってひとつ違うことがある。
 それは評論家の評論は、評論だけで独立したひとつの作品であるということ。つまりそう言う意味で評論家もクリエイターなのだ。
 だからこそクリエイトするものへの敬意っていうのがあるんじゃなかろうか、と。いい作家はいい評価をしてくれる支援者がいて初めて成功する・・・ええと、そこらへんは『レミー』の記事で言ったかw最近話す内容がかぶってきたなあ、ブログの記事もそろそろ700に登るしね。

 キタノブルーと言われる映像美と、どこか不思議で物悲しい音楽は秀逸。特に音楽は冒頭からこの映画の独特なテンポや雰囲気を象徴し・・・ちょっと眠くなったけど、あれ?この音楽なんかラピュタっぽいな?と思ったらやはり久石譲さんだったw
 あとたけしさんってあまりカメラを動かさずに引きとよりのメリハリを付けるよね。そして画をほぼ真横からぶち抜く。それもひとつの絵画のような構図で。
 この映画は特にそんな傾向が顕著に現れていて、この手法はアウトレイジの冒頭のシーンとかでも効果的に使われている。あれは真横じゃなくて真上なんだけど、それでも俯瞰とアオリをあまり使わないのは印象的だ。

 ぶっちゃけ作中セリフはほとんどない。おしゃれなサイレント映画を見ている感じ。主人公とヒロインがまったく喋らず(というか喋れないんだが)、二人を取り巻く脇役にセリフがあるというのはかなり実験的。
 哲学的な話だけど、実はこれってルビンの壺(知らない人は検索して)みたいなもので、背景を描けば、おのずと背景の中にいる絵の主題って浮き上がってくるもんなんだよね。
 つまり主人公を喋らせなくても、その周りにいる舞台、人物、間を固めれば、主人公は切り取られてキャラだちしてしまう。私たちは白い紙の上に生きているわけじゃない。主体は客体なしでは存在できない。
 最近書いた『80日間宇宙一周』の脚本も実は一番先に決めるのは、どの惑星を舞台にして、その惑星がどんな社会構造かを決めること。社会を決めれば、そこに生きる人って大体決まってくる。それを究極的に突き詰めれば、こういう映画の形になるのかもしれない。

 雰囲気を感じるというこの手の映画といえば、やっぱりこの前見た『おおかみこどもの雨と雪』だけど、あれからあざとさを引いてかなり抽象化させればこれになる気がする。
 『おおかみこども』はこれと同じようなことがやりたいのだろうけれど、かなりわかりやすく作っちゃったって感じだ。その点、岡田斗司夫さんが言うように水戸黄門のような大衆娯楽作品なのだろう。
 私はこういう言葉で語れないような、考えるのではなく感じさせる映画って個人的にはあまり好みではないのだけど、この映画の方がアートに近いのは何かわかる。
 ある種、一切の情念性を排除し淡々と構成されたオプティカルアートというか。それなのに情念が醸し出されるあたり…やっぱり、たけし監督只者じゃないですね。

 しかし、本当たったこれだけの要素で恋愛映画が作れちゃうってことだよな。安部公房が水嶋ヒロと同じようなことをたった数ページでもっと上手に作ってたのと一緒かも。

 さて物議を醸したというラストシーン。黒澤監督は蛇足と言ったそうだけど、確かに「蛇足」とも言えるし、たけしさんが言うように「サービス」とも取れる。
 そして・・・本当におこがましいのだけどソニックブレイドのラストに似てる。
 だからあの意味が結構わかる(その解釈で合ってるかどうかは知らない)。う~ん、この前見たロボットSF映画『アイアンマン』といい、ソニックブレイドを描かねばならんぞ。つーか締切りがあるんだけど。

 あとアウトレイジ ビヨンドが楽しみでたまらない!

 誰がまたヤクザやるって言ったんだよ!?

