新科目「公共」とアベデュケーションについて

 国民の敵、公務員(=教員)の退職金が段階的に減っていくらしい。

 最終的に給料の十ヶ月分(=400万円※月給40万円の場合)を減らすそうで、とりあえず今年の二月から二ヶ月分減ることになる。
 だから退職金が減る前に自分から退職しちゃうベテラン先生が多いんだって。埼玉県ではなんと駆け込み退職者が100人を超える勢い。
 なにせ今年度末まで働くと退職金が150万円減るから、二ヶ月分の給料捨てて今やめちゃったほうが得になっちゃう。
 お前ら金のためだけに教員やってたのかって批判されちゃいそうだけど(最近、いじめや体罰と学校批判が流行っているから)、退職金前提でローン組んじゃってたりしたらそうなるよね。聖職者の前に生活者だと。

 あと、これは先週の「日本教育新聞(←恥ずかしながらこんな新聞があるなんて初めて知った!)」に書いてあったんだけど、安倍さんは教育再生会議を復活させて、中学高校に新科目「公共」を導入しようとしているらしい。
 最近の若者に公共心が少なくなったからってことなんだけど、この退職金騒動を見ていると、まず先生の公共心が怪しいよ。
 内容としてはインターンシップやボランティア活動をやらせるってことで、教職課程の大学生が教員免許を取るのに介護体験をやらなきゃいけないのに近いと思う(このアイディアは田中眞紀子さんが考えた)。
 確かに教室でのお勉強よりも、こういう活動で輝く生徒もいるんだろうけれど、大切なのはその経験がちゃんと進学や就職で生かせるようにしなきゃいけないってことだよね。
 あ、でもわりと活用できるのかな??具体的にどういう活動をやらせるのかが、いまいちまだ明確じゃないので、ちょっとわからないや。
 そもそも学校教育って多かれ少なかれ子供の心理形成に影響を与えるものだけれど(人格陶冶)、それはパターナリズムで子どもの内面に大人が勝手に踏み込んではいけないっていう人もいるから、この手の教育改革は形骸化しがちなんだよな。どうなるんだろう。

 とはいえ、一部の人(主にリベラル派)が言う「道徳と法は分けて考えるべき」という“民主主義の基本”は現実問題として果たしてどれだけ可能なのだろうかって話だよ。
 逆説的に考えれば、それだけ法律(全体の問題に関わる)と道徳(個人の問題に関わる)は親和性が高いから、適切な距離感を取らなければ個人の自由が犠牲になるってことなんだろうけれど、共同体を一切考えずに個人の自由というものが成り立つのかはかなり怪しい。
 自由を担保する存在が絶対に必要だからね。そこらへんはブログでも何度も書いたし、ホッブスの『リヴァイアサン』あたりが面白いのでぜひ。

 さて、安倍さんって、昔総理になった時も著書『美しい国へ』で教育改革を熱く訴えていた人で、今回はそのリベンジ戦だからかなり本気で変えて行く気がする。
 新科目「公共」以外にもいろんなアイディアを出していて、これらを「アベデュケーション」というらしい。誰だアベノミクスと言い悪乗りしてる奴ww

アベデュケーション①土曜日登校の復活
 私が小学生くらいは土曜日も学校があったんだけど、それをまたやろうというもの。脱ゆとりを象徴する案なんだろうけれど、夜も塾に行っている子供に更に詰め込んで効果はあるのだろうか。あ、でも共働きの家庭が増えたから、子供が土曜日も学校に行ってくれた方が楽&安心っていうのはあるのかもしれない。特に小学校なんかは。
 
アベデュケーション②愛国心教育の導入
 これは言わずもがな、波乱が起きるよね。国歌を斉唱しない教員はさらに風当たりが強くなりそう。一応自由権で思想信条の自由があるんだけど、公共の福祉のために働く先生がどれだけ公共のために自由を制限されるか、その解釈がポイントになるのかもしれない。
 戦後の日本の学校教育って軍国主義の反動で、政治的にはかなりニュートラルっていうかリベラルだったんだけど、もしこれが盛り込まれたら教育現場は大きく変わるのだろうか。
 ただ、児童、生徒の前に、まず現場の学校の先生にどれほどの愛国心があるのか判断できないし、これから教員採用試験で国家に忠誠を尽くすような人を優先的に採用するのかもちょっとわからない。
 教員採用試験は各地方自治体が行っているので、そこまで国家主義的な基準を地方がはたして取り入れるのかなあ・・・

