『ラストパーティ』脚本⑲

エゼルバルド城従業員専用転送ゲート
ヨシヒコ「パスワードは上上下下左右左右BA・・・」
城内の隠し部屋の扉を開けるヨシヒコ
ヨシヒコ「パスワードが変更されてなくてよかった・・・」
扉の中に入って階段を下りると、転送ゲートが起動している。
シルビア「世界にはこんな魔法があるのね・・・」
ヨシヒコ「・・・湯浅さんうまくやってくれたようだ・・・」
扉の向こうには薄暗い路地が続いている。
ヨシヒコ「ここに飛び込む勇気はある?」
シルビア「だいじょうぶです。
ヨシヒコさんがファイターに殴られても手当してあげる・・・」
ヨシヒコ「はは・・・君はうちの一番上の娘に似てるな・・・」
シルビア「あら。ではきっといい娘さんね。」
ヨシヒコ「ヴィンツァー卿とはどんな関係なのかね。」
シルビア「お母さんがあの人と同じパーティだったのよ・・・
わたしもお母さんみたいに世界を救いたかったんだけど・・・
ヴィンツァーに危険だぞっていつも反対されてね・・・」
ヨシヒコ「それは君のことを大切に思っているからだよ・・・」
シルビア「今ならわかります・・・でも、あの人に死ぬまで守ってもらうわけにはいかないでしょう?」
ヨシヒコ「・・・そうだね・・・」
シルビア「あたしだってもう27だし・・・」
ヨシヒコ「え!?16歳くらいだと思ってた・・・!!」
シルビア「心配しないで・・・足でまといにはなりません。」
ヨシヒコ「OK・・・では、行こうか。九龍へ。」



エゼルバルド城下町
領民はいつもと変わらぬ様子で市場でショッピングをしている。
ヴィンツァー「よかった・・・まだ軍隊が引き上げたことには気づいてないようだ・・・」
ゼリーマン「のんきなやつらだ・・・ええと・・・旦那が書いてくれた地図によると・・・
転送ゲートはあの目立たない民家の中だ。」
小さな民家の中に入ると、中には地下に続く階段だけがあり、地下に降りると広大な転送スペースが広がっている。
ヴィンツァー「きみとヨシヒコさんは長いのか?」
ゼリーマン「もう何年前だろうな・・・旦那から名刺をもらったのは・・・
俺みたいな雑魚キャラにあそこまで丁寧な対応をしてくれた人は初めてでね・・・
この世界のことをいろいろ教えてやったんだ・・・
近く戦争が起きそうだし、疫病も流行ってたし、テーマパークで客を来場させられるような世界じゃないっすよココって・・・」
ヴィンツァー「それで・・・?」
ゼリーマン「オレの意見を採用すると言って、すべてのゲートを引き上げた・・・
しかし、コマキ本社は旦那をクビにして、このマジックキングダムを安全な遊園地にするために強大な軍隊を送り込んできやがった・・・それが引き金となって、この戦争が始まった・・・」
ヴィンツァー「コマキのせいじゃないよ・・・遅かれ早かれ戦争は始まったはず・・・」
ゲートにエネルギーが充電され、ゲートの向こうにラスベガスのような砂漠が広がる。
ゼリーマン「ただ、俺たちモンスターは、コマキの環境破壊で住処を奪われてるんでね・・・
あいつらの汚ねえ金をここで全て奪い取ってやる・・・」
ヴィンツァー「ギャンブルなんてやったことないよ・・・不安だな。」
ゼリーマン「邪神をたった7人で退治するという大博打をやったんだろ?」
ヴィンツァー「だから怖いんだよ・・・」
ゲートに入っていく2人。



格闘ゲームエリア「九龍」
国民の100%が拳法の使い手というとんでもないリージョンである・・・!
「ブレードランナー」のような薄暗く汚い路地を歩くヨシヒコとシルビア。
ヨシヒコ「この世界は1年でノックアウトした人数が多いほど税金が安くなるんだ・・・
なので、他人と目を合わせてはいけない・・・ストリートファイトが始まってしまうからね・・・
とはいえ、やたら目をそらせたり下を向くのもいけない。
弱い人間だとされるとそれも狙われてしまう・・・」
話を聞きながら、弱弱そうな禿げた老人に挨拶をするシルビア。
「あら、おじいさん、ごきげんよう・・・」
ジジイ「くくく・・・小娘よ・・・それはわしへの挑戦か?」
シルビア「へ??」
ジジイ「ストファイ開始じゃあああああ!!!」
ジジイが上着を脱いで、呼吸を整えると筋肉ムキムキになる。
シルビア「きゃああああなんなのよ、このむき卵・・・!」
ヨシヒコ「だから目を合わせるなって・・・!」
シルビア「この世界、女子どもや老人はどう生きているのよ・・・!」
ヨシヒコ「チーム戦にして強いものが守る!
待った!私が戦おう、2対2だ!」
ジジイ「ほう・・・バアさんや!獲物じゃあ!」
屋台ですすっていたヌードルを道に投げ捨て、バク宙してやってくるババア
「けけけ・・・!年金の足しにさせてもらうよ・・・!!」
ババアはヌンチャクを振り回す。
シルビア「格闘技で凶器を使っていいの?」
ヨシヒコ「構わない・・・
だいじょうぶ・・・僕はこう見えてもフルコンタクト空手の有段者だ・・・
お年寄りには負けない・・・」
老夫婦二人がかりでボコボコにシバかれるヨシヒコ「いてててててて!!!」
ババア「きいい!なめるんじゃないよ!!!」
シルビア「・・・ねえ、飛び道具は・・・?」
ヨシヒコ「いててて・・・!それも構わない!波動拳が昨年解禁された!!」
ババア「次はあんただよ!覚悟おし!!」
すると、シルビアは手を振り上げて老夫婦に火炎弾を飛ばす。
ジジイ「ぐわああああ!まだ火葬は嫌じゃあ!!」
ババア「じいさん!死ぬ時は一緒だよ!!」
シルビア「あたしたちの勝ち?」
ジジイ「まいったまいった!!」
すると、今度は風を巻き起こし火炎を吹き消してしまう。
息を切らすババア「なんだい、驚いたね・・・
これならアルティメットタワーもあんたたち攻略できるんじゃないのかい?」
ヨシヒコ「アルティメットタワー?」
ジジイがジャンク街の方を指差すとスカイツリーのような巨大なタワーが見える。
ジジイ「世界チャンピオンが築いた塔での・・・天下一武道大会を何度開催しても、ろくな挑戦者が現れんから、自身の門下生100人をあのタワーに入れて、頂上まで登ってきた者としか戦わないことに決めたそうじゃ・・・」
ヨシヒコ「頂上まで行けたファイターは現れたんですか?」
ババア「オープンして半年だけど・・・誰もいないよ。
チャンプは馬鹿だよ!門下生を鍛え上げすぎたんだ。」
ジジイ「仮に登ってこれても、その時点でどんなファイターも満身創痍じゃし・・・」
シルビア「チャンプが登ればいいんじゃ・・・」
ヨシヒコ「では、あそこにいけばあいつがいるわけか・・・」
シルビア「あいつ?」
ヨシヒコ「九龍の世界チャンピオン・・・スパルタン草薙だよ。」



