『超思考』

 たけしさんは「俺の言っている事はその場の思い付きだから内容がコロコロ変わる」と『超思考』で述べていたけど、まったくぶれない点がある。それが笑いとは本音と建前の落差であるというお笑い哲学だ。これはどの本でもずっと同じ。

 この定義が『超思考』では、より具体的に言語化されていて、「本音」というのは人間の本能(アニマリティ)、「建前」は人間社会が歴史の中で構築した第二の本能(社会的な了解事項)というわけだ。

 そして現代はその落差がなくなったり、落差を落差と感じないような社会になっている。そんなことを嘆いているような気がする。だから笑いが分からない。笑うところで笑えずに逆上したり正論言ってクレーム付けたりする。笑いなのに。

 政界のどたばたもAKB旋風や萌えブームもみんな真剣に考えている。みんな真面目だなあって思う。あんなの笑ったもん勝ちな気がするけど、それを言うと叩かれる。でもアレ以上のギャグはない。

 笑うことも、他の動物を無慈悲に殺して食べることも、ウンコすることも、死ぬことも動物的な本能だったり定めなんじゃないか。現代はそれをタブーにして蓋をしてしまう。だから笑いという落差が構築できない。

 で、そんなことしたって笑いや食欲、死からは逃れられない。絶対に逃れられないならうまく付き合った方がいいに決まってる。見て見ぬふりするより、その事実を受け入れて死んでいった方がいい。

 私は中学時代のあだ名が「バカ田代」だったんだけど、不思議と傷つかなかった。それは「バカ」が軽蔑的に使われていたわけじゃなかったからだったように思える。使いようによってはバカも悪口ではなくなる。愛すべき褒め言葉だ。

 だから私はたけしさんもバカだっていう。あんな歳であんな才能があるのにまだあんなくだらないことやってる。バカだなあって。 バカとハサミは使いようって言うけど、バカという言葉自体も使いようなのかもしれない。

 バカに生まれちゃった以上、バカを受け入れるしかない。ならばむしろそれを逆手に取ってカッコいいバカになればいいんじゃないか。カッコいいバカ・・・なんかかっこいいじゃんwそんなかっこいいバカが今少ないのかもしれない。

 最後に私が気に入った「第六考 夢を売るバカ、探すバカ」「やりがいを感じないのはチャンス 64ページ」から抜粋。

 眠っている才能なんてものはない。才能はあるかないかのどちらかだ。自分が本当にやりたい仕事はなんだろうなんて、考えなきゃいけないってことは、やりたい仕事がないと言うだけのこと。
 探しているのは、自分が本当にやりたい仕事なんかじゃなくて、楽して稼げる仕事なのだ。そんなものがあるわけない。そんなものがあるわけないのに、さもありそうなことを言って、ニートを増やし、若者を安い労働力として使っているのが、今の社会の構造だ。

 (略)

 仕事の本当の面白さとか、やりがいというものは、何年も辛抱して続けて、ようやく見つかるかどうかというものだろう。最初から簡単にできたら、面白くも何ともない。

 (略)

 その仕事のやりがいを、金で買おうとしてはいけない。自分に合った仕事を探すという考え方がそもそもの間違いだ。おなかの中の赤ん坊が「自分に合った世界に生まれたい」なんて考え始めたら、この世に生まれてこられるわけがない。仕事を探すのだって同じ。仕事を自分に合わせるのではなく、自分を仕事に合わせるのだ。

 (略)

 気が進まないくらいの方が、いろんなことがよく見える。どんな仕事だって、誰も気づかない盲点というものがあるのだが、そういうものに気付くのは好きでたまらない人間よりも、むしろちょっと引いたところから眺めている部外者だ。
 もし今の自分の仕事にやりがいを感じないとしたら、それは不幸なことではなくて、むしろチャンスなのだ。自分はこの仕事を冷静に見る目を持っていると思えばいい。冷静に考えれば、どんな仕事であろうとも、今よりは面白くできる。

秋の夜長は読書で決まり!