アベデュケーション③道徳教育の強化
 これも個人の心の問題だから非常にナイーブな問題なんだけれど、最低限のルールやマナーはやっぱりちゃんとしつけたほうがいいのかもしれない。
 そもそも道徳とは普遍的なもので、ほとんどの人が共有すべきものだからね。人に見られてようが見られてなかろうが、犯罪はやっちゃダメじゃん。それはやると警察に捕まっちゃうから、とかじゃなくて、そもそも規範を逸脱した行為に強い罪悪感を覚えなきゃいけないものじゃん。
 また最近では、けっこう敬語が使えない子がいて、それは敬語なんて使ってられるかよ、じゃなくて、本当に教わってないから使いたくても上手く使えないらしいんだ。
 そういう子は面接とかでけっこう苦戦しちゃうから、個人の自由どうこうじゃなくて、規範意識の欠如はかなり切実な問題ではある。だってどの子も最終的に「社会」に出て行かなきゃいけないからなあ。

アベデュケーション④政治的リテラシーの育成
 アベデュケーションで一番印象的で一番謎なのがこれ。政治的リテラシー??どういうことなんだろう、ってことで調べてみたら、民主主義国家に生きる「いち国民」として、一人ひとりが主権者としての自覚を持って政治に参加することをどうやら子どもに教えたいらしい。
 確かにこの前の選挙の投票率はかなり低かったからね。それは平和な社会の証明であるっていう学者さんもいるんだけど、せっかく昔の人が血を流して獲得した選挙権を自分から放棄する人が多いのは問題って安倍さんは思ったのだろうか。
 確かに若者の政治離れ・・・ってよくよく考えたらちょっとシャレにならないもんね。若者の漫画離れとは問題の質が違うし。

 私は去年Ustreamで「マイケル・サンデルの本を学校の教科書にすべき」って半分本気、半分冗談で言ったんだけど、政治的リテラシー教育をやるならサンデル教授は教材としてすごいうってつけだと思う(どの事例も答えの出ない、考えること自体に意味があるようなものだから)。
 ただ生徒同士のディベートをうまく取り仕切れる田原総一郎のような教師をまずは育成する必要があるのかもw
 今の人って、「問題点をうやむやにして結論を避ける」とかつて言われた民族とは思えないほど、答えに白黒はっきりつけたいタイプが多いけど(それともそのスタンスはネットにいるときだけ?)、そういう瞬発力(だけ)に特化した短絡的な思考回路に疑問を投げかけて、ひとつの物事を長期的に考える訓練にはなるのかもね。

 ただそれはゆとり教育の時にやって頂きたかった(C)児玉清

サイとマリと富野ならむしろイデオン

 最近職員室の新聞を見るのが楽しい。ウチは読売と地方紙の2誌をとっているんだけれど、学校には朝日新聞などもあって新聞社ごとのカラーが楽しめる。
 例えば読売新聞なんて語り口はソフトだけどメチャクチャ民主党が嫌いで自民党LOVEなのがわかるし、逆に朝日新聞は自民党政権に対しては冷ややか。
 個人的には私も今の自民党人気には懐疑的だから(アベノミクスってなんじゃら)、シンパシーを感じるのはどっちかというと朝日新聞なんだけど、そういう政治的なスタンスは私にとってはそんなに重要じゃない。

 朝日新聞が面白いのは記事のバラエティというか、とにかくツボを付いたニュースが多い印象がある。風営法でクラブのダンスが細かく規制されているという記事もあれば、ガンダムについて有識者が語る連載があったりw
 今日はガンダムユニコーンの作者がコメントしてたんだけど、「壮大なスケールをテーマにしたアニメが富野さん(=伝説巨神イデオン)以降はほとんどない」とか言ってて親近感を感じたね。