アルティメットタワー100階
チャンピオンの玉座の前で2人の格闘家が戦っている。
それを肘をついて眺めるチャンピオン「スパルタン草薙」
一人の格闘家が相手を倒す。
審判のスクールファイター「KO!」
勝利した門下生「はあはあ・・・」
草薙「よくやったサイクロン鈴木・・・褒めてつかわすぞ・・・」
札束を投げる草薙
札束を拾って礼をする鈴木「お・・・押忍!」
草薙「さて・・・ここでダブルアップのお時間です。
その100万キンポー・・・この私と戦って勝利すれば、二倍にすることができます。
どうしますか?」
声に元気がない鈴木「お・・・押忍・・・」
草薙「その押忍はイエスの押忍か、ノーの押忍か??」
鈴木「ハーフダブルの押忍です・・・」
鈴木を一撃で叩き潰す草薙「ぬうん!!」
鈴木「もぽえ!!」
草薙「退屈だ・・・!!この世界にオレをワクワクさせる格闘家はいないのか・・・!」

王の間の扉がバーンと開く。
門下生たちが吹き飛ばされる。
草薙「ぬう?」
シルビア「はあはあ・・・もうMPがないわよ・・・」
ヨシヒコ「ぜえぜえ・・・なんで100階建てのビルにエレベーターをつけないんだ・・・」
草薙「ほう・・・このアルティメットタワーを登頂できる者が現れたか・・・歓迎するぞ
炎のチャレンジャーよ・・・」
ヨシヒコ「私だよ・・・コマキ社の泉だ・・・」
草薙「おおっ久しいな!わが友よ・・・!
お前の世界のサオリ・ヨシダという生物兵器と戦える約束はどうなったんだ?」
ヨシヒコ「それは、まあ、おいおい・・・
それよりもスパルタン、異世界の魔王と戦いたくはないか?」
草薙「魔王??」
シルビア「ファイトマネーも奮発するわよ・・・」
草薙「・・・そいつはあだ名が魔王なのか?それとも・・・」
ヨシヒコ「地獄の業火を操る本物の悪魔の化身だ・・・」
草薙「ならファイトマネーなんか要らねえ・・・すぐにやらせてくれ。」
シルビア「・・・たかが格闘家のあなたに倒せるかしら?」
指を鳴らす草薙「言うじゃねえかナイチンゲール・・・」
ヨシヒコ「君の強さを疑うわけじゃないが、まずは試験を受けて欲しいんだ・・・」
草薙「試験だと?」
ヨシヒコ「簡単な試験だ。ほんの3000人の軍隊を全員ノックアウトして欲しい・・・」
草薙「3000か・・・難しいな・・・」
シルビア(・・・さすがに無理だった・・・?)
ヨシヒコ(う・・・うん・・・)
草薙「すまん1ラウンド5分で倒せる自信がねえ・・・10分くれ。」
ポカンと口を開けるヨシヒコとシルビア「・・・・・・。」

――「九龍」の格闘技世界チャンプ、スパルタン草薙が仲間になった!

『ラストパーティ』脚本⑱

エゼルバルド城作戦会議室
ベオウルフ「お前は勢力が二倍以上の敵に勝てるというんだな・・・!」
ゼリーマン「大勢力は指揮系統も結束も弱い。情報を攪乱すれば簡単につぶせる。」
ベオウルフ「軍を動かしたこともないのに偉そうに・・・」
ゼリーマン「スライムってだけで軍師採用試験の受験資格がなかったからな・・・」
ヨシヒコ「受けようとしたのか・・・」
ゼリーマン「地図を見ろ。ガリア軍は南から進軍してくる。
キャッスルヴァニア地方の北はハイランド・・・そこを超えたら王都だ。
城内の領民は2000人・・・こいつらをまとめてハイランド地方に移住させる。」
ベオウルフ「それこそ愚策・・・!民間人の亀の歩みでアキレスのようなガリア軍の機動歩兵部隊からは逃げ切れまい・・・!」
ゼリーマン「その時間稼ぎをあんたらがしろ。」
ベオウルフ「我々騎士が民の盾になれと・・・?」
ゼリーマン「そういうの好きだろう?」
兵士「しかし、敗れたらどうなる?エゼルバルドでガリア軍は物資を補給し、次は王都を狙うぞ」
ゼリーマン「そこだ。避難民に必要最低限の物資を持たせたら、エゼルバルド城を焼いちまえ。
ここで略奪できると思ったガリア軍は落胆するだろう。
さらに、北のアルフレド城とイケニ城で狼煙を上げろ。あたりの城塞都市を全て焼いて逃亡したと思わせるんだ。
するとどうなる?ガリア軍内部に不平不満がたまり、士気は下がり、バン!内部から崩壊だ。
もともとこいつらはならず者集団。仲間意識なんかねえ。
将軍のジルドレイを殺したものにTボーンステーキスペシャルディナーセットを振舞うと情報を流せば、喜んで反逆を起こすさ・・・」
ベオウルフ「どう思う、ヴィンツァーくん・・・」
ヴィンツァー「民間人は助かるが・・・君ら騎士団は良くて壊滅、悪くて全滅だ・・・」
ゼリーマン「もうひとつ手があるぜ・・・それはお前ら騎士団が領民を見捨てて、とっとと逃げちまうことだ。」
ヨシヒコ「そうなると、敵は王都まで進軍しないか?」
ゼリーマン「だいじょうぶです。その頃にはハイランドは冬。
補給路を伸ばしすぎて全員凍え死にます。
ジルドレイが利口なら、そうなる前に兵を引き上げるはずだ。」
兵士「・・・そっちにしませんか?」
ベオウルフ「でも、カッコ悪くないかね・・・」
兵士「団長、考えても見てください。
領民2000人と騎士800人の命どちらが国にとって重要ですか?」
ベオウルフ「確かに・・・ここで精鋭である我々がまとめて討ち死にしたらこの戦争は敗北・・・
断腸の思いだが領民には犠牲になってもらうとするか・・・」
シルビア「なんか、クソみたいな結論が出たわよ・・・」
ベオウルフ「礼を言うスライム。お前のおかげで決心がついた。」
ゼリーマン「よかったな。」
兵士「それでは全軍撤収!!」
作戦室を片付けてぞろぞろ出ていく騎士団。