 秋の夜長は読書で決まり!ってことでまた本を買ってきた。塾の帰り、つい書店によって無駄遣いしちゃうなあ・・・図書カードは使いきった。クオカードは使えなかった・・・こいつが活躍できる時は来るのだろうか。

 で、今回買った本は『小説家という職業』森博嗣、『働かないアリに意義がある』長谷川英祐、そして北野武『超思考』。この本ではたけしさん一人称「おいら」じゃくて「俺」なのね。ちょっと真面目モード。
 北野武『超思考』を最初に読んだんだけど、なかなかキッツイ内容w特に「第六考 夢を売るバカ、探すバカ」は辛辣でいい。あと「第七考 芸術は麻薬だ」。私みたいな若造が馴れ馴れしいけど全く同感。基本的に芸術もサブカルも取るに足らないものだと思う。そのスタンスが大学のあの雰囲気では浮いていた。

 しかし『小説家という職業』は帯に“釣られて”しまった。「もしあなたが小説家になりたいのなら、この本さえ読んでいる暇はない。すぐにキーボードの前に座って文字を打つべきである」って偉そうに、それならこんな本書いてるお前はなんなんだ、って腹が立ってつい買ってしまったw森のシナリオ通り!
 でもあれだよね。読者をムカつかせるって言うのもある種の感動だよね。なんか的は射ているけどお前には言われたかないよってことを言っているってことだろうから。
 
 で、この本最初からすごい自慢話でムカつくけど「小説家になりたいなら小説を読むな」は同感。個性のない人ほど影響されるし小説家じゃなくて小説ファンになっちゃう。単に小説を読むのが好きなら別に作り手じゃなくて読み手でもいいわけだ。
 私も漫画は描くけど漫画自体はそんな好きじゃないし、大して読まない。そんなこと言うと漫画好きじゃないなら描くな!って言う奴が絶対いるんだw厳密には漫画読むのがそんな好きじゃないだけですね。 

 私もツイッターで漫画とかアニメとかの話しをすると、当然漫画やアニメの好きな人からフォローされたり、その人たちとやりとりをしたりするんだけど、やっぱ好きな人は好きなだけあってそりゃもうたくさんの漫画やアニメの作品を見ているんだ。
 そして「これくらい読んで下さいよ」って超勧められる。その人の気持ちが分からなくはないけど、そういったファンの人の言う通りにしていたら私は作り手としてつぶされると思うんだ。たくさんの作品を読めば絶対にそのパッチワークで話を作ろうとして、自分の頭で考えなくなるだろうし、一漫画アニメファンで終わってしまう。私はファンになりたいわけじゃない。

 この前もすっごいアメコミを読んでいる人がいて、正直私は一冊もアメコミを読んでないから、そのていでアメコミの話をするのがちょっと気が引けたけど、想像力を養うために自分が全く知らないことを考えるのは別に悪いことじゃないだろう、と考えている。
 そう言う意味では私は面白いアメコミを読みたいと思ってアメコミの話をしているわけじゃない。ただ何でもいいけど、それを素人目線で客観的に大づかみにとらえるのが好きなだけなんだ。どんな話題でもディティールにはあんまり興味がない。ディティール(だけ)語って楽しいのはマニアやオタクだけなんだ。

 と、こんな感じで森さんと同じように、私も一冊の本を読んだら、その本そっちのけでいろいろ考えたり語ったりしたくなっちゃうタイプ。「小説家やりたいならブログだって書いている暇ないよ!」ともこの人は言っているけど、まあこれも本という栄養を摂取した後の排泄行動だと思っていただきたいwあんただって多趣味極まりねえじゃねーかw

 たけしさんは『超思考』で「芸術は社会の膿」ってちょっとていよく言っていたけれど、つまり芸術や文化の創作活動っていうのは人が生きる上でどうしても出てしまう「ゴミ」「副産物」「ウンコ」にあたると私は本当に思っている。
 お前は自分のウンコをオレに読ませるのか!って言われちゃうかもしれないけど、別に強制はしていないし、実際ゴミで作った現代アートがあるわけだし・・・(ウンコのアートはまだないと思う。お勧め!)
 こんなことを言うものだから美術ばたの教師とは大学時代すぐ喧嘩になった。
 