 まあアニメの話はどうでもいいんだけど、国際問題で言えば、昨日の二面では南アフリカ共和国のサイを「なりすまし猟」で流通させちゃっている問題を取り上げていたんだけど、こういう話ってなかなか世の中について考えさせられる。
 なりすまし猟というのは、南アフリカは外貨を稼ぐために観光客にビッグゲームハンティングということでサイを狩らせているんだけど、その記念としてサイの角を持ち帰るのは公認しているんだって。
 だからその法の抜け穴を利用して、はなから売買目的でバイトの人に適当にハンティングをさせて(素人なのでサイなんて仕留められないから最終的に同行したプロにやってもらう)、サイの角を国外に運んじゃうんだってw
 なにしろサイの角はアジアではとっても需要が高く、今ではなんと金よりも価値があるらしい。もちろん密猟も横行しているんだけど、今回の事件はもっと厄介だ(サイの死体の前で記念撮影もさせる念の入り用!)。
 それなら、そんなハンティングやめちゃえばいいじゃんって気もするけれど、そこで得たお金でサイの保護や繁殖に当てているのでなんとも皮肉な話。なにやるにしてもお金がかかるのだ。

 今日は西アフリカにある国「マリ」のクーデターについて載っていたんだけど、なんとこの問題はリビアのカダフィ大佐が倒されたことと関係があるんだって。
 カダフィ政権が倒れたことで、カダフィ側で戦ってたイスラム系遊牧民族トゥアレグがマリに武器を持ち帰り、マリの政府軍を圧倒しているんだって。
 本当はイスラム教っていうのは異文化に寛容なはずなんだけど、貴重な文化遺産も破壊されまくっているから、ほっとくわけにも行かず旧宗主国のフランスが軍事介入しているというわけらしい。世界はつながっているんだなあ。

 こういうニュースって物語を作るときにもすっごい役に立つのは言うまでもない。社会や世界に興味を持つのは無駄ではないからね。
 マロさんは「新聞は2紙以上取りなさいって昔のマンガ家は編集者に忠告されたそうですね」って言ってたんだけど、確かに『こち亀』の秋本先生なんかも新聞を何紙もとって、興味深い記事はスクラップにしているんだ。
 あの時は単純に「よく読む時間あるな」位にしか思ってなかったんだけど、いよいよ私も真似しようかなあwチョキチョキ。

プロメテウス

 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆」

 知ってどうするんです?

 多分、そこが人間とロボットの違いなのかも。


 公開時からいろいろ賛否両論だった映画。『エイリアン』や『アメリカン・ギャングスター』のリドリー・スコット監督。
 人類はなぜ生まれ、どこに行くのか?その手の普遍的な問の答えって、結局とんちみたいなものしか出ない。でも人類にメタ思考ができるようになっちゃったのが運の尽き。答えを求めずにはいられない。
 だから人類は宗教や哲学、自然科学を生み出した。神でもなんでもいいから「お前たち人類が生まれたのには意味があるんだよ」って言って欲しい。理由が知りたい。理由があるなら。

 人が私(ロボット)を作ったわけは?
 作れたから。
 もし創造主がそう答えたらあなたは失望するでしょう。


 公開当時には「アメリカは結局創造説」とか「キャラの動機がよくわからない」色々言われたけど、私はこの映画・・・すっごい楽しかった。
 漫画の脚本で似たような設定(木星の考古学者の話)をやろうとしているから、ビジュアルイメージの参考に見たってだけだったんだけど、いや~見てよかった。
 楽園で知恵の果実をかじっちゃった人間の、純粋かつ凶暴な知的欲求を描きたかったんだって考えると、綺麗にまとまってはいるし、クロワッサンが空から墜落したり、妊婦がイカを出産したり、主人公の吹き替えが致命的だったりは私にとってはツッコミどころではなく、おバカな魅力として作用した。

 悔しいかな、同じく『2001年宇宙の旅』をモチーフにしたエヴァンゲリオンの時もそうだったんだけど、私って結局笑ってしまうとその映画の評価が上がってしまう。どんなに嫌いな作品でも笑わせられちゃうとOKOKになっちゃって、つまらない作品とはどうしても思えない。笑いは正直だからね。
 こういうこと言うと、いつも「馬鹿にしてるんでしょ」って言われるんだけど、それは全く違う。人が生まれてから死ぬまでの間の辛い人生に、笑いという花を咲かせるのはなかなか尊く、難しいことだ。

 それを一生懸命やっているひとを私は尊敬こそすれ、馬鹿にはしない。じゃあこんな馬鹿な映画作れるのかって問いたいよ。大人になるとなかなか馬鹿なものに全エネルギーを傾けるってことができなくなる。
 うんこマンちんこマンとか描いていると、ある時ふと「これを28歳で描く意味はあるのか?理由は??」と冷静になってしまってなんかバカバカしくなっちゃう。時間的余裕も限られているからね。そうだな、この「歳をとると描く理由を求めずにはいられなくなっちゃう病気」をプロメテウス病と名付けようw