マイティ・ソー

 「面白い度☆☆ 好き度☆☆☆」

 本部へ。ジャッキー・チェンとゼナとロビンフッドを発見。

 『アベンジャーズ』を見てからあの映画で共闘したヒーローが一体どういう人生辿ってきたか興味が出てきちゃって、とりあえずまずはこの人から。

 この映画公開当時、私はあらすじだけは知ってて、あるわがままな神の子があまりに素行が悪いから天界を追放されて人間界で反省し成長する物語ということだった。
 だからソーって一体どんな傍若無人なやつかと思ったら、これが全然いいやつ。アベンジャーズでも「あれ?そんなオラオラキャラじゃない、いいやつじゃん!」って思ったんだけれど、それはきっと『アベンジャーズ』の前に公開された、この『マイティ・ソー』で反省したからなんだろうな、って思ってた。

 だからこそ、この映画でどんな不良だったのか楽しみにしていたんだけれど・・・単純に口がうまい知略家の弟に乗せられ、正義感に駆られて敵国に攻め入っちゃった熱血漢でした。
 つまりソーは不良といってもグレたチンピラとかじゃなくて面倒見のいい昔の番長みたいな感じなんだよw
 だからもともと最初から優しくて、まあだからこそ父オーディーンは彼を後継者に選んだんだけど。
 でも私、もっと悪漢かと思ってたよ。で、とことんぶちのめされて、やっと自分の過ちに気づく。そっちのほうが落差が大きくてよかったんじゃないかなあって思ったけれど、一応、彼、正義のヒーローな上に神様だもんねwあれくらいでよかったのかもしれない・・・

 ええと、まあ、そんな感じで映画のシナリオ自体はかなりシンプルで、だけれども北欧神話をモチーフにしただけあってかなり教訓めいた内容になっている。
 こういう話って私結構好きで、友達にも「お前の漫画って結構教訓があるよな」って言われたことがある。
 やっぱり漫画ってさ、まずもってちびっこに見せるものなんだから(最近は大人受けにシフトしてる気もするけど)、「女子供はぶっ殺せ~ヒャハハハ!」を肯定するわけにはいかんと思う。
 幼女をいじめるエロ漫画とかもそういうのが好きな人がいるのはわかるけれど、やっぱり私には描けんのだ。

 そういえば『おおかみこどもの雨と雪』のコメントでけんこさんが

女子なら一度は吸血鬼やら狼男やらに恋するものなのです。
トワイライトシリーズとか大人気なのがその証拠!
秘密の共有、特別な秘密を持つ彼を私だけが分かってあげられる、
そしてそんな特別な彼に愛される特別な私、とか萌えるシチュエーションとしては
いろいろ揃ってると思います。。。


 と仰っていたんですけど、確かに特別な男性との秘密の共有って女子には堪らないシチュエーションなんだろうなあ、とw
 そう考えるとソーってかなり神秘的かつ魅力的。なにしろ住んでる世界が違うからね。

 『おおかみこども~』の鑑賞時には私はその目線で楽しむことはできなかったけど(男子だしな)、今回はなんかちょっと乙女心の境地がわかった気がする(わかって何なんだって話もするけど)。
 確かにソーが宇宙の仕組みをジェーンに教えるシーンではキュン♡としちゃったよ、チクショウ。
 なんかペンとノートを使って一生懸命「この宇宙には9つの世界があって・・・ここが地球、君の星だ。でここがアズガルド。私はここから来た。これらの世界はユグドラシルの木でつながっていて・・・」って説明するんだけど、その時の表情がちょっと男の子に戻っててさ、ワイルドだけど純粋で可愛いんだよな、あいつ。

 世界観といえば、アズガルドという世界というか国家構造がちょっとよくわからなかったのは残念。神の世界って誰も見たことないからリアリティもへったくれもないんだけどさw
 でも広大な宇宙の支配者が住む世界の割に狭い感じがしたなあ。同じセットを使いまわしているからかね?セットって言っちゃあれか(汗)
 でも神様も食事したり死んじゃったりするんだから(あれ?『アベンジャーズ』では神は死なないって言ってたぞ??)、別に家に歯ブラシとか電動シェーバーといった生活用品や家具が並んででもいいんだろうけど。
 でも過剰に生活感を出すのにもスタッフ抵抗あったんだろうな、神の世界だし。だからなんか無駄のない前衛的な設計の未来都市みたくなっちゃてた。よくこじゃれたデザイナーがああいう住宅デザインするよね。

 どうやって住むねん。みたいな家。

 ちなみに私はあのメガネをかけた、いつもカッたるそうな女子大学生が好きでした。メガネ女子本当好きだなあ、私。

『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』制作裏話

 いや~調子に乗った。

 さすがに3回目となるとマンネリとの戦いになってきちゃって、かなり辛かった。設定のマンネリ、ストーリー展開のマンネリ、そしてキャラのマンネリ・・・
 マンネリ化するってのは結局元がそこそこ面白いってことだから肯定的にも取れるんだけど、書いている方が結構しんどくなってくる。
 ああ、こんなシチュエーション前にも一度書いたな~って覚えてるから。同じこと何度もやれないし・・・でもミグとライトが宇宙船で色々な星に行ってそこで様々な人と交流するっていう設定は変えられないからなあ。