 そういや「ディープピープル」ってテレビ番組で音楽プロデューサーの秋元康が「今の若い子は上の世代に食ってかかってこない。だからダメなんだ。俺の胸倉つかんでこんなスケジュールじゃ公演本番まで仕上がりません!って怒鳴る奴がどうして出てこない?」とか言っていたけど、ああいうこと言う奴って嫌いなんだ。どうせポーズで言っているんだから。つまりかっこつけ。
 私が仮にAKBのメンバーだったら本当に秋元康をひっぱたいていたかもしれないけど、そんなことしたら絶対にAKBクビだもんね。実際ちょっと粗相しただけで追い出されちゃうアイドルグループだ。
 そんなことを言うからには言った方も本当はそれなりの覚悟を決めないといけないと思うけど、あの人がどれほどのもんなのか、私にはいまいち分からない。おそらく同じことを言って、実際それをやられたら動転して怒り出した大学の教員と同じレベルだと思っている。

 あれ?全然読んだ本の話してないね。こういう風に思考が脱線しちゃうのは創作にとってはもろ刃の刃だよなあ。

恐竜博2011

 行ってきました!今日は平日だけど同じ月に五週ある曜日だったので塾は休みだったんです。
 だから今回の恐竜博は結局一人寂しく見に行ったんですが(世は仕事)、やっぱり一人は辛いwすっごい他の客に絡みたくなる!
 んで恐竜について無知で頓珍漢な事言ういちげんさんに「これはこうですよ」とか話しかけ「何この人気持ち悪い・・・」ってなっちゃう気がする。怖い怖い!キモいキモい!

 んで、会場にいたのはカップル(※目に痛い)とおばちゃん、暇つぶしに来ていた大学生たちで、ちびっ子(家族連れ)はほとんどいませんでした。あと恐竜オタクも。すごいカメラで撮影していたのは一人くらいだったかな。
 しかしみんな律儀に奇麗に列を作って、骨格よりもキャプションをじっくり見ていて、そこに書かれている名前の確認作業になっちゃっているところ、なんか日本人ってどこまでも気まじめなんだな~って思いました。
 
 シルバーウィーク前半は、やれ恐竜博80分待ちだ、100分待ちだと混雑していたようですが、さすがは平日あっさり入場!
 大体ね、たかが石に100分も並んで観る価値ないと思うんですよwだからもし私が休日に行って、100分待ちとか言われたら、常設展示を見てガイドブックだけ買って帰ってきたと思う。
 あれ?でもガイドブックって特別展のショップじゃないと買えないんだっけ?かはくのミュージアムショップにも行っていろいろ本とか買ったんだけど忘れちゃったな。まあ最終手段として通販で取り寄せられるそうなので、いいんだけどw
 だが今年の恐竜博のガイドブックの装丁は過去最高にいいな・・・それに分厚いし(まあ毎年幕張のやつよりも厚いんだけど今回は特に)グラビアページも凝っていて素晴らしい。買ってよかった。

 今回の恐竜博で私が興味があったのは、何と言っても展示トップバッターのプラテオサウルスでしたね。キングオブ地味恐竜(…と勝手に思っている)プラテオサウルスって本当に魅力的に描くのが難しくて、骨格の写真片手に四苦八苦して、ギャラリーコーナーの復元イラストを描いたのですが、どうやらあれで間違ってなかったみたい。
 恐竜イラストの巨匠「山本聖二さん」はプラテオサウルスの尻尾の付け根を横幅のある感じで復元してて「げっオレ間違ったのかな?」って思ったんですが、しっぽの部分も横ではなく縦に平たく、グレゴリー・ポールの『恐竜骨格図集』通りみたい。
 あと手の指!あそこまで近づいて指の骨の数をじっくり確認できたのはよかった(変態だ!ここに変態がいる!)
 
 それとトリケラトプスの赤ちゃんの頭骨って初めて見た。なんか上顎とか目の周りの部分がレプリカ臭くて不自然な気がしたんだけど(やけにつるつる)、それでも目の上の角や襟飾りはあんな感じだったんだろうなって説得力があった。もしあんな頭骨だったとしたら、トリケラトプスベイビーは相当可愛いよ。
 それに比べてレックスベイビーのイジワルな顔つきと来たら・・・!映画『ロストワールド ジュラシックパーク』のベイビーTレックスは鼻づらが短くてラブリーだったけど、どうやら本物のティラノサウルスの赤ちゃんは鼻づらが長くワニのようだったっぽい。よくてコンプソグナトゥスレベルw