ヨシヒコ「信じられない・・・市民を見捨てて軍隊が逃げ出したぞ・・・一体どうなるんだ?」
ゼリーマン「2000人の市民は皆殺しにされます。」
シルビア「それにあたしたちは含まれるの?」
ゼリーマン「あの馬鹿どもと一緒に逃げれば生き延びられるぜ?
封鎖されていた城門も解禁されるだろうしな。」
ヨシヒコ「虐殺を防げないのか??」
ゼリーマン「旦那・・・我々の目的は奥様の奪還でしょう?
こんなくだらねえ戦争に首を突っ込むことはないっすよ。とっとと出立しましょう。」
ヨシヒコ「しかし・・・キミが言ったように市民を北のハイランドに逃せば・・・」
ゼリーマン「ガリア軍を足止めする奴がいない。」
ヨシヒコ「ぼくらでなんとかできないのか・・・」
ゼリーマン「たった4人で??自殺行為だ。」
ヨシヒコ「だが猶予は6日間ある。」
ゼリーマン「もしかして・・・3000のガリア兵と戦うとか言いませんよね!?」
微笑むヨシヒコ「きみは最強のモンスターの王なんだろ?
だいじょうぶ・・・ぼくに考えがあるんだ・・・」
ゼリーマン「ちょ・・・!」
ヴィンツァー「・・・ヨシヒコさん・・・あなたは私の師匠に似ている・・・
シドニア・ウィンロード卿は、私財を投げ打ってまで自分の領民を守ろうとしていた・・・
ぼくは彼に何を教わったんだろうな・・・」
ヨシヒコ「ヴィンツァーさん・・・」
ヨシヒコに膝まづくヴィンツァー「サー・イズミ・・・私はあなたに従います。
どうぞご命令を・・・」
シルビア「あたしも簡単な魔法と、怪我の手当ならできます・・・!
ヨシヒコさん、みんなを助けてあげて・・・!」
ゼリーマン「ま、まあ・・・領主が出て行ったから、これでこの城を守れば、オレたちは一国一城の主か・・・旦那の作戦を聞きましょう・・・」
ヨシヒコ「キミは覚えているだろう?修道院でぼくが書いた手紙のことを・・・」
ゼリーマン「向こうからの加勢は期待できないのでは・・・?」
ヨシヒコ「ドリームワールドにはひとつだけ“裏技”があるんだ・・・」



ドリームワールド各リージョン転送ゲート管理室
椅子の背もたれに寄りかかって、さぼってスマホゲームをしている管理室の主。
ドリームワールド運営本部ゲートキーパー部長:長門守
「くそったれが~!!千連ガチャ引いて、SSRがゼロとはどういうことだこの野郎!」
スマホを投げつける長門「コマキの野郎・・・くそみてえなゲームばっかり作りやがって・・・
100万も課金しちまった・・・ああ、ばかばかしい・・・
しかし、泉と小田は帰還する気配がないな・・・死んだな。」
機械室のような部屋に入ってくる湯浅「半分あたりで半分はずれだ・・・」
長門「・・・こんな窓際部署に人が来るとは珍しい・・・ようこそ我が城へ。」
湯浅「ドリームワールドのすべての転送ゲートは君が管理していると聞いたが・・・」
長門「その通り。転送先をスイッチングするだけの誰でもできる退屈な仕事だ・・・
こんなことをするために私は量子力学を学んだわけじゃない・・・」
湯浅「スイッチング?」
長門「このパークの転送ゲートはすべて同じものを使ってるんですよ。
転送先を変えているだけでね。」
湯浅「では・・・例えばマジックキングダムの転送ゲートの行き先をジャングルツアーズに変えることは・・・」
長門「スイッチ一つで可能だ。しかし、何のために?
ドリームワールド開園目前にそんなことをすれば混乱しかないだろう。」
湯浅「実は、マジックキングダムの泉さんから手紙が届いた・・・」
手紙を受け取る長門「拝見。」
湯浅「君はこの会社に不満を持っていると聞いた。
結城さんはもう頼りにならない。君の力を貸してほしい・・・」
手紙を読んでニヤリと笑う長門「くくく・・・泉め・・・面白いことを考えたものだ・・・」
湯浅「頼めるかね?」
長門「考えておこう・・・」
湯浅「え?」
長門「ケンブリッジ大学理学部卒、元ロスアラモス研究所主任技術者のこの私を見くびってもらっては困る・・・ゲートの設定を無断で変更することはコマキ社の懲戒処分の対象になるのだ。
この仕事・・・気が狂うくらい退屈だが手取りは悪くなくてね・・・」
湯浅「ここで手を打たなければ、泉さんも姫川さんも死んでしまうぞ・・・!
実際に小田さんは惨殺されたそうだ・・・
これ以上死者が出たら、それこそテーマパークとして営業停止になる・・・!」
長門「この私にリスクを冒させるのならば、その見返りをご提示願いたい・・・」
湯浅「私の後任に君を選出する。それでどうかね。」
長門「大手ゲームメーカーGASEの専務の椅子を譲るというのか?」
湯浅「私はもう定年だ。会社を守って勇退できるなら本望だ。」
長門「悪くねえな。転送プログラムのバグで一時的に転送先が変更されたということにする。
オレは何も聞かなかったし、あんたは何も知らなかった・・・これでいいな?」