 ただ、ひとつわがままを言わせてもらうなら、あのラストは余計だったかな。リドリー・スコット監督のファンサービスだったんだろうけど、あれでB級ホラー映画みたいなオチになっちゃったわけで。
 というか私はエイリアンのあのデザインがあまり好きじゃない。なんかやりすぎって感じがするんだよな。装飾を付け足しすぎというか・・・成田享さんのウルトラ怪獣に見られるようなシンプルな美しさがない。
 とはいえアメリカのクリーチャーのちょっとグロイ感じとかは、日本人ってなかなか出せないから羨ましいけどね。ジュラシックパークの恐竜のデザインを見たとき、芋の煮っ転がしからハンバーグになったような衝撃((C)毒蝮三太夫)を受けたもの。この恐竜は生きてる!って。

 話が脱線したけれど、というわけで、まあ、最初は剛力さんによる女性科学者の吹き替えが前代未聞のレベルだったんだけど、意外と映画の内容も最終的にはバカ全開だったから(空飛ぶクロワッサンあたりでもうどうでも良くなった)、最後の方は違和感感じなかったんだよな。慣れってすごい。
 このキャスティングは剛力彩芽ファンを劇場に呼ぶための、毎度お馴染みのあざといマーケティングだったんだろうけど、私、最終的にこの映画における剛力の投入には何かもっと深い意味があったんじゃないかって考えているからね。
 
 剛力彩芽「死ねえええええ~~!!!!」(今回のベストアクト)

『ライジング・サン』

 ハッピーニューイヤー!ということで新年最初のブログ記事は、我が心の師マイクル・クライトン先生が、かつての日米貿易摩擦をとりあげた産業サスペンス、『ライジング・サン』をご紹介。

 どんな分野でも、取り上げるからには徹底的なリサーチを行うのがクライトン先生の仕事の流儀。今回も米国人から見た日本人の「異質さ」をリアルに描いています。
 松下幸之助の経営哲学、田中角栄とロッキード事件、竹下登とリクルート事件、社交辞令、系列、隠蔽体質・・・アメリカの人が、よくまあ日本人をここまで考察したよなあって感じでびっくり。

 この小説って『ジュラシック・パーク』の次に発表されていて、日本でクライトン先生の知名度がバーンと上がったあとのまさかのジャパンバッシング小説だったので、当時は色々と物議を醸したようですが、改めて読んでみると別に日本をそこまで悪く描いてはいない。
 ただ悪人がいてそれがたまたま日本人だったって感じ。そしてこいつは日本人の私から見ても「外道」。

 イシグロマサオお前のことだよ。

 こういうのって、例え指摘が合っていても、なんとなく面白くないから「いや~全然違うよ、やっぱアメリカ人は日本人をわかってないね~」とか言いたくなっちゃうものだけど、実際当事者だけが、その違和感に気づいてないってことはよくある。
 そして冗談抜きで日本人ってこういう生き物でしょ。表面上はうまく取り繕っても、ぼくらは初対面の外国の人になかなか心を開かない。

 「いろいろな点で、日本人は素晴らしい民族だ。勤勉で、知的で、ユーモアがあって。掛け値なしに誠実な人々だよ。ただ世界一のレイシストでもある。(略)日本人は好きだ。大好きだといってもいい。だが、わたしは日本人ではない。そして日本人は、決してそれを忘れさせてはくれない」

 いつだったか我が家に、本国ではテレビに出るほど著名なドイツ人の市議会議員さんが来たんだけど、やっぱり照れるのか、怖いのか、距離感を作ってしまう。とりあえず気を悪くさせないように笑顔を作ろうって・・・それが一番相手にとって失礼なんだよって!
 さすが200年以上引きこもってただけある。日本人は世界一のレイシストなんだな。

 「日本企業はMITに対して、教授職25人ぶんの研究費を寄付している。どの国よりもはるかに多い金額だ。なぜそんなことをするのか。あれこれと試したあげくに、日本人は知ったからだよ――自分たちにはアメリカ人ほどの創造性がないということをね。それでいて、革新的な技術はほしい。となれば、することはひとつだ。買うのさ」(470ページ)
 