 私詳しくなかったんだけどトリケラトプスっていろんな年齢の骨格が掘り出されていて、トリケラトプスのホーンレットは幼少期はギザギザしていて、成長するにつれ三角形が鈍角になっていくそうだ。成長していくにつれホーンレットが徐々になくなっていくというのは、なんだろう、幼少期のみの防衛器官なのかな?
 その流れでホーンレットがほとんどないトロサウルスをトリケラトプスの成長しきった個体と位置付けたんだろうな。よって私のトロサウルスの絵は大ウソです。真に受けないで!
 トリケラトプス=トロサウルス説が出た時に「なんでホーンレットの無いトロサウルスがトリケラトプスと一緒なんだ?じゃあこんな奴もいたのか?」って描いた絵なので・・・

 ええと、他はなんだろうな・・・まあそこそこ良かった。

 ああ、そうそう、恐竜博と言ったら限定フィギュア。今回は何を血迷ったのかフィギュアをガチャガチャにしやがって、出てくるフィギュアをランダムにしちゃったんだけど(あこぎな!)、私ティラノサウルスとかトリケラトプスとかスピノサウルスとかメジャーな恐竜のフィギュアはもういらないんだけど、もう二度と立体化されないであろうマイナーなアンキオルニスのフィギュアがどうしても欲しくて、いい歳して再びガチャガチャやったんだけど、全然出ねえ!
 結局アンキオルニス以外の恐竜がステゴ以外全部出ちゃって、これはもう破滅のパターンだと思って泣く泣く諦めた・・・その内ネットオークションで売られるだろ。ちびっ子にとっちゃハズレのような奴だから。だって鶏だもの。

 しかし今回のフィギュアは国立科学博物館の真鍋先生が監修したらしいが、本当かよ~?ってクオリティのものがあるwお前だよアロサウルス!もう脚の骨の比率からして違うんだw
 でも全然期待してなかったトリケラトプスの出来は良かった。ティラノサウルス(羽毛ver.)もまあまあ不気味でよい。
 スピノサウルスは・・・もういいよ。もう休め。作るな。いらない。つーかお前会場にいなかっただろ。私の中で恐竜2009の限定フィギュアのスピノサウルスさえあれば、スピノのフィギュアはもういらないと思っているから。あれがもうスピノフィギュアでは最高だと思う。
 
 恐竜博の後はちょっと時間があったので常設展示をうろうろ。そういや常設展示で生物の系統分類樹が円形の床に書いてあって、その系統樹の枝が周囲のガラスケースに伸びていって、そこにそれぞれの分類群の剥製が入っているという、超ハイセンスな展示が新館にあるんだけど、これの微生物の展示がすっごいよかった。
 今までは脊椎動物の剥製とかに目が行ってたんだけど、原生生物界とか菌界とかの肉眼で見えないような奴はまず剥製が作れないから、目に見えるサイズの逆ミニチュアを作って置いてあるのよ!
 このプラスチック製のミニチュアがまたよくできていて、すっごいはまってしまった・・・ミドリムシとか15センチくらいの模型になってんだよw笑うっしょ?
 ホコリカビとかも良かったなあ・・・これは今日の新たな発見だね。「かはく」はとにかく展示数がすごいから行く度に新たな発見があって面白いです。

英国王のスピーチ

 「面白い度☆☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆」

 偉大な人物になれる男だが私に反発している。

 偉大な人物になりたくないのよ。あなたがそう願っているだけ。


 自慢だけど私って高校の頃一期だけ生徒会長をやっていて、全校生徒の前でいろいろスピーチする機会があったのですが、人前で話すのって場数を踏めば別に全然慣れちゃうもので、私は一度もカンペを見て喋りませんでした。ほぼアドリブ!
 で、これは仕事によっちゃ悪い例だと思う。最近政治家の失言が多いけど、あれも人前で話すのに慣れすぎて、自分の立場を一瞬忘れちゃうのだろう。

 この映画で吃音に悩む英国王ジョージ6世(元ヨーク公アルバート王子)はこれとは間逆。幼少期の厳しいしつけで、自分に自信が持てず失敗を常に恐れているようなところがある内気な彼は、兄貴がエロすぎたことから突然英国王を引き継ぐことになってしまう。
 失敗を過剰に恐れるこの人が、こんな立場にいっちゃったのだから、心中察して余りありますよね。まあそれが逆に責任感のある立派な善良王になれたのかもしれないけど・・・

 王室は生けるものの中でもっとも卑しい存在になった。我々は役者になったのだ。

 と、作中先代の王が王族の役割の変化をアルバート王子に説教するシーンがあるのですが、確かにラジオやテレビの出現以降、大衆に積極的に語りかけるリーダー像がもてはやされるようになったよなあ。
 ぶっちゃけジョージ6世はヒトラーの演説の映画を見てこいつうまいなあって羨ましがっていたほど。でもヒトラーの演説だけがスピーチの正解じゃないからね。真面目かw!