 ・・・ってやっぱこれ、水戸黄門だよね。

 だからもうこのシリーズで多くは書けないな、と悟った。あと2本くらいで完結させちゃおうと思う。火星と地球かな。木星は・・・どうすっかw
 とにかく完結編の構想はもう既にだいたい出来ているから終わらせる気になればいつでも出来るんだけれど、4作目以降はちょっと期間をおいて新鮮な気持ちに戻したほうがいいかもしれない。
 てことで今回を持って『80日~』は無期限休養に入ります。あとはマロさんの小説を楽しむとして・・・(笑)

 さて今回の天王星の話、ネタ的にはかなり気に入ってるんだけど、作中で描かれるアイドルとか社会情勢とかがちょっとやばそうな気がするので(一時期、お蔵入りを真剣に検討した)、そこはあくまでもこの物語はフィクションであるということを念頭に置いて読んでください。
 いや、私の漫画なんてみんな大して読んでないから、そこはインディーズの強みというか、まあ、気楽なところなんですけどね。人気作家じゃ絶対書けないぞ、これ。でも島本先生ならやっちゃう気がするw

 というわけで登場人物について。今回はいよいよというか、ついにというか、ライトを中心に話を作ってみました(初めてライトのモノローグが出てくる)。
 実はライトってこのシリーズではけっこうなデウスエキスマキナ(ちょっといいセリフ言って話の方向性を変えることができる使い勝手のいいキャラ)だったんだけど、今回はライトの話なのでそうはいかない。だから結構書いてて心細かったです。

 その、F先生が『ブリキのラビリンス』でドラえもんを壊しちゃった時、その後の展開どうしようってきっと不安になられたと思うんですけど、そんな追体験を勝手に妄想してました。いや、これは偉大な巨匠に対して恐れ多いですね。

 今回のテーマは「夢」。一作目で夢を絶対に諦めないというキャラ設定にしたライトをどう掘り下げていくか、けっこう悩んだんですが、あっそうだ、ライト並みかそれ以上に夢に向かって真っ直ぐな純粋なキャラを出してみたら面白いんじゃないか?というコンセプトでアリエル・スカイという女の子を考えました。
 ツイッターでもつぶやいたんですが、私の漫画って結構女の子が出てくるんだけど、この『80日間宇宙一周』のシリーズってなにげに一度も女の子が登場していない稀有なタイトル。

 で、いよいよ満をじしての美少女キャラ投入だったんですが、前回のルヴェリエ王子が隙間家具のようにミグとライトの間にスポンと入ったのに対して、女の子のアリエルはどうやってもライトとミグの微妙な関係をある種破壊してしまうような、少女漫画の三角関係にありがちなライバルキャラっぽくなってしまってちょっと手こずりました(アリエルが嫌な奴に見えちゃう)。

 とはいえアリエルが16歳前後だとしてライトが25歳、ミグが31歳・・・どんなトライアングルだってなるじゃないですかw
 31歳が16歳に嫉妬するってのもなんかおかしな話だしw
 で、やばいやばい、このラブコメ展開気持ち悪いと悩んでいたら、ある時ひらめいた!ミグとライトを別行動させればいいんだ、と。

 これぞカーズ2に私が学んだダブルプロット構造なのだ!(普通はシェイクスピアだろ)

 つまりミグとライトを一度喧嘩させて引き離し、お互いに相手の良さを再確認するような構造にすればいいと思ったんです。これが決まればもうラストまでは一直線・・・あれ?これ海王星の時も言ったかw
 でも本当に物語って起承転結の起承までできればあとは方向性は決まっちゃうからなあ・・・とにかく辛いのは起承。激ムズです。

 あと何が難しかったかなあ…?一応天王星のモチーフはローマ帝国の共和制末期あたりなんだけど、領土問題どうこうは・・・まあ察してw
 マイナーなアイドル文化がある種、国家全体を揺るがす信仰になるのも、コンスタンティヌス帝が某宗教を最終的に国教に・・・察して!!