 でさ、このセリフで思い出したんだけどさ、そもそも日本って、ある意味中国以上のパクリ国家だよね。
 しかも中国のように、ただ丸パクリするんじゃなくて、自分たちの使い勝手がいいようにチャチャっと改良しちゃうんだから始末に負えない。
 大体クールジャパンとか言われている日本のサブカルチャー、オタク文化だって、若い子は知らないだろうけど元はアメリカニズム。
 ただオリジナルがなんだか分からないほど自国文化のように昇華させてしまうから、まさかアメリカの真似をやっているとは気づかない。パクリのレベルが高すぎて自分たちのやってることがパクリだってことを忘れちゃうなんて、まったくひどいやつらだよ、ジャップは。

 それに今では信じられないけど、バブル期までの日本って今の中国みたいな感じで、確かIBMに産業スパイを送ったり、ニューヨークの名だたるビル(エンパイアステートビルやロックフェラーセンター)を買い占めちゃったり、なかなか相手のメンツを無視した、阿漕なことをやっていたらしい(実際東京の地価が高騰したときは、アメリカ全土が買える値段にまで上がった!)。
 こんな真似されて面白くないのは、もちろんアメリカ。日本人の狡猾さ、図太さに危機感を抱き、何より日本人の空気読め的な暗黙のルールに悩まされたという。クウキッテナンダ??? 

 よくTPP問題で「これをやったら日本はアメリカの企業に潰される…!」とか言う政治家がいるけれど(その意見に反対というわけではない)、その逆を日本はアメリカにさんざんやってきたんだよね。
 もちろんアメリカだってアンフェアなことは平気でやるけど、それにいちいち目くじら立ててもしょうがない。かつてのジャパニーズビジネスマンが言っていた通り今もビジネスは戦争なのだ。
 「あいつらライフルで撃ってきやがる!ひどい」って戦場で抗議する兵士はいないだろう。戦ってんだから。アウトレイジビヨンドの片岡さんが言うとおり「やったやられたはお互い様でしょ。」なのだ。
 
 「日本にアメリカの土地を買うなというのなら、売るなといいたい。――盛田昭夫(ソニー創業者)」

 しかしグローバル化、ボーダレス化が進んで、結局そこにあるのは仁義なき血みどろの抗争なのだろうか・・・国境や文化の壁を越えた共存共栄の友好関係は築けないのだろうか?
 作中で日本通刑事として登場するジョン・コナー警部は、日本人が好きだと言いながらも、やっぱり分かり合えない・・・と悲しそうにつぶやく。
 はっきり言って、このコナー警部、相手に対する無言の気遣い(KY=空気読む)も完璧で、私なんかよりもずっと日本のしきたりや礼儀に詳しいんだけど、日本という国を知れば知るほど、日本を完全に理解することなんて出来やしないって、わからなくなってくるんだろうな。

 「わたしには、アメリカで働いている日本人の友人が大勢いる。(略)友人たちは、いつもわたしに思い出してくれという――彼らはまず第一に人間であり、その次に日本人なのだと。残念ながらわたしの経験では、それが常に正しいとはかぎらないがね」(624ページ)
 
 価値観が多様化した現代では、こういった異文化理解(本当の意味でのポストモダン)は、同じ日本人の間でも考えていかなければいけない問題なのかもしれない。
 知らない相手に対するちょっとした気遣い・・・これは日本人が得意としたところだと思うんだけど、今の日本は皮肉なことに作中のアメリカと状況が似てしまった。そしてかつての日本の成金的ポジションはBRICsが元気に継承してくれている。
 追う側から追われる側へ・・・日本とアメリカは今こそ本当の意味で仲良くなれるかもしれないw「いや~今になって当時のアメリカさんの気持ちわかりましたよ~」とかw

 うるせえよ、いいからTPPやれこの野郎とか言われるんだろうなw

 おまけ:それと余談だけど、この小説って固有名詞が『ジュラシック・パーク』と、いくつか重なっている。例えばインジェン社の大口出資元ハマグチ社や、恐竜のDNA解析に使ったスパコン「クレイ」の顛末など。おそらく同時期に書いていたから、遊んでみたんだろうねw