 そのヒトラーと結局イギリスは戦争に突入することになってしまう。ボールドウィン首相はヒトラーを見抜けなかった、このリハクの目をもってしてもとかわけわかんない言って(※言ってません)ジョージ6世を置いて内閣総辞職、弱腰首相と知られるチェンバレンに首相の座を譲ってしまう。
 そもそも王の立場すら嫌だったアルバートが、誰もやりたくないであろうこんな激動の時代のリーダーをやるはめになっちゃったのだから歴史は悪意あるよ。
 王としての素質があるかないかなんてわからない。ただもう王となっちゃったからにはやらなければいけない。

 西部邁さんは職業(オキュペーション)の意味とは「専従する」ということとか言ってたけど、確かに仕事なんてもんは、自分に素質があるかないかなんて置いといて、とりあえずやり続ければうまくなって、いつの間にか「オレの天職だ」とか言いだすものかもしれない(げんきんなヤツw)。
 だから今の若者って自分に合った仕事をするっていうのに執着しすぎなきもする。これは自分自身を戒めるためにも言っています。
 今の私がアメフト選手になることはほぼ不可能だろうけど、こういう思考の仕方はせっかくの選択肢を減らしているのではないだろうか?

 『英国王のスピーチ』って結局、震災で電車が止まった影響で、惜しくも映画館で見れなかったんだけど、今観れて逆によかったと思う。
 ベタかもわからないけど、今の日本の状況とすごい被って見えるんだ。菅さんにしろ野田新総理にしろ、実際こんな状況のリーダーなんてどう考えても貧乏くじなんだ。
 なにをどうやっても叩かれる。これはブッシュジュニアの後を継いだオバマさんも同じだろ。
 イギリスの王は内閣総理大臣じゃないから、政治を直接動かすことはできない。ただの海軍士官の私に何ができる!?と自分の無力さを嘆くシーンもある。
 でもリーダーであることには変わらない。ジョージ6世は自分の弱さを認めながらとにかくあがいた。時にはビー玉を口に入れたりもした。

 しょうもない女を取って王位をあっさり捨てちゃった兄と違い、ジョージ6世は臆病すぎて、仕事をほっぽり出して逃げ出すことができない。そんな大それたことする度胸がないから。逆説的だけど勇気のないことが彼を勇者にした。
 つまり「お前には忍耐力がある」とお父さんに言われていた通り、リーダーとして大切なのは辛くても投げ出さない心の強さなのかもしれない。
 だから菅さんってけっこうすごいリーダーだったんじゃないか?って再評価されるかもな。利権にしがみついていたわけじゃないからね。

 すごいリーダーってなんなのだろう?リーダーがリーダーの素質さえ持っていれば、さもすごいリーダーになれるようにビジネス本とかには書いてあるけど、あれウソだと思う。
 リーダーを取り巻く環境、時代がリーダーをリーダーにたらしめると思うんだよな。ジョージ6世は時代に見放されたところもあるけど、家族にも友人(言語聴覚士ライオネル・ローグ氏)にも恵まれた。それがリーダーとは最もかけ離れた位置にいた人間をリーダーにしたんだろうな・・・歴史って面白いね。

 映画の構造としてはメチャクチャ教科書通り。対照的な二人のキャラを作るとドラマチックになるという物語作りの王道をやってます(スピルバーグの法則)。
 人前で喋る機会はあるけど喋りが下手で嫌いな王、本当は俳優になりたいけど機会に恵まれない饒舌な言語聴覚士・・・とっても構図が分かりやすい。
 それ以外のキャラクターはほぼ脇役として割り切って描いたのもいさぎよい。さすが主な登場人物が一人と言う「ミスタービーン」の国英国や~

 あとコーチングの文脈からこの映画を論じている人もいそうだから、あまり掘り下げないけど、ローグさんに学歴がないのがいいよね。
 日本もイギリスも階級や学歴と言った相手の権威で対応を変えるところあるじゃん。いくらその人に実力があっても「こいつは博士課程も取ってないなら学者として二流だ」とか決めつけちゃう。事情も考えずに。
 でもジョージ6世は葛藤の末、資格のないローグ氏をコーチとして信頼し託した。ここで二人は真の友人となれたわけだよね・・・う~ん作り方がベタすぎてわかりやすいけどうめえ。

『先送りできない日本』

 池上彰さん緊急出版!日本の伝統文化「先送り」を徹底追及!?(※この本の印税はすべて義援金となります!)