作戦会議室には4人しかいない。
ゼリーマン「異世界から異世界へ行く?」
バックパックから「ドリームワールド」の園内案内図を取り出すヨシヒコ。
「実は・・・転送ゲートは周波数を変えるだけでほかの異世界につなぐことができる・・・
ぼくの世界には英雄はいないが・・・ほかの世界にはいる・・・
ヴィンツァー卿・・・あなたがかつて邪神と戦った時と同じように精鋭を集めるんだ。」
ヴィンツァー「あれはゼリーマンが集めてくれただけで・・・」
シルビア「そうなの?」
ゼリーマン「確かに面白いアイディアだが・・・アテはあるんですか?
ニャルラト・カーンと戦う時は、4人集めるのに1年かかった。」
ヨシヒコ「ああ・・・ドリームワールドの世界のうち、4つは僕が開拓した・・・
頭を下げて営業をし・・・相手との信頼を築いたつもりだ。
まず、格闘ゲームエリアの「九龍」・・・ここにはスパルタン草薙という格闘家がいる。
常に強いものと拳を交えることしか考えていないストイックな人物で、対戦相手に魔王を紹介すると言ったら二つ返事で協力するだろう・・・
次に、アクションゲームエリアの「ジャングルツアーズ」・・・ここには、どんな猛獣も仕留める凄腕のハンターがいる。名前はローランド・ペルト・・・・ドラゴンのトロフィーを屋敷に飾れるとなればハンターとしての血が騒ぐに違いない・・・
3つめ。シューティングゲームエリアの「メガ・サターン」・・・この世界は僕らの世界よりもずっとテクノロジーが進んでいて・・・星間戦争すら安全な、ある種のスポーツになっている・・・
戦闘宇宙船を一機でも借りれれば、魔王の居城まではひとっ飛びだ。」
ゼリーマン「戦闘宇宙船??」
ヨシヒコ「空が飛べる乗り物だよ。」
驚くシルビア「そんなことが可能なの!?」
ヨシヒコ「僕らにとってみれば、魔法がある方が驚きだけど・・・
宇宙船のレンタルは、エースパイロットのルナ・マイヤースに頭を下げればもしかしたら・・・」
ヴィンツァー「4つめは・・・?」
ヨシヒコ「ここです。」
シルビア「じゃあ結局3人しか増えないの・・・?」
ゼリーマン「ほかにも世界はあるんでしょう??」
ヨシヒコ「ああ・・・僕は知らないが、サウンドノベルホラーゲームエリアの「ホーンテッドレジデンス」と、プライズ・メダルゲームエリアの「ビリオンパラダイス」という新エリアが・・・」
ゼリーマン「じゃあ、ここもついでにリクルートしましょう。」
ヴィンツァー「戦闘要員になるかなあ・・・」
ゼリーマン「この名探偵、黒神志郎はいい軍師になりそうだ。」
シルビア「軍師はあなたじゃないの?」
ゼリーマン「あんなモエ、出まかせに決まってるだろう?」
シルビア「あきれた・・・」
ヴィンツァー「シルビア、これがゼリーマンだ。」
ヨシヒコ「それでは、敵が攻めてくるまでに5つの世界に手分けして行き、最強の戦士を連れてくる・・・異論は?」
シルビア「あたしは大賛成!こういう冒険小さい頃からずっと憧れてたの・・・!」
ゼリーマン「オレにとっちゃどんな世界も、この世界よりはマシだぜ。」
ヨシヒコ「ヴィンツァー卿・・・?」
ヴィンツァー「 ぼくは人見知りする性格なんだけど・・・
みんなを殺されるよりはましだ・・・頑張ります。」
ヨシヒコ「・・・では各々方、ぬかりなく。」

『ラストパーティ』脚本⑰

薄暗い書斎
ひとりの修道士風の学者が本を執筆している。

ゴート大学主席司祭ローワン・ウイリアム
「私が勇者スナイデル・ヴィンツァーと出会った1370年の秋・・・まさかヴィンツァー卿の最後にして最大の冒険が始まるとは誰が予期したであろうか。
この偉大な『ラストパーティ』の物語を始める前に、我が世界を取り巻く情勢について簡単にまとめておきたい。

ブリジッド王国とガリア帝国の全面戦争が開始されたきっかけは、同じ年の春のことであった。
ストレイシープ村、クヌート砦、エゼルバルド城といったブリジッド王国領のいくつかが、突如異世界から襲来したコマキ国によって制圧されたのである。
当時、ブリジッドとガリアは王位継承をめぐって緊張関係が続いており、この奇襲攻撃をブリジッド国王のライオンハーテドは、ガリア帝国によるものだと断定し、宣戦布告。
対するガリア帝国の皇帝、ハデス・モルドレッドも、この奇襲攻撃はブリジッドによるでっち上げであるとして徹底抗戦・・・神都ハルティロードの大神官イノストランケヴィア3世を捕囚し、聖地を大陸内のパーガトリーに移転してしまった・・・

王位継承権を持つイノストランケヴィアを奪われたライオンハーテドは勇敢にも王自ら先陣を切ってガリア大陸に進軍・・・しかし戦に敗れハデス城に人質にされてしまった。
これにより戦況は一気にガリア帝国が優勢となり、ガリア軍はブリジッド島に上陸・・・
数々の砦を落とし、村を焼き討ち・・・略奪行為を繰り返した・・・
その中には、異世界が制圧したストレイシープ村も含まれていた・・・
このとき、ガリア軍は多くの侵略的外来モンスターを送り込んだという。
しかし、これには不可解な点がある。
ガリア大陸のモンスターは全て、最強の剣士シドニア・ウィンロードによって討伐され絶滅したはずである。ハデスは一体どこからモンスターを召喚したのか?
そもそも、この戦争を引き起こした異世界のコマキという国家の目的は何だったのか?
いずれにせよ、強大な召喚獣、オディオサウルスによってコマキ国が制圧したストレイシープ村は壊滅し、コマキ国は地図から姿を消したのである。

しかし、コマキ国は最後に一人の勇敢な戦士を召喚した。
彼こそはサー・イズミ・ムツヒコ・・・トウキョウトチュウオウクを所領とするキギョウ戦士で、爵位はシュニン。彼の目的は唯一つ・・・オディオサウルスによってさらわれた最愛のプリンセス・・・レディ・ヒメカワを救出すること・・・
その崇高な自己犠牲の精神に胸を打たれた、勇者ヴィンツァーはサー・イズミに忠誠を誓い彼とともに最後の冒険に旅立つのであった・・・
さて、サー・イズミが勇者の協力を得たのと同じ頃、エゼルバルド城内ではガリア軍の襲来に備えて、王立騎士団長ベオウルフ・レイセオンが作戦会議を開いていた――」