 そういえば今ってここまでアイドルブームな割にアイドル業界の実態がまったくわからないよな。いや夢を売る商売だから、そういう暗部は非公開っていうのはわかるんだけど、このネット時代、元アイドルとかがアイドル業界の構造をつまびらかにぶっちゃけたってよさそうなもんじゃん。ノンディスクロージャー契約でも引退時に結ばさせられてんのかなあ?
 同じ夢を売る商売の漫画業界は『バクマン。』が原稿料まで大発表しちゃったのになあ・・・

 とにかくシングルを売るにしても事務所にどれだけ入るのか、印税の分配はどうなっているのか。作曲者、編曲者、作詞家、アイドルと来て、例えばAKB48のような大所帯の場合、彼女らにどれだけのマージンがいっているのか、とかいろいろ気になる。
 で、そういう業界の裏話を作中でも使いたかったんだけど、本当調べても出てこなくて(本もあんまねえし)、仕方ないから私が勝手に想像力で新人アイドルの一日をシミュレーションしてみました。
 よってあれは全くの素人の想像なので、多分違うと思うw

 アイドルといえば、作中で宇宙で最も人気があるアイドルという設定にしたジュリエッタの大物アイドル感を出すのが結構大変だった。あれ、見る人が見ればわかるけれどレディ・ガガさんがモチーフ。
 また、機械のアイドルでもファンが差別せずに応援してくれるってオチは10年前だと「んなわけないじゃん、田代の漫画っていつもご都合主義だよなあ」って馬鹿にされたと思うんだけど、今は実例がいるからね。いるからね!ファミマにいるからね!!

 スゲエ時代だ!!!

『80日間宇宙一周 Galaxy Minerva』脚本⑧

調整室を追い出されるミグ
ミグ「おい!話は終わってないぞ!」
社長「こっちは終わった。」
マネージャー「まったく最近のファンはマナーがなっちゃいないですよね・・・」
調整室のドアが締められ鍵がかけられる。
ミグ「ファン・・・そうだ・・・!」
客席の方にかけていくミグ。

大熱狂の客席。
カメラを構えるファンに話しかけるミグ。
ミグ「なあ君らファンだろ!」
ファン「なんだこのおばさん」
「ライブ中ですよ。迷惑だなあ・・・」
「頼む、今日のライブの曲で最もジュリエッタが映える曲を教えてくれ!」
「それなら・・・今歌ってる曲だよ。」
ミグ「え・・・!?じゃあ、この曲のどの部分の振り付けが一番ジュリエッタを抜ける!?」
「二番のサビでしょ。だからもうそろそろどいてくれない?」
インカムを押さえるミグ「ライト分かった!この曲の二番のサビでジュリエッタは一人になる!」

バックステージ
猛スピードでステージへ駆け出すライト「ってもうやないか~~!!」



ステージ。
数え切れない観客の熱気に圧倒されるアリエル
目をつむって衛星ファーディナンドでライトにだけ歌ったコンサートを思い出す。

ライト「さあ、聞かせてくれ!客はオレだけや、これなら緊張もせんやろ!」

リラックスして歌いだすアリエル。
会場の空気が変わる。
ファン「なんだあの子・・・すげえ・・・!」



バックステージ
ステージ横のライトが、客席からステージの方に向かって銃を構える警備員を見つける。
ライト「いた!ミグ!今、お前のいる場所からステージの方へ10メートルいったところや!」
ミグ「分かった!」
ピストルの引き金に手をかける警備員。
ライト「あかん間に合わへん!!」
ライトがステージに飛び出してくる
「ジュリエッタふせろ~~~~!」
ライトがジュリエッタに飛びかかり押し倒す。

銃声

人が撃たれて倒れる音。
会場が絶叫する。逃げ惑う人々。
警備員「落ち着いて!落ち着いてください!!」
会場はパニックになる。

ステージ
ライト「はあはあ・・・大丈夫か!?」
ジュリエッタ「ええ、私は・・・でも・・・」
ジュリエッタがライトの後ろを指差す
振り返るライト「!」
二人の後ろでアリエルが倒れている。
ライト「アリエル!!」
アリエル「・・・え?」

殺し屋「なんだと!なぜ振り付けが変わった!!?」
殺し屋の背後からミグが体当たりする。
「ぐわっ!」
殺し屋を取り押さえるミグ「お前は本当に運がいい。昔の私ならお前を殺していた・・・」