 だいたい第二次世界大戦の時も、リーダーが身を切って対処しなければならない問題を先送りにして戦争へなし崩し的に行っちゃったところあるもんな(特に海軍はやりたくなかった)。怖い怖い。
 あの頃も不況で震災があって世界的な恐慌だったんだよ。まさか今の日本がもう一度真珠湾を奇襲攻撃するとは思わないが、状況はすっごい似ている。

 話変わるけどいわゆる「国家論」って面白い。結局大きな物語たりえない気がして。みんなそれぞれ自分が理想とする国家を語っているだけで、大きなお世話ってなっちゃうところある。
 つまり一見「天下国家」という大きな物語を語っている人も、結局「小さな物語=セカイ系=イッツァスモールワールド」なわけだ。
 これは「サブカルに世界は描けるか?」って記事でも話題にしたけど、あの時はあくまでもサブカルの枠で論じたけど、最近はサブカルどころかそれが人間の想像力の限界なんじゃないかって気がする。

 これを痛感したのがTPP問題。本書で池上さんが展開した主張と『国防論』での小林よしのり先生の主張(『国防論』第15章 TPP参加は食糧安保を脅かす 247ページ)が180度違う!
 どっちも日本は内需国で(グローバル市場に早く特化した韓国に比べて人口が多い)、これからより激しい国際競争の時代がやってくるとしながらも、池上さんは今TPPに参加しないと国際社会から取り残されて、それこそ「ガラパゴス諸島」になっちゃうとし、小林さんは農作物というのは工業製品のように安定供給できるものじゃない。だからお金で買えない時に備えて、国が「これまでのように管理(※『先送りできない日本』第2章は必見!)」すべきというスタンスだ。
 
 おもしろいのは小林先生は大国が海外の土地を買い取って農作物を生産し、それを自国にUターンさせる「ランドラッシュ」を日本はできないとしているところだ。
 つまり人さまの土地をぶんどり(金で買ったとしても)現地の人を飢えさせて、自国の飽食文化を維持するなんて非道な真似日本にはできないだろうと言っている。やっぱりよしりんって日本人のモラルをなんだかんだ言って信頼しているのがうれしい。

 結局このランドラッシュっていうのは21世紀型の植民地政策に他ならない。金で買えば他国の資源を支配しちゃっていいのか?相も変わらず帝国主義、歴史は繰り返しているわけだ。
 ただもし仮に日本がランドラッシュやったら農業がなかなか根付かない発展途上国に進んだ農業技術を現地提供しそうだけどね。アメリカの様な強引な適地適作はしないだろう。

 で「農業の非合理の問題はTPPと切り離して考えろ!」ってよしりんは漫画の上の方で小さく言ってるんだけど(森ゆきえ先生のオマケ漫画手法w)確かにこれやりたいのは円安輸出時代を忘れられない経済界の人たちで、日本の農家の人はもちろん反対している。
 というか産業ごとにTPP参加不参加を表明できないのかね?経団連の野郎だけ参加して、第一次産業はある程度保護をするとかさ。

 しかし戦後の日本において農業票は大票田、コメの関税約800%は分かるけど、こんにゃく芋に1706%の関税をかけているなんて初めて知ったw
 これは歴代総理に群馬県出身者が多いため、群馬県の主要産業を過剰な関税障壁をかけて守ったそうな・・・こんな防波堤作るより沿岸部の原発守った方がよかったぜ。

 とはいえ実はこの関税障壁、必ずしもかけた国に有利に働くとは限らない。それがアメリカの自動車産業を破滅させたと言う事実もある。
 あまりに国が過剰に特定産業を甘やかすと競争力が低下、結局海外メーカーにやられてしまう。アメリカの鉄鋼業&自動車産業を破滅に追い込んだのは他ならない日本なのだ!
 アメリカは日本のメーカーに対して徹底的な防波堤を築こうとするが、それに夢中になり自動車産業の発展まで目がいかなかった。
 アメリカが防戦に徹しているうちに日本はさらに技術力を向上させ、最終的にはアメリカ国内に日本メーカーが工場建てちゃって内からやっつけてしまった。