 あと女体盛り出なかった。

2012年は刺激的

 いや~今日でついに2012年もおしまいですよね。今年は年初めからUstreamで伝説的黒歴史バレンタインデーぶっ壊せデモをやったり、いろいろな新体験をした年でした。
 他にも人生初のマンガ連載、人生初のオフ会、人生初の運転、人生初の学校教員体験・・・どれも楽しかったですが、どれも少々刺激が強すぎたらしく、現在の私はフラフラですw

 とりあえず今は冨樫義博ごっこをやっちゃっているYELLの漫画原稿を仕上げています。
 今年の秋から学校の先生を学習塾と同時にやることになって(一時期家庭教師もやってた)、本当に漫画が描けなかった。続きを楽しみにしてくださっているファンの皆様ごめんなさい。来年はなにかの仕事を減らして、漫画にもう少し時間が割けるように考えているところです。

 しかし今年は「ついに私も若者から大人になったなあ・・・」って実感した年でした。何といっても情けないのが「最近の若いもんは」という王道的ジジイ思考をするようになってしまったこと。
 こういう頭の固い大人には絶対なりたくないって思っていたのに、そういうことを考えるようになってしまったのは、新鮮であると同時にかなりショックでした。
 もう今の若い子とは共通点よりもギャップを感じることのほうが多くなってきたってことなのかも。そりゃそうだ、15歳も年が離れている子を相手にしているわけで、彼らとは元号が違う、世紀が違う。新世紀エヴァンゲリオン(あ、これも今年の初体験の一つだ)。
 
 でもさ、もう自分もいい年なんだから、若い世代の壁になったほうがいいんだよね。今の大人って良くも悪くも物分りが良すぎて、子供には乗り越えるべき壁がない。
 今の子ってなんでも自由にやらせてもらえるんだけど、それによって自分たちが生きる指針をなかなか定められないで苦しんでいる気がする(自由な分、規範が形成される機会がない)。自由を持て余しているんだ。
 時に反発されようが、大人はブレずに「オレたちはこういうポリシーで生きてるんだ!」っていう生き様を子供に見せるべきなんだと思う。子供にいい顔するだけが教育じゃないもんね。

 ああ、もう、こういうこと言ってる時点でオヤジっぽくて嫌なんですが、でも私はもう、どう考えても大人。大人になっちゃったもんは大人にならなきゃいけない。
 もともと私は「創作するなら社会にコミットしなければいけない」というスタンスだったんだけど、教育現場に触れてそれがさらに確信に変わった。
 個人主義と新自由主義がもたらしたものは、無秩序な混沌。学ばず、オレ様化する子供たち、働かない若者たち、ウェブを支配するバカで暇な人・・・これらは現代人なら誰しもが多少は共有しているメンタリティではないだろうか。

 人間は誰でも失敗するけど、特に若者は人生経験が少ない分失敗する確率が高い。
 そこで大人が子供の言いなりになって好きにやらせちゃうと、ろくなもんじゃない。それは寛容なように見えてすっごい無責任なことなんだって思った。

 好きにしていいよって言うと本当に好きにするんだよこいつら!ww

 ある人が「リバティとフリーダム」の違いですねって言ってたんだけど、まさにそう。自由はいいことだけど、その自由が他者の自由を侵害した場合の合意形成の手段を僕らはおざなりにしてしまった。
 だから私はあえて頑固ジジイになろうと思う。いや10代の頃からそんな感じだったけどさw

 教育の現場が未来の社会を映す鏡ならば、私たちが前提にしていたはずの最低限の共同体的ルールやモラルがここまで崩壊してしまったこの現状はちょっと心配だ。
 まあ、そういった杞憂は、今の団塊の世代の人が「新人類!」とか言われていた頃から繰り返されているわけで、なんだかんだで結局世の中回るのだろうけれど、じゃあそれがいい世の中なのか?って聞かれると、ほとんどの人はそう思わないんじゃないだろうか。
 今の子はけっこう感受性が高くて、厭世的な大人の姿を見て、若いうちからリアルを見切っているような気がする。

 物語のないこんな世の中だからこそ、私は物語を書こう。「偉そうでお説教くさい」とか「なんでてめえに言われなきゃいけないんだ」とか言われようが、私は創作を通じてメッセージを送り続けたい。
 しいてはそれが私にとって生きることだと思うから。

 「『私はどうすればよいか?』という問いに答えられるのは、それに先立つ『私はどの物語のなかに自分の役を見つけられるか?』という問いに答えられる場合だけだ」――アラスデア・マッキンタイア『美徳なき時代』
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