エゼルバルド城内
作戦室へかけてくる兵士「伝令!クヌート砦も陥落!
敵軍の士気は高く、6日後にはエゼルバルド城に到達予定!」
キャッスルヴァニア地方の地形図を眺めるベオウルフ
「ホーン平原での敗北でマイヤー砦を奪われたのが致命的だったか・・・
敵軍の数は?」
兵士「3000!」
ベオウルフ「ふむ・・・半分以上差し向けてきたか・・・
しかし、それだけの人数の兵糧を長期間確保するのは不可能・・・
じきに季節は秋・・・ここをしのげば引き上げるか・・・」
兵士「実際ガリア軍の食料不足は深刻で、近隣の村を手当たり次第略奪しています・・・!」
ベオウルフ「まるでイナゴだな・・・
短期決戦でエゼルバルドを陥落させ食い扶持を凌ぐつもりか・・・」
兵士「ベオウルフ騎士団長いかがいたしますか?」
ベオウルフ「こちらの兵力は800・・・連中はカタパルトを上陸させていた・・・あれで城内に火炎弾を投げられたら防壁は意味をなすまい・・・
6日の猶予があるならば・・・この城を捨て王都まで兵を引くことも可能だが・・・
民間人を見捨てることになろう・・・
ふっ、騎士の名誉をかけて迎え撃つのも一興か・・・」
兵士「・・・え?」
ベオウルフ「・・・え??」
兵士「いや・・・逃げないんですか?相手の兵力は二倍以上ですよ?カタパルトも持ってるし・・・」
ベオウルフ「・・・ちょっと考えさせてくれ。」
兵士「逃げるなら今しかないですよ!
あなた、いつもかっこうばっかりつけて勝機逃すじゃないですか・・・!
この前のホーン平原の戦いだって栄(ば)えるけど重くて使いにくいロングソードなんて選ぶから・・・」
ベオウルフ「陛下から賜った聖剣エクスカリバーだぞ?せっかくだから使ってあげないと・・・」
兵士「どうでもいいでしょそんなの!その聖剣が役たたずだったから負けたんじゃないですか!」
考え込んでしまうベオウルフ「う~ん・・・」
兵士(ダメだこの人・・・!この人自身は一騎当千でも軍を率いる才覚があまりにもない・・・!)
ベオウルフ「でも・・・赤壁の戦いでは10万の曹操軍に対し、孫権劉備軍は・・・」
兵士「うちに諸葛孔明がいますか?」
ベオウルフ「う~ん、心強い援軍がいればな・・・」
兵士2「伝令!ちょうど市民ホールでHEROCONが開催されています!
元勇者の皆さんに協力してもらえば・・・!」
ベオウルフ「でも、ランスロット卿もロビンフッド氏ももう、90・・・100・・・?だよ??
あの頃とはもう武器や戦術も違うしなあ・・・」
兵士2「騎士団長!僥倖です!
なんとあの伝説の勇者スナイデル・ヴィンツァーもサイン会をやっていたとの報告!」
兵士「それは誠か!団長、これは不幸中の幸いですぞ・・・!」
ベオウルフ「ただなあ・・・ヴィンツァーくんは確かに一騎当千だが、軍を率いる才覚がない・・・」
兵士「お前やん・・・」
ベオウルフ「・・・え?」
兵士「・・・え??」



エゼルバルド城メインゲート
門が封鎖され、行商人らを中心に人だかりができている。
ゼリーマン「おいおい!なんで跳ね橋が閉まってるんだよ!!」
衛兵「申し訳ありません、領主ベオウルフ様の命で、非常事態宣言が出されました!
城内のすべての人と物の移動を禁じます!」
ヨシヒコ「出れなくなったってことか・・・」
シルビア「入れなくもなったわ・・・」
ヴィンツァー「まいったな・・・最悪のタイミングで街に来てしまった・・・これは籠城戦だ・・・」
シルビア「なにそれ?」
ヴィンツァー「相手が飢えや寒さに負けて引き上げるまで城内でひたすら耐える。」
ゼリーマン「最悪の手だな。」
ヴィンツァー「理由を聞こう。」
ゼリーマン「オレたちは先日ガリア軍に襲われた。連中は周囲の村の連中を皆殺しにして食料を残らず奪っている。キャッスルヴァニアの村はいくつだ?100はあるだろ・・・すべての穀物生産量を合わせると・・・エゼルバルド城の備蓄を大きく凌ぐ。それにブリジッド島の南部海岸はすでにガリア軍が抑えている。兵站も確保されているってことだ。」
シルビア「今年は不作って聞いたけど・・・」
ゼリーマン「それはそれで地獄だぞ。困窮した軍隊ほど狂暴なものはねえ。
もうひとつ。連中は巨大なカタパルトを複数台陸揚げしている。」
ヨシヒコ「僕も見た。」
ゼリーマン「俺なら、火炎弾を壁の内側に投げ込んで火災を起こして放置するぜ。
これで自軍の犠牲はゼロで城を落とせる。
・・・ベオウルフとはどこのバカだ?」
ヴィンツァー「・・・さ・・・さあ・・・」
兵士がかけてくる「失礼します!ヴィンツァー卿!
我が主君ベオウルフ卿がエゼルバルド城本丸でお待ちです・・・!ご同行願えますか?」
ヴィンツァー「・・・・・・。」
兵士「大切な旧友をお忘れですか?ベオウルフ・レイセオン卿です・・・!
学生時代に一人の女性をめぐって決闘を行ない、互いに讃えあったとか・・・!」
ヴィンツァー「・・・いきます・・・」
ゼリーマン「おい・・・」