 自動車の他にも真空管、トランジスタと発展したコンピュータの開発競争でも日本はめちゃくちゃな耐久実験を行いアメリカを脅かした過去がある(※参考文献『電子立国日本の自叙伝』NHK出版)
 池上さんによれば、80年代になんと非合法な産業スパイ(IBMスパイ事件)もやったそうな。だから中国のこと叩けないんだ。それにまたスーパーコンピューター世界一に返り咲いたしな。2位じゃダメだったんだろうな。

 この痛快な経済戦争をTPPがらみでよしりんが取り上げないのはおかしい。勝ってる戦争はカッコいいぞ!と『戦争論』で言ったくらいなんだから、TPPになったらなったで反米どころじゃねえ、アメリカと全面戦争でぶっつぶしてやらあ!くらい言えばいいのだが・・・
 よしりんは毎回アメリカを批判しているけど、アメリカの物量的な強さを最も意識している気がするんだよな。アメリカは嫌いだけどその強さは認めているんだろうな。まあいいや。

 さて、アメリカはこの屈辱を今度はTPPで(牛肉やオレンジ以上に)はらそうとしているのかもしれない。なにせそもそもTPPはシンガポール、ニュージランド、チリ、ブルネイといったそこまで経済大国じゃない国々がみんなで力を合わせていこうと立ち上げた仲良しクラブ。
 そこにアメリカ(ジャイアン)が「おい、オレ達も環太平洋の国なんだから入れろ」と、乗り込んできて、どうせアメリカのことだから『アバター』のごとく主導権を握っちゃうつもりなのだろう。こういう奴いるよなw

 しかしよしりん曰くアメリカにとっての最大の狙いは、日本に農作物を売りつけることなのだ。いや農作物だけじゃない、公共事業や郵政事業、保険外診療にまで手を伸ばすつもりなのだ。
 で、そんなにモノやサービスを買ってくれるのはシンガポールやブルネイじゃない。まだ貯金箱になりそうな日本ってわけだ。じゃなきゃオバマさんは今後5年で輸出を2倍にします!なんて言わない。そんな金持ってるのは日本くらいだろうから。

 最後に「ぶれない政治家」について。最近の政局や政治報道、そして私たちの「批判」のレベルにすらなっていない叩き方って危険水域だと思う。率直に言ってバカすぎる。
 これは『先送りのできない日本』で池上さんも今の政治記者を叱っていた位。勉強不足である、と。

 確かに失言する政治家(今回は鉢呂さん)もまずいんだけど、ちょっとした言葉の上げ足とってその度に閣僚変えていたらきりがない。
 で、私対処法考えてみたんだけど、もうマスコミもバカだから国務大臣は記者会見を当分やらなきゃいいんじゃないかって気がする。それではチェック機能が!とか言うだろうけど、お前らその機能を今果たしてないよ。

 だから対マスコミ発表は内閣官房長官に一元化する。支持者しかいない政治パーティのノリでリップサービスして自爆する人が出ないためにも、一回報告書を官邸に上げてもらってみんなでチェックして、これなら失言なし!ってなったら官房長官が各省庁の意向を発表する。それでもいいんじゃないかなあ。

 で、な~んで今の私たちは政治家の言うことにいちいち一喜一憂してるんだって思うんだけど、これオレ漫画の読み過ぎだからだと思うんだよ。
 つまりリアルな人である政治家を漫画のキャラクターのように記号化しちゃって認識しちゃうから、ちょっと言うことがぶれたりすると許せないのだろう。
 何でその人がそういうことを言ったのか、そういったバックボーンを想像する力がない。映画や漫画、アニメといった映像メディアって私想像力の低下を招いたって思っているから。

 だいたい勉強すれば結論なんて変わっていくのが普通なんだ。結論とは真理でも本質でもない暫定的なものなんだ。重要なのはプロセスだろう。
 言うこと変わってもいいけどなんで変わっちゃったか納得のいく説明が上手くできる人がいいんじゃないのか。一回言ったことを何が何でも変えないって言うのは義理堅い感じもするけど頑固かもしれないし、ギャンブラーの破滅のパターンなんだ。
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