ステージ
アリエルに駆け寄るライト「アリエル!!」
アリエル「生きてます・・・でも・・・これって・・・まずいですよね・・・」
口径の大きい銃で撃たれ上半身と下半身がちぎれてしまっているアリエル。
ライト「そんな・・・」
アリエル「そうか・・・私なんかがオーディションにあっさり受かったのは、私をジュリエッタさんの身代わりにするためだったんですね・・・うまい話ってないんだな・・・」
ジュリエッタ「だから事務所は直前に振り付けを変えたんだ・・・ひどい・・・」
ライト「アリエル・・・」
アリエル「・・・全て分かりました・・・私がなぜ生まれたのか・・・
私は最初からジュリエッタさんの模倣品として作られたんだ・・・
私の夢は・・・あらかじめプログラムされていたんですね・・・」
アリエルの胴体からは配線が飛び出ている。
涙を流すアリエル「私は・・・人間ですらなかったんだ・・・」
アリエルの上半身を優しく抱きしめるライト「・・・・・・。」



ライブ会場の地下駐車場
車に乗り込み逃げ出そうとする社長。
ゲオルグ「天王星に逃げ帰るのなら送っていくぜ」
社長「な・・・」
ゲオルグ「第7惑星プロ、ジェームズ・キャリバン。殺人容疑、及びロボット保護法違反で逮捕する。」
社長「何だお前ら・・・!?なんの証拠があってそんなこと・・・!」
ゲオルグ「ミグが捕まえた殺し屋が全て吐いたよ。言い訳は天王星で聞こう。」




その後・・・
オセロ第一警察署
喫煙エリアでタバコをふかすゲオルグ
ミグに新聞を見せる「ったく、またアイツがいいとこどりだ・・・」
「地球の冒険家、人気アイドルを救う!」の見出し。
新聞をめくるミグ。
二面には「九死に一生を得たジュリエッタ。天王星と土星の領土問題に平和的に取り組むことを宣言」のニュース。
ゲオルグ「取り調べの結果、土星の一部の過激派と第7惑星プロの犯行ということになった。」
ミグ「サーペンタリウスの関与は?」
ゲオルグ「・・・あの強欲社長に天王星が再軍備に向かうようにそそのかしたのは、どう考えても土星じゃないだろ。必ず真相を突き止めてみせるさ。」
ミグ「それで・・・あの子は・・・?」
ゲオルグ「ああ、あのアンドロイドか。第7惑星プロが事務所の命令に忠実に動くアイドルを作ったらしいが、機械で人の心は動かないと判断し持て余していたみたいだな。かわいそうに。」

警察署の庭。
ライトに修理されて一命をとりとめた車椅子のアリエルがぼんやりと空を見つめている。
アリエルの隣に座るライト。
ライト「なあ・・・また笑ってくれよ・・・」
アリエル「・・・・・・。」
ライト「オレ、アリエルの笑顔が大好きなんやけどな・・・
あんたの笑顔を見ていると・・・恥ずかしいけど・・・夢を決して諦めなかった初恋の人を思い出してまうねん・・・」
「・・・その人・・・夢は叶いました・・・?」
「ああ・・・絶対叶わへんとみんなに馬鹿にされた夢やったけど・・・叶えたよ。」
「・・・叶ったんだ・・・。」
「キミといっしょや・・・」
「そうでしょうか・・・」
「キミだって夢を叶えたやないか。
ジュリエッタのライブに出て大勢のファンの前で歌ったんやから・・・」
「でも・・・人間でもない私の歌なんて気味悪がって誰も聞きませんよ・・・私の声はジュリエッタさんのサンプリングでしかない。」
「そうかな、少なくともあの会場にいたお客はみんな感動したんちゃうんか?
それに海兵隊どもだって・・・アリエルが人間かどうかなんて関係ないんやないか?」
「じゃあ、私と結婚してくれますか?」
「え・・・?」
「人間かどうか関係がないなら、私と・・・!」
真剣な表情になるライト「ああ、お前がそれでええなら結婚でもなんでもしたる。
でもアイドルの夢はいいんか。お前の大事な夢やったんやないのか。
オレが大好きなアリエルは、どんなことがあっても決して夢をあきらめないんや。」
微笑むライト
アリエル「・・・・・・。」