エゼルバルド城作戦会議室
兵士に案内されるヴィンツァー一行
両手を広げて歓迎するベオウルフ「いや~・・・久しぶりだねヴィンツァーくん・・・!」
ヴィンツァー「ご活躍のようで・・・」
ベオウルフ「戦嫌いの君にとっては不幸だが、ぼくにとっては幸いかな。
6日後にガリア軍がこの城を攻めてくる。
ぜひ、力を貸してほしい。金と地位のある美形の僕からのたっての願いだ・・・」
すると、いきなりゼリーマンを蹴とばすベオウルフ。
ゼリーマン「いてえな!何すんだ!」
ベオオルフ「誰だ!この城に汚れた魔物を入れたやつは!」
兵士「え?全身をゼリーで塗った潜入捜査官なんじゃないんですか?」
ベオウルフ「そんな奴いるわけないだろ!!」
ためらわず剣を抜くベオウルフ
「邪悪な魔物め、この私がところてんにしてくれるわ・・・!」
ヨシヒコ(この剣どこかで・・・
はっ、ホーン平原の戦場で怯える小田さんの首を飛ばした騎士だ・・・
この男、見かけは上品だが、暴力をためらわない殺戮者だ・・・!)
ベオウルフ「醜い怪物に生まれたことを後悔するがいい・・・!死ね!!」
ゼリーマンに剣を薙ぐベオウルフ。
その剣をヴィンツァーがとっさに受け止める。そして返す刀でベオウルフの剣を跳ね飛ばしてしまう。
ベオウルフ「何をするんだヴィンツァー!」
ヴィンツァー「ぼくは師匠にこう教わった・・・いたずらに命を奪う者に剣を握る資格はないと・・・
この魔物は善良だし知恵が回る・・・きっと役に立ってくれる・・・」
剣を拾って鞘に収めるベオウルフ
「くっ・・・今回は旧友の顔を立ててやる。しかし、二度とこの城には来るな。次は殺す・・・」
ゼリーマン「生きてるだけで罪ってか・・・」
ベオウルフ「おい、お前。口は達者なようだが、本当に賢いか証明してみろ。
この戦況お前ならどう戦う?」
ゼリーマン「遠慮なく言っていいのか?」
ベオウルフ「許す。何でも言いたまえ。」
シルビア「・・・言ってやれば?」
ヨシヒコ「うん・・・」
ゼリーマン「どこのバカが考えたのか知らんが、この期に及んで籠城をするなど最も愚かな選択だ。」
剣を抜こうとするベオウルフを慌てて止めるヴィンツァーとヨシヒコ「許すっていっただろ・・・!」

『ラストパーティ』登場人物(七英雄集結編)

 ついに2つのエピソードが交錯しました。最終章です。おそらく『青春アタック』のちょうど半分位の分量。映画にすると3本分くらいなのだろうか・・・

泉ヨシヒコ
異世界「マジックキングダム」に閉じ込められた妻を救出するためにやってきた、元コマキ社のゲームクリエイター。
かつての勇者ヴィンツァーに魔王討伐を依頼する人物。特技は名刺交換とデバッグ作業。

ゼリーマン
全スライムの英雄。戦闘力5のゴミだが、ザコからボスまでモンスターへの顔が広い。

スナイデル・ヴィンツァー
かつて世界を救った勇者。現在では特にやることがないので、村で引きこもっている。
実は人一倍臆病者で、誰も殺めたことがない。
しかし、剣術などのステータスは最強ランクを誇る。

シルビア・アシュレイ
風の魔法使い。世話焼きな女の子。世界を救う大冒険に憧れているが、ヴィンツァーには止められている。



姫川桃乃
ヨシヒコの元妻で、ドリームワールド内で行方不明になったテストプレイヤー。
コマキ社の井伊社長の娘で、彼女が転送先で行方不明になったため、社内は騒然とした。
慎重派のヨシヒコと正反対の行動派の女性。

結城秀夫
天才プロデューサー。破天荒かつ無責任で、採算や安全性を無視して、とにかく楽しいゲームだけを追求する男。彼だけは井伊社長の要求も突っぱねる。サングラスとアロハシャツがトレードマーク。

長門守
ドリームワールド内のすべての転送ゲートを管理するオペレーター。
出世コースから外れたため、適当に仕事をしている。

湯浅専務
GASEから出向してきた中間管理職。異世界で悪戦苦闘するヨシヒコをコマキ社の目を盗んでサポートする。



スパルタン草薙
格闘ゲームエリアの「九龍」の武闘派ファイター。中国拳法の使い手で、だいたいの敵は拳でなんとかなると考えている。魔王をKOさせれば、世界最強ということでパーティに付いてくる。
とんでもない大食漢でエンゲル係数はかなり高い。

ルナ・マイヤース
SFシューティングエリアの「メガサターン」のエースパイロット。サイボーグ化された女性であり、「クレイモアー」という宇宙船で宇宙を冒険していた。最終的に、核ミサイルを魔王城に放てばなんとかなると考えている。

ローランド・ペルト
アクションエリアの「ジャングルツアーズ」の伝説的ハンター。19世紀初頭のイギリスの探検隊のような格好をしている。数々の猛獣を狩ってきただけあって、相手がモンスターだろうがひるまない。

黒神志郎
サウンドノベルホラーエリアの「ホーンテッドレジデンス」での惨劇を解決した天才的な私立探偵。ドラキュラ伯爵のような不気味な見た目で、理屈っぽい癖のある性格。



凝血寺夫妻
「九龍」の路地裏に住む老夫婦。年金受給者でかなり好戦的。

サイクロン鈴木
スパルタン草薙の門下生。「押忍」しか言わない。言えない。

ホワイト
カジノ・プライズ・メダルゲームエリアの「ビリオンパラダイス」のマスコットキャラ。
イカサマを逆手にとって泉らのパーティの魔王討伐予算を工面する。

どうぶつたち
うさぎやひつじ、くまなどに似た愛らしい森の精霊。「ビリオンパラダイス」の警備をしており見た目と違ってガラが悪い。

エルフたち
耳が尖った美しい女神。「ビリオンパラダイス」ではバニーガールをしている。

サイの大群(ライノセラス・ユニコニス)
ジャングルツアーズでツアーカーを横転させるなどたびたび大惨事を引き起こす。

バンダースナッチ(アンドリューサルクス・インペリオス)
秘宝「アフリカの女王」を守るジャングルツアーズで最も凶暴な猛獣。

ガンツ&ローゼス号
ローランドの愛船。巨大なディーゼルエンジンを積んでおり、最大出力は4万馬力。

ホーンテッドレジデンスの容疑者たち
小石川ちおり:少女漫画家。最初に犠牲者で鉄の処女にはさまれて死亡。
宇佐美よわか:高校教師。二番目の犠牲者。心臓麻痺により死亡。
鳳桐子:華道家。頭の回転が速い。ヴィンツァーを惨劇の犯人と推理する。
小田島さくら:医師。人をご臨終にするのが好き。
井口ひろみ:ピアニスト。
鏡姉妹:双子の女流脚本家。

ライト・ケレリトゥス
ルナ・マイヤースの知り合いの冒険家。



ベオウルフ卿
ブリジッド王国の騎士団長。キザで見えっ張りな性格。

ジルドレイ将軍
ガリア帝国軍の隊長。百戦錬磨の軍人。

ハル
ゼリーマンの友人の人面鳥。

メド
野生の魔物を統べるメドゥーサ。

メグナ・テスタメント
元黒魔術師の葬儀屋。

ツインソードのラム
モンスターハンターギルドのマスター。

ランスロットとロビンフッド
HEROCONでサイン会をやっていた老勇者。

イエヤス&マサノブ
おっぱいパブの経営者。

ローワン・ウイリアム
ゴート大学の歴史家。勇者ヴィンツァーの最後の冒険『ラストパーティ』を後世に残す人物。

『ラストパーティ』脚本⑯

コミックマーケットのような会場「HEROCON」
かつての勇者のファンがサイン色紙を持ってブースに並んでいる。
笑顔でファンと握手をする白髪の勇者たち。

ゴート大学の歴史学者のローワン・ウイリアムがヴィンツァーのブースでインタビューをしている。
ヴィンツァー「再びぼくが目を覚ましたときは・・・アッティラ大草原は暖かな日差しにつつまれており・・・ミス・アシュレイ・・・リネットと手を握り合っていました・・・」
ローワン「ほかのパーティの方は?」
ヴィンツァー「この世界に残れたのは・・・ぼくらと・・・
最後まで逃げ回っていたサー・モルドレッド・・・現在のガリア帝国の魔王ですね・・・
あとの4人は・・・生死不明です・・・
そして・・・48年のアルバレイク国とのロストミンスター戦乱でリネットが亡くなり・・・
その3年後には恩師のウィンロード卿も大往生しました・・・
わたしは、きっと欝だったんだと思います・・・
あとはご存知のとおり、勇者年金で故郷の村でほそぼそと暮らしています・・・」
立ち上がって握手をするローワン
「勇者ヴィンツァー様。今日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
この場所を教えてくれたミスター・ゼリーマンにも礼を言わなくては・・・」
ヴィンツァー「ゼリーマンは大丈夫ですよ・・・
もう随分と会ってませんが・・・今なお、臆病でひ弱なお前が勇者なんて認めない、の一点張りらしいですから・・・」
ローワン「この偉大な冒険譚を書物に残してもよろしいでしょうか。」
ヴィンツァー「こんな与太話でよかったら・・・」
シルビア・アシュレイ「ねえ、ローワンさん。どうせ本にするなら多少は忖度してよね。
例えば・・・世界を救った勇者の出自が農民はかっこが付かないじゃない・・・
名門貴族くらいにはしてよ。」
ヴィンツァー「それじゃあ、歴史の一次史料にならないだろ・・・」
シルビア「じゃあこうしましょう。正史と演義の二冊を書くってのは?」
ローワン「ま、まあ・・・それならいいか。演義の方は一般大衆にも売れそうだし・・・」

ローワンを見送る2人。
シルビア「・・・ねえ・・・そうなるとさ・・・あたしはあなたの娘ってことになるの・・・?」
ヴィンツァー「そこらへんは・・・まあ・・・複雑なんだよ・・・また今度話すよ・・・」
シルビア「今話しなさい。」



宿屋
ゼリーマン「ヨシヒコの旦那、ヴィンツァーの居場所がわかりましたぜ。
エゼルバルド市民ホールだ。そこの「HEROCON」でブースを開いてる。」
ヨシヒコ「・・・ヒロコン??」
ゼリーマン「引退した勇者がファンと握手したりサインしたりして小銭を稼いでいるケチなイベントですよ。」
ヨシヒコ「でも、それはちょっと楽しそうじゃないか?」
ゼリーマン「爺さん達にスライムをいじめた武勇伝を聞かせられるだけです。」
ヨシヒコ「君がヴィンツァー卿と確執があるのはなんとなくわかる・・・
だが・・・彼は臆することなくハルピュイアの埋葬を買って出てくれた・・・高潔な人物じゃないか?」
ゼリーマン「まあ、あいつは昔から甘ちゃんだからな・・・」
椅子から立ち上がるヨシヒコ「僕は決めた。あの人に魔王から桃乃を救い出してもらう。」
ゼリーマン「まあ旦那がそう言うなら・・・」
ヨシヒコ「名刺は・・・足りてるな・・・よし、行こう。
ぼくはリクルートがうまい。見ててくれ。」



エゼルバルド市民ホール「HEROCON」
ヴィンツァーに説教するシルビア「あなたはホントにダメな男ね・・・
なんでそこで母さんを捕まえなかったのよ・・・!」
ヴィンツァー「告白したさ・・・でもその翌日に「世界を救った勇者熱愛発覚!」って週刊誌の記事が出て、それで・・・世界中の婦人からリネットに誹謗中傷の手紙が届いて・・・
とてもじゃないけど普通の生活が送れなかったんだよ・・・」
シルビア「は~バッカみたい・・・」
ヴィンツァー「それに、その頃には、君の母さんはハルティロードの首席神官になっていたんだ・・・
ぼくは王立騎士団の軍事顧問が忙しかったし・・・なかなか二人の時間が取れなくて・・・」
シルビア「あ~あ・・・あたしの父さんは一体誰なのかしら。」
ヴィンツァー「ぼくがいるからいいじゃないか・・・」
シルビア「そういう問題じゃないの。」

その時、スーツの男がヴィンツァーのブースに現れる。
ビジネスマンのスーツはボロボロだ。
ビジネスマン「・・・あなたがスナイデル・ヴィンツァーさん・・・??」
ヴィンツァー「え?ええ・・・」
シルビア(不思議な服装の人ね・・・)
ヴィンツァー(う、うん・・・)
名刺を差し出すビジネスマン「わたくし、コマキ社の開発部主任、泉良彦と言います・・・」
ヴィンツァー「・・・このカードにサインを書けばいいですか?」
突然頭を下げるビジネスマン「伝説の勇者様!世界を救ってください・・・!」
ひるむヴィンツァー「い・・・いや、それはもう私の力ではどうにも・・・」
ビジネスマン「あなたの世界じゃない・・・私の世界が危機なんだ・・・!」
ヴィンツァー「・・・?いったいどういうことでしょうか・・・
それに、私はもう勇者稼業は引退しておりまして・・・
信頼できる人物をご紹介しますので、どうぞそちらに・・・」
ゼリーマン「久しぶりだな・・・ハナタレ・・・」
ヴィンツァー「ぜ・・・ゼリーマン・・・!なんで君がここに・・・!」