警察署の窓から庭を見下ろすミグ
ミグ「あいつ・・・何日も何日も彼女を励ましてる・・・」
胸に手を当てるミグ。
ゲオルグ「ふん、いつまでやってんだ。ま・・・相変わらずだがな。」
ミグ「あの・・・ライトとは古いんですか?」
ゲオルグ「ああ、まあな。前にあいつがこの星に来たとき、あの野郎、オレが長年追ってた事件を勝手に解決してまた飛んでいっちまったんだ。オレの刑事のプライドはズタボロだよ。」
微笑むミグ
ゲオルグ「何がおかしい?」
ミグ「いえ、私も同じようなことをされましてね・・・空から突然降ってきて私の暮らしはシッチャカメッチャカ・・・」
ニヤリとするゲオルグ「ふん、どこに行ってもはた迷惑なやつだな・・・」
ミグ「ええ・・・でもアイツに会えてよかった・・・」

居酒屋フォンブラウン
デニス「でもライト君が来てからあなた変わったわ・・・前は機械のように無表情だったのに・・・感情が芽生えたというか・・・彼はきっととっても人間的な人なのね。」
ミグ「ふん、あいつが?秩序は乱すしどっちかというと人でなしだよ。」
デニス「そうかしら。私は好きだなあ。ああいう男性。
正直言うとね、うちの旦那に似てるんだ。普段はノーテンキけど、ひとつのことに夢中で取り組めて、なんだかんだで必ず私の味方でいてくれる・・・助けてくれる。」
「独身の私には理解できん世界だよ」
笑うデニス「ミグ、忘れてるみたいだけど、誰だって最初はひとりで生まれてくるのよ?」


ミグ「私・・・あいつに何度命を助けられたんだろう・・・?何度孤独から救ってくれたんだろう?」
ゲオルグ「あんたもあのアリエルといっしょってことか。」
ミグ「それならいいな・・・」



トポロ劇場
バックステージ
アリエルの背中を押すライト「さ、行ってこい。」
不安なアリエル
幕が開く。拍手と大歓声。席は満席で立ち見もいる。
ファン「アリエル~~~!」
アリエル「なんで・・・」
ファン「俺たちファンは機械だろうが人間だろうが関係ない!アリエルの歌が聞きたいんだ!もう一度歌ってよアリエル!」
涙ぐむアリエル「・・・はい・・・」



リンドバーグ号に乗り込むライト
「じゃあなアリエル、すっごいアイドルになれよ~!」
リンドバーグ号に駆け寄るアリエル「ライトさん、ありがとう・・・大好き!」
離陸するリンドバーグ号。

リンドバーグ号船内。
ミグ「大好きだって・・・天王星に残っても良かったんだぞ、ん?」
ライト「からかうなよミグ。それに・・・アリエルはもう立派なアイドルやないか。」
ミグ「・・・なあ、ひとつ聞いていいかな?」
ライト「なに?」
ミグ「お前は夢を諦めたことって一度もないのか?」
ライト「・・・ないね。」
「前から不思議だったんだ。どうしたらお前のような強い心をもてるんだ?」
「・・・オレはな、ある人と約束したんよ。絶対夢は諦めないって。」
「約束?」
「その人はオレの友人でもあり・・・憧れの人だった。」
口をあんぐり開けるミグ。
「なんやねん・・・」
「お、お前にまさかそんな人がいたなんて・・・破天荒を絵に書いた君が・・・!」
「うっさい、もうその話は終わり!」



教会。
レオナの葬式が終わり出席者がぞろぞろ帰っていく。
最後に教会から出て、振り返り、空を見上げるライト
ライト「・・・わかったよ・・・」



宇宙を進むリンドバーグ号
歯磨きしているライト「おはよ~ミグ・・・ん?なんやこの明細書・・・
ミグ・チオルコフスキー様あなた様のシングルが売れ、印税収入が発生したので振り込み額をご確認ください??」
慌てるミグ「あ、勝手に読むな!」
ライト「お前いつの間に天王星で歌手デビューしてたんや!?なに?初音ミグ、ファーストシングル“寿司屋”?宇宙オリコン6万位ってすごいのかなんなのかわからへんけど・・・ちょ、歌ってみて!」
ミグ「やだよ恥ずかしい。」
「一回!その寿司屋って曲聞かせて~や!俺はお前の歌が聞きたいんや!」
「怒るぞ!」

おしまい
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