賑やかな酒場
お客がピンボールやビリヤードに興じている。

名刺を机に置いてヴィンツァー
「お話はだいたいわかりました・・・奥様がガリア帝国の魔王ハデスに捕らえられたと・・・」
ゼリーマン「来月までに救出しないと、この人の会社が倒産しちまうんだよ。
魔王退治なんか何度もやってんだろ。つべこべ言わずにやるんだ。」
ヴィンツァー「ちょっと待ってください・・・私は魔王なんて倒したことないよ・・・」
ヨシヒコ「あなたは、信用できる人だ・・・
ずっと前に、なんたら・・・っていう邪神も退治したって聞きました。」
ヴィンツァー「あ・・・あれも・・・退治したって言っていいのかどうか・・・」
ゼリーマン「ほら、嘘だって言ったじゃないっすか。
こいつの武勇はだいたい嘘なんだって・・・
そもそも子どもの頃、この俺に捕まって醜い命乞いをしたようなやつだぜ・・・」
ヨシヒコ「君に負ける人間がいるのか・・・?」
ヴィンツァー「はは・・・こりゃまいったな・・・」
シルビア「はは・・・こりゃまいったな、じゃない!!」
机をどんと叩くシルビア。
シルビア「あんた・・・さっきから聞いてれば、うちのヴィンツァーを嘘つきだの、腰抜けだの・・・ずいぶんな言い方ね!あんたがここでのんきにバドワイザー飲めてるのは誰のおかげだと思ってんのよ!!」
ゼリーマン「何だ、この凶暴なシスターは・・・お前本当に聖職者か?」
ヴィンツァー「まあまあシルビア・・・楽しい酒の席だからさ・・・」
シルビア「言ってやりなさいよヴィンツァー!
あなたたちが命懸けで戦ったから、世界から黒死病が消えたって・・・!!」
ヨシヒコ「そうなんです・・・よね??」
ヴィンツァー「ま、まあ・・・確かにゼリーマンの言うとおりで・・・黒死病の治療法を見つけたのはヘルシング博士だし、実際に感染者の治療に当たったのはリネットだからなあ・・・」
ゼリーマン「ほら見ろ。それをお前の手柄にしやがって・・・
で、国王や大神官からいくら報奨金もらったんだ?お父さんに半分回しなさい・・・」
ヴィンツァー「ずっと昔にリネットが設立した医療基金にまるごと寄付しちゃったよ・・・」
ゼリーマン「はい身内の脱税法人来ました・・・」
ヴィンツァー「そうじゃないって・・・」
ゼリーマン「じゃあ、リネットのやつの居場所を教えろ。取立てに行く・・・」
シルビア「母さんはとっくに死んだわよ。」
ゼリーマン「・・・え?あいつが??・・・本当か。」
ヴィンツァー「ああ・・・なのであの頃の仲間は・・・もう君くらいしかいないんだよ。」
ゼリーマン「そうか・・・あの憎たらしい奴が、そんなあっけなく死んじまうとはな・・・」
ヴィンツァー「あれでも、シスターになってからはしおらしくなったんだよ・・・
でも・・・リネットは、聖女として・・・無理をしすぎたんだと思う。
白魔法は・・・自分自身の生命エネルギーを消耗してしまうから。
だからロストミンスターの戦いの時には、すでに余命が幾ばくもなかったんだ・・・」
ゼリーマン「バカ野郎が・・・あの時きりがねえって言ったのに・・・」
ヨシヒコ「・・・なんか、一気に頼みにくくなったな・・・
分かりました・・・この話は聞かなかったことにしてください。
ゼリー、行こう・・・ボクら二人で暗黒大陸に渡るんだ。」
ゼリーマン「だ・・・旦那・・・いいんすか?」
立ち上がって会計をしようとするヨシヒコ「ああ・・・これはRPGのゲームじゃない・・・
この世界だって死んでしまったら、それでおしまいなのだから・・・」
シルビア「あ・・・ヴィンツァー・・・やってあげなさいよ・・・!
あの人、戦時中の暗黒大陸に丸腰で行くつもりよ・・・!すぐに殺されちゃうわ・・・」
ヴィンツァー「・・・でも・・・」
シルビア「なにも、今度は世界を救えってわけじゃないのよ、ただの民間人の救助よ。
戦に出て殺し合うわけじゃないじゃない・・・!」
ゼリーマン「あばよ、腰抜け。あの世のリネットもシドニアもガッカリだろうぜ・・・」
その言葉にぴくりとくるヴィンツァー「待ってくれ・・・
確かにぼくは腰抜けだ・・・
でも、リネットやウィンロードさんを失望させる人生は送りたくない・・・
ヨシヒコさんと言いましたね・・・座ってください・・・」
戻ってくるヨシヒコ「・・・」
ヴィンツァー「ガリア帝国の魔王はハデス・モルドレッドと言います・・・
彼のことはよく知っています・・・今では魔王とは呼ばれているが気のいいやつでね・・・
たしかに女好きでしたが、嫌がる女性を無理やりさらうような真似はしないはずだ・・・」
ヨシヒコ「ま・・・魔王と知り合いなんですか??」
ヴィンツァー「同じパーティだったんですよ・・・」
ヨシヒコ「え?えええ??」
ゼリーマン「ふん、立場が人を変えちまったんじゃねえのか??」
ヴィンツァー「だとしたら・・・ぼくは古い友人を諫めないといけない・・・
分かりました。ぼくは殺し合いは嫌いだが・・・魔王までの案内と護衛をお引き受けします。」
深々と頭を下げるヨシヒコ「あ・・・ありがとうございます・・・!!
いくらお支払いすれば・・・!」
にこりと微笑むヴィンツァー「あの時の金貨でけっこうですよ。」

――泉ヨシヒコのパーティに伝説の勇者スナイデル・ヴィンツァーが仲間になった!




ドリームワールドのコントロールルーム
妖精は蛍のように発光し、室内をふわふわと飛び回る。
脚についた手紙はすでにない。
結城「きいい!小うるさい便所バエだよ!死んで地獄にゴートゥーヘル!!」
ハエたたきで潰されてしまう妖精。
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